表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
120/372

119、モモ、保護者様と贅沢をする~楽しいほど時間は早く進んじゃうよね~夜編

 窓から見える外が真っ暗になった頃、玄関の方から物音がした。ソファで丸くなっている内にうとうとしていた桃子は、バル様が立ち上がった震動で目を覚ました。うむむ、眠いね。目をパチパチさせて眠気を飛ばしていれば、上から美声がぽつりと降ってきた。


「……来たようだな」


「お出迎えだね。私も行きたいの」


 バル様に両手を広げて抱っこをせがむ。すまぬ。だが、今の余は動きたくないのだ! 軍神様の振りをして心の中で宣言する。バル様は幼児全開の桃子に嫌な顔一つせず抱き上げてくれる。その優しさが出来たばかりの傷口を優しく覆ってくれるようだ。……ぐずっ。余は泣いてなどいない。泣きそうなだけである。


 桃子はバル様の首にぎゅっとしがみつく。揺れが少ない腕の居心地は大変素晴らしいです。バル様抱っこのプロになった? もしバル様が幼稚園の保父さんだったら大変なことになってたよ。

園児と保護者のマダムにも大人気のバル先生。だっこしてほしくても、順番がなかなか回って来ない! ふぅ、バル様が今のバル様でよかった。


 バル様が玄関ホールに進んでいく。レリーナさんとロンさんが既にいて、カイとキルマがルーガ騎士団の外套を脱いで渡しているところだった。二人はバル様に一礼すると、そのまま下がっていく。仕事が出来る感がすごいする。レリーナさんもバル様に怒られなかったかなぁ? プレゼントがしたいっていう、私のちっさな野望のせいだから、ちゃんと謝っておこう。やっかいな護衛対象でごめんよ。


「こんばんは。今夜はお邪魔しますね、バルクライ様。モモ、こちらに来て下さい。可愛いお顔が見たいです」


「うん?」


 どうしたのかな? キルマ、ちょっと暴走気味? バル様の腕からさっと攫われて、美麗なお顔がどアップに迫ってきた。あのー、さすがに近すぎませんか!? と思ったら、きゅっと抱きしめられた。


「小さいですね……あぁ、可愛いです。私の癒し……」


「ハハハ、すみませんね団長。キルマの奴、ここんとこ胃に負担をかけているようでして。おいおい、潰すなよ? モモが眉を下げて困り顔になってるぞ」


「後少しだけです。はぁ……」


「お疲れ様。お仕事頑張ったんだねぇ」


 肩に温かなため息が当たる。そんなにお疲れならばと、桃子はキルマの頭をなでなでしてあげた。さらさらで綺麗な銀髪が麗しい。うっとりするような手触りだ。お手入れしっかりしてるのかな? 私はメイドさん達に丸っと洗ってもらってるからよくわかってないんだけど、前よりも髪に艶があるよ。なでなで、なでなで、な……バル様の視線が強くなってきたぁ!


 カイがあちゃあと言わんばかりの様子で、額を手で押さえてる。どうすればいいのこれ? って目で尋ねるとキルマに視線を向けられる。なるほど。了解、カイ補佐官! 


「ねぇねぇ、キルマ。皆でご飯食べよう! 今日ね、私バル様と魔法の特訓してたの。そのお話もしたいなぁ。うん、残念ながら最後は精霊さんに弄ばれて終わっちゃったけどね……」


 桃子は遠い目をする。だってね、あの後何度もやったんだけど、精霊さんは呼んだー? って来たかと思うと、応えるとでも思ったかぁ! って言わんばかりの裏切りをするのだ。呼びかけに集まってくれるかと思えば、途中でどっかに行っちゃうから魔法が出ないで失敗しちゃうの。


 何度も何度も繰り返して、お腹がスースーしてきて、バル様ストップがかかった。最終的にセージを分けてもらって今日を締めたのである。ぐすんっ。


「弄ばれた、ですか?」


 キルマが興味を引かれたのか顔を上げてくれる。その時、いいタイミングでキュゥーっとお腹が鳴った。ナイスだね!


「モモはお腹が空いてるようだぞ。ついでにオレも空いてるよ」


「キルマ」


「えぇ、わかりました。モモ、そのお話は夕食を頂きながらゆっくりとお聞きしましょうね」


 バル様にだっこが移る。ほっ。無言の視線からは解放された。廊下を進むバル様の肩から顔を覗かせてカイと視線を合わせる。二人は頷き合う。任務を完了しました、カイ補佐官! 見事だったよ、モモ隊員! 厳しい戦いだったけど、次は栄気を養うためにも夕食を頂こう! 次の戦いに備えてですね、カイ補佐官!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ