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103、モモ、手紙をもらう~小さなお友達はやっぱりツンデレだね~

 メイドさん達に洗ってもらってお風呂を済ませた桃子は、ほっかほかになってにこにこしていた。良いお湯でした! 今日は先にお風呂だったけど、今からご飯だから楽しみだ。

  

 水色のネグリジェに着替えて、ベットの上で髪の毛を拭いてもらっていると、もう一人のメイドさんが封筒を差し出してきた。


「モモ様宛に届いたお手紙でございます。バルクライ様と一緒にお読みするのがよろしいかと」


「ありがとう。えーっと、誰からかなぁ?」


 金色の花が上品に描かれた白い封筒をひっくり返して差出人を確かめると、そこには可愛らしい文字で小さな友達の名前が書かれていた。ミラだ。桃子が字の練習中で中々お手紙を送らないものだから、しびれを切らせて自分から送ってくれたのかもしれない。


その時、扉からコンコンとノック音がした。


「モモ、入ってもいいか?」


「いいよー」


 返事を返すと、普段着に着替えたバル様が入ってくる。まだ寝間着には着替えていないんだね。私は着替えちゃったけどいいのかな?


「バル様まだお仕事があるの?」


「少しな。だから今日は軽食で済ませるつもりだ。モモは普段通りの量を食べれそうか?」


「ううん。私もあんまりお腹減ってないから、少しでいいよ」


「それなら、オレの部屋に用意を頼むか。……モモの髪を拭き終わったら、ロンに伝えて来てくれ」


「はい、バルクライ様」


「こちらもお湯の片づけが終わりましたので、下がらせて頂きます」


 桃子の髪をしっかり拭き終わったメイドさんと、お片付けを済ませたメイドさん達はさっと立ち上がると、一礼して部屋を出て行く。きびきびした動きは、レリーナさんと一緒だね。バル様のお屋敷のメイドさん達レベルが高い気がする。


 二人だけになると、バル様が桃子の隣に腰を下ろす。ベットがぎしりと軋んだ音を立てた。


「その封筒はなんだ?」


「ミラから送られてきたの。メイドさんが渡してくれたんだよ」


 桃子が一度攫われているので、メイドさん達も外部からの接触には警戒しているんだろうね。バル様に一度通すことで、安全を計ろうとしているのがよくわかる。夢のこともあるから、桃子としてもあっけらかんと、あはは、大丈夫だよ! なんて能天気には言えないからね。

 

 バル様に余計な心配をさせないためにも、ちょっとした情報も共有しておくことは大事。……秘密にしてることもあるけど。

 

 お手紙にはしっかりと蝋を使って印が押されていた。グロバフって家名の周りに小さなお花が囲んでるのが可愛いね。桃子の世界ではセロハンテープか糊を使っていたから、蝋を使ったお手紙にドキドキしてきた。


「バル様、これどうやって開けるの?」


「蝋を壊す」


「壊しちゃうんだ? 可愛いからちょっともったいないね」


「そうか?」


「うん。私の国では蝋を使った封はあんまりしないから、」


「王族や貴族の間では、重要な手紙の類には魔法をかけた封を行うこともある。今回は普通の手紙だから普通の封蝋ふうろうをしてあるようだ。壊したくないのなら、ナイフを使って切るか?」


「うん!」


 大きく頷くと、なぜかバル様がブーツのかかと部分を指で触った。すると、踵の一部が外れて中から爪楊枝くらいの長さの小さな柄のようなものが出て来た。柄の片側を引っ張り出せば、それがナイフになった。


「仕込みナイフだね!」


「あぁ。手紙を貸してみろ」


 お手紙を差し出すとバル様は器用に封筒の上の部分にナイフを入れてするりと切ってくれた。手元に戻って来た封筒の中からいそいそと便箋を取り出して開いて見る。


                  ***********


わたくしの小さなお友達へ


モモ、いかがお過ごしかしら? 最近お会いできなくてとても寂しいわ。

バルクライ様は更にお忙しいご様子のようね。お父様も害獣討伐に向けての対策で忙しそうなの。

最近はお屋敷にお帰りにならない日もあるほどよ。あなたもわたくしと一緒で、寂しい思いをしていらっしゃるのではなくて? 

美味しい紅茶が手に入ったから、近々わたくしのお屋敷でティータイムを一緒にしましょう。

モモのお返事をお待ちしているわ。 


                                         ミラより 


                  ***********


 書かれていたのはお茶会のお誘いだった。けれど、桃子にはミラの焦れた心情がうっすらと感じ取れた。

 桃子が感じたミラの心の副音声はこんな感じである。


                  ***********


わたくしの小さなお友達へ


モモ、いかがお過ごしかしら?(お手紙を書くことを忘れていたのではないわよね?) 最近お会いできなくてとても寂しいわ。

バルクライ様は更にお忙しいご様子のようね。お父様も害獣討伐に向けての対策で忙しそうなの。(事情は知っているから、バルクライ様のお屋敷にお呼ばれするのは害獣討伐が終わった後でも構わないわ)

最近はお屋敷にお帰りにならない日もあるほどよ。あなたもわたくしと一緒で、寂しい思いをしていらっしゃるのではなくて?(そういう時は、お友達であるわたくしにお手紙を送ればいいのよ!) 

美味しい紅茶が手に入ったから、近々わたくしのお屋敷でティータイムを一緒にしましょう。(今回はわたくしが誘ってあげるわ。楽しみにしていなさい!)

モモのお返事をお待ちしているわ。 


                                         ミラより 


                  ***********


 たぶん、こんな感じ? 相変わらずツンデレで可愛いなぁ。桃子はほのぼのとお手紙を閉じて再び封筒に入れ直した。初めてのお手紙だからベッドの下の宝箱に入れておこう。


「ミラからティータイムに誘われちゃった。バル様、受けてもいい?」


「あぁ。レリーナと一緒なら構わない。約束通りに、こちらの屋敷にも招待してやりたいが…………」


「大丈夫。ミラもわかってるみたい。お父さんが害獣討伐の関係で忙しくしてるって書かれてたから」


「そうか。明日にでも返事を書いてやるといい。手紙はロンに渡せば上手く扱ってくれるはずだ」


 バル様にこっちにおいでと手招かれる。桃子は手紙をベッドの上に置いてから、首筋に両手を広げて抱き着く。ふわっと浮遊感と共にお尻を支えられて抱っこの体勢になる。少しも違和感がない。バル様本当に抱っこが上手だ。抱っこ選手権があったら優勝出来るよ、これ! そのまま扉に向かうバル様に、桃子はそんなことを思っていた。

 




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