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1、モモ、幼児になる~美形って見てるだけで眼福だよね~

「うぎゃあああああん!(おにがわらぁぁぁぁぁ!)」


 桃子の叫び声は、子供の泣き声となって喉から迸ったのである。


 水元桃子みずもとももこは花も恥じらうきゃわゆい女子高生であった。……嘘です、言い過ぎました。花は恥じらわない程度のごく普通の十六歳です。大抵のことは受け流せる性格だけが取り柄の女の子です、はいっ。


 普通に自宅のベッドで寝たはずなのに、気づけば固くて冷たい床の上に、全裸で寝ていたのである。しかもその身体、どう見ても幼い。もともとなかったけど、お胸がさらに減りまして、いまや立派な幼児体型だ。


 なんじゃこりゃと、目をぱちくりさせながら起き上がると、目の前には怪しさ満点、お揃いの白い衣装を着たおじさんが六人おり、目を血走らせて桃子を凝視していた。


 その後ろにはこの世の美を集結したような美形の男が一人と、左右に控えるように、儚い系銀髪美人と、夜の街が似合いそうな赤髪の色男がいた。


 誰もが桃子を茫然とした顔で見つめてくるので、いやんと見つめ返してみる。しかし、なんとまぁ、華のある顔立ちをした男達だろう。周りに金粉が飛んでいる気がするねぇ。


 全員が腰に帯剣しており、緑の外套をそれぞれ着こんでいる。足元を固めるブーツは実用的なものだった。おそらくどこかの組織に属する人達だろう。とりあえず、眼福眼福とほくほくしておく。


 服装は現代に近そうだが動きやすさをメインにしているのか、ズボンの裾はブーツに入れられていた。緑の外套もうっすらと汚れているし、雰囲気がただ者ではなさそうだ。それにしても、ここはどこなのだろう?


「………おい」


「は、はい!?」


 ものすごく低い声で美形さんが、おじさん達を睨む。その眼光はもはや凶器である! あ、これ格好いいかも、目で殺すことが出来そうな鋭さとか、とっても似合いそう。でも、おじさん軍団の代表なのかな? 頭をぴかりと輝かせたおじさんが声を裏返しながら返事を返す。


 なんか、あの、怖いので逃げてもいい? なんて本音はお口を固くチャックして押しとどめ、桃子はハラハラと成り行きを見守る。


「一体、誰の、許可を、得て、行った?」


「す、全ては国のためです! 国王陛下とてこの結果を見れば、納得される──」


「そんなことを聞いているのではない。オレは、誰の! 許可を取ったのかを聞いたのだ!」


 念を押すように、言葉を区切りながら話す男は顔がだんだんと恐ろしい形相に変わりつつある。なんでだろう? このおじさん達、よっぽどまずいことをしたのかな? 桃子はのんびりと首を傾げた。


 そろそろ寒くなってきたし、誰か布でもくれないかなぁ。自分の子供子供した身体を見下ろして、ムズムズしてきた鼻をこする。


 汗をかきかき、一番偉そうなおじさんがガクガク震えている。あ、おじさんも寒いの? やっぱりここ冷えるよね。お話はあったかい場所でしたらどうかな? そう聞いてみたいけど、なんかシリアスしているし、どうしようかと迷って、やっぱり黙っておく。


「それは、その……大神官である私が許可を出しました!」


「つまり、陛下の許可は取っていないんだな? このことは報告させてもらうぞ。それで、これはなんだ?」


「その、えぇ、はい。あの、この子供が軍神と思われます!」


 軍神と指差されたのは、なんと桃子だった。……え?  

 


 美形さんの黒い双眼が桃子を射抜く。眉間にくっきりと皺を刻み、こめかみには青筋を浮かべ、美しい顔を修羅に変えて凝視される。その瞬間、本能に従って涙腺が決壊した。


「うぎゃあああああん!(おにがわらぁぁぁぁぁ!)」


 こうして冒頭に戻るのである。



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