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『白星の魔女』 ~アルデガン外伝8~  作者: ふしじろ もひと
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第三の野営:風渡る岐路にて その7

「そうか、アルバ殿の声が……」

「気のせいにすぎないと思いたいのです。でも私も老師の衰えをおそばで目にしてきた身。アーレスを出立してからのここまでの日々を思うと……」

 感慨をにじませ呟くグロスにいまだ動揺さめやらぬアラードがそう言葉を続けると、白衣の神官は姿勢を正し赤毛の剣士に向き直った。

「老師の御身がどのような状況か、今の我らに知るすべはない。だがそなたはアーレスで解呪の業の教えを受け、私は地の底での惑いの道から手を引かれ救われた。その御心が我らに向けられておればこそ、神はお言葉を届けたもうたものと私は信じる」

 力強さというより落ち着きだった。アラードの心を静めたものは。若者も師に倣い東に祈りを捧げた。かの遠き僧院の佇まいを瞼の裏に浮かべつつ。その間にも胸中では、全くの自然体のまま己が動揺を鎮めてみせた呪文の師の揺るぎなさへの感嘆が高まるばかりだった。


 だから祈りを終えると訊ねた。想いに集中するということは、それほどまでに心の支えとなるのですかと。そんなアラードに、けれどグロスは首を横に振った。

「いや、それだけならば私の意識は内心に向いたまま、現実とのつながりを取り戻せなかったであろう。その時の私は内心に隠ることによって、どうにか平静を取り戻せただけだったのだから。なにしろボルドフにもいわれたものだった。少しは見張りもしてくれないと殿に置いた値打ちがない。砂漠の周辺は大群で狩りをする斑狼も出るのだからと」

「では、他にもきっかけがあったのですね」

「ああ、だがそれは旅の終わりも目前でのできごとだった。あと数日で目的地という時になって、凶報がもたらされたのだ」



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「ゼリアの街が野盗の根城に?」

 思わず大声をあげた白衣の神官に、ここまで村人たちを率いてきた巨躯の戦士は厳しい顔で首肯した。

「どうやら敗残兵の一隊らしい。武装した騎馬の集団がつい最近ゼリアの街に住み着き、周囲の村を荒らし始めたそうだ。ドーラの村はまだ焼け落ちたままで放置されているというが、石造りの建物が多い街は住むにも略奪品を貯めるにも都合がいい。くそ、ここまできて出し抜かれるとは……っ」

「ならば一刻も早く逃れねば!」

 焦るグロスに、だがボルドフはかぶりを振った。

「これだけの数の村人が皆で住める場所が他にあるか? ここを諦めれば、連中はちりぢりになるか先住者と戦って住み着くしかすべがない。それでは奴隷か侵略者かの二つに一つだ。こんな所まで連れてきておいて、いまさらそんな境遇に放り出せるか」

「ではどうするのだ。……まさかそなた!」

 血の気が一気に引くのを覚えつつ叫ぶグロスの前で、堅く握る両の拳にボルドフは目を落としていたが、やがて苦渋を滲ませた声が告げた。

「ああ、ゼリアに住み着いた野盗どもを一掃する」


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