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なろう作家 包囲殲滅陣

作者: 虹色水晶

 ある日。

 バルスキナツはメイドのメルから帝王学の授業を受けていた。

 なぜメイドが家庭教師役なのか。なぜメイドから授業を受けているのか。

 厳密にはそれは正しくはない。

 バルスキナツが『先生』なのだ。

 隣に座るアミーラという幼女がさる有力貴族の息女らしい。それなりに高額の報酬で、バルスキナツを家庭教師として雇いたいという依頼だったのである。


「他の貴族との親交も深まります。後々の事も考えますとこの依頼は引き受けるべきかと。少なくとも刃物を振り回すしか芸のない魔法学科の優等生連中にはできない依頼です」


 メイドのメルはこの仕事を受諾するようバルスキナツに勧めた。


「えーだって俺教員免許持ってないし」


 バルスキナツはスマフォを弄りながらグダッた。日本の現代知識で無双しようにも、家庭教師の真似事は流石に無理だ。


「では、不肖私めが教員免許を偽造します。バルス様がアミーラ様と御一緒に授業を受けてくだされれば

御学友になりますので無事御依頼は達成となります」


「んじゃ、その方向で」


 そして、今幼女と共に日当たりのよい部屋で授業を受けている。


「これはある戦場での包囲殲滅陣だそうです」


 メルは黒板に絵を描いた。


左翼        敵中央       敵右翼

(ペガサスナイト)(オーク及びトロル)(騎馬弓兵)

1000     2000       1000

↓          ↓         ↓



↑          ↑         ↑

左翼        中央         右翼   

(指揮官魔術師)(指揮官馬の骨冒険者)(指揮官一流剣士)

(魔術職)    (鎧歩兵)      (魔術職)

100      100        100   

        ↑

(後方に都市。人口5000)


「この条件で勝利してください」


 メルメイド先生が問題を出した。


「右と左が後ろに回り込んで完全包囲密集殲滅陣造ってくれるんじゃねーの?」


 時代の超える才能が。いや、次元すらも超越する才能がバルスにその言葉を言わせる。

 しかしこの世界を生きる凡人。アミーラは違った。


「相手は十倍。絶対に勝てん。みんなで逃げればよいのだっ!!」


「正解です!街の人に金目の物だけ持って逃げるように言いましょう」


 メルメイド先生は拍手した。


「えーさっき勝てって言ったじゃん」


 バルスはスマフォを弄りながら文句を言う。


「何も敵を全滅させることが勝利条件。とは言っていません。ようは街の人が助かればいいんです。今度は条件を少し変えてみましょうか」



左翼        敵中央       敵右翼

(指揮官不明)  (指揮官不明)   (指揮官不明)

(ペガサスナイト)(オーク及びトロル)(騎馬弓兵)

1000     2000       1000

↓          ↓         ↓



↑          ↑         ↑

左翼        中央         右翼   

(指揮官魔術師)(指揮官馬の骨冒険者)(指揮官一流剣士)

(魔術職)    (鎧歩兵)      (魔術職)

1000     1000       1000 


「今度は大丈夫じゃないか。数が同じくらいだし」


「そうですね。やがて戦況はこのような図に変貌します」


    左翼&右翼     

      ↓


左翼→  敵中央 ←右翼

      ↑

     タンク職


「なんだ。完璧な包囲殲滅陣ほういせんめつじんじゃないか」


「そうですね。但し敵中央はこうなっています」


 メルメイド先生はさらに黒板に書き加えた。


指揮官 ダークエルフ、ブレインイーター及び上位高等魔族

上空  ペガサスナイト、地上外周オークトロル、内部騎馬弓兵

陣形  防御円陣                      』


「なにこれ?」


「なにこれ、ではなかろう」


 隣の席に座るアミーラがバルスに突っ込む。


「人間の軍隊に指揮官がいるのだ。千匹単位の魔物の群れじゃぞ?そういう連中は頭の良いダークエルフとか高等魔族が仕切っておるに決まっておろう?」


「常識ですよね」


 メルメイド先生にとってもそれは当たり前の事である。


「常識だ。勇者ごっこをする子供でも理解しておるレベルの常識だぞ。バルス、お主まさか知らなかったのか?」


 アミーラは、何か可哀そうな物を見る目でバルスを見つめ始めた。


「そ、そんなわけないだろ?たくさんのオークやゴブリンをダークエルフや魔族が率いているのはどこの中世ヨーロッパ風ファンタジー異世界だって共通項だっ!!!」


 あわてて自分の持っている現代日本の知識を披露するバルスキツナ。


「まぁそういう事だな。相手に頭がいる以上、こちらもこうして勉強して知恵をつけねばな」


「ま、まて!そう慌てる時間じゃぁない。こちらより頭の悪い連中が、最初から指揮官のいない連中と戦っていたらどうなるんだ?」


 バルスが質問した。


「素晴らしい質問ですバルス様流石ですわバルス様。自分より頭の悪い連中と戦って勝利するなんて中々できる事ではありませんよ」


「それ本気で言ってんのかお前?」


「ええ本気も本気です。だってこうなりますから」


敵陣形 混成

組合わせ ゴブリン、ハーピー、スライム、オーク、トロル、ダークエルフ、ブレインイーター、コンドル、上位高等等魔族、その他多数の魔物がランダムで60種。合計5000体』


「なにそれ?」


「だから組合わせも強さも能力もバラバラの連中が一度に突っ込んでくるんですよ。なにしろ作戦を建てるお利口さんも指揮を執るリーダーシップのある人もいませんからね。頭の中身は全部バルス様以下です。きっと余裕で勝てますよ!!」


「ただし魔法は使ってくるし飛行やブレスの能力は当然使うがな」


 クラスメートのアミーラは、どうやらバルスより性格が悪いらしい。

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