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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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第七十六話 ナガレ! 料理する!

 一回目のエルシャスとの試合でピーチの問題点が浮き彫りになった。

 先ず、やはりピーチは元魔術師というだけあって近接戦闘では、思考を巡らすにあたり処理が追いついていない感がある。

 課題として魔術師的思考から戦士的思考に切り替えていく必要があるだろう。

 

 後は魔力の使い方だ。杖自体を強化し盾への変化も可能になったが、これだけでは足りない。

 思考を戦士型にするにしても、ピーチの身体能力は魔術師のそれだ。しかし肉体を変えるのは簡単ではないし、そもそも得策ではない。 

 彼女の可能性を支えているのはその類まれなる魔力操作にもあるからだ。

 そうなると、ここはやはりいちばんしっくり来るのは魔法戦士型か。

 そんな事を色々考えているとナガレも楽しくなってきてしまう。

 

 弟子は取らないと決めたナガレであるが、やはり才能あるものを育てる事には喜びを感じてしまうナガレである。


 そして――エルフの里滞在三日目。


「どや!」

「ま、まだまだよ!」

 

 例の空間で、ふたりの攻防が続いていた。

 エルシャスの棒術とピーチの杖術。互いが互いの技術を競い合い、打ち合い、そして高め合う。

 ナガレはエルマールにも話し、午前と昼と夕刻の三度、ピーチに試合をこなさせていた。

 勿論その合間にはナガレの指導も入る。

 この繰り返しで、ピーチの動きもかなりよくなり、全体を見る力と相手の動きを感じ取れる鋭い感覚も身に着けていた。


「なら、【旋転棒撃】や!」


 旋転棒撃――腰の回転と遠心力活かしたスキルで、初日にピーチが敗れた技でもある。

 それをピーチは、杖に魔力を込め盾に変え受け止める。

 しかし、これでは前回と同じ轍を踏むだけである。

 

 だが、今回ピーチはそれを少し角度をつけて受け止めた。

 そして、相手の攻撃をただ止めるのではなく、受け流す形、ナガレの合気にも通じる動きで相手の力を利用し、するりと前方に回転してそのまま着地した。 

 これであればエルシャスも反動を利用するわけに行かず、寧ろ受け流されたことで自身の放った勢いに流され、そこに一点の隙が生まれる。


「魔力変化! 伸びろ!」


 そしてピーチが、新たなスキルを披露。

 エルシャスとの距離はまだあったが、魔力を帯びたことでまるで杖自身が伸長したかのように魔力が伸びエルシャスに命中。

 今度は逆に彼女の方が森に向かって吹っ飛んでいった。


「やったわ! 前のお返し!」

「えぇピーチ、やりましたね。これでエルシャスも本当の力を見せてくれるでしょう」


 褒めるナガレだが、その言葉に、へ? と目を丸くさせるピーチである。


「全く気づいておらんかったのかのう? エルシャスが今まで見せていたのはただの棒術なのじゃ。精霊式棒術は――」

「まっ、こっからが本番ちゅう事やな」

 

 ガサガサと葉擦れ音を奏でながら、その靭やかな肢体が三回転、四回転、と宙を回り、そして再び試合場に復帰した。

 流石にピーチと違って気絶はしていない。


「う、うぅ、確かにそう言われてみればおかしいなとは思ったけど――」


「ほな! 精霊式棒術行くで! 【疾突】や!」


 エルマールも使用していた精霊同体のアビリティによって、エルシャスの身には既に風の精霊が宿っていた。

 それを活かした突きはまさに風の如く速さであり。


「次は【疾突(連)】や! どや! どや! どや!」


「きゃっ! ちょ、ま、きゃあああああああ!」


「ふむ、これでエルシャスの九勝〇敗なのじゃ。まだまだうちのエルシャスの方が圧倒的なのじゃ」


 ドヤ顔で言い放つエルマールだが、ナガレには気にする様子がない。

 以前は全く使わせる事がなかった精霊の力を、使わせた事が重要であったからだ。

 ピーチはこの短期間の間でも確実に力をつけてきている。






◇◆◇


「あ、お疲れ様です。終わったのですか?」


 試合が終わり戻ってきた一行を出迎えたのは、オーク族のイベリッコであった。

 そして――


「ピーチ、勝ッタカ?」

「負けたわよ見事に!」

「見事ニ負ケ越シ、モットガンバレ」

「うっさいわね! 言われなくても判ってるわよ!」


 他のオーク達の手痛い出迎えも受け不機嫌なピーチである。

 そして今オークが喋っているのは人間語だ。


 このオーク達、実はあの後エルフの里で一緒に暮らせる事に決まった。 

 どうやらあの時、オークが庇おうとした事でエルフも彼らを見なおしたらしく、それでエルマールなどにも願い出て提案し、イベリッコも含めて受け入れられる事になったのである。


 以前エルマールはナガレ達に、オークに子種を植え付けさせる為に捕まえようとしたと言っていたが、あれに関しては本当の理由を誤魔化す為にいっていただけであり、実はエルマールが長になってからはその慣習を守る気などさらさらなかったらしい。そもそもエルマール自身が、その掟が嫌で里を抜け出た事があるのに、他の皆にそれを強要するわけにも行かないという考えだったのだ。

 

 だから、そもそもからしてオークを無理やりという心配はなく、またエルフはエルフでナガレが来るまではオークなんかを受け入れるなんて嫌だ! と思っていたらしい。


 ただ、イベリッコが実はオーク族の標準の体型であった事、それと、エルフを身を挺して守ろうとした事などがあり、エルフもオークに興味を持ちだした事もたしかだ。

 

 なので意思疎通が取れないのも不便という事で、エルフからの願いでナガレが彼らに言葉を教え。

 更に効率的な減量法を教えたおかげで、イベリッコ以外のオークも大分スリムになってきていたりする。


 ちなみに、エルフやオークの間ではそれは既にナガレ式勉強法にナガレ式ダイエット法として囁かれていたりするが――

 それに関してはもうナガレは否定するのを諦めていたのだった。


「ふぇ~んナガレーーおなか減ったよ~~」

「ふむ、それはいい傾向ですね。最初は疲れに疲れて食いしん坊のピーチでも全く食事をとれませんでしたから」

「……ナガレってばたまにキツイ事言うわね」

「おお、丁度えぇな。なんや食料調達班が、森ブタと山ウシ狩ってきたみたいやし」


 エルシャスがそう言うので、興味が出てナガレ達は食材を見に行くが。


「これは確かに美味しそうですね。肉質も良さそうです」

「うむ、精霊の多い森では動物も伸び伸びと育つからのう。その分旨い肉に育つのじゃ」

「うぅ、見てたらお腹減ってきた。ねぇねぇ、これどうやって料理するの?」

「まぁやっぱ焼くのが定番やな。丸焼きか、串焼きって手も――」

「いえ、折角ブタとウシがあるわけですし、ここはハンバーグにしましょう」


 ハンバーグ? と全員の声が揃う。どうやらこの世界にはまだハンバーグが無いらしい。


「では、ここは私が作ってみても宜しいでしょうか?」

「え? ナガレってば料理できるの?」

「えぇ、特にハンバーグは得意ですよ」

「うむ、ナガレの作るハンバーグとやらに興味があるのじゃ!」

「僕タチハ、サラダデ」

「……あ、僕はハンバーグ食べてみたいですね」

「……ブタ肉タベルンダ」


 イベリッコは中々逞しい。


「それでは作っていきますね」

 

 こうしてナガレの料理が始まった。


「ナガレ、ナイフは?」

「必要ありませんね」


 そう言って、瞬きしてる間にブタとウシを見事に解体してしまうナガレ。

 勿論解体は合気だ。


「そしてひき肉にします」

 

 ナガレが肉を手に取り、軽く握りこむと既にひき肉になっていた。

 細かい指の動きで肉の分子を受け流し、そして返すことで分子の一つ一つがぶつかり合い見事な引き肉となったのである。


 そしてナガレは更にそこからひき肉を中心にして囲うように手をそえ、目にも留まらぬ速さで腕を動かし、肉の周辺を真空状態にしてしまう。

 そして合気による体温調整で低音で肉を焼いた後、直ぐに肉の温度を三度にまで下げた。

 本来真空調理には熟成などで時間が掛かるが、合気であれば全ての工程は一瞬で終わる。

 味付けは塩だけ。卵やパン粉なんてものは使わない。

 ナガレの合気で旨味アミノ酸は覚醒されるし、粘着剤なんてものは肉本来の脂を変化させ脂自身に粘着効果を持たせる事で解決する。

 これでハンバーグの形を整えられる上、余計なものが加わっていない肉本来の旨味を引き出した最高の天然ハンバーグが出来上がるのだ。


「ナガレよ、石の用意が出来たのじゃ~~」


 エルフの里にはフライパンがない。なので調度良い大きさの石を用意してもらった。

 エルマールにお礼を述べ、合気によって大気を高速で摺り合わせ、摩擦熱で石の温度を上げる。

 一〇〇度を超えないようにするのがポイントだ。

 ナガレがいれば高性能な調理器具など必要ない。

 なぜならナガレ自身が料理する機械のようなものだからだ。 

 神薙流合気料理術に隙はない。


 そして石の上に形を整えたタネを置いていく。低温でじっくり焼いていくと匂いがあたりに広がり、皆が恍惚な表情を浮かべ始めた。

 

 そしてその間にナガレは、余った肉を肉団子にして豆類と一緒に煮込む事でスープにし、更に野菜たっぷりサラダを完成させる。

 更にバンズも用意していた。

 これでハンバーガーも楽しむことが出来る。


 そして――


「完成しました」


 いつの間にかエルフの里全員がナガレを中心に集まっており、完成の知らせに喝采が置きた。

 そして里の中心に特別に用意された木製のテーブルに料理を並べていく。


「なんで妾の前にはサラダが一杯なのじゃーーーー!」

「エルマール。ちゃんと野菜も食べないと駄目ですよ」


 ナガレは栄養管理にも厳しいのである。

 何はともあれ。


「う~んこれがハンバーグ。肉が解けていくみたい~肉汁もジュワ~っと染みだしてきて最高! ナガレってばすごすぎ!」

「コノ、ナガレ式サラダ、オイシイ」

「肉団子の入ったスープも最高やで!」

「ハンバーグをパンに挟めて食べるとこんなに美味しいなんて! 僕、びっくりです!」


 ナガレの料理に皆が舌鼓を打つ。ピーチも今日の疲れは吹っ飛んでしまったようだ。


(ピーチも頑張ってますからね。ご褒美になるかはわかりませんが――)


 そして皆の喜ぶ姿を笑顔で見守るナガレであった――

折角なのでエルシャスのステータスです。

ステータス

名前:エルシャス

年齢:??歳

性別:♀

称号:棒使いの戦闘民族

レベル:38

生命力:898/898

魔力 :760/760

攻撃力:725

防御力:656

敏捷力:858

魔導力:624

魔抗力:635


アビリティ

精霊式棒術(達人級)・精霊魔法行使・精霊力強化(効果・中)・魔力変換(効果・中)・精霊魔法強化(効果・中)・俊敏(効果・大)・棒強化(効果・大)・精霊同体(風)

スキル

疾風脚・飛脚・旋転棒撃・旋転暴風撃・疾突・疾突(連)・双風棒嵐覇



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