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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第四章 ナガレ激闘編

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閑話其の十五 最悪の男

今回の閑話はこれで終わりです。

次から本編再開となります。

復讐回です。

見る人によっては胸糞の悪くなる描写があります、苦手な方はご注意下さい。


 不敵な笑みをこぼす勝人に警戒し、サトルは周囲に気を張るが、その時、数本の矢が風を切りサトルへと命中した。

 先ほど血入りの瓶を割ったのと同じ女が射った矢が命中したのだ。

 だが――その矢はサトルの鎧に傷一つ付ける事なくポキリと折れ、次々と地面に落ちていった。

 

「……おいおい、まさかこれが切り札か?」

「馬鹿が! 奴隷はまだいるんだよ!」


 すると今度は犬耳を生やした別な女が疾駆し、サトルに向けてナイフを振るってくる。

 それを、チッ――と舌打ちしながら避けるサトルであったが……。


「いけ! ぶっ殺せ!」


 勝人が張り上げた声で、何を思ったのか女はサトルの鎧に抱きついてくる。

 

「おい! どういうつもりだ? 離せ!」

 

 そしてサトルはなんとか女を引き剥がそうとするが――


「ははっ、これで終わりだサトル」


 勝人からの死の宣告、刹那――激しい光と耳をつんざくような轟音が辺りに鳴り響いた。

 爆風が周囲の木々をミシミシと揺らし、サトルとレオナードのいた地点には黒煙がもうもうと立ち昇り、地面がすり鉢状に抉られていた。


 女がサトルとレオナードの命を立つ為に自爆したのだ。


「――全く、サトルの馬鹿のせいで奴隷一つ無駄にしちまったぜ」

 

 頭を掻き、目を眇め、うんざりだといった様子で勝人はそんな事を吐き捨てるように言った。

 女の死を悲しむ様子は無い。せいぜい役に立つ道具を一つ消費した程度の言い草である。


「……奴隷が自爆するなんてスキルをテメェは持っちゃいなかった。つまりこれは道具、恐らく爆発の効果のある魔道具を仕込んでおいたってところか――」


 しかし煙の中から発せられた声。薄れていく黒煙に映る二つのシルエット。

 それが勝人を狼狽させた。恐らく彼にとってはまさにこれは切り札。

 絶対に始末することが出来ると思ってやらせた事なのだろう。


 だが、完全に霧散した直後には、全くダメージを受けていないサトルとレオナードの姿。

 

「……木っ端微塵かよ。やっぱテメェは心底胸糞悪くなる野郎だな」


 サトルが吐き捨てるように言うと、勝人は悔しそうに唇を噛みしめる。


「糞が! 無駄に奴隷を消費しちまったじゃねぇか!」

「……道具としか見てないって事か。全く復讐がいのある奴だよテメェ――は!」


 サトルが大地へと剣を突き立てた。その瞬間地面が爆散し土煙が舞い上がる。

 決して才能があるといえない剣の腕でしか無いサトルだが、それでも剣の威力に頼ればこれぐらいの事は出来る。


 そしてサトルの影が一気に距離を詰め、勝人の首を狙おうとするが。


「――ッ!?」


 勝人とサトルの間に獣人奴隷が壁となり並ぶ。それに思わず戸惑うサトル。

 すると獣人の一人が持っていた剣をサトルに向けて振りかざした。

 その姿を認め、再度サトルはバックステップで距離を置く。


「――アハッ! ハハハハッ! やっぱりだ! 肉の壁作戦大成功だぜ!」

「…………」


 楽しそうにゲラゲラ笑う勝人を睨み据えながら、サトルは押し黙った。


「くっ、全くあまちゃんだなテメェは。さっきの人間爆弾、いや獣人爆弾か! あの時に攻撃しなかったお前を見てもしかしたらと思ったら案の定だ。テメェは俺に復讐したくてたまらねぇようだけどな。俺以外は傷つけたくないとも思ってるんだろ? だからこういうのに躊躇っちまうんだよな~?」

「…………」

「何も言えないって事は図星か? そうだろ? でもな、だったらお前は俺に勝てないぜ。こいつらは俺に絶対服従の奴隷だ。俺の血の効果でそれは変わらない。俺のためなら命だって投げ出す! いくらでも盾になる!」


「……いいたいことはそれだけか? そんな事で強がってるなら大間違いだ。別にやろうと思えば――」

「確かに、もしかしたら今のお前なら壁をすり抜けて死角を狙うぐらいの事はしてきそうだな。でもそれはやめておいた方がいいと忠告しておくぜ。何せ俺とこいつらは一蓮托生、一心同体。まぁこいつらが死んでも俺はなんともないが――」


 そこまで言った後、不敵なそれでいて醜悪な笑みを浮かべ。


「俺が死んだ場合、問答無用で奴隷も死ぬ。これはそういう契約だ。おっと、強制的に契約を解こうとしても無駄だぜ。俺の能力は隷属化は出来ても解除は出来ない。一方通行なスキルなのさ。まあ俺は奴隷を解除する気なんてないからどうでもいいんだけどな」


「…………」


 サトルは改めて勝人の前に並ぶ獣人達をみやる。

 全員、その目に生気は感じられず、魂が抜けたようになっていた。

 彼女たちは勝人の血が付着した時点で、個としての自由は奪われ、生涯この、愚かなる主の肉人形として生涯を全うしなければいけない。


「まあ、そういうわけでだ。俺はこの戦い――」


 哀れな四人の獣人少女達を見つめ、沈黙を続けるサトルに勝人はそこまでいい一拍置いて。


「素直に負けを認めるぜ。良かったなサトル、お前の勝ちだ。これでお前の復讐も遂げられただろう?」


 そんな事を宣った。

 当然サトルも仮面(フルフェイス)の中で表情を曇らせ、何? と反問する。


「言ったとおりだよ。お前、俺の鼻を明かしたかったんだろ? それなら成功だ。何せ俺にお前は勝てないだろうが、俺も勝てない。だからここは負けておいてやるよ。それにしても全く驚いた。あの奴隷の、いや、まぁとにかくあのサトルがこんなに強いなんてな。きっとその強さがあればお前の復讐は成功するよ。俺はここでこの奴隷たちを連れて引き上げるが、陰ながら応援してるぜ」

「ふざけるな!」


 サトルの怒声が勝人の耳朶を打つ。だが、彼に怯む様子は感じられない。


「おいおい何を熱くなってるんだよ? まさか俺が過去に奴隷扱いした事を怒っているのか? もういいだろ、昔の事だ。忘れろって。それにお前の事を尤も虐めてきたのはあの陸海空だろ? どうせならそっちを狙えよ。俺は雌奴隷つれて適当に生きていければそれでいいんだよ。それにお前のおかげで俺は奴隷を一つ失ったんだ。痛み分けだろ? 俺は十分お前に復讐されたよ」


「……お前が、お前がそれを決めるな――」

「おいおいだったらどうするってんだよ? 今も言ったろう? この能力を受けた人間は俺が死ぬと一緒に死ぬんだ。つまり俺を殺すということは――」


――ドサッ、ドサッ、ドサッ、ドサッ。


 その音は丁度四回、勝人の耳に鳴り響いた。


「え?」


 思わず間の抜けた表情で疑問の声を発す。一瞬その身が固まり、そしてゆっくりと視線を落とした。

 そこには、今まで彼が肉壁としていた奴隷たちが転がっていた。

 一様に眉間が穿たれていた。確実に仕留める一撃だっただろう。全員的確に脳を貫かれているのだ。


「お、おいおいおいおいおい! 嘘だろ!」

「お前は――何を勘違いしているんだ?」


 槍状となり、伸長した翼を元に戻しながら、サトルは問う。


「テメェ! 自分で何をしたのか判っているのか!?」

「俺は別にお前たちと勝ち負けを競うゲームをやっているわけじゃない。俺にとって大事なのはテメェらに復讐して地獄に叩き落す、それだけだ」

「だからってテメェ! こいつらはお前の復讐と関係ないだろうが!」

「……だからなんだ? どちらにしても助からない命だ。だったらせめて一思いにやったほうがいいだろ? この女達だってテメェみたいな糞野郎と無理やり心中するよりはまだいいだろ。まぁこれは俺の勝手な解釈だが――どちらにしてもテメェを殺る上では障害だ。だから排除した、それだけだ」


 そこまで言って、さて、と息を整え。


「これで邪魔者はいなくなったな」

「ヒッ! 狂ってる! てめぇ……狂ってるよ!」

  

 短い悲鳴を上げ、勝人は迫る恐怖に耐え切れず背中を見せ逃亡を試みるが。


「逃がすわけねぇだろうが!」


 悪魔の翅によって滑走し、サトルは瞬時に獲物の進行方向に先回りすると、その剣を振るい先ず両足を切断した。


「グギャッ!」


 惨めな悲鳴を上げ、勝人がべちゃっと地面に顔を打ちごろごろと転がった。

 サトルの腕でも、臆した相手を切り刻むぐらいは難しいことではない。


「ひ~、ひ~ッ!」


 涙を流し、情けない声を上げ、地面を這いつくばり、土を舐め、それでもなんとか逃れようとする見苦しい獲物の背中を、サトルが怨嗟を込めて踏みつける。


「ギェブっ! い、嫌だ! も、もう許してくれよサトルぅ、謝るよ、なんでもするよ、だから――」

「……惨めだな。だがまだ終わらせねぇよ」

 

 サトルの意思に呼応するように翅が変化し、鉤爪状に変化したそれで勝人の腰を挟み込み、泣き叫ぼうが構うことなくその肉を後方に放り投げた。


 再び地面を転がり、そして自身が奴隷にしていた獣人の遺体の近くまで戻される。

 するとサトルも地を蹴りつけ、一瞬にして勝人の目の前に着地した。


「お、お願いだよサトルぅうぅう、もう許してくれよぉぉお、俺が悪かったよ、なんでもするよ。体中痛いんだよぉおお、そ、そうだ! 俺と組まないか? お、俺の力はきっと奴らを復讐するのに役立つ! だ、だから!」


「……そんなに許して欲しいのか?」

「ほしい! し、死にたくねぇんだよ俺は! だから――」

「そうか、だったらお前は今から俺の奴隷だ、文句ないな?」


 勝人は、え? と一瞬目を見開くが、すぐに顎を何度も上下させ。


「わ、判った! それでいい! だから――」

「そうか、だったら先ず」


 サトルは勝人の返事など最後まで聞かず、まだ消えていない魔物の死体の一部を大きめに切り取った。


「これを食え」

「え? こ、これをか?」

「いいから食え! この奴隷が!」

 

 サトルは問答無用で、禍々しい色をした魔物の肉を勝人の口に突っ込み無理やり咀嚼させた。

 魔物の肉は酷くまずい。普通ならとても食べられない残飯のような味がする。


「う、ぐぇ、ま、マズぃ……」


 涙する勝人に構うことなくどんどん口の中に魔物肉を放り込み、最後には喉奥に無理やり捩じ込んだ。


「ゲホッ! ゲホッゲホッ! こ、これで満足か?」

「この翼の刺し心地が知りたいな」

「え?」

「そうだ、胸に七つの傷なんていいんじゃないか?」

「お、おいまさか――」


 その直後、鋭く変化した翼の尖端で勝人の肉を抉る。


「ぎぃいいぃいい! 痛い! 痛い! あ、があぁああぁあ!」


「おっと間違って十四も抉ってしまったな。さて、焼鏝は、流石にないからな……まぁいい。レオナード、お前の炎の魔法で死なない程度に焼いてやってくれ」

「な……お前何言って、あ"ア"ヅィイイぃい! ひぃいぃいい肌がーーーー! 肌が焼けるーーーー!」

「ミディアムで頼むぞ」


 サトルが命じるとコクリと頷き、勝人の身体をいい感じに焦がしていく。勿論死なない程度にだ。


「さてっと、いでよ悪魔の書第四十二位ネクロス」


 サトルが唱えると悪魔の書から新たな悪魔が生み出される。

 黒いローブに身を包まれ、フードの下には顔の半分が骨、半分は腐りかけという不気味な様相の悪魔。


「さて、もういいぞレオナード」

 

 サトルが命じると炎の魔法を行使するのをやめ、すっかりいい色になった勝人からは焦げた肉の嫌な匂いが漂ってきた。

 あまりの臭気に思わずサトルも顔を顰めるが。


「ネクロス頼む」


 サトルが願うと、ネクロスは一つ頷き、獣耳を生やした少女の遺体に向けて何かを唱える。

 すると、黒い靄が少女たちを包み込み、そして――死んだ筈の彼女たちの目が見開かれた。


 アンデッドとして蘇ったのである。

 そしてゆっくりと立ち上がり、一様に勝人に向けて歩みだす。


「あ、あ"ァ"、これ以上、な、に、を、あ、あズぃ、いだィ――」


「勝人、これが奴隷に成り果てたお前への最後の命令だ。この女達に――喰われろ」


「え"?」


 痛みと熱で既に立ち上がることすらままならない勝人は、サトルの発した最期の命令に剥き出しの眼球を見開いた。

 そんな彼を取り囲むは、彼が無理やり奴隷としていた少女たち。 


 そんな彼女たちが、地面に這い蹲るような格好になったかと思えば――モシャモシャといい具合に焼き上がった肉を食し始める。


「あ"、ギィいいぃいイィイ、が、ア"ァ"ア"あ"あ"ア"ァ"ア"ァ"ア"!」


 指が腕が、腹が、内臓が、少しずつ少しずつ、アンデッドと化した元奴隷の手により貪られていく。

 勿論簡単に死ぬことはサトルが許さない。だからギリギリで死なない程度に少しでも苦痛を長く味合わせる順番で、食人行為を繰り返させる。


「あひゃ、あはっ、あははははっ! ぐわでてるぅうう! おでのかだら、ぐわれでるぅうう! アハッ、ギャハハッハハハハ――」


「おいおいもう狂ったのか。だがそんな事で現実逃避するなんざ俺が許すわけ無いだろ。レオナード、正気に戻せ」


 サトルの命じるまま、レオナードは精神を弄る魔法を唱え、勝人の正気を取り戻した。


「え? ひぃ! 嫌だぁああぁあああ! 生きたまま喰われるなんて! あぁああ、いでぇ! いでぇよぉおおぉお! 畜生ーーーーーー!」


 泣き叫ぶ勝人の様子を冷笑を浮かべ眺めつづけるサトル。

 そして今度はネクロスに顔を向け。


「簡単に殺したんでは面白く無い。痛覚を残したまま、アンデッド化は出来るか? 頭を喰らうまでは生かしておきたい」

「カノウダ」

「そうか頼む」


 首肯し、ネクロスは今度は勝人に向けて魔法を唱える。

 すると今度は勝人の身に黒い靄が集まり、そして勝人は簡単には死ななくなった。


「これで良しと。良かったな勝人、お前の好きな奴隷に食べられて、これでお前も本望だろうよ」


「い"嫌だぁああぁああ! ごんなの、嫌だあぁあ"ぁ"ぁ"ア"ァ"ア"アァ"ア"ア"~~~~!」


 それから――勝人の首から下がなくなり、頭蓋が割られ、その中身が貪り食われる最後の一片まで、絶叫は鳴り響き続けた――





「これで、いいか――」


 レオナードの魔法の力で五人分の墓穴を用意し、サトルは独りごちる。


『お前の復讐の犠牲になった少女たちの墓か。随分と気が利くではないか、お優しいことだ』

「……別にそんなんじゃないさ」


 そういいながらも、サトルはアンデッド化を解いた少女の遺体を四体、即席の穴に収めた。

 一つは粉微塵に吹き飛んでしまった為、どうしようもなかったが。


(……復讐が終わったら俺もすぐに逝ってやる。だから、恨みたいなら好きに恨めよ――)


 サトルはそう心で訴え、そしてレオナードに頼み遺体を埋めた。


『……随分と物憂げではないか。まさか復讐が嫌になったとでも言うまいな?』

「馬鹿言うな。寧ろ更にその気持ちは強まってるさ。……大体、何の犠牲も払わず復讐を遂げようなんて、甘い考えでしか無いだろう」

『なるほどのう。しかしそれでもお主は最初迷っていたのだろう? 鑑定であの女達がどういう状態にあるか判っていたはずであるからな。覚悟が決まっていたなら、最初から殺しに掛かっていただろう』

「……それは、否定しないさ。だが、もう迷いは断ち切れた」

『……くくっ、そうか。そうでなければな。それでこそ我が選んだ甲斐があるというもの』

 

 サトルはそれには何も応えず、そのままその場を去ろうとしたが、その時、一体の悪魔、グレーターデーモンがサトルの前まで飛来してきた。


「お前は、あいつらへの襲撃を命じていたはずだが――どうかしたのか?」


 サトルは、このグレーターデーモンも含め、複数のガーゴイルとレッサーデーモンなどに辺境近くの街に向かうよう命じていた。


 西島から得た情報で、召喚されたクラスメートの中には待機組といって狩りや迷宮探索などには参加せず、帝国の庇護の元、街の中で大人しく過ごしている者がいる事を知った。

 サトルとしては、勿論そんな連中も復讐対象ではあったのだが、その方向がメインの標的の向かっている方角とは逆方向であったこと。

 そして、待機組と称される連中は、直接虐めには参加していない生徒ばかりだったという事もあり。

 

 しかしかといって、虐めにあっていたサトルへ見て見ぬふりをし、傍観を続けた連中を許すという選択肢もサトルにはあり得ない事であった。


 だから、サトルは別働隊として複数の悪魔を召喚し、待機組を襲うよう命じたのである。

 直接その光景を目にできないのは残念でもあるが、幸いデビルミラーの力があれば、悪魔たちが戻ってきた後でも連中がどんな最期を遂げたかは確認することが出来る。


 だから、サトルは一瞬、もしかしてもう片がついたのか? と考えたりもしたが――しかし戻ってきたのはグレーターデーモン一体というのが気になり、確認したのだが。


『街ノ守リ厳重、見ツカラズ任務遂行困難』


 どうやら帝国兵の守りは思ったより固かったようだ。

 報告では実力的には向かった悪魔たちで問題ないが、対象だけを狙うとなると厳しいという事であり。

 そこでサトルは顎を押さえ黙考する。

 こういう時レオナードの擬態魔法が施せれば便利なのだが、残念ながら魔法には持続時間というものが存在する。

 ここから待機組の滞在する街までは悪魔の機動力でもそれなりの時間は掛かるので、とても持たない。


 かと言って、一体しか召喚できないレオナードを向かわせるのはあまりに勿体無い。


「……仕方ないか。ならば任務遂行の障害になるようであればそれは排除して構わない」

『…………』

「それと、そうだなこの作戦の現場指揮はお前に一任する。後はお前の判断で上手くやってくれ」

『……判ッタ、拝命スル、必ズ、ヤリ遂ゲル』


 サトルが頼んだぞ、と伝えると、グレーターデーモンは威勢よく一仰ぎし、再び目的の街へと飛び立っていった。


『ふむ、良かったであるか?』

「……別に問題はないだろう。甘いことは言っていられないんだしな。それに実力で言えば待機組は軒並みステータスもレベルも低いという話だしな。あの悪魔たちに任せておけば大丈夫だろう」


『なるほどな。しかし実際大したものであるな。これだけの悪魔を一度に召喚しながら平然としておるのだから』


 サトルは、そりゃどうも、とだけ返し、だが心のなかではまだ足りないと思ってもいた。

 特に勇者の称号を持つ正義を殺すなら、更に上の悪魔を召喚できなければ――

 

 だからこそサトルは更なるレベルアップの為、そして次の獲物(・・)を狙うため、再び歩み出す。

 

 断罪すべきクラスメートは残り――一九。

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