閑話 其の一〇 下衆女
復讐シーンあり。
残酷表現あり。
女の子が酷い目にあいます。
苦手な方はご注意下さい。
『ちょっとあんた! 今私の胸をガン見してたでしょ! まじキモイんだけど! あんたのせいで私のこの身体が汚れちゃったじゃない! ねぇ先生、こいつ最低だと思いません? 屑でグズでクラスの最底辺のゴミ野郎の癖に』
『おいおい穂乃果、いくらなんでもいいすぎだろ。クラスの汚物だなんてな』
『でも~私視姦されちゃったんですよ~? 汚されちゃった~』
『う~んサトルが穂乃果を嫌らしい目で視て、胸を揉んできたなんてそれは穂乃果の勘違いじゃないのか~?』
最後の西島の発言は、敢えてクラス中に響き渡るほどの大声でなされたものだった。
するとそれを聞いた生徒達がなんだなんだと集まってくる。
サトルからしてみれば、ふたりがいつも行う茶番のようなやり取りであり。
『おいおいサトル君、クラスメートに痴漢行為とは白昼堂々随分と大胆じゃないか』
『てかサトルってサイテー。本当さっさと死ねばいいのに』
『全くテメェのせいでクラスの雰囲気が悪くなるじゃねぇか! 判ってんのかこら!』
『てか俺知ってるぜ。こいつ授業中も穂乃果の胸ばっか視てんだよ。ニヤニヤしてマジキモイぜ』
『これはお仕置きが必要だな――』
こんなろくでもないやり取りを聞かされた後、西島や穂乃果が見ている前でサトルはクラスメート(主に二ーAの陸海空と呼ばれる三人)から言われのない暴力を受け続ける事となった。
こんな事が一体何度あったか――そしてクラスの連中からボロボロになるまで弄ばれ続けるサトルを見ながら、西島も穂乃果も楽しそうに笑っていた。
サトルは未だにベッドで気持ちよさそうに眠る百島の顔を見ながら、そんな事を思い出していた。
時折聞こえる、先生大好き、という寝言にふつふつと殺意が芽生えてくる。
その両の手にはそれぞれ、部屋の中で見つけた小さなナイフが握られていた。
それを持ったまま器用に布団を捲り上げる。
「う、う~ん」
うまい具合に百島が仰向けになってくれた。生まれたままの姿である女の、下品な胸がサトルの眼に飛び込んでくる。
当時、サトルは毎日執拗に繰り返される虐めに耐え忍ぶ事だけで精一杯だった。
学校にいても精神の落ち着く暇なんてなかった。
そんなサトルが、ただデカイだけのこんな駄肉をみて欲情するわけもなかった。
にも関わらず、この女はサトルを変態と、痴漢と、罵ったのだ。西島に媚びるように教室の連中に訴えるように――
そんな百島に慈悲など、ない。
「おい、いい加減起きろ、この売女が!」
叫びあげ、サトルは左右の乳房へとそのナイフを振り下ろした。
左右からの一撃は、胸の脂肪を刳り躊躇なく奥へ奥へと侵入していく。
「え? ひ、ひゅぎぃいいいぃいぃいいぃい! 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛いぃいぃい! あぁああぁあ!」
「やっと起きたか。ふん、全く喧しい女だ」
侮蔑の表情で百島を見下ろし、更に駄肉を刳りめり込んだナイフでグリグリと掻き乱す。
「あ、あぎぃい! あ、あ"ぁ"あ"ぁ"ア"ア"ア"ア"ァ"ア"ア"ァ"ア"ア"ーーーーーー!」
叫び声が部屋内に乱れ飛ぶ。これだけの大声を上げれば周囲の村人に気づかれそうなものだが、そのへんに抜かりはない。
入り口近くに立っているのは悪魔の書第三十三位レオナードだ。
黒山羊の頭を持ち人に近い四肢を有す。全身が黒毛で覆われているが、その身に同じく黒のローブを羽織る頭の良い悪魔だ。
細長い六本の指で先端が渦巻状の木製の杖を持つ。この悪魔はあらゆる魔法に精通している為、この部屋内には魔道第八門風術式サイレントを施している。
これは大気を操作し、範囲外に一切音を漏らさない魔法だ。
魔法はそのランクが門で表され第一門から第十二門まで存在し、最も取得が難しいのは第一門である。
一般的な魔道門以外にも聖道門などその種類は多いが、天道門や神道門、その他特殊な門を除くと、例えば一般的な魔術師であれば第七門まであけるのが精一杯であり第八門や第七門まで開けられれば上級魔術師扱い、しかし大抵の魔術師は第九門程度を開けられれば上等だ。
第七門から先を開けられれば魔導師級とされ尊敬される存在に、第三門から先を開けられれば大魔導師と崇められる。
そしてサトルが使役し悪魔、レオナードは悪魔の中の魔導師的役割を担う。
だからこそ、この程度の風魔法は悠々と行使できるわけである。
「痛いか? 苦しいか? ははっ、全く、ザマァねぇな」
嘲笑い、喜色を浮かべる。そして一旦抉る手を止めると、涙を流しながら百島がサトルを睨めつけた。
「あんた、サ、サトル! どうしてここ、ギヒィ!」
再び刃を捻り込む。馬鹿みたいに繰り返される質問に辟易していたからだ。
「そんな頭の悪い問いに答え続ける程俺も暇じゃねぇんだよ。お前は俺が復讐に来たということだけ理解すればそれでいい。後は精々心地よい悲鳴を上げ続けてくれや」
「う、ぐぅ、あ、あんたこんな事して先生が、勇が黙ってないわよ!」
随分と強気な台詞を吐く。だがその言葉がサトルにはおかしくて仕方なかった。
「お前は本当に馬鹿だな。さっきまで一緒に仲良く寝てたあいつがいなくなってるんだぞ? それでなんとなく察するだろ普通」
「ま、まさかあんた! 先生を!」
その反応に、くくっ、と忍び笑いを見せ。
「まだ殺してねぇよ。全くおめでたいな。お前はあいつに捨てられたんだよ」
目を見張る。ワナワナと肩を震わせる。そして、嘘……嘘、と呟きを繰り返す。
「まぁ、そういうわけだ。どうする? 命乞いでもするか?」
「……だ、誰があんたみたいな屑に! この痴漢の変態猟奇糞野郎が! 私は信じない! 捨てられたなんて!」
この状況に置いて、全く態度の変わらない事が逆にサトルには嬉しかった。
そうでなければ面白く無い。
「何を笑ってるのよキモい! 大体あんたなんて! 怖くないんだから! ファブ・バスト・パイ――」
「おっと、悪いけどそうは問屋が卸さないってな」
「むぐぅ!?」
サトルが顎をしゃくると、触手が一本伸び、百島の口を塞いだ。
レオナードと別に使役しておいた第二八〇位イビルローパーの所業だ。
この悪魔は巨大なイソギンチャクといった見た目の悪魔で、身体から生えた触手を操り獲物を捕らえたり攻めに利用したりする。
「お前のスキルは判ってる。炎の魔導師の称号を持ってたしな。相手を燃やすのが好きなのか? 全くベッドで火照るだけじゃなく、戦いにも火を利用するなんてな」
「ふごぉ! うぐぉおぉおお! ふごぉおおおぉお!」
口を触手で塞がれ、手足もやはり触手によって自由を奪われる。
その身を捩らせ、必死に振り解こうとするが、魔法系のステータスではこの触手から逃れるのは不可能である。
「お~お~、凄い形相だな。だけどな、お前の攻撃手段は魔法だけ。詠唱も口にできず、術式も刻めない今の状態じゃ手立てなしだろ?」
「むぐぅ、うぉぐぉお、おぐぉ」
サトルの台詞を聞き、涙目で何かを訴える百島。
「なんだ随分と大人しくなったな。涙まで浮かべて、お前でもそんな顔が出来るんだな。だが、安心しな、お前にピッタリの面白い方法があるんだ」
そういってほくそ笑みながら、サトルはその大きな乳房に突き刺さった左右のナイフを抜く。
百島の顔が苦悶に歪んだ。
そして間髪入れず、ローパの触手が穿かれた乳房の傷口に潜り込んでいく。
「ごぉ!?」
「おいおいそんな顔するなって。これはお前にとってもいいことなんだぜ。何せこのローパは触手を通して相手に魔力を注ぐことが可能でな……」
そこまで口にした後、やれイビルローパ、とサトルが命じると、傷口に潜り込んだ触手が青白く輝きだし、ドクドクとポンプのような動きで百島の胸に魔力を注ぎ込んでいく。
「くくっ、ついでに言うとな百島。この魔力は少々特殊で注いだ先から膨張していく性質があってな~それがつまりどういう事かというと――」
「ぐぉ! おおぉおおおおぉお!」
突如百島が目を見開き、自分の胸を凝視した。
ローパから注がれる魔力は膨張する――それを胸に注いでいるわけだ。
つまり、今彼女の胸はどんどんと膨れ上がって言っている。
まるでイースト菌をたっぷり含んだパンの如く勢いだ。
「はははははっ! 凄いじゃないか! どうだ? 嬉しいだろう? 自慢の巨乳だもんな! 教室でもいつも自慢していただろ? 西島もこれで誘惑したんだろ? その胸が、どんどんどんどん大きくなっているんだ。ははっ、見ろよ、もう倍ぐらいまで膨らんできてるぞ」
「うぐぅ! ふご、ふごぉおーーーー!」
「そうかそうか、そんなに嬉しいか。俺もわざわざナイフでお前の下品な乳を抉った甲斐があるよ。ただな、残念なお知らせだ――」
そこまで言い、ニヤリと口角を吊り上げ。
「お前のこの状態ってのは、ようは風船と同じだ。つまりてめぇの下品なゴム乳にたっぷり空気を入れてるようなもの。だが当然それには限界がある」
「うぐぁ、が、あぁ」
百島の表情が段々と苦しそうなものに変わっていく。
そんな彼女の自慢の胸は既に上半身が隠れるほどに、つまりほぼ限界にまで魔力が注がれている状態だ。
だが、それでも構わず触手からソレは注がれ続け――そして遂に。
――パァアァアアアアアァアアァアアァン!
まさに大量に空気を送り込んだ風船のごとく、盛大な破裂音を響かせ、百島自慢の巨乳が派手に吹き飛んだ。
血飛沫が飛び散り、バラバラになった駄肉の欠片が辺りに散らばる。
しかしサトルに汚れた様子はない。悪魔の魔導師レオナードによって行使されたエアロアーマーによって、サトルに降り注がれた血潮や肉片は全て弾かれたからだ。
「……まだ生きてるとは中々しぶといな」
自慢の乳房が見事に弾け飛び、まな板よりも酷い状態になっている百島を見下ろしながら、サトルは呟くように言った。
ただ、生きていると言ってもまだ呼吸が続いているといった程度であり、虫の息なのは間違いがない。
「だが丁度いいな。西島にいい土産が出来た」
サトルはポッカリと穴が空いたような状態になっている百島の胸部を認めながら口にし、そして、トクトク、と弱々しい鼓動を奏でるそれへと手を伸ばした。
「あ"がァ、ぐ、る、じ、ぃ」
そして剥き身の心臓を鷲掴みにし、ぎゅぅうぅううと握りしめ、その最期の反応を楽しむ。
「……これは、お前が俺を馬鹿にし、屑連中の虐めに加担した罰だ。判ったら、惨めに、死ね!」
気色を滲ませ、声に怒気を込め、そして――サトルは百島の心臓を無理やり引っこ抜く。
ブチブチという嫌な音と百島の最期の絶叫が耳朶を打った。
絶命した下衆な女の眼は見開かれ、鼻や口からは血混じりの液体を、締りの悪い下半身からは糞尿を垂れ流していた。
それはあまりに無様で醜い最期だった。
「男に媚びるしか脳のない下品な屑にはお似合いの死に様だな」
サトルはそう言い残すと踵を返し、そして悪魔の力を借りて村を出て、その足で南の森へと急いだのだった――
今回の閑話は次が最後、その後から新章として本編再開です。




