第十話 フレムとバットの再戦
「バッドと呼ばれるのは絶対に嫌なのだよ。この勝負は負けられないのだよ!」
フレムと対峙するバットが真剣な顔でいい切った。それを聞いたフレムが眉を顰める。
「お前の怒るポイントがわからねぇよ。何だ受け流せばいいのか?」
「わけのわからないことを言うのはやめるのだよ!」
「あーもういいからさっさとかかってこいよ!」
フレムが面倒くさそうに言うとバッドが地を蹴り跳躍した。
「言われるまでもないのだよ! 行くのだよ!」
跳躍したバットのマントが変化し伸縮する棘となりフレムに迫った。
「はん。それも蝙蝠だろう!」
フレムが双剣を構えると刃に冷気がまとわりつく。
「氷双凍剣!」
バットの棘を回避しながら剣撃を叩き込んでいく。棘に見えたそれは散り散りになり凍った蝙蝠が地面に倒れた。
バットは蝙蝠を自在に操る。マントも蝙蝠が擬態したものであり、命令次第では蝙蝠自体が武器に変わる。
だがそれが蝙蝠であることに変わりはなく、フレムの凍える攻撃には弱い。それが前回の戦いのバットの敗因でもあった。
「前回と何も変わらねぇな。お前の操っているのが蝙蝠のままなら負けはねぇぜ」
「バカにするななのだよ!」
バットが叫んだ瞬間大量の蝙蝠が一斉にフレムに襲いかかってきた。
「数でゴリ押せば何とかなるってか? 甘いぜ――」
フレムが大きく息を吐き出し双剣を交差させる。
「氷双凍剣・零霧!」
叫び双剣を振り回すと絶対零度にまで下がった霧が爆発的に広がった。飛びかかってきた蝙蝠がバタバタと地面に落ちていく。
「これで決まりだな。結局前と変わらなかったわけだ」
フレムが勝ちを確信したように言い放った。今の技は以前バットを倒した時に使用した技でもある。
「確かに前と同じならこれで決まりのようだな」
フレムの言葉にエグゼが頷く。だがその口調はどこか楽しげだ。まるでこうなることを予想しているかのようだった。
「しかし、今回はお前の負けだな」
エグゼがそう言い放つ。フレムが怪訝そうに眉を顰めた。
「は? 何言ってるんだおま、え?」
フレムの膝が崩れた。フレム自身何が起きたか理解できていない。
「ど、どうなって――」
ふと、フレムが自分の首元を確認した。そこにいたのだ一匹の青白い蝙蝠が。
「な、いつのま、に――」
そのままフレムが傾倒する。意識はあるようだが身動きはとれないようだ。
「これがお前の弱さだ。お前の強さにはムラがある。特に相手を侮っている時には顕著だな。だからさっきの連中と同じようにこんな手に引っかかる」
エグゼがそうフレムに説明した。それがまさにフレムの弱点だと言わんばかりだ。
「く、くそ、でも、なんでだ」
身動きはとれずとも何とか口は動くようだ。フレムが疑問を口にする。
「お前は馬鹿か? なのだよ。以前やられたまま対策を取らないわけがないのだよ。今の蝙蝠は寒さに強い変異種。お前の技にも耐えられる程の、なのだよ」
「く、くそ、そんな手で」
エグゼの回答にフレムは奥歯を噛み締めた。そうとう悔しそうだ。
「お前は最初の蝙蝠で技がまだ通用すると思い込んだ。それも間違いだ。切り札はギリギリまで取っておくものだからな。後は蝙蝠の毒で動けなくなったってことだ。全く一日に二度毒にやられる馬鹿がいるか」
エグゼがフレムを小馬鹿にした。しかし敗北したフレムには何も言い返せない。
「ま、その毒はそこまで持続性はないから安心するのだよ。フフッ、それにしてもやりましたぞ! エグゼ様! フレムを今度こそ完膚なきまでに倒してやったのですよ! これでもうバッドとは呼ばせないのだよ!」
エグゼに向かってバットが得意げに語った。名前が変わらないことも嬉しそうである。
「ま、そういうことだな。テメェは毒が消えるまで自分のバカさ加減を反省しておくんだな」
「……くそぉ」
こうしてフレムは一度は勝利したバット相手に敗北を喫するのだった――
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