第二話 ナガレを付け狙うのは?
皆と別れ、ナガレは足の向くまま気の向くままの旅に出た。この世界を自らの足で見て回るのが目的だ。
それもナガレが少し本気を出せば瞬きしてる間に終わることだが、ナガレはこれで旅を愉しむタイプでもある。
故に今の歩みもかなりゆったりしたものだ。もっとも歩みはゆっくりでも途中で分体を作り意識を共有させるぐらいはしているわけだが。
「――こそこそ付け回されるのに、あまりいい気分はしませんね」
山道を征く途中、ナガレが確信したように口にした。すると木の影から一人の男が姿を見せる。
「なるほど。それなりには鋭いみたいだな」
ナガレが振り返る。そこには黒尽くめの男が立っていた。砲金色の髪を左右で分けまるで角が生えてるかのような形をしている。目つきは鋸のようであり、目にした相手総てを傷つけてそうな雰囲気があった。
「貴方がナンバーズのエグゼ・キラーですか」
「俺が誰か知りたいか? 俺こそがナンバーズのNoXIIエグゼ、は?」
エグザがナガレに名乗ろうとするが、一足早くナガレが名前を伝えたため、随分と彼も驚いたようだ。
「待て何で知ってる!」
「私、勘が鋭いので」
「意味わかんねぇよ!」
エグゼが叫ぶ。不可解と言った顔をしているが一を知り満を知るナガレであればそれぐらい当たり前のように察してしまう。
勿論そんなことを彼は知らない。
エグゼはグレープ、バレット、コラットの三人は派遣したがこれまで自ら姿を晒すことはなかった。
それは彼のいつもの手でもあった。だがあっさりと看破され今は悔しそうにしている。
「ところで私に何か御用で?」
「フンッ。用はあるさ。俺の仲間を随分と可愛がってくれたようだしな」
「いえいえ、こちらこそお世話になりました。おかげで皆がより強くなれました」
「いや、これはご丁寧に、てそうじゃねぇよ!」
ナガレがペコリと頭を下げつられて返礼しそうになるエグゼだったがすぐにツッコミを入れた。中々ノリのいい男ですね、とナガレは考える。
「チッ、調子の狂う奴だ。まぁいい。お前Fランクなんて大層な称号を得たようだが」
「誤解されやすいのが欠点ですかね」
「あぁ、確かにFと聞くとEの下っぽく思えるからな。俺も最初は何だよFってと鼻で笑いそうに――そうじゃねぇ!」
中々のノリツッコミだなとナガレは思った。
「とにかく俺はテメェに制裁を加えるために来たんだよ――覚悟しやがれ」
ナガレに宣言し、マントを広げると突如靭やかな刃が四方八方に伸び、かと思えばエグゼを包みこむような球状に変化する。
「なるほど。随分と変わった武器を扱うのですね」
「カカッ、当然よ。こいつの銘は【ジェノサイド】。世界で唯一俺だけが持つ専用の武器だ」
「ほう。それは興味深いですね」
顎に指を添え感心したようにナガレが頷いた。その余裕な態度がエグゼには気に入らないらしい。
「そうかよ。だったらたっぷりと味あわせてやる!」
吐き捨てるように口にし、そして――ヴォン、ヴォンっと奇妙な音を鳴らしながらエグゼのジェノサイドが回転を始めた。
「見たか? こいつは回転することで攻撃と防御を同時にこなす究極の武器だ。これでお前は終わり!」
そしてエグゼはジェノサイドを回転させたままナガレへと突撃してきた。
「なるほど――」
ナガレが手を翳しエグゼがニヤリと口角を吊り上げた。
「馬鹿がその腕ごとずたずたに斬り裂いてやるよ!」
「さて、どうなりますか――」
ジェノサイドがナガレの腕を飲み込む、がその瞬間ナガレが空中を舞いエグゼも逆側に飛んでいく。
「な、なんだぁ!?」
「ふむ。なるほどなるほど。中々の勢いですね」
ナガレがふわりと柔らかく着地。一方でエグゼはギュルルルルッ! とより激しくジェノサイドを回転させ落下した。
エグゼの足元が抉れすり鉢状に陥没した。それだけの威力が籠もっていたわけだがナガレには傷一つない。
「なるほど少しはやるようだな。だが俺はまだまだ本気じゃないぜ!」
「奇遇ですね私もですよ――」
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