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第四八五話 帝都を見て回る

いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

 ちょうど昼に差し掛かった頃、馬車は帝都の門をくぐった。その直後、馬車が止まり、ナガレ達は馬車から降りて歩いて城まで向かうこととなった。


「馬車は城まで連れて行ってくれるわけじゃないのか?」

「勿論それでも良いのですが、皆様に今の帝都を見ておいて欲しかったのです」


 案内役を務める女騎士のリリアンヌが言った。その名は馬車の中で教えて貰ったわけだが、リリアンヌは今の帝都を眺めながらナガレ達に告げる。


「確かえ~と、その元冒険者の新皇帝率いるレジスタンス軍と帝国軍との間で戦いがあったのよね?」

「はい。そのとおりです。ちなみに私はそのレジスタンス所属でした」


 マイの問いかけにリリアンヌが答える。するとメグミがへぇ、と反応し。


「そうだったのね。ということは元冒険者なのかしら?」

「そうですね。と言っても帝国の冒険者制度は他と大きく異なっていたので、堂々と元冒険者とも言えませんけど」


 自嘲気味に答えるリリアンヌである。確かに帝国は大陸に存在する冒険者ギルド連盟からは除外されている。


 これはかつて帝国が自己中心的な目的に冒険者を利用し多数を死に至らしめた為である。尤も今回の反乱によって旧皇帝であったギースは処刑されレジスタンスのリーダーであったアルドフが新皇帝の座についたことで冒険者ギルド連盟との関係も改善されようとしている。


「……帝国が変わるなら連盟は再び帝国に進出する。それでも以前の経験は加味されるから帝国での経験が無駄になるということはない」


 補足するようにビッチェが言った。帝国は結局独自のルールで冒険者ギルドを維持させたが、それは連盟のやり方をある程度参考にしている為、帝国での経験も再利用しやすいのである。


「そう言ってもらえると何より。とは言え今の私は帝国の一騎士でしかありませんが。ただ一緒に戦った仲間には冒険者を続けたいと思っている者も多いですから」


 冒険者としてこれからも生きていきたいと思うのであれば、確かに経験が無駄にならないというのはありがたい話であろう。


「でも、大きな戦いがあった後にしては皆いい顔をしてますね」

「そうですね。どこか活き活きしているようでもあります」


 これはアイカとローザから発せられた感想であった。一行は帝都の往来を進んでいるわけだが、確かに内戦が終わってまだそこまで日は経っていない筈だが、歩く人々には笑顔が溢れ、同時に活気に溢れている。


「帝都攻城戦に於いても被害が殆ど出ずに終わったのも大きいですね。様々な方面からの協力を陛下が得られていた事も大きいです。それは勿論皆様の活躍も大きいですが」

「そう言われると照れちゃうよねぇ」

「先生は別に帝国のためにやったわけじゃないとは思うんだがな。でもそれが結果的に帝国を救うことに繋がるのだから流石先生です!」

「私は大したことはしておりませんよ。もしそれで帝国に笑顔が戻ったのであればレジスタンスの活躍に寄るところが大きいのだと思います」

「ですが、陛下は大変感謝しておられますよ」

「でも、モグ、皇帝が変わってこの盛り上がりって、モグ、前の皇帝はよっぽど嫌われてたんだね、美味しいこれ」

「また食べてる! いつの間に!?」

「はは、先程串焼きを売る屋台を見つけてからの動きは中々の早さでしたね」


 ナガレが朗らかに笑いながら言った。確かにピーチは食べ物のこととなると動きが加速する。


「ギースの政策は今思っても酷いものでした。選民意識の塊のような男で民に平気で重税を課し、自らは私欲を肥やし続けました。ギースの家族も第四皇女であったウルナ様を除けば全員性格に問題があったような人間ばかりで固められておりましたから……国民の多くは皇帝に対して鬱憤が溜まり続けていたのです。そしてそれは一部の騎士にしても同じでした。だからこそ国民を犠牲にして逃げようとした皇帝を見限るのは当然とも言えたと思います」


 結局この戦いでは帝国騎士団からも反逆者が出ることとなり、皇帝は自らの傍若無人な振る舞いが仇となり捕らえられることとなった。


「一方でウルナ様と結ばれ皇帝となったアルドフ陛下は既に多くの国民の心を掴んでおります。レジスタンスのリーダーをしていた頃からそうでしたが陛下には人を惹きつける魅力がありカリスマ性にも溢れています。勿論帝国の立て直しは始まったばかりですが、既に税の見直しも行い、国を上げて疲弊した国土を回復させるため様々な問題点を明らかとし施策を講じております」


 リリアンヌによるとアルドフが国民の信頼を得た理由の一つにそのフットワークの軽さがあるようだ。このあたりは元冒険者として様々な問題を解決してきたことや、経験からくる状況判断力、そして冒険者として帝国全土を見て集めた情報力も活きているのだろう。


「何はともあれ、結果的に良い方向に向かってるならいいわね」

『イイコトイイコト♪』

「そう単純な話でもないかとは思いますがね」


 笑顔で口にするマイとそれに同調するキャスパ。だがこの状況に苦言を呈したのはサトルを慕う悪魔のヘラであった。


「結果的に前の皇帝はサトル様を利用しようとした憎き存在。それが処刑されたのは喜ばしいことですが、カリスマ性だけで持ってるような皇帝ではこの先が心配でしょう。それに外面がいくら良くても内面はどうかはわからないものです」

「はは、ヘラちゃんは手厳しいねぇ~」

「だけどまぁ、間違ってもいないんじゃないか? 正直浮かれすぎるのもどうかと思うぜ」

「……驚いた、お前でもそんなことを考えるのか?」

「どういう意味だよ!」


 フレムの発言にビッチェは本気で驚いているようだった。


「おっしゃられていることは最もです。この国はこれまでの皇帝の呪縛からようやく解放されました。しかしそれは逆にこの国はまた一からやり直さなければいけないということです。ギースが遺した負の遺産も多く、その道程は決して楽ではないでしょう。でもだからこそ新生帝国として皇帝と民が一丸となりこの国を生まれ変わらせなければいけないのです。そのことを一番理解しているのは今の陛下たるアルドフ様だと私は信じています」


 その声には強い意志が感じられた。その眼差しは未来を見ていた。


 彼女の言葉がこの国に暮らす人々の総意であるならこの国は変わることが出来ると、そう思えるのだが――とは言え。


「私としたことがつい熱くなってしまいましたが、しかし折角皆様がこうして来てくださっているのですからこの日ぐらいは明るく参りましょう」

「そうですね。それに笑顔が絶えないのはいいことですから」


 そして一行は再び歩みを進め、帝都を観覧しながら城へ向かった。そしてその間もピーチの買い食いはとどまることを知らなかった。尤も時間が時間だったので他の面々も途中で店に立ち寄っては食事をつまんではいたわけだが。


 こうして時間を掛けて歩き回り、城に到着したころには夕方になっていた。門番にリリアンヌがナガレ一行について説明し城の中に入る。


「こちらです――」


 そして一行はリリアンヌの案内に従って謁見室を目指すわけだが。


「待て待て! なんだその連中はここをどこと心得る!」

「部外者を城に入れるとは、ついに墓穴を掘ったなリリアンヌ」

「陛下直属の騎士に選ばれたからと調子に乗りおって馬鹿が」


 突如重厚な黒い鎧に身を包まれた三人が行く手を遮り、厳しい目を向けてきた。


「なんだこいつら?」

「申し訳ありません。彼らは帝国の黒騎士団に所属していた三人です。今も騎士として務めているのですが、貴方達も一体どういうつもりですか?」


 一行に説明した後、リリアンヌは三人の騎士に問い詰める。


「それはこちらの台詞だ。わけのわからん連中を城に入れるな!」

「全く神聖な帝国の城を何だと思っているのか」

「いくら皇帝が平等を謳っているとは言え、下民如きが立ち入って良い場所ではないのだぞ!」


 黒い三騎士の言葉に、リリアンヌは眉を顰めるが。


「……ここにおられる皆様は帝国の解放に於いて多大な貢献をしてくれたのです。貴方達もナガレ様については知っているでしょう? 目の前におられるこの御方こそがそのナガレ様なのです」

「ナガレだと?」

「ふん、何を馬鹿な。あのアケチを倒したという男がこんな子どもなわけがないだろう」

「おうよ。あのアケチを倒すぐらいであれば、われらのように筋肉に溢れる屈強な騎士の筈!」


 何故騎士限定なのかなぜ筋肉なのか正直理解できないが。ただ見た目に関しては確かにナガレは若い。尤もそれで言えば召喚されていたアケチとて若い少年だったわけだが。


「おいあんたらいい加減にしとけよ。先生を馬鹿にするならこの世界の一番弟子である俺が黙っちゃいないぜ!」

「この世界に変えたわね……」

「……セコイぞ」

「う、うるせぇ!」


 ピーチとビッチェの突っ込みに気恥ずかしそうに吼えるフレムであった。


「お前たちいい加減にしなさい。この皆様は間違いなくナガレ様御一行です。今すぐそこをどけなさい!」

「調子に乗るなよリリアンヌ。貴様みたいな下卑な冒険者崩れ、本来ならこの城にふさわしくないのだ」

「大体貴様、その連中がそのナガレって男だとどうやって判断した?」

「どうせ適当なことでも言われて騙されているのだろう。そんな女が皇帝直属の騎士だと? 笑わせるな!」


 遂には激しくリリアンヌを罵倒し始めた騎士達。リリアンヌの目つきが険しくなるが。


「やれやれ、確かにまだまだ大変そうですね」


 そう言ってナガレがリリアンヌの横に立つ。ナガレの背は騎士達に比べると低く、結果的に三人の騎士がナガレを見下ろす格好となる。


「私としてはここまで親切に案内してくれたリリアンヌ様が仲間内とは言え疑われるのは心苦しくもあるのですが、どうしたら納得してくれますか?」


 三人を見上げナガレが言った。すると正面に立っていたスキンヘッドの黒騎士がニヤリと口角を歪め。


「だったら、実力で示して見るんだな!」


 かと思えば長柄の斧を手にしナガレに向け振り下ろしてきた。


「はっは! 特別に手に入れた世にも珍しい長柄の武器だぜ! どう、だ、へ?」

「ふむ……それででしょうか? 武器の扱い方がまだまだなっていないようですね」


 斧を振り下ろした黒騎士の表情が驚愕に染まった。何故なら彼が振り下ろした斧はナガレが抜いた髪の毛一本で防がれていたからだ。


「む、むぎぎいぃい!」


 しかもそれからいくら力を込めても体重を乗せても全く動かない。


「駄目ですよ。考えなしにそんなに力を込めては――」


 すると黒騎士の体がフワッと浮き上がり、そのまま明後日の方向に飛んでいった。地面にしこたま背中を打ち付け、そのまま気を失ったようである。当然これらの結果は全てナガレの合気によるものだ。


「これで、宜しいのでしょうか?」

「て、てめぇフザケやがって!」

「我ら黒騎士を侮辱した罪、万死に値す――ガッ!」


 仲間がやられたことに激昂し、残りの騎士二人も得物を抜き、ナガレに斬りかかろうとしてくる、がその瞬間にはリリアンヌの抜いた剣が一閃されていた。


 白目になり倒れる黒騎士。そこには二人を冷たく見下ろすリリアンヌの姿があり。


「誰かいるか!」

「「「「は、はい!」」」」


 リリアンヌが叫ぶとすぐに兵士たちが集まってきて、倒れている黒騎士に驚いた。


「この三人はあろうことか帝国を救うのに尽力してくれた御方に危害を加えようとした不届き者だ! 今すぐ騎士の資格を剥奪! 罪人として牢屋に閉じ込めておけ!」

「しょ、承知いたしました!」


 こうしてナガレ達に因縁をつけた黒騎士は兵士に連行され牢獄いきとなるのだった――

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ピーチ「もしかして神薙流忍術とかあるのかしら?」

ナガレ「それは別部門ですね」

マイ「部門があるの!?」

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