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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第三章 ナガレ冒険者としての活躍編

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第四十六話 メルルVSピーチ

 メルルの案内に従い一行は地下へと降りてきた。

 どうやらこの店舗は地下にも部屋があったらしい。 

 魔道具の作成などを行うのに使用してるようだ。


 ただそういった作業場としてだけではないようで、地下にはなかなか広めの空間も用意されていた。


「地下があるのは知ってたけど、こういう風になってたなんてね」


 ピーチはどこか感心したように呟き辺りをキョロキョロと見回した。

 規模的には冒険者ギルドの試験場より一回りほど小さいが、それでも戦闘(・・)するに不便はない程度の広さと高さは確保されている。


「でもメルルこんなところに来てどうするの?」

「……決まっている。ピーチの実力見るため、一緒に闘う」


 え!? と驚嘆するピーチ。まさかそうくるとは思っても見なかったといったところのようだ。


「ちょ、ちょっと待ってよ! わ、私達友達よね? なのに闘うなんて……」

「……それとこれは別。私の作成した杖、馬鹿にされた――」

「いや、それ私じゃないんだけど……」


 ピーチが恨めしそうにナガレをみやるが、ナガレはにこやかな表情を浮かべながら、目で頑張ってくださいね、とピーチに訴える。


「うぅ、ナガレってば無責任……」

「……ピーチ、オーダーメードして欲しい言った

「いや、だからそれ私じゃないんだけど」

「……でも私にも魔道具士としての意地、ある。だから資質、見極める」


「……メルル結構本気、ピーチ大丈夫?」

「確かに魔道具を自分で作成できるほどのお方なら、魔術師としての才能はピーチより上そうですね。まぁでも大丈夫でしょう。それより実践形式で杖に必要な情報を集めるとは中々面白いことされますね」


 ビッチェはナガレに目を向けじっと彼を見つめた。

 ナガレの察したように、メルルは宣言通り闘いで相手の資質を見極めようとする事があるが、同時に道具を作成する場合の必要な情報を手を合わせることで集めようともする。

 それを看破したナガレに驚いているのだろう。


「うぅ、やるしかないのね……」

 

 ピーチは不承不承といった様相ではあったが、観念したのか杖を構えて見せる。


「……みせて、ピーチの今の本気」

 

 言うが早いか水晶付きの杖をメルルが突き出し、かと思えば詠唱と同時に宙に術式を刻んでいく。

 魔法はピーチが以前見せたように詠唱を口にし発動する事も可能だが、術式を刻むことでも発動可能。

 また詠唱と術式を組み合わせる場合もある。上位の魔法を行使する場合などはこのパターンが多いようだ。


「――開け魔道第六門の扉、地術式【アーススパイク】」

「へ? 第六門ってちょ!」


 慌てるピーチだが、術式が完成した瞬間足元の床が弾け、岩の杭が無数に跳ね上がった。

 ただ初撃は、敢えて避けやすいように発動されたようでもある。


「な!? メルル本気なの! こんなのあたったらヤバすぎるじゃない!」

「……加減はしてる。死んだりしない」

 

 メルルの魔法から逃れ文句をいうピーチ。だがメルルは抑揚のない声であっさりと返した。


「確かに槍状ではなく先は丸みを帯びてますから、貫かれる事はないでしょうね」

「……ナガレ結構ドライ」


 ビッチェが目を細めて言う。 

 しかしナガレとしては特に止めるつもりもないようだ。


「てか死ななきゃいいってもんじゃないでしょ!」


「……私は本気。ピーチも早く魔法見せる」


 抗議の声を上げるピーチだが、それは軽く流され、メルルが魔法を使うよう促した。


「くっ! 判ったわよ!」


 覚悟を決めたように目付きを尖らせ、両サイドの桃色尻尾を揺らしながら詠唱を開始。


「――フレイムランス!」


 そしてお得意の魔法をメルルに向けて放つ。

 

「――水術式【アクアシールド】」


 しかしメルルの構築した水の盾によって焔の槍は見事に防がれてしまった。


「……この程度? それならその杖で十分」


 そう言いつつもメルルは新たな術式を杖で刻んでいく。


「ふむ、流石ですね。複合術式ですか」

「……メルルは魔道門なら全属性の術式が使える」


 それは凄いですね、とナガレは感心したように頷いた。

 魔道門は魔術師にとっては基本となる種別の魔法となるが、その分多くの魔術師によって術式が構築されその種類は全門の内最も多く、また応用性も高い。


 属性に関して言えば炎術式、水術式、風術式、地術式、強化術式、付与術式、幻術式など多数に渡る。


 だが、それでも通常は一つから二つの属性を行使するのが精一杯だ。

 三つ以上使えるものは天才と称される程である。


 ましてやメルルは二つの属性を同時に展開し発動する複合術式まで覚えている。 

 これは魔術師の中で一万人に一人と言われるほどの才能である。


 尤も、だからこそ誰の協力も仰がず個人で魔道具の作成なんてことが可能であるとも言えるのだろうが――


「……開け魔道第七門複合術式炎風――【ライトニング・ボルト】!」


 炎と風を組み合わせることで雷を生み出す――メルルの放った雷球がピーチに迫った。


「キャッ!」


 悲鳴を上げピーチが横に飛ぶ。かなりギリギリであったが、メルルの魔法をなんとか躱した。

 尤もこれは運みたいなものだが。


「……ピーチ、これで本当に新しい杖が必要なの?」


 メルルが怪訝そうに眉を顰めた。 

 だが、そこでナガレが口を開く。


「ピーチ、しっかり実力を見せてあげないと失礼ですよ。貴方には杖を使った戦い方があるのですから」


「……杖が武器になる、か? でもそれだけじゃ杖をオーダーメードする意味が無い」


 その発言を聞いたメルルが不服そうに口にする。

 だがピーチは立ち上がり、杖を構えて真剣な表情でメルルを見た。


「そんなことはないわ。ナガレが私に教えてくれたんだもん……そうだよね。それを見せないと――」


 言ってピーチは杖に意識を集中させた。 

 するとピーチの魔力が杖全体に行き渡っていく。


「……何、これ? 直接魔力を、杖に? そんなの聞いたことない」


 どんどんと膨れ上がっていく魔力にメルルが驚愕する。

 だが――


「……でも――近づけなきゃ意味が無い」


 言ってメルルは高速で術式を構築していく。確かにこの速さならナガレならともかく、ピーチが術式を展開している間に近づくのは不可能だろう。


「……痛いところを突かれた。メルルの詠唱は速い」

「たしかにそうですね。ですが――」


「……ライトニングスパーク――」


 そして再び複合術式によって生み出された無数の稲妻が、ピーチに向けて襲いかかった。

 最初に見せたライトニング・ボルトよりも威力も速度も段違いの魔法である。


 そしてその瞬間、空間内が青白い閃光に包まれた。

 稲妻による影響である。


 メルルの容赦のない一撃であった。まともに喰らったならただではすまないだろう。

 だが――


「うぅ、ちょっとメルルやり過ぎじゃない?」

 

 稲妻による光が収まった時、そこには平然な顔をしたピーチが立っていた。

 全くダメージを受けている様子がない。


 それに目をパチクリさせるメルルだが、理由はすぐに判ったことだろう。


「……魔力を、盾に変換させた?」


 そう、メルルの目に映るは杖の先端から魔力を操作し、盾状に変化させたピーチの姿であった。

 これにより彼女は見事メルルの発した稲妻から身を守ったのである。


「さぁ! 今度は私から行くわよ!」


 驚愕するメルルを他所に、今度は私のターン! と言わんばかりにピーチが駆け寄り魔力の篭った杖を振り下ろす。

 

「……開け魔道第四門地術式【アースウォール】」


 しかし咄嗟にメルルも地属性の防御魔法を展開。

 岩で出来た壁が彼女の周りを覆った。が、しかしメルルの魔力の篭った杖が当たった瞬間、轟音と共に壁の一部が弾け穿たれてしまう。


「……こんなやり方、初めてみた。でも、納得――」


 壁が壊された事でメルルはピーチを見据えながら呟くように言った。

 そして壁を取り払い、一人納得したように頷き杖を下ろす。

 その姿に、え? と目を丸くさせるピーチだが。


「ピーチ、メルルにはどうやら判ってもらえたようですよ。これで杖を作成してもらえそうですね」


 呆けるピーチに向け、ナガレは笑顔でそう述べるのだった――


相手の攻撃を盾で防御!そして杖で直接攻撃!

……あれ?これ殆ど戦士では?

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