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第四七八話 帝国軍の末路

前回のあらすじ

地球での出来事を確認し終えたナガレ達に帝国の残存兵が物資と女をよこせと迫ってきた。

※いつも感想や誤字脱字報告を頂きありがとうございます!

「帝国軍ですか。ですがその帝国軍がどうしてこのような場所に?」


 突如あらわれた帝国軍へ、ナガレが問いかけた。彼はこのような状況でもその鷹揚とした姿勢は変わらない。


「必要な物資を得るためだ! これから始まる大きな戦争の為に我らは物資を必要としている。貴様らも帝国の民ならばおとなしく我らに従え! さもなければ今も言ったように女以外は殺す!」

「殺すって……」

「やってることは盗賊と一緒よね」

「黙れ! これは帝国の威光を取り戻すためにも必要なことなのだ!」

「威光って、そもそも今帝国は皇帝が変わって大変な時でしょうに。まともな軍ならこんなところで盗賊行為なんてしてないわよね?」


 舞の意見に帝国軍による自分勝手な主張が返された。ピーチは呆れ顔で問い返す。尤も彼女にしてもこの連中がかつての帝国軍の成れの果てであることを知っての上で言っているわけだが。


「黙れ黙れ黙れ! 我々はあのような卑怯な手で帝位を簒奪したあの男を認めてなどいない! だからこそ我らの尊厳を取り戻し、奴を討つため決起したのだ! 正義は我にあり!」


 帝国軍残党の頭と思われる男が剣を掲げ声高々に宣言した。だが、偉そうなことを言っているが結局は盗賊に身を落としただけの騎士崩れのならず者集団でしかない。


「正義のためとかいいながら追い剥ぎみたいなことやってちゃ仕方ないよな」

「はは、確かに正義を語りながら悪事を働いてちゃ世話ないよねぇ~」

「……フレムに言われてたら世話ない」


 当然だが、ナガレの仲間たちの反応は辛辣なものだった。


「やれやれ、本当に仕方のない連中だねぇ。国のことを思うならこんな見当違いなことをしてないでおとなしく畑でも耕していた方がよっぽど人に感謝されるだろうに」

「き、貴様! よりにもよって誇り高い帝国騎士である我らに、畑仕事などと下劣な真似をしろというのか!」

「それは酷いです。畑を耕して作物を育てるのは国を潤す為にも大事な仕事ですし、それに従事する人々はとても尊い存在です」

「流石師匠です! 私も農業は大事だと思いますから農民を馬鹿にするのは間違っていると思います!」


 暴言を吐く騎士崩れたちを説くようにローザが主張し、アイカも抗議した。


「うるさい! 畑作業なんてものは農奴の連中にやらせておけばいいのだ! あんな学もない劣等種にはそれがお似合いだ! 我々のような高貴な騎士を食わせるために馬車馬のごとく働くことが奴らの努め、そして今必要としている物資と女を提供するのが今の貴様らの役目だ!」

『なんだこの勘違いした馬鹿どもは? こんな連中が騎士を名乗るのも腹立たしいぞ。よしメグさっさと切ってしまえ!』

「いやいや! なんで私!?」

『お主にも騎士としてのプライドがあるであろう?』

「いや、騎士じゃないし……」

「うん? 騎士と言ったか? ははは! 笑わせてくれる。お前のような女が騎士だと? ふむ、だが騎士たちの道具(・・)としてなら同行させてやってもよいぞ。いいはけ口となりそうだ」

「ごめん、やっぱり切るね」

『そうだそうだ切ってしまうのだ!』


 最初は及び腰だったメグミであったが、騎士崩れ達の暴言にカチンっと来るものがあったのかエクスに手をかけ戦闘態勢を取る。


「やれやれ困った方たちですね。帝国はようやく新しい道を歩み始めたというのに、あなた方はその流れに取り残されるばかりか、再び同じ過ちを繰り返そうとしている」

「貴様……我らを愚弄するとはいい度胸だ。おとなしく物資と女を提供しておけばいいものを、こうなっては仕方あるまい。全員構えろ! この愚か者共に制裁を加えるのだ」

「団長、女はどうするでありますか!」

「ふん、好きにしろ。まぁそうだな、そっちは生け捕りにして暫く生かしておくのも手か」


 舌なめずりを見せる頭を見て、やれやれと嘆息するナガレである。


「やれやれ、彼我の力量にどれほどの差があるかも理解できないなんて、たかが知れてるものだねぇ」

「馬鹿が、貴様らこそこの数相手によくそれだけの事が言えものだ。愚かなのはどちらかその身をもって思い知るがよい!」 

「あぁ、やっぱりこうなるのね」

「先生! ここは俺たちにおまかせを!」

「そうね、ナガレの手を煩わせるほどじゃないもの」

「……むしろ、ナガレが出てしまうと私達の出番がない」

「そうですか、ではお言葉に甘えて。頼りにしてますよ」

「――ふん、馬鹿め」


 仲間たちがナガレに向けて随分と頼りがいのあるセリフを口にし、ナガレはその気持ちを汲んで少し離れた位置に立つ。


 すると騎士崩れたちがまず全員を包囲する形に展開し、武器を構えた。頭は、馬鹿め、と口元を歪め、勝利を確信する。


 人数的には圧倒的不利な状況にも関わらず、妙な自信に満ち溢れた連中だ。地の利を活かした戦い方でも心得てるかと少しは警戒したが、こうもあっさり囲まれるようでは話にならないと団長は考え。


「ふん、どうやら口先だけのハッタリ連中だったようだな。さぁ全員突撃だ、かかれ! やってしまえ! この程度の相手に10分もかけるなよ! 一瞬で決めてしまうのだ!」


 そして千を超える兵が一斉に動き出すわけだが。


「あ~あ、何よ鬱陶しいわね」

「キシシシシ、呪ッテイイ? 呪ッテイイ?」

「いいわよ。向こうからかかってきてるんだし」

「キシシシ、呪ウヨ、皆呪ッチャウヨ」

『ぎ、ぎやああぁあ、イてぇ! 体中がイてぇぇえええ!』


 マイとキャスパコンビに襲いかかった兵たちは、その踊るような身のこなしにあっさりと返り討ちにされた上、キャスパの呪いで痛覚の感度を上げられのたうち回った。


「ほいほいほいほいっと」

「な、なんでこんなに矢が!」

「馬鹿ななんだこの連射は!」

「えぇ? 神薙流星弓術もまだ使ってないのになぁ」

「やれやれ、手応えなさすぎだろ折角先生に神薙流双剣術を名乗ることを許してもらったんだから、少しは歯ごたえあるのよこしやがれ!」

「な、なんだこいつら、ば、化け物」

「だれが化け物だこらぁあああ!」

「ひ、ひぃいぃぃいい!」

「あはは、怪我の心配はなさそうね」

「出番なさそうですねぇ」


 カイルの弓、それにフレムの双剣にやられては元帝国兵もかたなしである。あまりに力の差がありすぎてローザとアイカはサポートする必要もないぐらいである。


「うおぉおぉおおお! この美女は俺のものだ~~~~!」

「黙れ、俺だ! 俺が寵愛を受けるんだ!」

「俺の女に手を出す奴はぶっ殺す!」

「んだと! それはこっちのセリフだ!」

「ビッチェさん凄すぎるわね……勝手に相手が同士討ちを始めてるし……」

『うむ、なんとも凄まじいが、お主もそんなこといいながらあっさり返り討ちにしているのだから大した玉だぞ』


 ワラワラとビッチェに群がる男どもは彼女に手を出すことはなく、仲間同士で激しく争い合っていた。そしてそれを眺めつつメグミはメグミでやってくる兵どもをなぎ倒している。


「なんかビッチェずるいわね」

「……これが神薙流幻剣術が奥義、誘惑」

「まんまじゃないのそれ! そもそも剣つかってないし!」


 全く戦うこと無く、同士討ちするならず者を見ているだけのビッチェに突っ込むピーチだが。


「へへ、デカパイの姉ちゃん、俺ら相手に随分と余裕じゃねぇか」

「あっちの女もエロいが俺はお前みたいのも好きだぜ。へへ、その胸さっさと自由にしたいぜ!」

「……はぁ、なんで私の方にはこんなのばっかくるかなぁ」


 下卑た表情で近づいてくる騎士崩れを一瞥し、ため息を吐くピーチ。下半身でしか物事を考えられない男どもに呆れ果てていた。


「へへ、お嬢ちゃん、杖を持っているということは魔術師系だろ? だったらこんなに相手を接近させちゃいけないぜ」

「それとも誘ってるのか? なら素直にそういえば、少しは可愛がってやるぜ?」

「お生憎様」


 杖を構え、そしてビュンビュンと力強く振り回し。


「私の魔法は、近接戦の方が真価を発揮するの、よ!」

「は? ぐ、ぐわあぁああああ!」

「な、なんだ? 杖が棘付き鉄球に!」

「ど、どうなって、ひ、ひぃいいぃいい!」

「ほ~らほらほら! これが私の魔法よ! 少しは反撃してみなさいよ!」

「こ、こんな脳筋な魔法があってたまるかあああぁああぁ!」


 ピーチの振り回す鉄球に次々弾き飛ばされていく兵たち。確かに彼らの言うようにこんな魔法はありえない。だがしかし、ピーチが扱うは神薙流魔杖術。そう、杖で殴ることこそが彼女の最大の武器なのだ。


「これは、一体どうなってるんだ! なぜだ、なぜ数では圧倒している私たちが、こんな醜態を晒している! なぜここまで圧倒されている! くそ、おい! 鑑定結果はまだか!」

「――は、はい。いま出ましたが、団長、その」

「なんだ! わかったなら早く述べよ! 鑑定次第で戦術を変えなければいけないかもしれん!」

「……わかりました。その、あの連中全員が、私の鑑定では測定不能――私はレベル999までなら測定出来るのですが、それが不可能ということは……」

「は? ちょっと待て! それはつまり、あの、あの連中は最低でもレベル1000以上はあると、そういうことなのか!」

「はい……そうなります」

「馬鹿いうな! ありえん! あり得るわけがない! 帝国一の騎士と呼び名高いあのエルガイル様ですらレベル250なのだぞ! それなのに、そんな馬鹿なことが!」

「ですが、鑑定では確かに、ん? いや、ちょっと待ってください! 一人だけレベルが異様に低いものが、え? あれ、でもこれは一体?」

「おお! 誰だそれは! 早くいえ!」

「は、はい。あの妙な格好をしたナガレという男はそのレベル0なのですが……」

「は? レベル0、だと? しかも一番あの連中から信頼されていそうなアレがか? はは、なんだそれは楽勝ではないか。レベル0など、地面を這う虫よりも低い! よし! おいお前ら! 今すぐ目標をあのナガレというのに変えろ! そいつのレベルは0だ!」


 そして団長が叫び、兵たちの一部が移動しナガレを取り囲んだ。


「おやおや、こちらにきてしまいましたか」


 集まってきた兵たちを見るなり涼しい顔でナガレが口を開き。


「馬鹿め! お前たちよく見ろ! 仲間のナガレは包囲した! 全くレベルがやけに高い割におそまつな奴らだ。レベル0の最弱なものを一人にしておくのだからな! さぁ、仲間が殺されたくなければおとなしく!」

「は? 何いってんだお前? 先生があんなのにやられるわけないだろ」

「むしろそいつら、大外れよ」

「……いまだにレベルですら判断できないなんて愚か」

「は? お、お前ら何を言っているんだ? レベル0なんだぞそいつは!」

「――はぁ、全く。どうせ狙うならもう少し手応えのあるのをよこせば私があの男をやるチャンスぐらい生まれたかも知れないのにあの程度じゃ……時間稼ぎにもなりはしませんね」


 そして集まってきた兵を植物と毒で倒しながら、ヘラドンナがため息混じりにそして愚痴るように呟いた直後だった。


 ナガレを囲んでいた兵たちが一斉に勢いよく空中へと舞い上がった。その光景に目玉が飛び出んばかりに驚く団長であり。


「やれやれ滑稽なものだねぇ。相手の力を侮ってレベルだけで虫だと判断し、実際は竜ですら裸足で逃げ出す相手に喧嘩を売っていることにも気づかないとはねぇ」

「な、貴様いつのまに!」


 団長の後ろにはナンバーズのジョニーが立っていた。驚き弾かれたように振り向き、剣に手を添える。


「烏合の衆というのはまさにこういうことを言うんだろうねぇ。10分どころか3分も持ちやしない。いくら数を揃えたところで実力に差がありすぎたら意味がない。この程度の手勢、この百倍や千倍、いや万倍そろえても無駄かな」

「だ、黙れ! 黙れ黙れ黙れ! ならば、ならばせめて貴様だけでも――」

「だから無駄だって」


 剣を抜こうとしたその時には再びジョニーはその男の背後にいた。回転式拳銃を振り下ろしグリップで首を殴り気絶させる。


 残ったのは鑑定を行った兵だけだが、どこからともなく白旗を取り出し振り出した。


「まぁそれが利口だろうねぇ」


 ジョニーが顔を向けると、そこには何事もなかったように立っているナガレや、その仲間たち、そしてボロ雑巾のようになって完全に意識を失った元帝国軍人達の姿があった――

新たな0主人公物公開中です!

合気道はレベル0でしたが今度は魔力が0の大賢者です!

魔力0で転生後、鍛え上げた肉体による物理攻撃が凄すぎて魔法と勘違いされ大賢者と称賛されて弱ってしまう!そんな勘違い最強物語。

こちらの主人公も規格外の最強主人公ですのでレベル0合気道を読んで頂けている方ならきっと楽しんで頂けると思います!下にもリンクがありますのでよろしければ是非読みに来て頂けると嬉しいです!

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