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第四七七話 ジョニーの目的

 いつの間にか食事の輪に入り込んできていたジョニーは結局、そのまま皆と食事を共にすることとなった。


「全く調子のいいやつだな」

「いやぁ~美味しそうな匂いがしてついね。でも悪いねぇ、結局おいらまでご馳走になってしまって」

「構いませんよ。新しい毒の実験にはちょうどよかったですから」

「ブフォッ!」


 ヘラドンナの回答にジョニーが大きく咳き込んだ。ゴホッゴホッとしながら、ど、毒~! と慌てだす。


「大丈夫よ。へラドンナはナガレ以外には毒なんて仕込まないから」

「いつもの冗談ですね。フレムもよくやられてました」

「最初フレムっちも大騒ぎだったよねぇ」

「う、うるせぇ!」


 フレムがムキになって叫んだ。彼としてはあまり知られたくないことだったのかも知れない。


「冗談? はは、なんだそうか。おいら驚いちゃったぜ。本当どうせならヘラドンナちゃんの愛という毒をもらいたいところだけどねぇ」

「今から強力な毒を用意するとしましょう」

「……許可する」

「ビッチェさんがいうなら私も賛成です」

『メグもなかなかいうようになったのである』


 ヘラドンナの行為を承認する女性陣。メグミの相棒となった聖剣も満足そうだ。そしてメグミは長いこと一緒にいることでエクスからメグと呼ばれるようになっていた。その影響か周りからもその呼び方をされることも多くなってきている。


「ビッチェまでなかなか辛辣だねぇ」

「ねぇ、この人ってそういえばナンバーズだったよね?」

「うん、ピーチちゃんのいうとおりさぁ。おいらはナンバーズのⅦ。ラッキーセブンなんて縁起が良いよねぇ」


 親指を立て、キラリと白い歯を覗かせる。舞が呆れたように目を細めた。


「う~ん、すごい軽いわね」

「キシシシシ、カルイカルイ」


 舞が忌憚ない意見を述べた。キャスパがそれに倣う、その頭を撫でた。


「……ところで、結局何の用があってきた?」


 食事も終わり、落ち着いたところでビッチェが改めてジョニーに尋ねた。わざわざこんなところまでやってきたわけだから何か理由があるにちがいないだろう。


「あぁ、そうだねぇ。ビッチェを口説きにかな?」

 

 ウィンクしながら答えると、ビッチェが背中の柄に手をかけた。冗談冗談! とジョニーが両手を振る。


「やれやれ、怖いねぇ全く。さて、本題だけど、先ずはバール王国について教えてあげようと思ってね。こっちの問題は無事解決したさぁ。レイオン卿とジュエリーストーン卿の容疑も晴れ、元凶がアクドルク側であったことも証明された」


 この辺りの話は既に察していたナガレだが、話として聞いたことが確定となった。


「よかったぁ~それじゃあアンや孤児院も無事なのね」


 ピーチが声を弾ませて喜んだ。それはナガレと共に帝国までやってきた他の皆も一緒だった。そしてこれでようやく大きな事件が解決したと実感する。


「帝国も前皇帝ギースの悪巧みが露見して罪人として捕らえられることになってねぇ。代わりに第四皇女のウルナと一緒になることが決まったアルドフが即位することになったようだねぇ。元々はSランクとはいえ冒険者にすぎなかったのに上手いことやったものだねぇ」

「へぇ、あのアルドフがねぇ」

「アルドフって誰だ?」

「フレム……」

「はは、まぁちょっと話したぐらいだしね」


 フレムはすっかり忘れていたようだが、アルドフはレジスタンスのリーダーでもあったSランク冒険者だ。尤も帝国は独自のルールで冒険者ギルドを運営していたのでSランクといっても世界的に認められたものでもない。


 尤もアルドフが皇帝に即位したことで冒険者ギルドも正式に連盟の協力を仰ぐことになるようだ。過去の因縁もあるため簡単ではないだろうが、このあたりはアルドフの元冒険者としての腕の見せどころだろう。


「あとは、ナガレ・カミナギ。君は正式にFランクとして認定されたさぁ。まぁ既にタグは受け取っていると思うけど、一応この認定証も渡しておいて欲しいと言われたからねぇ」

「ありがとうございます」

 

 ナガレが認定証を受け取る。一応はジャンヌからタグを受け取った時点で決定事項ではあったが、その後ジャンヌがグランドマスターに報告したことでそれが連合としての正式決定となった形だ。これには特にフレムが喜び、先生の新しい伝説がまた刻み込まれた! などとはしゃいでいたわけだが。


「でだ、これも重要なんだけど、ビッチェ。おやっさんが呼んでるぜ。近い内に顔を出せってなもんさぁ」

「……パパが?」

「え? へぇ、ビッチェはお父さんのことパパって呼んでるんだぁ」


 ピーチが意外そうに言うと、ビッチェは若干照れたような顔になる。


「ビッチェさんのお父さんってどんな方なんですか?」

「うん? なんだい皆しらなかったのかい?」

「ジョニー様は知っているのですか?」


 ローザが問いかけると、ジョニーは頭のハットに手をかけ。


「そりゃあまぁね。特においら達なんかは知ってて当然なんだけど、言って大丈夫かい?」


 ジョニーがビッチェに問いかけた。


「……言うタイミングが無かっただけ。だから私から話す」

「なになに? 何かそう改められると気になるわね」


 ピーチは興味津々といった様子だ。とはいえそれはナガレを除けば全員そうであり、逆にナガレは気がついているようでもある。


「……パパの名前は、カサノバ・グランド・セレフール――」

「うん? 誰だそれ? 偉いのか?」

「う~ん、そうだねぇ。一応冒険者ギルド連合のグランドマスターだからねぇ。それなりの地位ではあると思うさぁ~」

「え? ぐ、グランドマスター!?」


 ピーチが驚く。これまでも度々話題にはでたが、そのグランドマスターがビッチェの父親だったとは驚きである。


 冒険者は今は世界を股にかけて活動する組織だ。その組織をまとめ上げてるのが冒険者ギルド連合である。その長たるグランドマスターともなれば下手な国より遥かに大きな権限を持つ。


「まさかビッチェちゃんがそんな凄い人の娘さんだったんだねぇ」

「えぇ、驚きですね」


 カイルとローザが感想を述べる。するとメグがビッチェ見ながら。


「う~ん、でもそうなると呼び方ももっと恭しい感じの方がいいのかな?」

「……それは」

「あん? なんでだよ。別に誰の娘でもビッチェはビッチェだろ? 別にこれまでと同じでいいだろ」


 メグが恐縮した様子で語るが、そこでフレムが口を挟んだ。

 一様にキョトンとした顔を見せた。


「ふふっ、確かにフレムの言うとおりですね。ビッチェはビッチェ。私達の仲間であることに変わりありません」

「まぁ、たしかにそうね」

「そうですね。そのままがいいと思います」

「急にビッチェ様とかいうのもおかしな話だものね」


 そして、全員がフレムの意見に同意し納得した。フレムはこれで物事の本質をよく捉えている。


「はは、そもそもからしてここの皆もかなりのものだからねぇ。帝国が変わるきっかけも作ったし、多くの人々にとっては英雄みたいなものさぁ」

「わ、私達が英雄?」

「何か恥ずかしいです……」


 照れくさそうに頬を染めるローザである。


「しかし、この帝国はこれからが大変でしょうね」

「そうだねぇ。前の皇帝が遺した負の遺産の処理がまだまだ多いだろうし、それに新しい皇帝に関しては北の将軍とやらが異を唱えていて、戦力を整えているとも聞くし、ギース派の残党が盗賊と化して暴れまわっているとも聞くのさぁ」

「なるほど、それがこの殺気の正体なわけですね」

「はは、流石ナガレはよく判っているねぇ」

「え? 殺気?」


 ピーチが疑問の声を上げたその時だった。彼らを囲むように大量の兵たちが姿を見せる。


「穏やかじゃないわねぇ。なんなのこいつら?」

「とりあえず毒殺しますか?」

「はは、ヘラドンナちゃん過激~」

「ぶっ倒すって意見なら賛成だけどな」

「フレム、いきなり殴っちゃ駄目ですよ」


 突然の兵の登場だが、彼らは意外にも落ち着いていた。戦力だけで見れば千以上はいそうだが、特に動揺している様子もない。


 そんな中、仰々しい甲冑を身に纏った騎士が前に出てきて叫び上げる。


「大人しくしろ! 帝国軍だ! 物資と女をよこせ! 抵抗するなら殺す!」

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