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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第六章 神薙家VS明智家編

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第四六六話 公安零課

誤字脱字報告をオンにしてみましたがこれすごいですね。かなり便利です。

そして誤字脱字の報告をしてくれている皆様本当にありがとうございますすごく助かってます!

 ゲンとキトウが出した手帳には、この日本を支えるとされている大地母神イザナイを模した紋所が刻まれていた。これはまぎれもなく皇家が誇る家紋であり、しかも陛下のサインもしっかり残されている。

 

 そして手帳に記された名称もただの警察のソレではなく――


「こ、これはまさに皇天(こうてん)陛下の……なぜそんなものが、しかも公安零課」

「あ、ありえん! そんな公安聞いたこともない! これは偽物だ! お前ら、よりにもよって昊天の名を語るとは!」


 サトメが狼狽し、コウメイは怒りに任せて叫んだ。正直そんなことを言えた義理ではない。


「それは些か見苦しすぎるんじゃないのかい? あんただってこれが偽物かどうかぐらいわかるだろ?」

「まぁ、とは言え俺たちを知らないのも無理はないか」

「何せ俺たちはこんな時のために、秘密裏に組織されたようなもんだからな。ま、とは言え普通は人外が多いんだが」

 

 二人が言うように公安零課は皇天直属の秘密組織である。活動内容に関しては国家に仇なす存在に対しての対処――まさに公安といってもよい部署ではあるが、しかしその存在は公安内においても秘匿されている。

 所属する人間も表向きはゲンのような弁護士やキトウのような刑事、その他にもマスコミ関係者や格闘家であったりなど様々である。

 

 公安零課と表の公安との最も大きな違いは扱う対象だ。公安も反政府組織などを相手取ったりするが、零課はその公安ですら扱いきれない案件が出てきた時に行動に出る。

 

 それは例えば日本の各地に存在する(あやかし)であったり、異能者であったり、向こうからの帰還者であったり、時には暴走した神も相手することすらある。

 最もそういった中には零課ですら手に負えない強力な物も出ることもある。それ故に神薙家とも繋がりを持っているのである。


「ま、今回みたいなのは俺らにしてみれば珍しいが、しかし表の公安さえも機能しなくなってるとあっちゃしかたないわな」


 目を眇め、キトウが嘆くように言った。本来なら明智家による暗躍はその公安こそが対処すべき案件だ。だが、今やそれもこのコウメイの手によって掌握されてしまっている。いや、これは最早乗っ取りと言っても良いだろう。


「そ、そんな。貴方、どうするのよこれ!」

「落ち着けサトメ。ふん、なるほどな話は判った。だが、だとしたら今すぐこんな馬鹿げたことはやめるんだな。お前らが動けないと言うなら、この私が陛下に直訴してもいいのだぞ?」

「は? おいおい、この期に及んで何言い出してるんだあんた?」


 肩をすくめキトウが煙草を咥える力を強めた。だが、コウメイはこの状況においても邪悪な笑みを湛えのたまい続ける。


「ふふ、寝言は寝てから言え。まさにその言葉をお前たちに捧げてやろう。お前らはこう言ったな? 陛下直属の公安零課だと? それがそもそも問題なのだ。よく考えてみろ、ここは神聖なる法の場だぞ。そこに陛下の手が及ぶなどありえない! 明らかな越権行為だ! こんなことが表沙汰になったらどうなるか、わからないほどの馬鹿ではないだろう?」


 それを聞いていたクズシが、やれやれと嘆息した。キトウとゲンも顔を見合わせ苦笑する。

 その神聖な法廷に武装集団を投じておいてどの口がいうのかといったところだが。


「そ、そうよ! まして裁判中にこんな真似許されないわ! 訴えてやる!」

 

 コウメイに追随する形でサトメもわめき出した。やはり似た者夫婦であるが、ただ言っていることはあながち間違っているわけでもない。

 確かに本来の(・・・)法廷であるなら零課のような組織は迂闊に手を出せない。


「カカッ、なるほどな。いやはやこれは愉快だな。なぁゲンさん」

「あぁそうだな。知らぬが仏とはまさにこのことか」

「な、何を笑っている貴様ら! 立場をわきまえろ!」

「立場? それはこっちの台詞ですけどね。まぁでも、未だに気がついてないのは中々滑稽ですな」


 ゲンの台詞に顔を歪め、拳をプルプルと震わせるコウメイだが。


「あんたもさっき見ただろう? お前らの悪行を晒したあの映像を」

「……なんだ、お前らが余裕ぶっているのはあれがあるからか。ふん、馬鹿らしい。あんなものはどうとでもなる」

「俺が言いたいのは内容のことじゃなく、劇を披露した役者についてですよ」

「何?」

「ふん、何よそれ。あんなヘボい役者がどうしたって言うのよ!」

「はは、ヘボい役者ですかい。その内の一人は世界を代表する女優なんですがね。それに、そのヘボと言っている役者に――お前らはすっかり騙されていたじゃねぇか」

「な、何だと?」

 

 コウメイの顔に動揺が走る。


「おかしいと思わなかったのかい? さっきまで悲鳴を上げていたのに、俺たち以外のマスコミ連中や傍聴人が既に不自然なぐらい落ち着き払っていることによ」

「……あ――」


 キトウの話に、ハッとするコウメイ。ただ妻のサトメは未だ理解しきれていないようである。


「どういうこと? 何を言っているの?」

「……判らないのか? こいつらはこう言っているんだ。私たちの息がかかった連中以外、全員役者だと」 


 ギリッと唇を噛むコウメイ。サトメが両手を口に添え声を震わせる。


「そ、そんな……」

「ま、そういうことだ。正確にはお前らの関係者と俺たち零課以外は全て役者だってことだけどな」

「ありえない! 何を馬鹿なことを言ってるの! ここは天下の大法廷よ! それをそっくり役者に変えるなんて無理に決まってる!」


 コウメイも黙考し一人唸っていた。サトメの言っている事も確かに一理あるのだ。この裁判所には当然、神薙家の裁判には関わってない人々も多数いる。それらの人々全てを欺くなど、いや、それ以前にそんなことをしてしまってはそれこそ大問題だ。


「だから、そこからがずれてるんだよ」

「貴方! さっきからふざけたことばかり! 異議ありよ! 一体何が間違っているのか! そこまでいうなら証拠で示しなさい!」

「証拠? そんなものはずっとここにあるじゃねぇか」

「またわけのわからないことを……一体どこにそんな証拠があるっていうの!」

「だったら逆にきくが、お前らはここまでのことを、いつから本物だと思い込んでいたんだ?」

「……は?」


 キトウのそれはあまりに奇妙な問いかけだった。だが、それこそが明智家を追い詰める証明であり。


「……キトウ殿、もういい加減茶番はいいでしょう」

「はは、いやいやすまねぇクズシさん。一度こういうのやってみたかったんだよ」

「全くお遊びがすぎるぞキトウ。さて、なら教えてやろう。先ずはこの法廷、これ自体、そもそも偽りだ」

「……貴方、何を言っているの? これが偽り?」

「……まさか、まさか! この建物そのものが!」

「あぁそのとおりさ。この大法廷を含め、裁判所そのものが、本物そっくりに作られた偽モン。言うなればセットって奴だ」

「はい? はい? 貴方何言ってるの! 頭でもおかしいの? 馬鹿言ってるわ! 私たちは確かに裁判所まで来たわ! いつもきてる道よ! 途中の道も光景も、建物も、全ていつもどおりで間違いなかった! そんなところにそっくり同じものがあったら気がつくに決まってるでしょう!」

「あぁ、だから途中の道から、建物に至るまで、その全てをそっくりそのまま再現した。全く別の土地を使ってな」

 

 その真実に、サトメは呆気にとられ、口を半開きにしたまま固まってしまった。


「信じられないといった面だが、真実さ。ここに来る前に地下のトンネルを通るだろ? あそこから誘導は始まっていたのさ。アイキー革命の一部の技術は俺たちの零課でも採用してる。それで地下のトンネルそのものを別な場所に切り替えて、この箱物まで移動させたのさ。勿論このあたりに住んでる人間も、この中の職員も押しかけたマスコミまでこっち側は全て役者が演じていた」

「ば、馬鹿な! 馬鹿な馬鹿な! そんな、ふざけた真似を! 大体、そんなことをしても、神薙家が逮捕されたという事実は変わらんだろ! 裁判の日程も大々的に公表されている! 偽物の裁判なんてしていたら世間は大騒ぎだ!」

「ま、それに関しては否定しないが、ただ、神薙家の逮捕に関してはどうかな?」

「何を言っている! マスコミも使いワイドショーでも取り上げられ、私だって会見を!」

「おいおい、何だまだ気がついてなかったのかよ? 俺は確かにこう言ったはずだぜ? 一体いつから思い込んでたとな」

「いつからだと? そんなもの今こ――あ、あぁああぁあああぁああぁあああぁあああぁ!」


 頭を抱え、コウメイはその場に蹲った。サトメはわけもわからずただただポカーンとしているが。


「馬鹿な! バカな馬鹿な! つまり、あの時から、神薙家を逮捕した時から!」

「あぁ、そういうことだ。この作戦はその時から全て始まってんだよ。ま、おかげで一部の味方も騙すことになったがな」


 そう、そうなのだ。確かにコウメイも記者会見に望んだ。それが全国的に放送されているようにも感じられた。


 だが実際は、それらは全て明智家とその関係者のみに伝わる形でしか放送されていなかった。勿論その際に開かれた記者会見もマスコミもココロエが手配した役者たちだ。つまり世間的には神薙家が逮捕されたことなど一切伝わっていないのである。


 尤も、一部の味方、ミカや監督などは、ココロエの考えもあり神薙家が逮捕されたものとしているわけだが、これはより演劇にリアリティを持たせるためである。


「そんな、全てが偽物だったというのか!」

「あぁ、それなら安心しな。本物も当然混じっているさ。例えばお前らの密談の様子を映した映像。そしてあの記者会見も一部の音声を除いては本物だ。そして、今この場で起きている事も、しっかりネットで配信済みだ。いやぁ本当。最近は便利になったよなぁ。ネット様々だ」

「な、な!」

「それと、こんなのも出回っているぞ」

 

 そう言ってゲンがタブレット端末の画面を二人に向けた。それに一番驚いたのはコウメイであり。


「こ、これは! この施設は!」

「あぁ、お前らが怪しい研究やら武器や薬の密造やら、そんなのをしてた場所さ。勿論とっくに潰されちゃいるが、お前らに関係する証拠は押収させてもらったし、これに関しても大々的に配信させてもらってるぜ」

「そういうことさ。残念だったな。これでお前たちも終わりだ」

「あ、あぁ、あぁ! あぁああぁああぁああぁあああぁあ!」


 そして全てを悟ったコウメイの絶叫が法廷内にこだまするのだった――

明智家との対決も決着が近い!か?



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