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第四四三話 炎帝、大魔導師、大魔杖師

感想を頂き気が付きましたがいつのまにか総合話数が500話を超えてました!

これも読んくれる皆様の応援あってこそ!本当にありがとうございます!


※サトル関係の話においてサメジの使用していた天導門の順位と魔法名を変更いたしました。

旧:天導第一〇門ハイドロスペクタクル

改:天導第一一門マカラハイドロイド

「バットも気絶してるし、今回は私達の負けって事で認めておいてあげるわよ」

「なんだそりゃ? お前らから仕掛けてきたくせに随分と偉そうだな」

「あんたほどじゃないわね。え~と確か、フレムだっけ?」

「な!? ち、違う! 俺様は、ナガレ先生様だ!」


 気絶しているバットを呆れた目で認め、グレープが敗北宣言した。

 ただ、その口調はかなり高慢であり、フレムもついつい突っかかってしまったようだ。

 

 尤もその後のグレープの切り返しで、逆に慌てることになってしまってるようではあるが。


「フレム、どうやら貴方が戦ったバット以外にはもう正体が知られているようですよ」

「ふぇ?」


 間の抜けた声を残し、ナガレを振り返る。そこにはいつもの彼の和やかな笑顔があった。


「まぁ、気づかないほうがどうかしてるのだけど――でも、ピーチ、あんたには判ったわよね? 確かにこっちは退いてあげるけど、私達の勝負はどっちが上だったか」

「……へ?」

「――いや、へ? じゃなくて、どう考えても、私のほうが上だったでしょうが!」

「ごめんねグレープ、それはちょっと意味が判らないんだぁ」

「はぁ~~?」


 そんなやりとりに、見ていたビッチェがクスりと笑った。彼女は、ふたりの対決もしっかりと見ていたわけだが、その上で彼女の発言が微笑ましく思ったのだろう。


「くっ、本当あんた腹立つわね! だったらそこのナガレってのに聞いてみなさいよ! そうすればはっきりと――」

「いえ、別に私もピーチが負けていたとは思っていませんよ」

「は、はぁ? 何言ってんのよ! ピーチが危険だと判断したから! 途中で止めに入ったんでしょう!」

「いえ、あれはあくまで周りの被害が大きくなるような魔法を貴方が行使しようとしたからです。これがもし他に誰もいない状態で、貴方とピーチだけが戦っていたのなら止めるような真似はしませんでしたよ」


 ポカーンとした表情をグレープが見せる。あまりに堂々とナガレが言うものだから、一瞬思考が停止してしまったのかもしれない。


「あ、あんた何言ってるのよ! 私が使ったのは天導門よ! 例え一〇門でも、都市一つ程度軽く消し炭に出来る威力があるのよ!」

「確かにかなりの威力を秘めた魔法なのは確かなようです。しかしその力を十全に引き出せるかどうかは使い手次第では?」

「な、何よそれ。私だとそこまでじゃないと言いたいの?」

「そうですね。先程のを見る限りは、あれで都市を消し炭というのは難しいでしょう。そしてあのぐらいの力であれば、貴方のいうところの炎帝とまで呼ばれる存在であれば、ここまでの大仰な術式である必要はないのでは?」

「――ッ!?」

「どちらにしても、ピーチ一人であれば、あれは幾らでも防ぎようはあったはずです。ただ、それでも余波が広範囲に及ぶことを察することが出来たので、そこをピーチは懸念したようですが」

「……いいたかないけど、そんなのはあんたがいればどうとでもなるんじゃないの?」

「勿論そうなっていれば私も動きは致しますが、ピーチはリーダーとして最悪な場合を考慮しているわけで、私がいるから大丈夫とは考えないでしょう」


 当然のようにナガレが言うと、グレープが、クッ、と奥歯を噛み締めた。


「私が、もし一対一でやっていたなら、そいつに負けていたといいたいの?」

「はっきりとは断言いたしません。それに貴方の魔法の腕は確かにかなりのものなのでしょう。今の年齢でそこまで高度な魔法を取得している人物などそうはいないと思います」

 

 ナガレは素直にグレープの魔導師としての実力を買い、嘉賞(かしょう)する。

 だが、褒めるだけではない。ナガレはしっかり臧否を告げる。


「ですがソレが必ずしもいい事ばかりとは言い切れません。貴方には魔法の技術を追い求めるあまり欠けているものがある。現にピーチは先輩として貴方の欠点は示唆していた筈です。どうやらそれを素直には受け取らなかったようですが」


 グレープは目を伏せ、プルプルと肩を震わせた。ふっくらとした唇をじぃっと噛み、屈辱にまみれているのがよく判る。


 ナガレが全てを語らずとも、理解したのであろう。そういう意味ではグレープは賢い娘とも言える。


 そしてピーチは確かに言っていた。グレープの魔法がパフォーマンスだと。

 これに全てが現れていた。グレープは確かに数多の魔法を操っている。この年令で炎術式を第一門まで使用し、その上位に当たる紅焔式を使いこなし、おまけに天導門まで使用してみせた。


 だが、これは逆に言えばあまりに先急ぎ過ぎなのである。その為、一つ一つの術式をある程度(・・・・)まで使いこなしたら次のステップへと進んでしまう。

 

 これは魔力を操作するという一点に集中し鍛え続けたピーチとは対極に位置する。つまり数は揃っていても一つ一つの質は軽いのである。


 故にグレープが最後に見せたエンジェルフレア一つとっても、ピーチ一人であればいくらでも防ぎようはあった。ピーチはやろうと思えば自分を囲む魔力の壁ぐらいは形成出来る。


 尤も、多くの魔法が扱えるということはそれだけ戦術の幅も広がる事に繋がるため、あのまま続けていたらピーチが勝っていたのか? と言われればそれはまた別問題だ。


 ただ、炎帝を目指すのであれば今のグレープのやり方では厳しいのは確かであろう。

 

「冗談じゃないわよ、なんで私が、どうみても年下の子供や、魔法の腕が明らかに劣るピーチに指摘されないといけないのよ――」

「うぅ、グレープってばなんでそんなに私に、もしかして、私のこと嫌いなの?」

「はぁ~?」


 グレープが目を眇め、何を今更といった顔をピーチに向けた。


「むしろ、嫌われてないと思ったわけあんた?」

「え! そうなの!」


 これに関しては周りで聞いていたマイやメグミなども苦笑いである。見ていれば明らかだからだ。


「私は腕もないのに偉そうにして先輩面していたあんたが大っ嫌いなのよ」

「せ、先輩面なんてした私?」

「あの程度の腕しかないくせに大魔導師になりたいなんて偉そうな事ばかり言ってたし、そりゃ、今は多少強くなったみたいだけど、それでもね! あんなの私は魔法なんて認めないわ! 杖を鉄球に変えて殴りかかってくるとは馬鹿じゃないの! それなのに炎帝になりたいなんてよく言えたわね!」

「それは確かによく言えたな……」

「……無謀がすぎる」

「え、炎帝ですか? う、う~ん」

「あ、でも、でも、これから頑張ればもしかしたら!」

「いや、無理でしょう。こっちの世界のこと詳しくない私でも無理って思うし」

「一流の戦士にならなれるかもしれないけど……」

『今のところ杖で殴ってるだけであるしな』

「あはは、みんな辛辣~」

「なんか皆酷い!?」


 ナガレ以外は、ピーチが炎帝になるという点に関していえば満場一致で無理という判断であった。


 そのことに嘆くピーチであったが。


「あ、でもね。私もう炎帝は目指してないから安心していいよ」

「……は? 目指して、ない? でもあんた、今でも大魔導師になりたいとか言ってるじゃない!」

「え? うん、だから大魔導師は目指してるけど、別に炎帝にはこだわってないかなって」

「……何それ、本当、あんた意味分かんないわね。でも、大魔導師だって無理に決まってるでしょ? それすらもおこがましいわよ」

「え! うそ、そ、そんな事ないよねナガレ~!」


 グレープに否定され、縋るような目をナガレに向けるピーチだが。


「そうですね……私ならきっとピーチであれば、大魔杖師(・・・・)にならなれると思いますよ」

「そ、そうよね! 頑張ればなれるよね! 大魔導師(・・・・)に!」


 ナガレはニコニコしたまま、特に何かを指摘することはなかった。


「ほら! やっぱり私にも慣れるわ大魔導師に!」

「あ~、もういいわよ。何か馬鹿らしくなってきたわ」


 そういいつつ、一旦目を伏せ。そしてどこか決意めいた視線をピーチに送った。


「だけど、覚えておくことね。今回はリーダーがこんなだから退くだけど、扱うのが物理だとしても、次は先輩を圧倒してあげるから」

「――うん、じゃあその時はまた先輩としてグレープを手解きしてあげるわ」


 こうしてピーチとグレープに関しては一旦の決着を見る。尤も、確執はまだ残ってはいそうな気もするが――


「にゃん! カイルといったにゃん」

「あ、コラットちゃんおいらの名前覚えてくれたの? 嬉しいなぁ」

「覚えるに決まってるにゃん! こんな辱めを与えて、絶対に、絶対忘れないにゃん! 今度あったら絶対殺すにゃん!」

「え? それよりデートしようよ~」

「ふざけるなにゃん! 殺す! 絶対にゃん!」

「じゃあ殺せなかったらデートって事でいい?」

「……お前、頭おかしいのかにゃん?」


 こうして、カイルとコラットの間でも、妙な因縁がのこったりしたが――


「それでは、私達は一足先に戻りますね」

「はいはい、バットが起きる前にさっさといきなさいよ。起きたら面倒なんだから」

「にゃん! お前たちの顔なんて見たくもないにゃん!」


 結局襲撃してきた方のバット達が迷宮に残り、ナガレ達が先に戻るという奇妙な状況になってしまった。


 尤も、グレープの言うようにバットが目覚めない以上仕方のない事なのかもしれない。


 どうやら、ナガレに大して執着があるのはナンバーズのエグゼと彼に従服しているバットだけであり、グレープやコラットは一応仕事の一環として付き合っているがそこまで真剣に取り組んでいたわけでもないようだ。


「あ、そういえばグレープ。その、師匠、オレンジ師匠は、げ、元気かな?」


 帰路につこうとする一行であったが、ピーチがどこか窺うようにグレープに尋ねる。

 

 すると、グレープは目を合わすこともなく、

「師匠なら、死んだわよ」

と、そう口にした。

迷宮ももうすぐ終わり、そして間もなく本格的に地球側の話を展開していく事になりそうです!

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