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第四三六話 特級ランクの刺客達

ナガレ側にもどります。

 聖剣エクスカリバーの力添えで、古代迷宮の隠し地下通路を通り、試練に導かれた一行。 

 そこではキングアーサー率いる円卓の騎士達との戦いが待っていた。

 そして、一三人の円卓の騎士を倒し、更にエクスカリバーの使い手であるメグミもキングアーサーに見事勝利し、戦利品として聖剣エクスカリバー専用の鞘と、キングアーサーが愛用していた抗菌消臭機能つきのウィガールという鎧を手に入れた。


 こうして、キングアーサーと円卓の騎士が結集した力によって、隠し地下通路のあった広間にまで戻ってきたわけだが――


「やはり私の思っていたとおり、そこから出てきたか。待っていたぞ史上初のFランク冒険者とその仲間たち」


 ナガレ一行が戻るのを判っていたかのように、男の低めな声が広間に広がった。


 声は彼らから見て正面の出入り口側から発せられたものだ。視線が一斉に向けられる。

 声を発していたのは黒いローブに黒いマントといった全身黒ずくめの男だ。


 長身痩躯で顔は骨ぼったい顔をしており面長、髪の毛はマントの裾のように先が広がった黒髪で目の色は充血したように紅い。

 

 そして彼の両肩から少し下がった位置にも二人。一人は猫耳の獣人少女。くるくるとした銀青色の癖毛が特徴で背は低め。クリっとしている瞳の虹彩は銀でシャープな体つきをしていた。

 Tシャツにショートパンツいった出で立ちで健康的な美脚を惜しげもなく披露している。

 ただ、シャツの盛り上がりは無くかなり薄めである。


 三人目は新鮮な葡萄を思わせる色彩に染められたローブ姿の人物。ただ、フードで顔を隠しているので容姿までは判らない。


 ただ、先端に火の鳥の意匠が施された杖を持っているため、恐らく魔法を扱うのが得意なのだろう。


 さらにローブにしても上は隠れているが、丈が短い為、太ももから下は全く隠れていない。スラリとした美しい脚線美からして、脚には相当自信があるのだろう。


 それゆえに敢えて見せているのかもしれない。どちらにせよ脚付きを見るに女性である可能性は高いと思われる。


「それにしても、一体誰なのかしら?」


 入り口から少しずつ近づいてくる三人を認めつつピーチが呟いた。

 だが、この三人を知ってる人物はここには誰ひとりとしていない。


 ただ、少なくともナガレとビッチェは、彼らの存在には気がついていたようであり。


「……直接は知らないけど、同業者」

「そのようですね。それにしても中々粘り強い方々のようです」

「そ、それって先生はあの三人に気がついていたって事ですか!?」

「……私が気がついていたんだから当然だろ」

「うっせぇ、お前には聞いてねぇよ!」

「まぁまぁフレムっち」

「う~ん、でもビッチェ、同業者って事は私達と同じ冒険者って事?」

「……それもあるけど――」


 相変わらずのフレムに構うのを止め、ビッチェはピーチの疑問に答えようとするが。


「ふむ、それにしても随分と待たせてくれたな。最初からお前たちがどこへ行ったかなど読めていた為、ここで待たせてもらったがおかげで少々退屈だったぞ」

「え? ということはあいつらここの隠し通路の事も私達が試練に挑んでたこともお見通しって事?」

『だとしたらとんでもないであるぞ。あの空間はどのような鑑定をしても決して見破れない場所。それを見破ったとなると、相当な使い手である可能性が高い』

「油断ならないって事ね……」

「ふ、雰囲気も何か不気味です」


 黒尽くめの男の言葉によって、マイ、メグミ、アイカの表情に緊張が走った。

 エクスがここまで言うということは、もしかしたら円卓の騎士以上の猛者なのかもしれない。


「バット、さっきから何言ってるにゃ? むしろバットがここにはいないと言ったから、コラット達はわざわざ迷宮内を行ったり来たりさせられたにゃ。ここに戻ったのも、三人で相談して一旦落ち着いて考え直そうという話になって、丁度近くにこの広間があったからにゃ~」

「…………」

『…………』


 その場にほんのひと時の静寂が訪れた。


『前言撤回である。あれは馬鹿だ』

 

 プッ、とほぼ全員が吹き出した。


「クッ、この馬鹿猫! 全てが台無しではないか!」

「なんて言い草にゃ! 馬鹿と言う方が馬鹿にゃん!」


 遂には仲間同士言い争いを始めるふたり。横で見ていたローブ姿の魔法使いは頭を抱えた。


「ふ、ふん。まぁいい。あくまで私の目的はFランクになったというナガレという名の冒険者だ」

「何!? 先生に何のようがあるってんだ!」

 

 すると脊髄反射でフレムが食って掛かる。

 その姿に、何? とバットの目が彼に向けられた。


「先生だと?」

「おうよ! こちらにおわす御方こそが世界一立派で尊敬たる、このフレムの先生様だ!」


 ナガレに手を向け、そして得意気に口上を述べる。肝心のナガレに関してはいつもどおり自然体でいるわけだが。


「……その少年が、ナガレ? ふふっ、ははっ、あ~っはっはっはっはっは!」


 だが、フレムの話を聞き、バットは大口を開けて笑いだした。

 その姿に目を白黒させるフレム、そしてピーチであり。


「ちょっとあんた、何がおかしいのよ?」

「フッ、これが笑わずにいられるか。全く、私も舐められたものだな。まさか本気でこの私がそのような虚妄に引っかかると本気で思っていたのか?」

「は、きょ? は?」

「嘘のことですよフレム」

「な、なんだって! おいふざけるな! 俺が一体何を嘘付いたっていうんだ!」

「フッ、そのような粗暴な振る舞いで、うつけのフリをしたとしても、私の目はごまかせない。そう、私は全てを見抜いているのだよ。フレムなどという名前を語っている貴様こそが! 実はFランク冒険者のナガレだという事をな!」

「……え?」

『…………は?』


 ほぼ全員が、唖然とした。フレムに関しては戸惑ってさえいる。


「……どうしようナガレ、本格的な馬鹿が来た。しかもあれ多分同じ特級……」


 ビッチェは同業であり同じ特級であることを恥ずかしく思っているようだ。尤もバットに関してはAランクの特級ではあるが。


「中々個性的で面白いではないですか」

「……でもナガレ、あんなのと間違えられている」

「いえいえ、むしろ今のフレムの実力を見抜いているとしたら、それはそれでかなりの慧眼の持ち主かもしれませんし、少し様子を見てみましょう」


 そんな事をいいつつも、どこか状況を楽しんでいそうなナガレである。


「バット、本当にあれがナガレで間違いないかにゃ?」

「勿論だ。コラットだって私の能力は知っているだろう? それ故にこの私の目は完璧だ。それに私は鑑定などなくても本能で相手の実力を感じ取ることが出来る。これまでも一〇〇パーセントの確率で相手の実力を見抜いてきた」

「どうしよう、聞けば聞くほど滑稽にしか思えないわ!」


 ピーチが思ったままを叫んだ。そしてこれに関してはほぼ全員が同意である。


「それにだ、情報としてナガレという冒険者が男である事は判っている。その時点でそこのやたらとフェロモンをばら撒いているビッチェや、他の女たちは除外される」

「……お前、私の事は判っていたか」

「当然だ。ナンバーズについて、いくら末端とはいえ私が知らないわけがない」


 その口ぶりには、どこか皮肉めいたものも感じられたが、彼女のいうとおりの特級冒険者であれば知っていても当然だろう。


「そして、今、私を騙すために矢面に立たされていた少年に関して言えば、先ず絶対にありえない。私にはわかる。正直なぜこのような迷宮にまでついてこられたかわからないほどに、彼は弱い。その辺の農奴でも連れてきたほうがまだ使えるのではないかと思えるほどだ」


 この発言に、ナガレを除いた全員が頭を抱えてため息を吐いてみせたが、バットは気がついていない。


「そうなると後残されたのは二人という事になるが、ナガレが獣人でないのはわかっている以上そこの弓持ちも候補から外れる。そうなれば消去法で見たとしても、ナガレの正体はそこのフレムを名乗る男以外考えられないのだよ」


 バット、ドヤ顔である。

 だが、そんな彼にフレムが、やいやいやいやい! と躍り出て。


「さっきから聞いてりゃおかしなことばかりいいやがって! いいか耳の穴かっぽじってよく聞きやがれ! ここにおわす御方はかの――」

「無駄ですよ、もう諦めましょう」


 バットに向けて啖呵を切りだすフレムだが、そんな彼を止めるようナガレが口をはさみ。


「どうやらこれ以上ごまかし切るのは不可能なようですよ先生。ここは一つ覚悟を決めましょう」

「…………へ?」


 遂にはそんな事をナガレが言い始め、目が点となるフレムなのであった――

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