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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第六章 神薙家VS明智家編

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第四二三話 赤の騎士

 ピーチが第九神殿の試練を見事クリアーした。神殿が消え、出てきたピーチは中々のダメージを負っていたがこれはアイカとローザによる魔法により治療を施される。

 

「ありがとう、こういう時に聖魔法が使える仲間がいると助かるわよね」

「わ、私なんかでもお役に立てて嬉しいです!」

「アイカは熱心ですから。魔法もどんどん覚えていってますし十分役立ってますよ」

「し、師匠……」


 思わずうるっとするアイカでもある。ローザもアイカも直接神殿への試練には挑むことが出来ないが、彼女たちの支援なしでは全ての試練の突破は難しいことだろう。


 そして治療も終え、再び階上の神殿を目指す。

 長い階段をのぼり、第八神殿にたどり着く、が――


「あれ? あんた今度は、俺こそが! とか言わないのね」

「そりゃ先輩、俺は何と言っても秘密兵器ですからね。秘密兵器じゃない先輩と違ってガツガツしてないんですよ」

「あんたそういうところがわりとイラッとくるわね」


 頬をひくつかせ目を細めるピーチ。フレムも秘密兵器というのがかなり気に入ったようだが若干ウザさが増している。


「フレム」

「あ、先生! 任せて下さい! この秘密兵器のフレム! 出番が来たときには力の限り戦わせて頂きます!」

「それは良かった、それでは早速その秘密兵器の出番ですよ」

「へ?」


 ニコリと微笑み、次の試練にフレムを指定するナガレ。一方フレムはぽかんとした表情であり。


「え? もうですか?」

「はい、存分に力を奮ってきてください」

『秘密兵器はや!』

 

 ビッチェを除いてほぼ全員が声を揃えた。何せ下の神殿で秘密兵器宣言があった直後のこれである。


「……ほら、待望の秘密兵器(笑)の出番だぞ。とっとと行け」


 ビッチェのそこはかとなく小馬鹿にしたような物言いに、聞いていたピーチやメグミ、マイなどが、プッ、と吹き出した。


 フレムは若干頬を紅潮させ、そしてビッチェに食って掛かる。


「テメェ! 絶対馬鹿にしてるだろ!」

「……うるさい秘密兵器(笑)、早くいって砕けてこい秘密兵器(笑)」

「なんでやられる前提なんだよ!」

「う~ん、相変わらずビッチェちゃんってば辛辣~でもそこがたまらないね、痺れるね!」


 フレムを罵るビッチェの姿に何故か興奮するカイルである。

 

 何はともあれ、こうなったら即行で決めてきてやるぜ! 見ていやがれ! と捨て台詞を残してフレムは第八の神殿へと向かうのだった。





「よく来たなーーーー! 俺こそがこの第八の神殿を護りし円卓の騎士! 赤き炎の騎士イロンシード様だぁああぁーーーー! ファイヤーーーーーー! さぁ貴様の名前をいえぇええええーーーー! お前の熱い血潮! 灼熱の(ソウル)を俺に聞かせてみろーーーーーー!」

「…………え?」


 その男を見た時、思わずフレムの目が点になった。


「だから名前だぁああぁあ! 貴様のソウルネームだーーーー! それをぃいいぃいいえええええぇえええ!」

「え? あ、はい、フレムです……」

「ファイヤーーーーーーーーー!」


 フレムの肩がビクンッと震えた。恐ろしく冷静に、何だコイツは? と疑問に感じるフレムの姿がそこにあった。

 

 同時に暑苦しいとも思った。あのフレムがだ。

 しかし、その相手は見ようによってはフレムにも良く似ている。


 まず髪の毛がフレムと同じように赤く、その形も炎を思わせる。ただ、フレムよりも更に荒々しく轟々と盛んに燃え続けているようなそんな髪型だ。


 瞳の色も灼熱のごとく紅く、やたらと大きく眼力が強い。 

 肌の色は赤黒く、逞しいがシャープな体付きでもある。


 そして全身を纏う鎧、これはもう赤一色だ。上から下まで赤である。そして手に持たれた長槍もやはり柄も含めて朱色に染まっており、鎧にも槍にも炎をモチーフとした意匠が施されている。


「いいぜ! 気に入ったぜ! その熱いソウル! ヒートなネーム!」


 何より特徴的なのはその叫びまくる喋り方だ。フレムも声は大きい方で、やかましいと言われることもあるが、この男に関してはそんなフレムが煩い、と思ってしまうぐらい騒々しい。


 おかげで逆にフレムが妙に冷静になってしまった。テンションが吸い上げられてしまったかのようなそんな気分である。


「よっしゃぁああぁあ! 俺はお前が気に入ったぜ兄弟! 俺達は今日からブラザーだ! 熱い魂のな!」

「いや、別にそれは、結構です」

「遠慮するな兄弟ーーーー! そして当然、兄弟なら拳と拳で語り合う! そうだろーーーー!」

「なんでそうなるんだよ!」

 

 突っ込んだ。思わずフレムが突っ込んだ! いつもは突っ込まれる事も多いフレムだが、兄弟を語るその男のウザさや暑苦しさに突っ込まざるを得なかったといったところだろう。


「そもそも拳と拳って槍構えてるじゃねぇか!」

「アッハッハ! こまけぇ、こまけぇぜブラザー! テメェ! その髪の色に何を誓う? 何を思う! 何を成す! 赤い同士が尻の穴の小さくなるような事いってんじゃねぇええぇええぇええ! さぁぶち込むぞ! おらぁああぁあああ!」


 は? と惚けるフレムに、赤き炎の騎士イロンシードが長槍を脇に構え突撃してきた。


 穂先が炎に塗れ、軌跡に炎を残しながら凄まじい圧力がフレムに迫る。


「チッ!」


 しかしフレムはその槍の一撃を躱す。通り過ぎる紅の脅威。暫く進んだ先で滑るようにターンしながら再びフレムに向けて突撃。


「またかよ! ワンパターンなんだよ!」

「ヌハハハッ! それはどうかな兄弟!」


 イロンシードが狡猾な笑みを浮かべた。一見先ほどと同じような攻撃にも見えるが――なんと赤の騎士は突撃しながらまだ槍の射程範囲ではないにも関わらず槍を連打。


 その一突き一突きに爆発が生じ、爆風によって槍にまとわりついていた炎が高速で押し出されていった。


 つまりフレムへ向けて次々と炎が伸びていったわけである。


「チッ! 使ってくる技も暑苦しい技だ!」


 フレムはそれを何発か被弾してしまうが、それでも槍の直撃だけは避けてみせる。


(索眼でもこれといった弱点がないタイプか……)


 フレムは索眼で相手の弱点を探ろうとするが、やたら熱い男にも関わらず炎の大きさはそうでもない。


 彼の双剣術が全く通用しないという程ではないが、悠長に構えているわけにもいかない。


「なかなかやるようだがぁああぁああ! 避けてばかりじゃああぁあ! 勝負にならないぜーーーー!」

「そうだろうな」

 

 更に二往復三往復と続くイロンシードの突撃。

 動作に入った瞬間から射程外からでも容赦なく撃ち込んでくる炎が厄介ともいえた。


「読めたぜ」


 だが、フレムは馬鹿だが戦闘に関して言えばただの馬鹿でもない。

 この攻防の中でも既に光明が見えていた。


「残念だよ兄弟! まさかこの程度だとはねーーーー!」

「俺もがっかりだよ、円卓の騎士なんて偉そうな事を言いながらこの程度とはな」


 だが、再度突撃してきたイロンシードへフレムが取った行動は、敢えて自分も突っ込むだった。

 勿論それでは相手の遠距離からの炎の攻撃を一方的に浴びることとなるが、これの一発一発のダメージは大したことがない。


 結局のところ、イロンシードにとって大事なのは槍での一撃を叩き込むこと。

 だからこそ、この男は常にフルスロットルで行動しているのだろう。


 だが、それは逆に言えば――


「ぐぬぅううぅうううう!」


 フレムの反撃を受けた赤の騎士が大きく吹っ飛んだ。

 

「テメェの攻撃は直進的すぎるんだよ」

 

 宙を舞うイロンシードを眺めながらフレムが言い放つ。

 確かに赤い騎士の攻撃パターンは単調だ。


「なるほど、少しはやるって事だなーーーーーー!」


 だが、イロンシードはくるりと回転し、着地と同時に足下から爆発。


 かと思えば、赤い騎士の姿がフレムの視界から消えた。


「なに?」

「あれが本気と思ったなら大間違いだブラザーーーーーー!」


 直後、背後から振られた槍がフレムの側頭部を直撃、爆発、地面を滑り擦過音が鳴り響く。


「悪いな兄弟! あれでも俺の半分も力は出していなかったのさーーーー! さぁここからがぁあああ!」

「そりゃよかった――俺も本気じゃなかったからな」


 だが、倒れたはずのフレムが地面を蹴り一気に肉薄。その闘志に燃えた双眸でイロンシードを捉え――


「双連撃! 双転撃! そして、重ね目切りだぁあああぁあ!」


 スキルによる連続攻撃がヒットしていく。これといった目がなかった相手の一点に攻撃を集中させる事で無理やり目を作る芸当まで見せ、手応えも感じたが。


「うぉおおぉおぉおおお! 最高だーーーー! やるなブラザーーーー!」

 

 だが、倒れない。滑るように後方へ流されていったが、踏ん張りをきかせ大きく吠えた。


「だが、まだ終わりじゃないぜ! バーンベルト!」


 赤い騎士の槍技、地面に穂先を撃ち込んだ瞬間、爆発が連鎖しフレムに迫る。


「くそ! まだ余裕あるのか!」


 爆発は範囲が広くフレムも大きく避けるしかない。だが、どうやら爆発はただの誘いだったようで、フレムの避けた先にイロンシードは回り込んでいた。


 燃え上がる穂先、フレムに命中する度に爆発。纏めて被弾した事で今度はフレムが吹き飛ぶ。



 だが、倒れない。体勢を立て直し着地。


「炎を出せるのは、テメェだけじゃねぇえぞぉおおおぉおお!」


 そして、遂にフレムも叫ぶ。双剣に炎を纏わせ、炎双剣でイロンシードに攻撃を重ねる。


「いいぞブラザーーーー! 熱い! 熱いぜ! ソウルヒートだぜ! お前の熱い炎を、俺にもっと見せてみろーーーー!」

「言われなくてもやってやる! 炎双剣回転炎舞!」


 巨大な炎の竜巻が発生した。赤い騎士の全身が炎に飲み込まれ、更に双剣による回転攻撃も受け続ける。


「どうだぁぁあああぁあ!」


 吠えるフレム。吹き飛ぶイロンシード。そして、赤い騎士が地面に落下。


「よっしゃぁあああぁああ!」


 フレムが勝鬨をあげた。これで勝てたと、そう思ったのかもしれないが――


アリメンタ・(内なる戦炎を燃焼せし)イグニスソール(灼熱の太陽)ゥウゥウウゥウ!」


 イロンシードの咆哮のような叫び。かと思えば、赤い騎士の中から何かが打ち上がり、上空で動きを止め膨張し、小型の太陽のごとく様相に変化した。


「ふぅうううぅう、ブラザーーーー、認めるしかないぜ! 確かにお前はツエーーーー! だが、それもここまでだーーーー!」

「チッ、タフな野郎だな。大体、この球はなんなんだよ?」

「それは俺のソウルーーーー! 炎のソウルーーーー! そして、ブラザー、お前の負けが確定した瞬間だ。なぜなら、それが出ている間、俺の力は七人分に、つまり、七倍になるのさーーーー!」

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