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第四二一話 円卓の騎士を倒せ!

「お疲れ様、でも結構時間かかってたみたいね」

「やっぱり一三番目と一二番目だとぜんぜん違うって事なのね」

「……えぇ、まぁ、何というか――」

 

 ヘラドンナが神殿を出ると、待っていた皆が出迎えてくれたが、心配そうな表情ではあった。


 ただ、彼女としては少々返答に困るところである。何せ相手の実力が格下だったのは明らかなのだが、対ナガレの為に敢えてすぐには終わらせなかったのである。


「――時間は掛かりましたが、今後の成長に繋がる有意義な時間でした」


 なので微笑しつつ聞きようによってどうとでも取れる回答を見せる。

 

「なんということだ。私は恥ずかしい、悪魔だからきっと相手が弱かったとしても簡単に倒さず拷問に近い方法で甚振っているのではないか? とそんな最低な事を一瞬とは言えおもってしまった!」


 ガックリと項垂れ、自分を責めるメグミ。


(意外と鋭いですね……)


 そんな彼女を見ながら心のなかで感心するヘラドンナであった。


 そして、ヘラドンナも疲れているだろうと勝手に思った一行(勿論ナガレとビッチェ以外)は少々の休みを挟んだ後に、次の第一一宮殿へと向かった。


「ここが次の宮殿ね。なら、今度こそ私がチャレンジするわ!」

「あ、ずるいぞ先輩! 今度は俺が行く番なんだぜ!」


 どちらが先にいくかで揉めるピーチとフレム。

 すると、スッとその脇を通り過ぎる一人の少女。


「悪いけど、今度は私が行かせてもらうわね」

『キヒヒヒヒヒッ、キャスパ、マイと一緒に行く』


 はっ? と同時に声を上げるピーチとフレム。なんと次に名乗りを上げたのはマイとキャスパのコンビであった。


「ちょ、ちょっと待ってよ! それはルール違反じゃないの? だってキャスパも一緒だし」

「そうだぜ! それだと一人ずつの試練じゃなくなっちまう!」

「いえ、恐らく問題はないでしょう」


 キャスパが同行するということに対して、懸念を抱くフレムとピーチ。 

 だが、ナガレが会話に参加し、確信したように言いのける。


「そうですよねエクス?」

『うむ、そこのキャスパとかいう者は確かに自立している悪魔ではあるが、使い魔的位置づけが強い。それに常にその娘の肩に乗っておるしな。故に、魔物使いが使役している魔物を連れて行くのが大丈夫なように、平気であろう』

「な、何かその辺は意外と緩いのね」

「で、ですが何か納得出来ます」

「そうですね。猫ちゃんはいつもマイさんと一緒ですから」

「硬いことは言いっこなしだよね~」


 どうやらほぼ全員納得したようであり、ピーチとフレムに関しても、まだ納得できない? とビッチェが問いかけるが、それなら問題なさそうね、とピーチはあっさり引き下がり、フレムは、それでもやっぱり俺が、俺だったらすぐに決着が付いたのによぉ、などとブツブツいいながらもマイに先を譲った。


「それじゃあ、行ってくるわね」

 

 そしてマイが次の試練に挑み――





「我が名は歌う白鳥の騎士、ローエングリーンなり!」


 一人の女騎士が口上を述べる。白鳥のような羽の意匠が施された白銀の鎧に身を包まれ、指揮棒のようでもある細身の剣を手にしている。


「そう、私はマイ! この子は――」

「問答無用!」

「な!?」


 しかし彼女はマイの口上は認めなかった。即座に接近し、その剣を指揮棒のように振るう。


「シュヴァンツァルロスフエーダ!」


 よく撓る細い剣が振られる度に、周囲に白鳥のような白い羽が舞った。

 しかもどうやらこの羽にも攻撃判定があるようである。


 それに加え、歌まで披露し始めるローエングリーン。響き渡る旋律と共に、彼女の膂力が向上していった。


 そして曲調が変わると、マイの体に音符がまとわり付き、倦怠感が生じ身体が重くなっていく。


「これが、歌う白鳥の騎士の力ってわけね」

「そうよ。悪いけど、貴方程度の実力では私には勝てないわね」

「それはどうかしら?」


 一旦距離を取りマイが不敵に笑った。

 すると、マイの肩にいたはずのキャスパがいつの間にかローエングリーンの肩に移っていた。


『キヒヒヒヒヒッ、取り憑くよ、取り憑くよ~』

「離れなさい!」


 キャスパを細剣で払いのけようとする。だが、攻撃は空気を裂くように、一切触れること無くすり抜けるのみだ。


「その子にばかり集中していると危ないわよ」

「クッ!」


 マイから発せられた炎の連弾が騎士に命中し次々と爆発していく。爆発によって生じた煙が一時的に辺りを支配するが。


「生意気ね、でもこの程度じゃ無理よ」

「そうみたいね……」


 霧散した煙の中から姿を見せた彼女は無傷であった。


 そして再び歌と細剣を絡めた連携攻撃を繰り出してくるが。


「逃げてばかりいて恥ずかしくないの!」

「これも私の戦い方なのよ」


 確かに、マイは攻めてくるローエングリーンに対して、振り切った逃げに徹していた。

 だが、何もしていなかったわけではなく、その視線は終始彼女を捉え続けている。


 そして、そんな攻防が暫く続いた後の事であった。


『シシシシシシイイッィイイ! 呪っちゃうよ~お前の全てを~僕が呪っちゃうよ~』


 キャスパがローエングリーンに対して呪いの発動を知らせる。

 その瞬間だった、彼女のあらゆるアビリティやスキルが封印された。


「そんな! こんな事が――」

「残念だったわね。そしてもう一つ――戦いの歌!」


 マイが急に歌い出す。その歌を耳にし、ローエングリーンが驚愕。


「ば、馬鹿な、何故、私の歌を?」

「しっかりと観察させてもらったからよ。これが私の役作り――ありがとうこれでまた私のレパートリー(演目)が一つ増えたわ」

 

 鉄扇を指揮棒のような(・・・・・・・)細剣に変化させ、そして女騎士に迫ったマイが技を繰り出す。


「シュヴァンツァルロスフエーダ!」

「キャ、キャァアアァアアァアァ!」





「ただいま~」


 第一一宮殿の試練を終えたマイは随分と清々しい顔で出てきた。


 助かったわキャスパ、などと肩に乗っている猫型の悪魔の頭を撫でている。


「その様子だと、得られるものも多かったようですね」

「勿論! バッチリね!」


 新たに役作りによって歌の力とちょっとした剣技を覚えてご機嫌なマイである。

 その上でキャスパとの連携もかなり取れるようになってきており、レベルも上がっている。


 そして一行は次の神殿に向かう。

 第一〇神殿にたどり着くと。


「今度こそ俺が!」

「い~え私よ!」


 そんなピーチとフレムのやり取りを他所に、メグミがさり気なく神殿に入っていった。


「何でよ!」

「またかよ畜生!」


 悔しがる二人を尻目に神殿の試練に挑むメグミ。彼女の表情はどこかウキウキとしていた。


『随分とご機嫌であるな』

「当然よ、やっとあの円卓の騎士と会えるのだから!」


 どうやらメグミは円卓の騎士をその眼に出来るのが楽しみで仕方なかったようだ。


「――よく来た、我が名はガヘリス」

「きゃぁ! 本当に円卓の騎士だわ! その中の、が、ガヘリス様、なのね」


 メグミは円卓の騎士を目の当たりにしたことで喜びもしたが、名前を聞いて若干微妙な空気を醸し出す。


 ただ、見た目にはかなりの美丈夫である。寡黙なようだが、なんとも正々堂々としてそうな精強な雰囲気も感じられた。


「――早速行くぞ、【クァトゥオルイミタティオ】」


 すると、早速何らかの能力を発動させたガヘリス。その力により――彼が四人に分身した。


『むぅ! よもや四人(・・)に増えるとは!』

「…………」

 

 それを目にしたメグミは黙っている。


「――言葉も出ないようだが、卑怯などと言うなよ。戦いは非情なものだ、時には一人を相手に四人で挑むことだってある。さぁ、覚悟を決めろ!」

「と言うか――」


 四人に分身したガヘリスがメグミを囲み、同時に攻撃を仕掛けてくる。

 すると、蟀谷をピクピクとさせたメグミが一つ呟き。


「四人で一人を狙うってまんまじゃないのよ~~~~~~!」

『グフォオオォオォオオォオオォオオオオ!』 


 メグミの聖剣解放からのヴァーミリオン(極炎の)ストライク(爆裂剣)が炸裂! どうやら何らかの逆鱗に触れたのかガヘリスはメグミの手痛い反撃を受け四人纏めて消滅するのだった――

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