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第四一〇話 全員到着

「どうやら全員揃っているようですね」

「な、ナガレーーーー!」

「先生! 良かったご無事で――」

「……ナガレは無事に決まっている。お前、弟子を名乗っているのにそんな事もわからないなんて愚かが過ぎる」

「ははっ、相変わらずビッチェちゃん辛辣~」

「でも、何かナガレ様と顔を合わせるのが久しぶりに感じてしまいます」


 集合場所である中間点に到着したナガレ達であったが、一足早く辿り着いていた一班とニ班がその顔を見るなり出迎えてくれた。

 

 勿論ナガレ達の班が一番遅くなったのはマイを中心としたペースで攻略していたからである。

 

 尤も一班と二班にしても今さっき到着したばかりなため、時間的な差異はそれほどないが。


 ただフレムは当然、ナガレに限って何かなどあるわけがないと思っていながらもついついそんな事を口にしてしまったようだが。


「そうね、それにやっぱりナガレがいないと締まらないというか、それに私もナガレの顔を見れないとその――」


 もにょもにょと肝心なところで言葉を濁すピーチである。

 だが、ビッチェはもっとはっきりしていた。


「……私も寂しかった。ナガレの顔を見て感じるぐらいに」

「な、何を突然言い出してるのですかビッチェさん!」


 何かが湧き上がっているような目でナガレに訴えるビッチェ。

 ピーチと異なり全く遠慮がなく、行動をともにしていたメグミも思わず驚く大胆さだ。


「そうですね。私も皆と再会できて嬉しいです。それにしても、今回の攻略で心技体ともに、かなり強化されたようですね」


 しかしナガレは相変わらずであった。ビッチェの色香も何のその、全体を見てそれぞれの変化を感じ取り評して見せる。


「……何かナガレくんブレないわね」

「まぁ、そこがナガレのいいところなんだけどね――」


 マイの呟きに目を細め同意するピーチでもある。


『ふむ、しかしあの女の大胆さはメグミも見習うべきであるな。お主も想い人の一人や二人いるであろう? くすぶっておらずあれぐらい大胆に――』

「いや、いないから」


 真剣な目で即答するメグミでもある。


『なんとつまらぬ人生か。恋の一つもしておらんと、良い聖剣使いにはなれぬぞ』

「余計なお世話よ」


 苦みばしった顔で返答するメグミ。どうやらあまり深くは突っ込んでほしくない話題のようである。


「ピーチもかなり落ち着いた雰囲気を感じますね。リーダーとして、より頼り甲斐が出てきたように思えます」

「え? そ、そうかな? えへへ、た、確かにレベルも上がったし、ま、魔法の腕も! かなり上達したつもり! 今まで倒せなかったような相手も杖で一撃で叩きのめせるようになったし!」


 おいおい、とナガレを除けばほぼ全員が心のなかで突っ込んだ事だろう。

 そう、一般的に杖で叩きのめすことを魔法とは言わないのである。


「えぇ、良くわかりますよピーチ。それにフレムも技の練度が上がっておりますし、カイルも新技を編み出すことに成功したようですね」

「せ、先生! 先生にそう言ってもらえて俺は、俺はぁ……」

「あははっ、フレムっちもナガレっちのことになると相変わらずだねぇ。でも、ナガレっちのおかげでおいらも星弓術を会得できたよ~」


 男泣きを見せるフレムと、ナガレに感謝するカイル。


 ふたりともナガレに出会えたことでここまでの成長を遂げることが出来た。

 ピーチもそうであるが常人ではありえないほどの速度で彼らは成長していっている。


「ローザもありがとうございます。流石ですね、アイカさんも聖道門の術式を使いこなせるようになったようですし」

「す、すごいです。見ただけで判るのですね」

「それはもうナガレ様ですから。ですが、私はただきっかけを与えただけですよ。アイカさんの一生懸命さが実を結んだのです」

「そ、そんな、私なんてまだまだで、ほんの少し傷を治せる魔法を覚えたぐらいだし……」


 アイカは遠慮がちにそう述べるが、この短期間で魔法を取得出来たことは本来凄い事である。


「メグミさんも聖剣の力を引き出すことに成功したようですね。やはりビッチェにお願いして正解でした」

「確かにビッチェさんのおかげで私の未熟さも知ることが出来ましたし、色々学ぶことも多かったです」

『我の教えも忘れるでないぞ!』

「それは、まぁ、感謝しているけどそういうことを自分から言わなければもっと尊敬できるのに……」


 聖剣へため息混じりに述べるメグミ。何せこのエクスカリバーはとかくおしゃべりだ。


「……でも、メグミもまだまだ未熟、私から見て後、五万箇所は最低限修正必要」

「え!? いや、それエクスが言っていたのより増えてるんですが――」


 顔が青ざめていくメグミである。しかしそれも仕方のないこと。別にメグミの欠点が増えたというわけではなく、エクスとビッチェでは見えているものが違うのである。


「ははっ、ビッチェは私と違って厳しいですからね。中々大変だとは思いますが」

『え?』


 フレムとピーチから同時に声が漏れた。勿論ふたりともナガレを尊敬しているし、ここまで導いてくれた事に感謝してもいるが、指導方法に関していえばナガレも中々厳しい方なのである。


「……ところでナガレ、これからどうする?」

「えぇ、とりあえずこの先で待ち受けている番人を倒すと致しますか」

「え? 番人がいるの?」


 ビッチェの問いかけに答えるナガレ。するとピーチが不思議そうに尋ねるが。


「はい。以前はアケチによってアレクトが番人として認識されるよう細工されておりましたが、その効果も消えた為、改めて番人がこの場所を守っています」

「見えて無くてもわかるのねナガレくんって……」

「当然だぜ! 世界の裏側まで覗き見れるのが先生だ!」

「つまりナガレっちなら世界中の女性の着替えを覗き放題って事だね! 羨ましい!」

「カイル、あなた……」

「す、少しだけ軽蔑します!」


 マイが今更なことで驚くが、フレムは自信満々でナガレの凄さを語ってみせる。

 それを聞いて羨ましそうに口にするカイルだが、ローザとアイカは勿論、女性陣の視線が冷たい。


 尤も、例えできるにしてもナガレは必要以上に見るような真似はしないし、女性陣もナガレがそんな馬鹿な真似するはずがないと思っているようだが。


「……私はいくら見られても構わない。むしろいつでもウェルカム」

「まぁ、すっかり慣れちゃったけどビッチェの格好って下手したら裸より卑猥だものね……」


 そう言ってピーチが目を細めるが。


「いや、正直私から見るとピーチさんも中々のものなのだけど……」


 メグミがまじまじとピーチを眺めながら言う。

 確かに今のピーチの装備も丈がかなり短く、その上、ローブも下乳が見えてしまっているデザインだ。


 ビッチェと比べれば隠れているというだけで、一般的な感覚でいえば十分露出度は高いだろう。


「それにしても――ヘラドンナは相変わらずね……」

「攻略中もずっとナガレくんの命を狙っていたしね。毒まで使ってたし」

「ど、毒? それでナガレさんは大丈夫だったのか?」

「大丈夫も何もケロッとしてるわよ。毒が入ってると判ってからも平気で食べちゃうんだから」

『キシシシッ、ナガレ、常識外、常識外』


 ついに悪魔にまで常識外と評されてしまったナガレであり、毒が利かないという事実に驚くメグミでもあるが。


「……ナガレなら毒が利かなくて当たり前。私が全力のフェロモンは放出しても全く動じない、それがナガレ」

「まぁ毒が利かないぐらいで驚いてるなんてまだまだ先生の凄さが判ってない証拠だな」

「そうよね。風邪を引いているのも見たことないし」


 三人はもはやナガレに毒が利かないなんて当たり前の事過ぎて驚きすらないようだ。


「……ふぅ、中々やりますね。ま、まぁ今日もこれぐらいにしておいてあげましょう」

「そうですか? 私はまだまだ大丈夫ですが?」


 そんな会話の間にも必死に攻撃を仕掛け続けていたヘラドンナだが、どうやら疲れてきたのか、そんなセリフを吐き出した。

 だが、ナガレには全く疲れが見えず、クッ! 化物め! と思わずヘラドンナがこぼす。


「あはは、ナガレっちってば悪魔に化物言われちゃってるね~」

「化物だなんて失礼なことです。ナガレ様の崇高さは筆舌に尽くし難い程でありますから」

「わ、私もナガレ様は素晴らしいと思います!」

「え? アイカまでナガレくんの事、様付けで呼んじゃってるの?」

 

 マイが目をパチクリさせて言う。彼女からすれば確かに常識外のところも多いが、自分よりも年下の少年でしかなく、そういった呼び方に戸惑いを覚えてしまっているのだろう。


 尤もそれもあくまで見た目だけだが。


「私はそんな大層なものではありませんので、普通に呼んで頂いて結構ですよ」

「ほら、ナガレくんもこう言ってるし、メグミもアイカも年上なんだから普通に呼べばいいと思うよ?」

「いや、私はどうも、確かに見た目は年下のようにも見えるのだけど、雰囲気が大人びているというか、だからこれまで通りで」

「私も、命を助けてもらってますし、魔法を覚えることが出来たのもナガレ様のおかげです! 師匠もそう呼ばれてますからこのままで」

「え? 師匠?」

「わ、私は恥ずかしいから名前で呼んでくれて構わなかったのですが、どうしてもと言われてしまって……」


 ちょっぴり赤面気味のローザでもある。

 どうやらここでもまた一つ、師弟関係が生まれていたようだ。


「実は私もビッチェさんのことを先生と呼ばせて欲しいと願い出たのだけど、赤髪の馬鹿を思い出すから嫌だと言われて……」

「赤髪の馬鹿?」

「んだそれ? 誰のことだ?」

「あんたそれ本気で言ってるの?」


 首を傾げるフレムにピーチが呆れたように突っ込んだ。

 特定の誰かを先生と呼ぶ赤髪といえばこの中では一人しかいないわけである。

 

 フレムの髪を認めたメグミもハッとした顔を見せた。どうやら彼女も誰かは気がついていなかったようだ。


「さて、それでは全員集まった事ですし、そろそろ番人を倒しに向かってもいいかと思いますが、リーダーどういたしましょうか?」


 そしてナガレがピーチに顔を向けて問いかける。進むべき道は決まっているが、ここはリーダーであるピーチの判断を仰ごうといったところだろう。


「え? あ、そうね! 勿論! 一致団結して番人を打ち倒すわよ!」


 そしてピーチが杖を振り上げつつ声を上げると、他の皆もそれに倣うように声を合わせ――いよいよ番人が控えている広間へ足を踏み入れるのだった。

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