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第三九八話 西側攻略

Rize527様よりレビューを頂きました!ありがとうございます!

「え~と多分こっち?」

「おいおい、リーダー先輩本当に大丈夫かよ」

「だ、大丈夫よ! 私はこれでも直感には自信があるし。て、リーダー先輩って何よ!」

「リーダーで先輩だからリーダー先輩だろ? なんならリーダーぱいでもいいけど」

「いや、フレムっちリーダーぱいって」


 ピーチとフレムのやり取りに苦笑するカイルである。そして後ろで聞いていたローザ、最低よ、とジト目を向けていた。


「ぱ、ぱい、ピーチさんの、ぱ、ぱい?」

「もう! フレムが馬鹿な事を言うからアイカちゃんが恥ずかしがってるじゃないの!」

「俺のせいなのかよ! 大体なんで恥ずかしがってるんだよ!」


 フレムは別に悪気があったわけでも狙ったわけでもないので不満顔だ。

 もう! とプリプリしてるピーチの胸が動きに合わせて上下しているだけである。


「でも、それならリーダーぱいよりピーチパイの方がごろは良さそうかもねぇ」

「ピーチパイ……何かちょっと美味しそうね……」


 ジュルリとよだれを拭うピーチである。確かにその響きだけ聞くと美味しそうだが、カイルの視線がピーチの実りに実った果実に向いている事を考えると、発言そのものは最低なものだ。


「て、そんな事言っている場合じゃないわね。サクッと迷宮攻略を進めてナガレと合流しないと!」

「おう! 確かに弟子として先生といつまでも離れているわけにはいかないぜ!」


 フレムが鼻息を荒くさせ、そしてピーチもずんずんと先を急ごうとするが。


「あ! ちょっと待ってピーチちゃん!」

「へ? 何どうかしたの?」

 

 カイルに呼び止められ足を止めるピーチ。するとカイルが弦を引き、矢を一本、ピーチが進もうとした先の足下へと放った。


 カツンっと小気味良い音を残し、矢は床の隙間に突き刺さる。

 その瞬間、壁から何らかのガスが吹き出され、そして天井が落ちてきて床に叩きつけられた。


「……へ?」

「ははっ、典型的なトラップだねぇ。多分そのガスは相手を痺れさせるか眠らせるか動きを止める為のもので、その後に天井に押しつぶされて――そんな感じかな~」


 それを耳にし、ピーチが肩を抱きブルルと震えた。


「つまり、あのまま進んでたら、あうぅう」

「勘弁してくれよ先輩……」

「うぅ、迷宮は危険が一杯なのですね……」

「でも、カイルがいて助かったね」


 確かに。カイルは以前から罠に対して察しが良かったが、ここにきて更にその感知能力は強化されているようである。


「で、この罠は外せるのかカイル?」

「いや、このタイプはちょっと厳しいかな。それにそんな事に時間を掛けるなら別ルートから行ったほうが早いと思うよ」

「それなら、一旦戻るしかないわね」


 ピーチが決断し、そして踵を返すが、その直後通路の奥から重苦しい足音が響いてくる。


 前に出てすぐさま身構えるピーチとフレム。

 姿を見せたのは一行からみても初見の相手。防御効果の高そうな黒甲殻の胴体を有し、丸太のような手足。


 頭部は細長く、湾曲し前に突き出ている、目は顔の真横、左右に一つずつ。引き裂かれたような口元からは獰猛そうな牙が飛び出し光っていた。


 それが合計三体、横一杯広がる形でやってきた。決して幅に余裕があるとはいえない通路であり、背後に罠があるとわかっている以上、戦わなければ先には進めない。


「フレム、どう?」


 そこでピーチは先ずフレムに問う。フレムはフレムでしっかりと魔物を観察している。

 以前までのふたりであれば、とにかく先ず手を出してから判断するというやり方を選んでいたことだろう。


 だが、彼らも先ず相手を観察するというやり方が染み付いてきたようだ。


 そして、フレムはフレムでナガレに教わった能力をしっかりと活かそうとしている。

 鑑定こそ使えないが、フレムには相手の弱点を炎として視る事が可能な索眼があった。


「やっぱり胴体はかなり硬いな。だけど、あの鎌みたいな頭の真ん中辺りだけは炎が強い。そこが弱点なんだろうよ」

「そのあたりに脳みそでも詰まってるのかしら? でもこの場所だと、その弱点は結構厄介ね」


 ピーチが言う。問題点は迫っている魔物の体格と天井の高さにあった。ピーチもフレムも上背はそこまで高い方ではなく、一方目の前から近づいてきている魔物はふたりの倍以上の体格を有しており、それだけの高さがあると、天井もわりとスレスレなのである。


 つまりフレムの言った弱点を狙うにも、飛んで狙うわけにもいかない。


「仕方ないわね。ここは私の魔法で――」


 ピーチが杖を正面に構えた。いまだ魔法であると言い張るピーチだが、そんな彼女の持つ技の中では唯一魔法っぽくみえなくもない魔杖爆砲を行使するつもりなのだろう。


 確かにそれであれば、頭も含めて魔物の全身を飲み込むことが可能だ。威力も申し分ない。


「ちょっと待って、ここはおいらに任せて貰っていいかな?」

 

 だが、ここでカイルが引き止め、自分が出たいと申し出た。

 

 弓を構えるカイルにフレムが、

「でもあれ狙えるのか?」

と、問うが。


「まぁ見ててよ、それにピーチちゃんのソレは魔力の消費が大きいでしょ? まだまだ先は長いかもしれないんだし、節約はしたほうがいいと思うんだよねぇ~」


 それを耳にし、確かにとピーチが顎を引く。何せまだ迷宮攻略は始まったばかりだ。魔力は瞑想でも回復は可能だが、この先罠にしろ魔物にしろどんな障害が待ち受けているかわからない。


 いざという時に瞑想が出来ない可能性がないとも言えないのだ。

 そしてそういう時に魔力が足りませんでは洒落にならない。


「判ったわ、カイルお願い!」

「頼んだぜカイル」

「カイルはいざという時には頼りになりますから」

「ちょ、ちょっとエッチな気もしますけど、応援してます」


 全員からの声援を受けカイルが前に出て弓を引く。アイカの評価がちょっぴり微妙でしょげそうにはなったようだが、今は目の前に迫ってきてる魔物をどうにかするほうが先決だ。


 幸い、魔物の動きは比較的重い方だ。まだ射程距離も十分離れている。


「いくよ! 落石弓!」


 すると、カイルが天井に向けて矢を放った。落石弓――このスキルは天井が見えている場所ならどこでも使用が可能で、天井から相手に向けて落石を降り注がせる。


 このスキルの特徴は実際に天井が崩れたかどうかは関係がなく、落石という現象が発生する事だ。


 その為、古代迷宮の硬い天井でも問題なく落石は発生する。


「そうか! 天井からの落石なら弱点に攻撃を当てられる!」


 フレムが指を鳴らし、ナイス、と言わんばかりに述べる。


「いや、でも駄目よ! あまりダメージに繋がっていないわ!」


 しかし、ピーチが声を上げ指をさした方向では、落石で一瞬だけ脚は止めたものの、すぐさま移動を再開させた魔物の姿。


「アチャ~天井と頭が近すぎたみたいだね。アハハ、あまり効いてないみたいだよ~」

「アハハじゃねぇ~!」


 思わずフレムが歯牙をむき出しに怒鳴った。後ろを振り返り頭を擦りながら舌を出し、その緊張感のなさにピーチ達も頭を抱える。


「カイル、やっぱりここは私が」

「おっと、せっかちは逆に男を逃すよピーチちゃん」

「か、かんけいないでしょ!」


 ピーチが憤った。杖をぶんぶん振り回して随分とムキになっている。


「ま、みててよ。今のはちょっとしたウォーミングアップ、今度は――ちゃんと新技を見せるからね」


 だが、カイルの表情が一気に引き締まる。その様子にフレムは、新技? と呟いた。


 他の皆も、意外そうな顔を向けているが。


「――おいらだって、皆に負けていられないからね……」


 そしてカイルは弦を一杯まで引き絞り、迫る相手にしっかりと照準を定めた――

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