第三四一話 聖剣エクスカリバー
一つの戦いは終わった。ナガレが実力の一端(本当にほんの一端だが)を刹那の合間とは言え解放したことで、アケチは気を失い、その姿はまるで別人のように変貌を遂げていた。
いや、既に人と称していいかもわからないほどに、骨と皮だけのミイラのような姿である。
それぐらいナガレの力は凄まじいという事か。何せ周囲の皆にもわざわざ距離を離すよう注意を呼びかけたぐらいだ。
尤も、本来ナガレ程の実力があれば、実はそこまでしなくても、解放した力を内包させ、アケチにだけ感じさせるといった事も可能であった。
むしろそれぐらい出来なければ力を解放する事態が発生した場合に、毎回避難するよう呼びかけないといけなくなる。
それでも今回ナガレがある程度余波を感じさせたのは、皆にもこの段階というのを感じ取って貰いたかったことに他ならない。
何せアケチ戦ではっきりと魔神というキーワードが出た。こうなった以上、他の皆も今後はそういった脅威が迫ってくる可能性をある程度想定する必要があるだろう。
何よりビッチェは既に魔神と邂逅しているのだ。
尤も、では魔神がナガレの力を解放する程の力を有しているかといえばまた別問題だが。
「それにしても、これで生きてるなんて本当、別な意味で凄いわね」
すると、ピーチがすっかり変わり果てたアケチを眺めつつ、杖に魔力を纏わせながらツンツンっと突っついた。
すると――アケチの白かった髪が、色の抜けきった髪が、別の意味で抜けた。
それはもう、ばさぁあああぁあ、と凄い勢いで抜け落ちた。
「……え! 嘘! 私のせい?」
すっかりさっぱりになった頭、つまりツルッパゲになったその顔を見ながら、ちょっとだけ焦った様子でピーチが問う。
いくら相手がアケチとはいえ、ここまで見事に抜け落ちると、ちょっとは、悪かったかな? という気持ちになってしまったのかもしれない。
「大丈夫ですよ。ピーチのせいなどではなく、この時点で既に毛根が全て死滅してしまっていただけの話です」
ナガレの説明にホッと胸をなでおろすピーチ。しかしサラッと流してはいるが、なかなかとんでもないことをナガレはいった。毛根が全て死滅したのである。アケチ、中々散々な結果だ。
そして恐るべきはナガレの合気。その力は毛根さえも残さない。
「サトル……それが君の名前だったな」
「あ、アレクト、さん――」
そんな時、一応決着もついたということもあってか、アレクトが改めてサトルへと近づいてきた。
その様子にサトルはやはり戸惑い気味であり、そしてどこか神妙でもある。
同時に、マイがサトルの横に並び、どこか警戒している様子を感じさせた。
何せアレクトはここにきてそうそうサトルの命を狙ったのだ。マイとしても気が気ではないのだろう。
「アレクトさん、俺は、貴方に取り返しのつかない事をしてしまった。俺は、貴方の――」
だが、暫しの微妙な沈黙の後、アレクトに向けて先ず言葉を発したのはサトルだった。
悪魔の書を持っていたときとは違い、今はどこか後悔も感じられる顔つき。
だが、その続きはアレクトが手を翳すことで中断された。
「……正直言えば、私は今もまだ心の整理がつかない。何せ、確かに直接手を下したのは、サトル、お前であろうが、しかし裏で絵を描いていたのはアケチであり、皇帝ですらそれに加担していたとあってはな……」
アレクトは目を伏せながらそう告げるが、すぐに真剣な顔になり。
「だから、我らは今一度残った騎士たちと共に、帝都に赴くつもりだ。ここを出た後にな。だから、お前の件は、それまでは一旦保留にしておく。だが、許したわけではないということを、決して忘れるなよ」
「……アレクトさん。俺は、本当に――」
「……今は謝罪の言葉なんて聞きたくはない。私はただ、それがいいたかっただけだ」
サトルが何を言いたげなのか察したように先手を取り、そしてアレクトはその身を翻しサトルから離れていった。
別にそこまで離れているわけでもなく、少なくとも迷宮を出るまでは行動を共にすることになると思われるが、しかし、アレクトにはサトルを寄せ付けないオーラみたいなものが感じられた。
「サトル、今は仕方ないよ。それに、彼女だってサトルばかりが悪いわけじゃないって、きっと判ってくれると思う」
「……アレクトだけじゃない」
「え?」
「俺は、君にだって酷いことをしようとした。それに、アイカさんにだって、委員長にも……正直謝って済む問題じゃないと思う。もし、今、ここで俺に出来ることがあるならなんでも言ってくれ。気の済むまで殴ってくれても構わないし、殺されても文句は言えないと思っている」
眉を落とし殊勝な様子でサトルが語る。すると、アイカがサトルの正面に立ち、そしてニコリと微笑んだ。
「私は、気にしてないよ。あ、いや、全くと言えば嘘になっちゃうかもだけど、でも、こうして私、生きているし。それに、私だって、もしサトルくんみたいな力があったら、同じことをしたかもしれない。だから、お互い様だよ」
「……アイカさん――」
「うん! そうだよ。それに、私は結局何もされてないし、無事だしね。それに、私も怖くなかったと言えばそれも嘘になるけど、この状況が普通じゃ考えられない異常事態なんだし、私はサトルくんを、恨んでないよ」
「マイさん――」
「私は! 私は違う! 違うよ、だって、私は逆にサトルくんに謝らないと駄目だもの。許されないとしたら、私だよ……」
「委員長、それは――」
アイカにも色々と思うことは最初はあったのかもしれないが、彼女とてサトルがどんな目にあっていたかはよく知っている。自分がされていたことも思えば、とても責める気にはなれなかったのだろう。
マイに関して言えば、彼女の言うとおり、実際は何もされることはなかった。勿論怖い目にあったことに変わりはないが、一番悪いのはアケチであることを彼女はよく判っている。
そして――メグミ、彼女に関しては他のふたりとはまた違う。サトルを許す以前にきっと自分が許せないのだろう。元々は正義感が強かった彼女だ。
しかし、アケチの卑怯な脅迫に屈してしまった。悪いのはアケチだ、それは間違いがない。だが、サトルを裏切ってしまった事に変わりはないと、責任を感じ、胸が押しつぶされそうな思いなのかもしれない。
「ごめんなさいサトルくん、裏切って。私は卑怯者だよ。殺されたって文句は言えないよ……」
「それは、違う。そう、違うよ。俺だって、君を殺そうとした。君の事情も知らず、耳も貸そうとしなかった。俺だって、卑怯者さ」
「でも――」
「だったら!」
涙を流し訴えるメグミだが、既にサトルには彼女に対する恨みなどないようであった。むしろ自分のやろうとしたことが許せないと言った様子であり――だが、そんな二人の間にマイが割って入った。
「それならもう、お互い様ってことでいいじゃない。どっちにも悪いところはあった。でも、ふたりがそう思っているなら、これからでも遅くはない、やり直せるよ」
サトルとメグミ、ふたりの手を優しく取って、微笑んだマイの表情はまるで天使のごとくであった。
「誰にでも間違いはあります」
するとそこへ、落ち着いた声がするりと入り込む。
ナガレであった。
「むしろ、間違いを起こさない者の方が皆無といって良いでしょう。ですが、その間違いに気がつけたなら、マイさんの言うように、人は何度でもやり直せます」
温和な笑みを湛えナガレが告げる。安心感のあるその表情と声に、サトルとメグミの表情も和らいだ。
そして、サトルはナガレを見やり、口を開く。
「ナガレさん、でも僕は……」
「判ってます。貴方は生きて贖罪を続けることを選びました。それも一つの道でしょう――ですが、貴方はあのアケチとは違う。この先何があろうとも、これからは自分の力で、自分の頭でしっかり考えて先へ進めるはずです」
ナガレの言葉にはどこか含みもかんじられるようでもあるが、しかしサトルの顔には何かの覚悟も感じられた。
「さて、それはそれとして、メグミさんでしたね」
「は、はい!」
サトルとの会話の後、ナガレがメグミに顔を向け語りかける。
すると、なぜかシャキッと姿勢を正すメグミであった。先程までの戦いぶりに、何か思うところもあったのかもしれない。何より頬が紅い。
「実はここにアケチの置き土産があるわけですが」
すると、ナガレがそれを取り出し、メグミの前に差し出した。それは、アケチが途中まで使用していた聖剣であった。
「これって確かあいつがエクスカリバーとかいって自慢していたのよね?」
「そうですね。ですが、飽きっぽい彼はすぐにこれを手放してしまいました。しかし、聖剣に対してその扱いはあまりに不憫ですし、どうもこの剣が報われない気がしてならないのですよ。よろしければ、使ってあげては頂けませんか?」
「え!? わ、私が? で、でもこんな凄そうな武器、私に使いこなせるか」
「いえ、むしろ、アケチよりは貴方のほうが適正がある気が致します。一応全体的に合気で除菌しておいたので、彼の感触は残ってないとは思いますが」
「……私一つ気になっていたんだけど、合気って何?」
「そこは気にしたら負けだよマイさん」
サトルが苦笑しつつ答えた。確かに合気は合気である。除菌からサトルの腕の結合までこなしてしまう、それが合気なのであるが、合気は合気。それ以上でもそれ以下でもない。
「わ、わかりました。そこまでして頂けたなら無下にするのも申し訳ありませんし、とりあえず持ってみるだけ――」
そして、メグミはナガレから聖剣エクスカリバーを受け取る。
すると、妙に鞘も含めて輝きが増したような気がした。
「試しに抜いてみてはいかがですか?」
ナガレがメグミに提案する。するとメグミは聖剣をまじまじと見つつ、
「う~ん、私に抜けるかな?」
と、首を傾げた。確かに片手半剣であるエクスカリバーはリーチもメグミが今使っている長剣より長い。
元々メグミは自分の身体に合わせた剣を持ち歩いていた為、この剣は彼女の腕の長さを考えると大きすぎると言える。
「もし、メグミさんが気に入られたなら、問題なく抜けると思いますよ」
すると、ナガレの意味深な発言。それに、メグミは不思議そうな顔を見せたが。
「と、とにかく抜いてみるわね」
聖剣を水平に持ち、そしてメグミが柄に手をかけ、先ずはゆっくりと鞘からソレを抜き始めたわけだが――
「……へ? あれれ?」
スルスルとエクスカリバーが鞘から抜かれていく。それこそ何の苦労もなく。そのあまりのあっけなさに、メグミも拍子抜けしたような顔を見せた。
「な、なにこれ、凄く軽い。まるで綿毛でも掴んでいるようだわ」
『当然であろう。何せ我はあの聖剣エクスカリバーであるからな』
『えええぇえええぇええええええ!』
その突然の声に、その場に居合わせたナガレ以外の面々が一様に驚きの声を上げた。
何せ、今の声の主はメグミが抜いた聖剣エクスカリバーなのである。
「あ、あなた喋れるの?」
『当然だ。その辺の有象無象の駄剣と一緒にされては困る。我ぐらいの神器ともなれば、人語を解せて当たり前というものよ』
「そ、それなら、ど、どうして今まで、お、お話にならなかったのですか?」
アイカが素朴な疑問をぶつけた。確かにこの剣の語りを聞いたのは今が初めてである。
『全く条件がないわけではない。人に言葉を送るには、我に相応しい持ち主に所持してもらう必要があるのだ』
「え? でもそれなら、アケチが使っていたじゃない?」
『あの外道の名前を出すなーー! 虫唾が走るわーーーー!』
突如、聖剣が切れだした。どうやらよほど気に食わないことがあったようである。
「でも、アケチに使われていたということは、所有者として認めていたという事じゃないのか?」
『我は騙されたのだ』
騙された? と口々に呟き目を丸くさせる。
『あの外道は勇者の称号を持ち、更に我を抜く時には聖剣使いの称号まで偽装していたのだ。おかげですっかり騙されたわ! すぐに間違いに気が付き、抵抗したのだが、半分ぐらい抜けていたからな。そこで奴は強引に我を抜いたのだ。強引にだぞ? 信じられるか? 普通勇者が聖剣を強引に抜くか!』
相当憤慨しているようであり、嘆いているようでもあるエクスカリバーである。
『あの屑のことはいくら文句を言っても切りがない。我に向かって聖剣にしては三流だの、その癖に我を鏡代わりにして髪型を整え格好をつけるナルシストぶり! あんな外道にいいように使われて、我は、我は、すっかり汚されてしまったのだ……』
酷く気落ちしているように感じられる聖剣である。涙すら流しているようであった。
「う~ん、でもこれって、つまりどういう事なのかな?」
「つまり、アケチはこの剣に認めてもらえてはいなかったと言うことです。突きを放っている時に重さの違いで精度が落ちていたのが証拠ですね。認められていたなら、そもそも軽く感じられる聖剣ですから」
「え? それじゃあ、アケチにとってこの聖剣って……」
「はい、ただの重たい剣でしかなかったという事ですね」
「プッ!」
サトルが思わず吹き出した。まさかあれだけ完璧言っていたにも拘らず、聖剣にすら認められずただの重たい剣でしかなかったとは――しかも完璧な目を持ってしてもそれに気が付けないとは、益々もって無様である。
『ふん、さっきから聞いていれば、結局のところ、貴様に見る目がなく、阿呆だったというだけではないか』
その時、ナガレの道着の中から念が飛ぶ。これに関してはナガレが全員に聞こえるようにしてあげた。
そしてナガレが道着の中にしまいこんでいた悪魔の書を取り出す。
『貴様は、何かと思えば悪魔の書か。ふん、無様に敗北し、主にも見捨てられた分際で態度だけは立派だな』
『勘違いするなよ? 我は誰のものにも成り下がらん。最初から主などおりはしないのだ。大体、認めてもいない男にいいように使われていた貴様にだけは言われたくない』
『言わせておけば! 天界を追われ、悪魔の書などという愚劣な存在に成り果てた貴様が何を言うか。大体、契約者としか会話できないという時点で程度が知れる』
『我は貴様のように誰でも彼でもなりふり構わず尻尾を振ったりしないだけよ。大体アケチは駄目でその女なら認めるとは、ただの助平ではないか』
『時代遅れなほこりまみれの三流本が偉そうに』
『台座の上で燻ってるしか能がなかった無価値の骨董品が偉そうに』
『……』
『……』
段々とただの罵り合いになってしまっていた一本と一冊だが、それから若干の間をおいて。
『えーーい! もう許せぬ! メグミといったな、我の力を早速見せてやろうぞ! あの愚かな本をたたっ斬ってしまうがよい! 我の錆にしてくれる!』
『ふん! やれるものならやってみろ! 何が聖剣だ偉そうに、貴様などただの性剣だ!』
おのれぇええぇえ! と声というか念というか、とにかく荒ぶる聖剣であるが、
「はい、そこまでです」
と口を挟み、ナガレが悪魔の書を道着にしまった。
聖剣の様子にオロオロしていたメグミであったが、とりあえずナガレの手に戻ったことでホッとしている様子。
「この書を今失うわけにはいきませんからね。サトルとの約束もありますし」
「ナガレさん……」
サトルが思わず呟く。そう、悪魔の書にはサトルの家族が捕らえられたままなのである。その状態で切り裂かれるわけにもいかない。
『……ふむ、まあ、ナガレ殿にはあの外道から解放してもらった恩もあるしな。錆にするのはそれが終わってからにしてくれよう。尤も我は錆びぬけどな!』
どうやらアケチの手から離れられた事に聖剣は感謝しているようだ。
「え~と、これは結局、私が使いこなさないと駄目ってことかな?」
『むっ! まさか娘! 我が気に食わぬなど言わぬであろうな!』
「いや、そんな! ただ、今持っている剣もあるし、どうやって持ち歩こうかなって……」
どうやらメグミは愛用の剣もしっかり使っていくつもりなようだ。このあたりはアケチと考え方が違う。
『ふむ、本来我だけあれば十分と思えるが、物を大切にするその気持ち良し! 何、安心するがよい。その剣の横に付いてやろう』
「え? でもこれだけ長いと地面を引きずることに……今吊るすものもなくて申し訳ないような……」
『それこそ無用の心配よ。我は聖剣であるぞ、見ておるが良い』
かと思えば、エクスカリバーが突如光り輝き、その形がメグミにあったサイズに変化した。更に吊るすものもないのに元あった剣の横に並んでいる。
「え? 嘘、凄い……」
『少しは我の凄さが伝わったか? ちなみに抜けば元のサイズに戻るぞ。そして当然切れ味は、抜群だ!』
中々驚きの性能を誇るエクスカリバーである。そして生き生きとしていた。アケチ以外の、自分が認めるに足る持ち主に出会えたのが嬉しいのであろう。
「なんか色々と凄いわね。アケチに関しては突っ込むのも疲れたけど」
「聖剣にも認められる先生に俺、感動です!」
「いや、認められたのはこの場合、メグミちゃんじゃないかな~?」
「ですが、メグミさんに扱える力があると判断したのはナガレ様ですからね」
そしていつものメンバーもやってきて、アケチに対して呆れたり、ナガレに尊敬の眼差しを向けたりした。
そんな中、ビッチェがアケチを指差し。
「……ナガレ、そろそろここを出る準備。でも、アレ、どうする?」
アレとは勿論アケチの成れの果てのことであり、どうするとはこのまま置いていくのか連れていくのか? といったところだろう。
「外までは運びます。ああなったのも私の所為による結果ですし、ソレに関しては私が責任を持って――」
「ま、待ってくれ!」
ナガレが答えようとしたその時、帝国騎士の一人が口を挟んだ。
「それは、私達がやろうと思う。そもそもあのアケチをこの世界に呼んだのは帝国だ。我々とて無関係とはいえない。それに、ここまでずっと貴方のお世話になりっぱなしだ、せめてこれぐらいはさせてほしい」
帝国騎士がそう述べ頭を下げた。流石にここまで言われたのなら、ナガレも断る理由がない。
「判りました。では迷宮の外までよろしくお願い致します」
「お願いね! あ、でも相当汚れてるから、気をつけないと……」
「それなら心配はいらぬ。引きずっていくからな」
「あ、そ、そうなんだ――」
冷静に考えればここまでやらかしたアケチを丁重に運ぶ理由もないわけである。生きてさえいればいいわけで、別におんぶだ抱っこだと気を遣う必要は全く持ってない。
こうして――色々とあった古代迷宮での出来事だが、これで一旦の幕を閉じた。
後は迷宮の外に向かうだけだが、来るときほど先を急ぐ必要もないということもあり、ナガレも帝国騎士のペースに合わせて仲間たちと帰路につくこととなる。
そして、予定通りアケチは帝国騎士に引き摺られながら、きた道を戻っているわけだが。
「それにしても、あのアケチをこんな姿にしてしまうなんてな」
「合気とかいうのは凄まじいものだな」
帝国騎士たちの間では合気についての話題が尽きない様子であり――
「だけどよぉ、何が恐ろしいって……毛根が死滅するって事だよな」
『…………』
誰かの言ったその言葉に、帝国騎士たちが一様に頭を押さえ、そしてブルブルと震えた。やはりどこの世界でも髪は大切らしい――




