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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第三三三話 完璧な変身

 ここぞとばかりに時を止めるスキルを使用し勝ち誇るアケチであったが、当たり前だがナガレには通用しなかった。


「くっ、なるほど、どうやら、君も随分と常識はずれな真似事が出来るようだけど、それでもこの僕には勝てない! 絶対にね!」

「貴方のその自信がどこから出てくるのか、私には不思議でなりません」


 時を止めるという行為すら破られたにも関わらず、やはりアケチの面の皮は今も厚かった。


「ふふっ、確かに時の止まった世界でも、君も僕も動けるという状況が同じなら何も変化がないように思える。だけどね」


 そう言った後、アケチは髪をかき上げ、そしてクルリと優雅にターンを決めつつ、それを行使した。


「パーフェクト(完璧な僕の)クローンハンドレッド(一〇〇人の分身たち)」


 すると、ターンが終わると同時に現れるアケチ、アケチ、アケチ、アケチ――そう、ナガレの目の前にズラリと並ぶ一〇〇人のアケチだ。


「どうかな? ちなみにただの分身じゃないよ。これらは僕の闘気で出来てるから一人一人しっかりと攻撃判定を持っている」

「……驚きましたね」

「ふふっ、そうだろう、そうだろう」

「ええ、まさか、今更こんな子供だましな技を使用してくるとは思いませんでした」


 ナガレを睨めつけ、アケチが、チッ、と舌打ちしてみせる。


「君こそ、なぜこの僕が分身を出したかも判っていないようだね。この世界、つまり君と僕以外の時が止まってしまっているこの世界だからこそ――この技は活きてくるのさ! やれ! 分身たち!」


 アケチが命じると、一〇〇人の分身たちが一斉に、戦いを見ていたナガレの仲間や、騎士たちに向けて飛びかかっていった。


 時が止まっているこの状況では、当然、ナガレ以外の全員は攻撃に応じる手段がない。つまり、防御することも逃げることも出来ないのである。


「――残念ですが」


 しかし、そこは流石のナガレである。瞬時にしてそれぞれの分身の飛びかかった位置まで移動し、全ての分身の攻撃を合気で受け流しつつ、一〇〇人のアケチを地面に叩きつけ片付けていく。


 だが――


「馬鹿め! その甘さが命取りだ!」


 しかし、ナガレが分身に気を取られている隙を狙って、今度はアケチ本体が背後からナガレに襲いかかりその剣を振るった。


「ですから、これも含めて子供だましだと言っているのですよ」


 だが、まるでそれを読んでいたが如く、いや、違う、実際読んでいたのだ。ナガレはアケチが分身を出した時点で、このような手に打ってくることは察しがついていた。


 だからこそ、振り向きざまに小指でそれを受け止め、そして語りつつもアケチを大回転させながら天上に向けて放り投げるという芸当が出来たのである。


 そして――その勢いのまま天上に身体をぶつけ、バウンドし、床に叩きつけられた。


 それと同時に、周囲の時の流れがもとに戻り。


「……あれ? なんでアケチが無様に倒れているの?」

「なんだありゃ? かっこつけて技名を叫んだ割に、すぐに先生に潰されたのかよ。情けないやつだ」


 そんな声がアケチの耳に届く。騎士の中にも、アケチのあまりの醜態ぶりに冷笑を浴びせているのも出てきている始末だ。


「な、なぜだ! 僕は時を止めているのを戻していない! それなのにどうして!」

「流石にいつまでも時を止めたまま、貴方とふたりきりというのも鬱陶しいので、私が戻しました」

「――がっ、な……」


 アケチが絶句する。両目を見開き、口を大きく開け広げ、流石のアケチも、格の違いに気が付き始めているのかもしれない。


「――くそ! まさか禁じ手と思ってた内の一つを、こんな奴に使うことになるなんて!」


 そして、アケチは悔しさを滲ませながら吐き捨てるように言った。


 時を止めるにしても、相手がナガレでなければかなり強力なスキルなのだが、どうやらまだアケチには使える手が残されているようだ。


「……アケチの奴、しぶといわね。でも、禁じ手って――」


 マイが唇を噛みつつも、今更一体どんな手が? といった様相で声を漏らす。

 その近くではフレムが、どうせ悪あがきだぜ! などと言っているが――


「パーフェクトチェンジ(完璧な変身)!」


 両手を広げ、アケチが声を上げる。すると、アケチの身体からどす黒い靄が滲み出し、そしてアケチの全身を包み込んだ。


「な、何あれ薄気味悪いわね」

「……でも、アケチにお似合い」

「そ、そうですが、ちょっと禍々しいですね」

「確かになんか嫌な感じだよね~」


 ピーチにビッチェ、ローザにカイルがアケチの変化に感想を漏らす。


 後ろで見ていた騎士たちにしても、どこか表情に忌避感のようなものが感じられた。


「――ふっ、僕は生まれ変わった」


 そして、遂にアケチを覆っていた靄も霧散し、中からこれまでと明らかに様相の違うアケチが姿を現す。


「まったく、この変身は本当は使いたくなかったんだ。一度だけ試して鏡を見たけど、正直完璧な僕の美的感覚で考えると、少々見た目が悪いからね。でも、もうそんなことも言っていられない」


 口元に指を添えつつアケチが語る。今のアケチは髪の毛は地面に達するほどまでに伸び、肌は黒紫色、そしていつの間にか鎧は脱ぎ捨てられズボンだけといった出で立ちであり、全身には奇妙な斑模様が施されていた。


「なるほど、【魔神化】ですか」

「はは、何を言っているのかな? パーフェクトチェンジだよ」

「魔神化ですね」

「君もしつこいな、パーフェクトチェンジだと――」

「貴方は、アカシア(ワールド)の記憶(データーベース)の力で自由に能力の名称も変更できるようですが、正直どれも微妙だと思いますよ」

「…………」


 つまり、パーフェクトチェンジも本来の名称は魔神化が正しいようだ。


 とはいえ、魔神化と聞き、周囲の反応は様々だ。だが、特に帝国騎士はかなり驚き、そして恐れを抱いている様子でもある。


「……まあいいさ。君は随分と平然としているようだけど、この状態になった僕はレベルが一万倍にまで強化されている。この意味がわかるかい?」


 アケチのこの発言に、にわかに周囲が騒ぎ出す。


「――一万倍って、レベル10億以上ってことじゃない……」

「え! じゅ、じゅうおく!」

「も、元のレベルが、じゅ、10万を超えていたのも凄いのに、じゅ、10億超え?」


 マイが目を白黒させ呟いたその言葉に、メグミとアイカが反応し驚愕した。

 レベルが10万を超えているだけでも凄まじいというのに、今のアケチのレベルは10億を超えているというのだ、驚かないほうが不思議であろう。


「どうかな? 流石の君も恐怖で言葉も出ないのでは? しかもこのレベルは君が以前戦ったマサルのような紛い物じゃない。正真正銘本物のレベル強化だ」

「なるほど、つまり、貴方のレベルが10億を超えたということですね?」

「そ、その通りだ」


 変貌を遂げたアケチが眉をひそめつつ答える。


『……全く、悪魔よりずっと悪魔らしい姿になったものよ。それにしても――我をいつまでこんなところに入れておくつもりだ!』


 すると、しばらく沈黙を保っていた悪魔の書がナガレに訴えた。ちなみにこの本、戦いが始まってからは道着の中に手早くしまわれそのままである。


「少しは我慢しててください」

『むぅ、全く失礼な奴よ……』


「……正直うらやましい」


 ふとビッチェが気持ちを吐露した。悪魔の書の念は聞こえてない筈だが、なんとなく感じるものがあったのかもしれない。


「……ははっ、随分と余裕ぶっているね。尤も内心ガクガクブルブルと震えている事だろうけど」

「正直そうでもありませんが」

「だが安心したまえ。本来なら一撃であっさりと倒せてしまえるところだけどね、ちょっとした余興を思いついた。この僕の、パーフェクトアイズ(完璧な眼)を利用してのね」


 ナガレは全くもって平常通りなのだが、アケチは聞くことなく、魔神になったことでよほど自信がついたのか、そんな事を口にする。


「それも、本当の名称は魔神の眼ですよね」

「パーフェクトアイズ(完璧な眼)だ! いいかい? この眼は魔眼と言われる類のあらゆる効果を一つに詰め込んだ素晴らしい眼なのさ! そしてこの力があればこんな事も出来る。さあナガレ! 僕の虜になれ!」


 その瞬間黒目から不気味な光が放たれ、ナガレに浴びせられた。


 そして――


「……それで、何をすれば?」

「あっはっは! 成功だ! どうだ! さっきまでは試してみても効いている様子はなかったが、今度は大成功だ! やはりレベル10億超えは伊達ではないな!」


 どうやらアケチは、この状態になる前も密かに眼の力を試そうとしていたようだが――とにかく今回はうまく言ったと勝ち誇ったように笑い上げる。


「さあナガレ! 今すぐこの場にいる邪魔者を全てお前の手で排除しろ! 勿論ビッチェは気絶程度に留めておくんだぞ!」

「承知いたしました邪魔者を排除致します」


「え? う、嘘でしょナガレ!」

「そんな先生! こんな奴に洗脳されるなんて!」


 ナガレの変貌にピーチとフレムが狼狽し声を上げる。


 だが、無駄だ無駄だ! とアケチが横入りし。


「この僕の眼は完璧なのさ! ナガレは既に僕の手中! さあ、さっさと連中を、グべっ!」

「はい、邪魔者を排除いたします」


 勝ち誇ったような顔で再度ナガレに命じるアケチであったが、その瞬間ナガレにバランスを崩され、頭を掴まれ、そして地面に叩きつけられた。


 辺りがシーンっと静まり返るが。


「ブハッ! 貴様! 何を聞いていたんだ! 僕じゃない! 邪魔者を排除しろと!」

「邪魔者ですね、判りました」

「な!? ちょ! ま!」


 しかし、ナガレ、今度はアケチの身体を何万回と回転させた後、天井にぶつけ、跳ね返って落ちてきたところを更に何百万回と回転させて地面に叩きつけた。

 

 アケチの身体はドリルのごとく床を突き破り、遥か地下深くまで掘り進んでいく。


 中々に豪快な排除である。


「……え~と、ナガレってばもしかして洗脳されてない?」

「はい。ですが、折角ですので彼の願いは叶えてあげました」


 コテンっと首を傾げながら尋ねるピーチに、さっくりと返すナガレ。確かにある意味邪魔者は排除されたと言えるだろうが。


「ふっざけるなぁああああぁあ!」


 しかし床を突き破り、再びアケチが登場した。ピーチが、辟易といった様子で目を細める。


「……アケチしつこい」

「あいつこそゴキブリみたいな奴じゃねぇか」


 ビッチェとフレムの発言に、頷くマイとメグミである。アイカは苦笑気味だが。


「はあ、はあ、まさか、パワーアップした僕の目が通じないなんてね」

「パワーアップしようがしまいがやってることが同じでは私には通用しませんよ」


 ナガレがあっさりと言い返した。確かにいくらレベルを上げようがやってることが一緒ならナガレに通用するはずもない。


「……本当に生意気だね君は。だけど、今に僕に素直に操られておけばよかったと思うに決まってるさ」


 そういいつつ、アケチは手にしていたエクスカリバーと、腰に帯びていた鞘を遠くに放り投げた。


「……随分とあっさりしてるのですね」

「当然さ。今の僕のレベルなら、エクスカリバーといっても足かせにしかならないからね。ここまでくると僕は素手の方がずっと強い。武器に僕が合わせるなんて、こんな馬鹿らしいことはないだろ?」

「……貴方は本当に何も判っていないのですね」

「何がだい? ははっ、もしかして、君は僕が剣術しか能がないとでも思っているのかな? 言っておくけど僕にとって剣術なんて数ある才能の一つでしかない。本来の僕は素手の技術のほうが得意なぐらいなのさ。空手、少林拳、合気道、柔道、ジークンドー、サンボ、ムエタイ、サバット、カンフー、ボクシング、テコンドー、拳法、あらゆる格闘技を全て身につけてきた。古武術も含めてね。僕は完璧な天才だからね、ちょっとした暇つぶしに道場破りで旅に出たこともあるけど、どこの師範を名乗る連中も最初は僕を馬鹿にして、でも最後には跪いて詫びを入れてきたよ。あいつらが何年も何十年も修行して得たものを、たったいちど見ただけで完璧に覚えて使いこなすのが僕なのさ」


 そういいながら、トントンっと軽くステップを踏み構えを取り出すアケチ。だが、ナガレはいつもどおり、自然体のままだ。


「ま、ただ唯一の不安は、今の僕が本気を出したら、大陸を崩壊しかねないってことかな」

「……なるほど、そして、それこそがサトルの変わりに実行しようとしていた貴方の手ですね。分身を作れる貴方なら、その姿で魔神を装い、サトルが悪魔化したときと同じようなことをした後に、本体の貴方が元の姿に戻って分身を倒せば、英雄になれる」

「ふふっ、そういうことだね。でも、出来ればこの手はやりたくなかったんだよね。自作自演みたいで少し美しくない」


「みたいっていうか、どう考えてもそれ自作自演でしょ……」


 マイがツッコんだ、かなり尤もな意見である。


「まあ、どちらにしても邪魔者は排除しないとね。ま、本気を出すまでもないとは思うから、そこまで酷いことに――」

「出して構いませんよ」

「は?」

「どうぞ本気で来てください。大陸どころかこの迷宮が壊れることもありません。そのように私がなんとかしてますので、どうぞ、ご遠慮無く」


 ナガレの発言に、訝しげに眉を顰めるアケチ。

 だが、ふ~ん、と発した後。


「ま、そこまでいうなら、本気で――行こうかな!」


 そして――大地を蹴り上げ、迷宮内を飛び回る。壁を床を天井を、時に蹴りつけ、時に疾駆し、縦横無尽に動き回った。


 その速さたるや、多くの者の視界では一切捉えきれていない。

 辛うじてフレムとピーチが、そしてビッチェもなんとか感じ取っているかといった様子。


「あ!」


 そして――ピーチが声を上げたその瞬間、アケチはナガレの背後を取り、その拳が後頭部に迫る。


 だが――その瞬間、跳ね上がったアケチの身が天井に突き刺さっていた。


「なっ!?」


 驚嘆するアケチ。だが、ナガレは草原に吹くそよ風を浴びたかのように、そう、せいぜいその程度と言わんばかりに、平然とそこに立っていた。


「それが、貴方の本気ですか?」


 アケチが地面に着地すると同時にナガレが問う。


「……ふっ、どうやら僕は君を少し侮っていたようだ。本当に本気を出して、この世界が持つのかといった不安もあった。だけど、確かに――その心配はなさそうだ!」


 喋りながら再びアケチの姿が消え、現れた瞬間にナガレの腕を持ち上げ足を絡ませ、腕ひしぎ十字固めの姿勢。


「このまま、光速でこの腕をねじ切ってあげるよ!」


 そういいつつ回転を始めたアケチだが、それと同時にナガレも飛び上がり、回転に合わせて自らも回転し、そのままアケチを地面に叩きつける。


「ぐはっ!」


 うめき声を上げつつ、咄嗟に後ろに回転し体勢を立て直すアケチ。ナガレの追撃を警戒している様子だが、それ以上ナガレが何かをする様子はない。


「……ははっ、僕を馬鹿にしているのかな? 言っておくけど、今のだって本気じゃ、ない!」


 アケチの膝がナガレの顔に迫った。真空飛び膝蹴りだ。だが、これとてアケチのステータスがあれば本来大陸崩壊レベルの威力がこもっている。


「いくらやっても無駄ですよ」


 だが、ナガレは軽く言いのけつつ、膝に手を添え、半円を描くように投げ飛ばし、アケチを地面に叩きつけた上、そこから今度は叩きつけた勢いを乗せて逆方向に放り投げた。


 派手に反対側の床に叩きつけられると、大きな亀裂が放射状に刻まれ、床にはアケチの型が残される。


 そして、納得のいかないといった表情を見せながら、アケチが立ち上がった。


「何故だ、今のは間違いなく本気でやったのに、なぜこうもあっさり……」

「正直貴方の欠点を上げればきりがありませんが、その中でも特に致命的な欠点があります。それを教えてあげましょう」

「……は? この僕に欠点だと?」

「そうです。例えば武器です。サトルとの戦いで既に露見してましたが、貴方は一つのことに対するこだわりがなさすぎる。単純な性能だけを見て武器を乗り換えていくため、使いこなしてもいないうちから武器を変え、墓穴を掘る羽目に陥ってます」

「……ふざけるな! 僕を凡人と一緒にするな! 僕ぐらいになればどんな武器だって一度手にすれば完璧に使いこなすんだ!」

「そこですね、一番の問題点は。正直貴方は完璧などとは程遠い存在です。それなのに完璧と思い込み、使いこなせもしないスキルを次々に使用している。今のその状態もそうです。本来レベル125800の状態すら馴染んでいないのに、魔神化でそれを一万倍にまで引き上げた為、単純なパワーのみに頼った戦い方になってます。非常に歪で稚拙なね」


 ぐ、ぎ、とアケチは悔しさに歯ぎしりをしてみせる。


「今の貴方の状態というのは本で知った知識だけでたまたま手に入れた戦車を乗り回している子供のようなものです。確かに知らない人から見ればとても怖いことですが、その道に精通した者からすれば何も怖くはなく、いくらでも対処できる。その程度の代物です。ですから、私はさっぱり貴方が怖くない」

「……ご丁寧にご高説頂きありがとう。しかし、僕から言わせてもらえば君のほうが愚かで馬鹿さ! 僕は君の敵なのだよ? そんな相手にこうもべらべらと欠点を教えてくれるとは、その甘さが、後に命取りになるのは物語にはよくある話だね」


 お返しとばかりにナガレに挑発的な言葉をぶつけるアケチ。だが、ふむ、とナガレは顎に手を添え。


「ここまで言えば、判るかと思ったのですがね」

「は? 判る? 何がだい? 君の愚かさがかい?」

「そうですね。では更に教えてあげましょう。私は今、貴方相手に本来の無量大数分の壱程度の力しか出していません」

「……は?」


 思わず、アケチが間の抜けた声を発した。


「ついでに言えば、私はやろうと思えば今すぐにでも貴方を塵も残らない程に瞬殺できます」


 ナガレが更に続けると、アケチが笑顔を引きつらせた後、頭を振りつつ言い返した。


「ははっ、それは一体何の冗談だい? だいたいそれが本当なら、なぜそうしない?」

「これでもまだ判りませんか?」

「くっ、くくっ、判るものか! さっきから戯言ばかりいいやがって! もういい! どうせさっきのも偶然に決まっている! 今度こそ、この僕の方こそが、貴様を塵も残さないほどに消し飛ばしてやる!」


 遂にアケチが怒りを露わにさせ、ナガレに肉薄し、瞬時に億を超える拳をその身に叩き込もうとするが――しかしそれらを全て躱し、いなし、そして腕を取り受け流した後、アケチを床に叩きつけつつ言い放った。


「つまり、私はずっとお前相手に舐めプをしているという事だ」

「この、ド畜生がぁあああぁあああぁああぁあああ!」

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