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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第三章 ナガレ冒険者としての活躍編

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第三十二話 魔力の使い方

更新できた!

後書きに今後の本編の更新についてお知らせが……

 裏切り者の冒険者と盗賊の件が片付いた後は、もう夜も更けてきたという事で、それぞれが夕食の準備に取り掛かった。


 賊たちをどうするかについては明朝考える事となったが、とりあえず誰かが街まで報告に行く必要はありそうであった。

 これに関してはナガレに考えがあったが、とりあえずそれは先送りにし、フレム、ローザ、カイルとも約束通り一緒になって準備を進めるが。


「よければ貴方もご一緒に如何ですか?」

「……いいの?」

「えぇ、ピーチも皆さんも宜しいでしょうか?」


「し、仕方ないわね。まぁ折角知り合えたわけだしね」

「私も異論はありません」


 ピーチとローザは水浴びで一緒だっただけに、かなり打ち解けていたようで、なのでビッチェも一緒に食事の輪に加わることとなった。


「うん? 猪の肉と塩を交換?」

「えぇ、物々交換というらしいですね」

「おお! なるほど! それはいい手だ」

「すげぇな、誰だ? こんな頭いいこと考えた奴は」

「……チッ、あのナガレとかいう冒険者だよ」


 フレムはなんとも不機嫌そうだったが、ナガレの事を知っている冒険者は中々多く、一様に感嘆の言葉を投げかけられた。

 レベル0なのに皆のしらないことをよく知っている知識人であり、更にグレイトゴブリンを倒し盗賊たちも無傷で倒したと一部ではかなりの話題にもなっている有り様である。


 とはいえ、この物々交換は瞬時に冒険者の間に広まりあちらこちらで、あれとこれ、それとあれ、などといったやり取りが行われ、夕食も随分と豪勢なものになったものだ。


 それぞれの冒険者の囲った焚き火からは肉の焼ける香ばしい匂いが漂い周囲に充満する。


 そして、盗賊たちはその匂いのまっただ中にいた。

 一部では涎を垂らし恨めしそうにしているのもいるが、当然食事を分け与えることなどしない。

 これが罰のひとつでもあるからだ。冒険者の中には彼らに魅せつけるようにして食べるものもいて、随分と悔しがられたものだ。

 

 尤も、愚かな裏切り者の冒険者は終始俯き、ぶつぶつと独り言を繰り返すだけの存在と成り果ててしまっていたが。

 ナガレに言われた事がよっぽどショックだったのだろう。

 勿論ナガレはそうなることも計算のうちでアレだけのことを言ってのけたわけだが。


「……美味しい」


 滴る肉汁が指に絡み、それを舐めとる。そんな姿に色気を纏わすビッチェ。

 眺めていたカイルは口を半開きにさせて見惚れていた。


「ちょっとカイル涎……もう、何考えてるのよ」

「え? あ、いや!」


 袖で涎を拭うカイルだが、勿論これは食欲からくるものではなかった。


「たく、あんな女の何がいいんだかな」

「フレムには心に決めた相手がいるもんね」

「てめぇ、それ以上言ったらぶっ殺すぞ!」

「へぇ、フレムにそんな相手がいるんだ。誰なんだろ?」

「…………」


 普通に疑問の声を発するローザ。それに言葉も無いフレム。


 そんな様子を憐れんだ目でみやるピーチである。


「ね、ねぇナガレ、私も指に、こ、こんなに……」


 ピーチはナガレに顔を向け、指に絡みついた肉汁を舐めとった。勿論ビッチェを意識しての所為であるのだが。


「おや? いけませんね。どこかでタオルをお借りしますか」

「いや! そうじゃなくて!」


 こっちはこっちで中々に報われない。そんな様子をみながらクスリと笑みを零すビッチェでもある。


「おいレベル0のルーキー!」


 と、ここで他の席から冒険者が乱入。かなり厳つい連中が数名、その様子に、な、何よ、と若干ビクつきながらも返すピーチだが――


「……いや、あんたすげぇな! 本当レベル0っていうから最初は冒険者なめてんのかと思ったんだけどよ!」

「あぁ全くだ。盗賊はあっさり倒しちまうし、それに物々交換? こんな事まで知ってるなんてな!」

「俺達見なおしちまったんだよ。あ、これ俺達が持参した酒だ。良かったら一杯どうだい?」


 と、いうわけで、ピーチの心配を他所に次々とナガレは冒険者達に囲まれていき、酒を注がれる事に。

 そしてナガレもその好意を無下にはせず、ありがとうございます、とご相伴に預かることとなった。


 合気を極めたナガレは当然酒も嗜む、彼に隙はないのである。


 こうしてその夜はすっかり酒盛りの場ともかし、わいのわいのと夜は更けていった――






◇◆◇


「ナガレ何してるの?」


 夜半過ぎ、思いがけぬご馳走と酒ですっかり出来上がり、寝息を立て始めた冒険者を他所に、ナガレは夜の鍛錬に勤しんでいた。


 そこへ、ナガレがいつの間にかいないことに気がついたピーチが、彼を探しにやってきた形だ。

 ナガレはピーチ達が水浴びを楽しんだ泉の前にいた。

 

 そして、そこで随分とゆったりとした型を繰り返している。

 尤もピーチの目からそう見えるだけであり、実際はピーチの目に見える型が一つ終わる頃には、数千の型が終わっているわけだが。

 

「技は毎日しっかり研磨しておかないと錆びついてしまいますからね」


 言ってナガレは一旦型を中止し、ピーチを振り返る。

 ふ~、と深呼吸し、はっ! と掛け声を発すると流れていた汗が一瞬にして霧散した。

 いくら汗をかいてもタオルいらず、それも合気の万能さ故である。


「ね、ねぇナガレ」

「なんでしょう?」

「わ、私もその技というの? そういうの教えてもらってもいい?」


「技ですか? しかしピーチは魔術師、そこまで気にする必要はないのでは?」


 ナガレは敢えてその問いをピーチに投げつける。


「……確かに私は魔術師よ。でも……本当は判ってるの、私の魔術はそこまで優れたものじゃないって。実は限界も感じてたんだ。でも、なんかあの杖を武器にという戦い方をナガレに教えてもらって……もしかしたらそれも上手く活用すれば役に立つこともあるかなって――」


 そこまで言った後、ピーチは顔を上げ真剣な瞳をナガレに向け。

 

「それに私、ナガレのお荷物にはなりたくないの……でも今のままじゃ」


 そこまでいってまた目を伏せた。どうやら彼女も気がついていたようだ。今のままではナガレにおんぶにだっこの状態ではないかと。


 その姿に優しい笑みを浮かべるナガレ、そして。


「お荷物なんて事はありませんよ。ただ、ピーチの才能は私も感じております」


 え? とピーチがナガレに顔を戻した。


「私に才能?」

「えぇ、でもそうですね。その前に少し杖の使い方を教えましょうか」

「う、うん! お願いナガレ!」


 そしてナガレの夜の指導が始まり――





「はぁ、はぁ、杖にこんなに色んな使い方があったなんてびっくりよ」

「杖術というものですけどね。本来杖は突いてよし、払ってよし、打ってよしといわれるほど万能な武器なのですよ」


 ちなみに合気を極めたナガレは当然だがあらゆる武術に精通していた。個々の技に対する為には当然返す事となる元の技の事もよく知り尽くしておく必要があるためである。


「でも、大分よくなりましたよ。ゴブリン程度なら数匹同時に相手しても問題にならないでしょう」


「……でもゴブリン程度じゃね、このあいだナガレが相手したベアグリーとかにはとても通じそうにないし」


 ナガレに褒められ一瞬喜びを見せたピーチだが、すぐに眉を落とししょんぼりとした様相に。


「確かに、そもそも女性であるピーチでは、いくら杖術と言っても強力な魔物を相手するには限度がありますね」


 う! と仰け反るピーチ。せっかく何かの役に立つと思ってナガレに教わっているが、容赦のない言葉にがっくりと肩を落とした。


「ですが、それは杖だけで戦った場合の話です」


 しかしそのあと続けられたナガレの言葉で、え? と声を漏らしナガレを見やる。


「足りない分を魔力で(・・・)強化して補う事が出来れば、ピーチの杖は他の魔術師を凌駕するアドバンテージとなり得ますよ」


「……それって強化魔法でって事? でもね、私その術式はまだ覚えていないの……だから――」


 いえいえ、とナガレはピーチの声に被せ。


「確かに魔道門には強化式というのがあるのも知っていますが、あれは詠唱の必要がありますし、それに持続時間にも制限がある。ピーチの力を活かすには少々不便です」


 ナガレの説明に、ピーチは小首を傾げた。


「じゃあどうしろというの?」

「私が言ったように魔力を直に利用するのです」


 え? とピーチが目を白黒させた。魔力を直にという部分が理解できていないようである。


「そうですね、例えばピーチは瞑想で魔素を魔力に変換して体内に蓄えてますよね?」


「えぇ、魔法を行使するには相応の魔力が必要だから、そのために魔術師なら誰もが体内に魔力を宿すのは忘れないわ」


 この世界における魔法とは、定まった効果を行使するために魔力をエネルギーとして利用するというものだ。

 つまり魔力は魔法を使用するための燃料としか見られていない。


「そうですね……ですのでピーチ、その魔力は魔法を行使するためだけに消費するものだという固定概念を捨てて下さい」


 はい? とやはりピーチはナガレの言っている意味が理解できていない様子。


「ただ聞いているよりやってみたほうが早いでしょう。まず杖を構えて下さい」


「こう?」


 言ってピーチが両手で杖を掴み構えた。正眼の構えに近い。


「そうですね、取り敢えずは両手のほうがやりやすいでしょう。そして瞑想をしている時と同じような感覚で、ただし魔素を魔力に変換して体内に宿すのではなく、魔力そのものを杖そのものに集中させるイメージで、杖に魔力を流してみて下さい」

 

 ちなみにこの方法は、異世界の杖の仕組みを考えれば、かなり有効な方法だとナガレは察している。

 この世界ではこれまで杖はあくまで魔法を行使するための補助道具という扱いであった。

 

 これは杖そのものにも魔力が宿っており、それによって詠唱を早め術式の完成をスムーズに行えたり、魔法の威力の底上げが可能だったりといった事が可能であるからだ。


 そしてこれは逆に言えば、杖そのものが魔力を宿しやすい媒体であり、魔法を行使する魔術師側からでも魔力を流す事が可能であることを示している。


「なんか、難しいわね……」


 そういいつつ、言われた通りやってみるピーチだが。


「こ、こんな感じ?」

「そうです。いいですよ、確かに魔力が集中されてます。やはり思った通りピーチは魔力の扱いが上手いですね」


 そう、このナガレ、実は最初に彼女と出会い、あの瞑想を目にしてから彼女の才能には気がついていた。

 確かに魔法そのものを行使する能力は平凡なもの。しかしあれだけ無茶苦茶な瞑想だったにも関わらず、ピーチは数度使用するだけでそれなりに魔法を使用できるぐらい回復する事が出来るだけの力を見せ、更にナガレの手ほどきにより魔素から魔力への変換能力は飛躍的に上昇した。


 これは実は、やれといわれて一発でやれるような魔術師はそうはいないのである。

 そこにナガレは彼女の魔力操作における非凡な才能を感じ取ったのである。


「いいですよピーチ。では今度は前にやってみせた呼吸法も取り入れましょう。そして更に――」


「こ、こう?」

 

 その瞬間、杖に収束される魔力が大きく上昇した。


(……これは、杖が持たないかもしれないですね)


「……見事ですピーチ。では、その魔力を集中させた杖を泉の水に叩きつけてみてください。それで効果が図れるかと――」


 その瞬間、轟音と共に泉の水が弾け、間欠泉のごとく勢いで天に目掛け水柱が突き抜けた。


「きゃっ!」


 そして豪雨の如く降り注ぐ泉の水にピーチが悲鳴を上げる。

 おかげでナガレの袴もビシャビシャである。が、その顔には満面の笑みが溢れていた。


「……うそ、これが私の、才、の、あれ?」


 ところが、ピーチはそこまで口にすると足下がふらつき、そのまま地面に尻餅をついた。


「ふむ、どうやら振り下ろしたと同時に溜まった魔力を全て開放してしまったのですね。それで魔力切れに近い症状になったと」


「うぅうぅ、そんな~確かに凄いけど一発でこれじゃあ……」


 ピーチが少しダルそうに息を吐きながら、そんな事を口にするが。


「勿論これでは意味がありません。ですから少し休んでから、今度は上手く魔力を定着させる訓練を行いましょう」


 ナガレの発言に、え? とピーチが目を丸くさせる。


「久しぶりにやりがいを感じますね。大丈夫ですよ、睡眠は馬車の中でも取れます。ですから今夜多少寝なくても問題ありません。さぁピーチ、ここからはビシビシいきますよ」


 にっこりと相変わらずの柔和な笑みを見せるナガレだが、その姿勢はなかなかスパルタである。

 そしてその夜はピーチの悲鳴が周囲に鳴り響き続けることとなった。


 ちなみに余談ではあるが、この魔力の扱い方はナガレが合気でも利用している気とも通じるものがある。

 尤もナガレの扱い方は、合気を行使する瞬間だけに爆発的に高めるという手法であるが、そんなナガレであれば、魔力そのものの活用方法に気がつくのは当然のことと言えただろう――

ここまでお読み頂きありがとうございます。

さて実はここで本編は一旦お休みとなります。

といっても更新そのものを休むのではなく次から四話ほどサトル側の話が続く形です。

いや思ったより長くなってしまって(汗)

なのでこれからの更新予定ですが

2015/10/21日0時閑話其の四

2015/10/21日16時閑話其の五

2015/10/22日0時閑話其の六

2015/10/22日16時閑話其の七

2015/10/23日0時本編第三十三話


こういった形となる予定です

本編の次のお話までは少し空いてしまいますが(汗)

しかしその分本編が読者の皆様に更に楽しんで頂けるよう精進して参りたいと思いますどうぞ宜しくお願い致しますm(_ _)m

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