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第二八二話 偽りの仮面

サトルの復讐回です

女の子が酷い目にあう描写があります。

見る人によっては不快になる可能性があります。

ここから2話は見る人によっては精神的にかなりキツイ描写が含まれている可能性があります。

以上の点にご注意ください。

「残念だが、チェックメイトだ」


 サトルが勝ち誇った顔でマイへと告げる。その瞬間アスタロスの巨大な拳骨が振り下ろされ、何かが砕け散ったような音が広がり、衝撃で軽くマイがふっ飛ばされた。


 随分と可愛らしい声を上げて、ゴロゴロと転がっていく。そして、ゲホゲホッと咳き込んだ。


「良かった、意識は失ってないようだな」

「な、なんなのよあんた! どうして、どうして私にこんな事するの! 私があなたに何をしたっていうのよ!」


 どこかタガが外れたようにマイがわめき出す。その様子にデジャブを感じた。そう、確かシシオも似たような事を言っていた。


「やはり同じ穴のムジナか」

「だから、何の話よ。私本当に、貴方に恨まれる覚えなんて――」

「はははっ、本当に大したものだ。ここまできて、まだ自分をごまかすか? 罪を認めないか? 大した演技だよ。腐っても芸能界にいただけはあるな、だが、それでいい、お前はそれでいい、そうやって偽りの仮面を貼り続けているがいい、そのほうがやりがいがある、そう、俺がその仮面を少しずつ剥いでやるよ!」


 笑いあげ、狂気の笑みを浮かべたままゆっくりと近づいていくサトル。その異様さを感じ取ったのか、いよいよその端正な顔を引きつらせマイが後ずさりを始めるが。


「逃げるなよマイ、お前には俺がしっかりと償いさせてやる、さあ、宴の始まりだーー!」


 狂ったような声を上げる。悪魔の書を右手に現出させる。そして次々と悪魔を呼び出し、一瞬にして彼女を取り囲んでいった。


「い、いや、やめて、いやぁああぁあぁあ!」


 装備を無理やり引き剥がされ、衣服がビリビリに引き裂かれていく。むき出しになった肢体は穢れたアイドルにしては染み一つ感じられず、まるでこの世の汚れなど一つも浴びていないかのようであった。


 だが、それが殊更サトルには腹立たしかった。妹をあんな目にあわせておいて、のうのうと生きているだけでも吐き気を要するほどの愚行なのに、その醜悪な心を隠すように、メンテナンスを完ぺきにこなしている。


 だからサトルは悪魔たちに命じた、汚せと、穢せと、その心に見合った姿にしてやれと。


「おいおい、お前みたいな薄汚い女はてっきり枕営業ぐらい当たり前かと思ったが、よりにもよって初めてだったとはな~」

「い、いやだよぉ、もうこんなのいやだぁぁあ」


 涙で顔をぐしゃぐしゃに汚し、その心に見合った姿に侵されていくマイをみながら、愉悦に浸るサトル。彼女を見下ろしながら、言葉で責め、罵り、あざ笑う。


「はははっ、随分と上手いじゃないか。流石期待されていた女優様だ、演技が上手い、本当にこれならいくらでもやっていけそうだぜ、AVとつく方でな!」

「痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い、もういやぁあ! お家に帰るぅぅう、やめて、そんなところ、いやぁあああぁあ!」

「おいおい、だらしないな。もう終わりか? ふざけるなよマイ! お前がやったことはこんなものじゃすまないんだ! てめぇがやった報いはまだまだこんなものじゃ償いきれないんだよぉお!」





 一体どれほどの時間が過ぎただろうか。大量に召喚された悪魔たちに甚振られ、犯され、徹底的になぶられたマイは、全身傷だらけになり、すえた臭いを体中に放ちながら、茫然自失となり、ぼんやりとした瞳で虚空を見つめ続けていた。

 

 そしてしきりに、どうして、どうして、とつぶやき続けている。


 するとサトルがマイの元まで近づいていき、髪の毛を掴んで乱暴にその顔を引き上げた。


「……それで壊れたつもりか? そんなことで許されてると思っているのか?」


 虚ろな瞳のマイに、全く容赦のない言葉を吐きかけ、そしてグレーターデーモンに、折れ、と命じる。


 左腕を抱えていた黒い悪魔は、サトルに言われるがまま、マイの小指をへし折った。


 ボキリッ、と鈍い音がし、マイの絶叫が響き渡る。あらぬ方向に曲がった自分の小指を見て、彼女は汚れきった顔を更に歪め嗚咽を漏らした。


「なんでよ、何で私がこんなめに、どうしてよ! わからない! なんでここまでするの! どうしてよおぉおおおぉ!」


 狂ったように声を張り上げ、涙をボロボロと流した。その様子に反吐が出そうであった。未だに被害者面しているその態度に吐き気がしてたまらなかった。


「安心しろよ、これからお前はそれが何故かたっぷりと思い知ることになる。お前は俺が何も知らないと思っているのだろうが、俺は全てを知っているのだからな」

「だから、どうして、いや、こないで、もうこれ以上酷いことしないでぇ……」

「安心しろよ」

「え?」


 思いがけないサトルの言葉に、マイが目を見開く。


「お前のターンは暫く休みだ、その代わり、いいものをたっぷりと見せてやるよ」

「いい、もの?」


 もはや何をどうしていいのかもわからないといった表情であり、混乱と戸惑いと恐怖と疑念、それらが入り交じったような顔でサトルみやる。


 するとサトルが悪魔の書からブレインジャッカーを呼び出し、マイの頭にとりつけにかかる。


「いや、いやだ気持ち悪い! やめて、やめてよぉおお!」

「黙れ、いいから黙ってろ、これ自体に痛みはないんだからな」


 そして無理やり頭に寄生させる。何がなんだかわからずメソメソしているマイだったが、サトルの命令でグレーターデーモンが一発殴ると、ガクガクと震えおとなしくなった。


「さて、それじゃあここでモニターを用意するかな。いでよ悪魔の書第五〇位デビルミラー――」


 サトルの召喚によって大きな鏡が一つその場に現れた。デビルミラー――一度いったことのある場所であれば、どこからでも自由に視ることのできる鏡タイプの悪魔。


 鏡の上部にはギョロギョロとした一つ目が備わっている。そんなサトルの呼び出した鏡を、怯えた瞳で見やるマイ。


「さて、この悪魔、本来は俺の記憶にある場所をどこからでも映し出すことが出来る鏡だったりするのだが、お前に今つけたブレインジャッカーと組み合わせることで、面白い機能が拡張される。それが何か判るか?」


 マイに尋ねる。だが、マイは首を横に振るだけで何もしゃべらない。すっかり怯えてしまっている。


「ふむ、まあ、そうだろうな。それじゃあ回答だ、いいか? まずそのブレインジャッカーはお前の記憶を読み取ることが出来る。そしてこの悪魔の鏡はその読み取った記憶を映像として映し出すことが出来る――そしてここから面白いんだが、この鏡は読み取った記憶を元に世界の干渉を受けず(・・・)、記憶にある場所の現在(・・)も映し出す事ができる。つまりだ――」


 そこまで口にしたところで鏡の中にある映像が映し出された。

 鏡の中に映るソレは、随分と年期の入った中々ボロのアパートであった。


「え、え? ど、どういうこと、何で、どうして?」

「ふ~ん、お前の家族ってこんなところに住んでたのか。意外だな」


 マイの様子が変わった。ただ怯えていた表情は驚きに満ち、ありえないその映像に目を白黒させる。


 そして画面の中の視点はアパートの一階のドアを映し出す。


 その横には白いプレートが三つ、それぞれには新牧 鏡、新牧 舞、新牧 美歌、という名前が記されている。


「そ、そんな、そんな、そんな――」

「さて、お前の家族とやらとご対面といくか」


 ドアを開けることもなく、鏡の中の映像は部屋の中へと入っていった。ダイニングに部屋二つといった間取りのようで、丁度ダイニングにはふたりの女性の姿。


「ま、ママ? 美歌?」


 そのふたりを見たマイが、わなわなと震えながら口にする。その眼には涙が溜まっていた。

 

 その様子に間違いないな、とサトルは確信する。これがマイの母親と妹だと、自分の家族を落としやった、穢れた家族だと。


 どちらも見た目は美人だ。母親もかなり若々しい。それが余計腹立たしかった。


『ママ、舞お姉ちゃん、どうなっちゃったんだろ……』

『……大丈夫よ美歌、舞は、舞はきっと無事よ。私にはなんとなく判るの、だから、ね? いつ帰ってきてもいいように、あの子の好きだったカレーを用意して待っていよう?』


 そんな会話が二人の間で成されていた。もしあんな真実を知らなければサトルも同情していたかもしれない。だが、真実を知ってしまったサトルからしてみれば何よりも滑稽な茶番でしかなかった。


「ママ! 美歌! 私はここだよ! ここにいるの! ママー! 美歌ーー!」


 そんな鏡に向けてマイが叫びあげる、必死に鏡の向こうの家族へ呼びかける。

 だがその声は虚しく空間内に広がるばかり。鏡の向こう側には届くことなく。


「はい、ここまで~」


 サトルがわざとニコニコした笑顔を浮かべ、マイにそう告げた。

 そしてそこで映像は一旦途切れる。


「……何よこれ、なんなのよ! こんなことで私に希望を持たせて、それが、それが貴方の復讐なの!」

「そんなはずないだろ、ふざけるな。復讐はこれからだ」


 マイが涙ながらに訴える。だが、心のない冷たい静音がその耳に落とされ。


 マイが顔を持ち上げる、能面のような冷え切った表情がそこにはあった。

この続きは18時頃に投稿します。

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