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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第三章 ナガレ冒険者としての活躍編
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第二十五話 Bランクへ、そして新たな依頼

 ナガレとピーチが受付に戻り、結果がわかるまでそこで待つ。

 Bランクになる事は決定事項だが、何級かという部分が不明なのである。


「ピーチはB5級からで間違いないと思うけど、ナガレが何級かってとこね……ヘタしたら1級とか、まぁその辺りも有り得そうなんだけど」


「てか、不思議だったんだけど、よくあのゴッフォ試験に受かったわね」

 

 ふとピーチが疑問点を口にした。

 確かにナガレが戦った限りでも、実力的には中々微妙なところであったわけだが。


「あぁ、あいつね。なんか運がいいというか、その時はたまたまゲイがね、別の任務に出てていなかったの。そういう場合って他の誰かを指名する形なんだけどね、これに関しては元の試験官が指名すればBランク内で特に制限がないのよ。で、ゲイもあまり考えずに選んだみたいでね……」


 つまり、そのゲイが代理として選んだ試験官がかなり判定の甘い人間だった、とそういうことらしい。


「妙に悪運が強かったのねあいつ」

「まぁ、でも結局捕まってしまいましたしね」


 ナガレがそう言うと、バチがあたったのよ! とピーチが鼻を鳴らした。


 そんな事を話しつつ、あ! と思い出したようにマリーンが声を上げ。


「そうそう、あのゴッフォ達の件で報奨金が出てるんだったわね。一二人纏めてで六万ジェリーよ」


 そう言ってマリーンはカウンターの上に貨幣を並べた。


「ありがとうございます。では半分はピーチがどうぞ」


 えぇええぇえぇえええ! とピーチが声を上げる。


「いや、流石にこれは悪いわ。私どっちかというと助けてもらった方だし」

「ですが、パーティーを組みましたしね。だからこういったものは半々の方がいいでしょう」


 そういってナガレは半ば強引にピーチに三万ジェリーを手渡した。


「うぅうう、本当にありがとう」


 申し訳ないような、嬉しいような、そんな面相でお礼をいうピーチに、いえいえ、とナガレは返し、自分の取り分を魔法の袋にしまいこんだ。


「ところで、今日は随分と冒険者が少ない気もしますね。時間というのもあるのでしょうが」


 ナガレがそんな疑問を漏らすと、あぁそうそう、とマリーンが応じ。


「昨日から報告があってね。スイートビーが出たって事で手の空いていた冒険者は殆どそっちに向かってるのよ」


「はぁなるほどスイートビーですか」


 ナガレは得心がいったように頷いた。

 スイートビーとは蜜蜂タイプの魔物であり、この時期西に二日ほど進んだ先にある森林に出没する。


 討伐に関する推奨ランクはBランクの5級程度と、それなり実力が必要とされる依頼だが、人気の秘密はその脚袋に蓄えられる蜜にある。


 スイートビーは近隣に咲く花々から蜜を集め巣に持ち帰る習性がある。

 実は討伐対象となっているのはこれが原因で、蜜を集める途中で人を襲うこともあれば、畑の近くにあらわれては蜜を集めるついでに、作物を荒らしたりすることもあるので、放っておくと被害が拡大することになるためだ。


 だが、それと同時に別の意味の旨味もある。スイートビーが集めた蜜は、この魔物特有の保有魔力と体内の成分に寄る変化で、濃厚な素晴らしい甘味へと変化するのである。


 その為、スイートビーから取れる蜜は市場や商人との間で高値で取引される事となる。

 更にスイートビーの蜜は核を失った後も消滅することもない。

 その為、ギルドだけの専売特許ではなく自由取引の対象となっているのも人気の秘密だ。


「確か巣に関してはかなりの金額で取引されるのよね」

「えぇ、でもスイートビーを纏め上げるクイーンスイートビーはとても用心深いから、巣も上手く隠蔽されているしね。中々発見するのは難しいわよ」

 

「なので、単体のスイートビーを倒して済ます場合が多いのですよね」


 そうそう、とマリーンが頷く。


「ふ~ん、でもそれいいわね! スイートビーの蜜って一度だけ味わったことあるけど、あれはもう、本当……」


「ちょっとピーチ、涎、涎」


 ジュルリと袖で拭う。このあたりになんとも言えないあどけなさを感じたりする。


「ねぇナガレ、Bランクになったらこれいこう! ナガレと一緒なら上手くいきそうだし」


「そうですね……ですが、これはただの討伐依頼ではないですよね?」


「正解。人気ありすぎて自由に討伐させてたら喧嘩が起きたり、奪い合いが始まったり散々だったのよ。だからよほど数が増えないかぎりは受注依頼よ。そしてさっきも言った通り人気だから、今日発注分は全て取られてるわね」


 え~、とピーチが不満の声を上げる。

 しかし、そこでナガレが何かに気がついたように、あぁ、と声を漏らし。


「どうやら請けれそうですね、この依頼」

「え? いやだから今日の分は……」


「おいマリーン、そのふたりのランクが決まったぞ。ピーチもナガレもBランクの5級だとさ。ナガレはもう少し上げてもという話もあったが、やはりまだ登録間もないしDランクからの昇格だからな。今回はとりあえずこれでって事だ」


「え? あ、ありがとうございます。でもナガレは5級か……」


 話に割り込むようにして告げられた職員の言葉に、マリーンがお礼を述べた。

 それを聞いたピーチは取り敢えずは、やった、と喜んだものの、ナガレをみやり。


「でも、ナガレに5級ってちょっと低い感じよね」

「いえいえ、新参者ですし十分すぎるぐらいですよ」


 そんな会話をしていると、じゃあ書き換えるわね、とマリーンが手を差し出してきたのでタグを差し出す。


 そしてそのタグの書き換え中に、更に職員からの話が続き。


「そうだ、実は丁度スイートビーの受注者にキャンセルがでてしまったんだよ、ふたり分。全く午後の馬車も後一時間ぐらいで出るってのにな~、それでふたりともさっきその話してただろ? 請けるかい?」

 

 職員の言葉にマリーンが、え!? と驚きナガレを見やった。

 なんでそれが判ったのか? という表情だが、壱を知り満を知るナガレである。 

 丁度請けたいと思っていた依頼にたまたまキャンセルが出るということぐらい、軽くお見通しなのである。


「ナ~ガレ~この依頼~」


 顔を綻ばせながら嬉しそうに、それでいて甘えたように同意を求めてくるピーチに一つ頷き。


「そうですね。では折角ですしこの依頼お請けいたします」


 そう言って、マリーンからは書き換えてもらったタグを受け取り、依頼書にサインするのだった――





「スイートビー討伐隊専用、午後の馬車はこっちだ~乗るなら急いでくれ~もうすぐ出るぞ~」


 中央広場西の馬車通りに止められた大型の幌馬車から、御者の男が声を張り上げた。

 するとピーチが、待ってーー! と手を振りながら叫び、ナガレと一緒に馬車まで急ぐ。


「ふぅ、なんとか間に合った」


 出発ギリギリで目的の馬車に乗り込み、胸を撫で下ろすピーチ。

 走った為か、ピーチの額には玉のような汗が滲み出ていた。

 しかしナガレは息も乱れることもなく、涼しい表情である。


 ちなみに馬車に乗るのに遅れた理由は……主にピーチにあったりもする。

 一応馬車で二日の道程という事もあり、途中でお腹を満たすための保存食に、またスイートビーから蜜を採取するための瓶も用意する必要があった。


 いくら魔法の袋を持参とはいえ、液体状のものをそのまま入れるわけにはいかないからである。


 また目的地までの途中には川も存在するため、水の補充と身体を洗う為の水浴びも可能だが、そのためのタオルも必要となる。


 と、ここまではナガレにも想定内であった為、しっかり購入するものを把握した上で最速で店を回れば問題なかったのだが……

 

 ピーチが途中で、まだ大丈夫よ、と串焼きやクレープなどを買い食いしだしたので、ギルドから聞いていた時間ギリギリになった次第だ。


 尤もナガレも、ギリギリで間に合う時間を計算して一緒に行動していたわけだが。


 まぁ何はともあれふたりが乗り込むのと同時に馬車は動き出す。

 そして適当な空いている場所の床に腰を掛けた直後であった。


「あん? なんだガキかよ。おいおいこれから行くのは子供の遊び場じゃねぇんだぞ。これはBランク専用の討伐馬車だ、判ってんのか?」


 一人の冒険者が瞳を尖らせ、そんな事を言って来たのだった――



 

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