第二四二話 悪魔たちの狂宴
第二三八話から続いている話です。今回が待機組の最後の話となります。
「ば、かな、どう、して――」
ドスンと地面に落ちた頭が黒い悪魔の足元にゴロゴロと転がってきた。まだ意識があるのか恨めしい双眸を悪魔に向けるフレデリックであるが、その瞬間無情な悪魔の足が、グシャリとその頭を踏み潰す。
そして逆に悪魔がニヤリと口角を吊り上げた。確かに彼の放った魔法は強力だ。だが、スローサークルはあくまで物理的な行動のみに効果を発する。
つまり魔法には効果がない。そしてこの黒い悪魔は闇の魔法を使いこなす。時空魔法を使い調子に乗って油断した相手の首を刎ね飛ばすなど造作もないことなのである。
「え? フレデリック? う、そ、キ、キャアァアアアァア!」
残された胴体入りの騎士鎧が傾倒し、そこでようやく愛しの騎士の死を知ったエイコが悲鳴を上げた。
だが、いくら悲鳴を上げたところで彼女を守る騎士はもういない。残っているのはフレデリックを屠った悪魔たちと、怯えた目を見せている獣人だけである。
「そ、そんな、こ、こないで! こないでよ! そ、そうだ! お前! その拘束を解くわ! だから私の盾、ぐふっ!」
しかし、エイコが獣人に何かを命じる前に赤い悪魔の拳がその腹を殴打した。呻き声を上げ、エイコの身体がくの字に折れ曲がる。
だが、倒れる前に髪を掴み引き上げられる。ひっ、という短くか細い声がその口から漏れ出した。
これから一体自分はどうなってしまうのか? 頭をよぎる恐ろしい想像に、体が震えカチカチと歯を鳴らす。
すると、悪魔たちはその爪で着ている服をビリビリに引き裂いた。
「え? きゃーーーー!」
思わず上半身と下半身の大事なところを手で隠そうとする。だがそれすら許してもらえず、悪魔の豪腕で手首がポキンと折られてしまった。
ヒギィ! と情けない悲鳴を上げる。
殺さないで、殺さないで、と懇願する。すると悪魔の一体が既に事切れた騎士から何かを切り取り、そして騎士の槍で女の口を塞ぎ、そのまま一斉に行為に及び始める。
涙を流し、助けを訴えるような彼女の目が獣人の姿を捉えた。
すると、黒い悪魔も首を回し、そして地面にへたり込みカタカタと震える猫耳の少女を見た。
少女は、一体何が起きているのか完全には理解ができなかった。
だが、ただ漠然と、きっと自分も同じ目に会うのでは? そしてやはり殺されてしまうのでは? といった不安だけが彼女の脳裏を支配していた。
だが――黒い悪魔は一度は少女の姿を見やるも、すぐに獲物へ興味を戻し、獣人の彼女には何もしようとしてこなかった。
「……にゃ、にゃ?」
そのことに、少女も気がついたようで。そこで少し落ち着くことが出来たのか、ゆっくりと立ち上がり様子を探る。
彼女を獲物に見立て、狩り、殺そうとしたふたり。その内の一人、騎士のフレデリックは悪魔の手で首を刎ねられ大事な箇所が抉られた骸と頭が地面に転がっている状況。
そして、少女だけではなく、これまで数多くの獣人を狩りと称してその手にかけてきた女は――どういうわけか悪魔達の慰みものになっている。
この状況の全てを把握することなど出来はしない。悪魔の目的も不明だ。だけど――何故か悪魔は自分には一切興味が無いようだ。
ただ、だからといって楽観視も出来ない。あの女が終われば次は自分かもしれないのだ。
幸いなことに、既に少女の束縛は解けていた。悪魔に襲われる直前、あのエイコが自らその縛めを解いたからだ。
恐らく一旦自由にして悪魔に対する盾にでもしようと考えたのであろうが、その前にやられてしまい、結局命令は最後まで口にされなかった。
だから――少女はこの場から逃げる事ができる。エイコの目が助けを求めているが、少女はそこまでお人好しではない。
いや、これまで同胞がされたことを考えれば当然の罰であり、報いだろう。
それよりも、今少女が心配すべきなのは町のことだ。何せ町に向かう悪魔たちの姿は少女も確認している。
一体あの悪魔の目的が何なのか、そして――町に囚われている仲間たちは無事なのか……そう考えると居ても立ってもいられなくなり、思わず町に向けて駆け出していた。
その耳にあの女の苦悶の声が届くが関係ない。とにかく町へと気持ちを急かせるが、その視界に映ったのは黙々と煙を上げる町の姿であり――
◇◆◇
「きゃああぁあああ!」
「う、うわぁああぁあ! 化物だ! 化物がやってきてるぞ!」
「な、なんだアレは! 魔物か?」
「あんな魔物は初めて見るぞ、こっちにどんどん近づいて、ひぃいいいぃいい!」
「お、おい! 防壁はどうなってんだよ! 騎士様は? 近衛兵は!」
「ばっきゃろー! 相手は空からきてるんだ! 壁なんて意味、ひ、くるな! くるなぁあぁあ!」
「あ、うあ、やめ、て、ごんなの、いやだぁ、こんな化け物に穢されるな、んて、ああ、いやだぁああ」
獣人の少女が門を抜けた先では、阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。突然の悪魔たちの来襲により、町中がパニックに陥り、人々が逃げ惑う。
黒い悪魔と、赤い悪魔の力は凄まじく、赤い悪魔は上空から炎を、黒い悪魔は強力な魔法で建物を次々と破壊し、町の至る所で火の手が上がっていた。
そしてただ逃げ惑うしか出来ない人々を小さな悪魔やガーゴイルが強襲し、騎士や冒険者は赤い悪魔と黒い悪魔によってその命が刈り取られていく。
しかも悪魔たちは至極嗜虐的であり、相手が誰であれ甚振るようにして犯し殺していく。
『……ほら、ここまで切れた、みて、みて――』
とにかく他の獣人の事が心配で駆け出す少女であったが、ふと視線を向けた先で黒い悪魔が人族の少女の首を引き千切り、両親と思われる二人に向けて掲げていた。
赤毛のお下げ髪を掴みブラブラと振り子のように揺らしている。その様相に両親は絶叫し、父親は斧を片手に襲い掛かるが、勝てるわけもなく。
両親共に四肢を切断され、少女の骸と臓物と、頭が転がるその眼の前で徹底的に蹂躙された。
だが、獣人の少女は覚えている。この町の連中が、どれだけの獣人の首を刎ねたか。子どもたちに剣を持たせ、仲間たちをどれだけ切り刻ませたかを――
「ち、畜生! 畜生!」
町の人間が殺され続ける中、往来を駆ける少女であったが、今度は突如何者かに捕まり、そして羽交い締めにされ、盾のように男の正面に持っていかれた。
「にゃ!? なんにゃ――」
「うるせえ! 黙れこの腐れ獣人が! へへっ、お、おい化け物。お前、女に興味あんだろ? だ、だったらこいつにしとけよ。お、俺なんかよりもいたぶりがいがあるってもんだろ?」
中年の男が、正面の黒いソレに向けて訴える。少女の目の前にはあの黒い悪魔がいた。そしてじっと少女と中年の男をみつめてくる。
それで猫耳の少女は理解した。この男は、自分を餌にして逃げるつもりなんだと。
冗談じゃない! と少女は口を動かすが、何かを喋ろうとすると激痛が走る。さっきの黙れが命令として認識されてしまい、言葉を発しようとすると痛みが訪れるのだ。
これではとても声を発することが出来ない。
すると、目の前の黒い悪魔が、地面に転がっていた鉄球を手に取り出した。
「……へへっ、そうか。ああそうだ! その鉄球でこの獣を破壊すればいいさ! 特別に代金はおまけしておくぜ。だから、俺のことは見逃して――」
だが、その言葉が最後まで続くことはなかった。何故なら悪魔の投げた鉄球は少女にではなく、その横を通り過ぎ後ろにいた男の側頭部を捉えたからだ。
派手な音と共に、少女を押さえていた男の腕が剥がれ、後ろへと吹っ飛び地面に転がった。
少女が振り向くと、男の頭はすでに半分が砕け、柔らかい何かがその奥に見えた。
だが、それでもまだ男は死んでいないようであり、近づいた悪魔は改めて拾った鉄球で、男の頭を、顔を、何度も何度も何度も何度も殴打した。
その度に男は無様な鳴き声を発し、そして――死んだ。
『何だ、もう死んだのか』
悪魔はそういうと、男の骸を蹴り飛ばす。血肉の雨があたりに降り注がれた。
「にゃ……」
そして自由に喋られるようになったことを少女は確認する。命令した男が死んだ為だ。
「……もしかして――」
改めて少女は周囲を確認する。そして少女は確信した。
確かに町に突如やってきたもの達は悪魔そのものだ。だが、何故かその悪魔は少女には、いや、獣人には一切手を出さないんだということに。
その証拠に町に住む人族は容赦なく刻み、喰らい、犯す悪魔達だが、獣人は全く手を出されていない。
いや、それどころか、中には獣人を繋いでる鎖を破壊している悪魔もいたほどだ。
「……私達を、助けてくれてるにゃ?」
ふと、そんな考えが頭をよぎる。そして、だとするならそれは確かに多くの人間にとっては悪魔でしかないだろうが――獣人にとっては天使ともいえる存在であろう。
「だ、大丈夫にゃ?」
そして少女は縛めを解かれ呆然と状況を眺めている同胞に声をかける。
彼の見ている視線の先では、赤い悪魔の吐き出す炎に焼かれ、ゆっくりとローストにされていく女の姿。
だが、あれは獣人に平気で熱い油を掛けて喜ぶような女だ。
そう、さっき少女を盾にしようとした男もそうだ。あれは獣人を的にして景品を餌に客に鉄球をぶつけさせ喜んでいた男なのだ。
そしてあの女も含め、この町の連中は老若男女問わず、獣人を穢し、犯し、虫けらのように殺してきた連中なのである。
悲鳴が響き渡る、助けを求める声もする、命乞いし、必死に我が子を守ろうとする親の姿も多数見られる。
だが、何をしようと悪魔は聞く耳など一切持たず、人々を蹂躙し続けた。
「……いい気味」
少女は呆然とする獣人に事情を話し、更に他の獣人達も助けて回る。奴らがやり小屋と読んでいたそこでは、いつの間にか獣人は縛めから放たれ、変わりに人間の女が繋がれていた。
彼女たちがこれからどうなるのか――外の人間の成れの果てを見れば、想像に容易い。
そして次々と獣人を解放していく少女たちであったが、その時、何体かの悪魔が空に飛び立つのが見えた。
それぞれの腕には黒髪の少年少女が捕らわれていた。彼らのことも少女は覚えている。あのエイコの仲間で同胞の獣人に散々酷い真似をしてくれた連中だ。
そして――空中でまた別の悪魔たちが、そうエイコを群れで蹂躙していた悪魔たちが、彼女を抱え合流した。
その腕の中でエイコは萎れた花のようになっており、その双眸には生気も感じさせない。光を失い虚空を見つめているような状態。
どうやらもはや抵抗する気力も起きないようで、体全体に大小様々な傷がつき、腕や足もおかしな方向に曲がっていた。
その様子から何があったかは、他の獣人にも容易に想像がついたはずだ。
しかし、同情の余地などない。少女の仲間の中にはざまぁみろ、と思わずこぼす者もいた。
連中が連れ去られた先でどうなるか……全てを察することはできないが――しかし、少しでも長く苦しみ、後悔して死ねばいい。
遠ざかっていく悪魔たちを眺めながら、そう願って止まない獣人たちであった――
◇◆◇
「ひぃ、いてえ、いてえよ畜生!」
「なんで、なんで私達がこんなめにあわないといけないのよ!」
「き、君たちは一体なんなんだ? 僕達をこれ以上どうするつもりなんだ!」
「そ、そうよぉ、私達が一体何をしたっていうのよぉ――」
町を離れ、西の山に存在する洞窟へと連れてこられた待機組の少年少女。
屈強で異様な悪魔たちに取り囲まれ、涙を流しながらそのわけを確認した。
悪魔が何故町を襲うのか、そして、どうして自分たちだけがわざわざ町から連れ去られ、こんなところで囲まれてしまっているのか。
待機組の少年少女には一切理解が出来ないのである。
『――我々は主、サトル様の使いなり』
だが、一体の黒い悪魔が発した言葉で、彼らは一様に目を丸くさせる。
「サトルって、もしかして、あのサトル?」
「でも、どうして、まさか! 本当にサトルもこの世界に!」
「そんな、あいつは、あいつは今頃死刑になっている筈でしょ! それなのにどうして!」
全員が口々に語る。すると、眼鏡の秀才ハジメが悪魔に向かって話しかける。
「だ、だったら! それならサトルではなく俺達につけ!」
『……何?』
するとこの場の悪魔達の代表とも思える黒い悪魔が、ハジメへと問い返した。
その言葉に、脈があるとでも考えたのか更にハジメが続ける。
「お前たちきっとサトルと何か契約をして俺達を狙いにきたのだろう? だが、あんなやつより俺達の方がもっといいものを用意できる!」
「そ、そうよ! お金でも、何でも、用意してあげるわ! あ、悪魔なら魂とか? そ、それならあてはあるわ!」
「そ、そうよ。アケチ様に頼めば新鮮な生贄ぐらいいくらでも用意できるし」
「そう、だから、何でもお前、いや! 悪魔様の望むものを差し出すから、だから俺達につけ!」
「そして、サトルを、あのクソ野郎を逆に殺すのよ!」
「そうね、あんなやつ残飯以下の、生きているだけで害にしかならない蛆虫でしかないんだから!」
口々にそんなことを述べ、生を懇願し、訴える待機組。
すると、ふむ、と黒い悪魔が顎を押さえ一考する。
『何でも、好きなものを、くれるのか?』
「あ、ああ勿論だ! さあ、言ってみろ! 僕達が願いを叶えてみせる!」
『……そうか、ならば、お前たちの、より長く藻掻き苦しむ姿こそが、我らが望み』
だが、悪魔の発した答えに、へ? とハジメが狼狽した声を発し、それを聞いていた他の待機組の面にも絶望の色が宿った。
『いい目だ。愚かな家畜以下の存在が、我らと取引など笑わせる、我々の望みは主様の願いと同意――覚悟しろ、簡単に死ねるなどと、思わぬことだ』
絶叫が洞窟内に響き渡る。そして周囲の悪魔たちが生贄を求め、悪魔にとって至福の、そして待機組の少年少女にとっては絶望の狂宴が今開始された。
「い、嫌だぁああ! やめてくれよぉ、僕が何をしたって言うんだよぉ、ひっ、アヅイ"アヅイ"ーーーー!」
ハジメの肌が肉が、赤い悪魔の吐き出す炎によって少しずつ焼け焦げていく。その熱と痛みに地面を転がり周り彼は悲鳴を上げ続けた。
しかしサトルの家族についてあることないことをネットに書き込み続け、一人ほくそ笑み続けた彼には当然の報いであろう。まさに彼はいま身をもって炎上を体験しているのだ。
『パパぁ、ママぁ、もうお家に返してよぉ、ぐぶぅ! あ、ごめんなざ、いや、お願い、もう殴らないで、何でもしますから、何でもしますから……ひぃ、やめて、お腹、お腹が破けるぅぅうぅう!』
悪魔の徹底した暴力に屈するメグ。見た目とは裏腹に遂にはこの場にはいない両親の名前まで上げ、助けを求める。しかしこの場に彼女を助けるものなどもはや誰もいない。恋人であるハジメすら為す術もなくその身を焼かれているのだ。
そして悪魔によって彼女の身体は刻まれ、腹を割かれ、解体されていく。彼女自身が獣人にやってきたように――
『こ、こんなの、あたしは食べる専門なのにぃ、嫌だ、こんな悪魔みたいなのに、食べられるなんて、うわぁああそれはあだじの肉ぅ、かえじで、かえじでよぉ――』
悪魔のナイフのように鋭く尖った爪により、タイコの肉が少しずつ削ぎ落とされていった。そして悪魔は切り取った傍から、くちゃくちゃと敢えて音を鳴らし、喰らい咀嚼していく。
いつもは食べる専門であり、獣人ですら解体して食したこの豚も、遂に食われる側に回るときがきたのだ。
『喉が、喉がやげるようにいだい、イダぃよぉ、こんなのもう。のみだぐなぃぃ、いやぁぁあ喉いだい、お腹いだい、いだいいだいだいいだいだいぃいい……』
ウルミの目からは大量の涙がこぼれ落ちる。彼女の口から悪魔達が作成した特製の毒液が容赦なく流し込まれていく。劇毒であるが、簡単には殺さないよう調整されていた。
そして悪魔たちは、彼女の全身の穴という穴から毒を注ぎ込み、血反吐を撒き散らし、腹を抑え、苦しみもがく姿をゲラゲラと笑って眺めていた。
『だずげでがあじゃーーーーん! どうして、あぁああ腕が足が、耳が、なくなっていく、なくなっていく……』
無様な醜態を晒し、泣き叫び、母親に助けを求めるタロウ。だが、悪魔の拷問は終わらない。耳を切り取り、目を潰し、皮を剥ぐ。
そのあまりの激痛と恐怖に、遂には失禁し、糞尿を撒き散らす始末だが、その両方の性器も悪魔によってずたずたにされ使い物にならなくなってしまう。そのあまりの苦痛に、一旦は気絶するも、そんなこと悪魔が許すわけもなく、すぐに気付けされ更なる拷問は続いた。
『いやだいやだいやだ! こんなの嘘、聞いてないよ! どうしてよアケチ様ぁ、待機組は安心だって、安心だって言ってたのに、ひっく、こんなの、こんなの嫌だぁああぁあ! いやぁああやめてぇぇ! そんなものいれないでぇえぇ!』
一足早く、悪魔たちの洗礼を受けていたエイコ。自暴自棄になり目の光さえも失っていた彼女は、宴が始まると同時に悪魔が魔法で創り出した矢によって全身を射抜かれ、強制的に現実へと引き戻される。
そして再び悪魔たちによる蹂躙。それはより激しく、より苦痛を伴う形で――思わずアケチの名前を口にする彼女だが、答えなど返ってくる筈もなく、絶望の絶叫が洞窟内にこだまし続けた。
『あ、が、お、おどごのおれが、ごんな、そんな、尻が、うわぁあああぁ! 尻がいたい、いだいいだいいだい! 畜生! 俺はやるほうが好きなのになんでだぁああぁ! もうやべでぐれぇええぇ!』
両手両足を切断され、地面に置物の用に設置された状態で、タイチは悪魔達に犯されていた。その姿はまるで小屋に繋がれていた獣人そのものである。
悪魔たちにとっては相手の性別などは関係がない。やるときにはやる、それが悪魔だ。尤も悪魔の行為による快楽などは一切感じられない。ひたすら苦痛のみが伴う形でそれが繰り返されるのである――
『ヒック、ヒック、こんなの、初めてはアケチ様にと決めてたのに、こんな化物となんて、もうやめて、いや、こないで、もうこないでーーーー!』
そして、悪魔の手によってハルナの処女は奪われた。泣きじゃくり悲鳴を上げ、アケチの名を呼ぶ。どうやら密かに彼女もアケチに想いを寄せていたようだが、彼女の願いが届くことは二度とないだろう。
散々悪魔に弄ばれた彼女は、洞窟の壁に磔にされ、的にされ、悪魔たちの遊び道具になる未来しか待っていない。
後悔し、許しを乞う待機組の面々に、容赦なく悪魔の裁きが下され、この狂宴は三日三晩続いた。そして悪魔たちがその場を去った時には、洞窟内には絶望を貼り付けた愚者の頭と、食い散らかされた肉片のみが残されていたという――
これで今回のサトル関連の話は終わりです。そして物語は再び合気な彼らに……




