第二三七話 謎の組織? ブラックチーター
引き続き地球での出来事です。
(やっぱちょっと気になるし、ミルにも頼んでおくか……)
門下生への指導も終わり。自己鍛錬も全て終了したナゲルは一人そんなことを考えながら屋敷の最奥部へ向けて歩いていた。
目指しているのは広大な庭園を挟んで端に位置する場所に建てられた離れ。
そこに存在する彼女の家屋。かなり目立たない場所にあるが、別に追い立てられたわけではなく、彼女が、つまりナゲルの妹である神薙 美留が引きこもるために自ら選んで建てた場所なのである。
その理由に関して言えばミル曰く、あらゆる電波を拾うのに適した場所、だからなようだ。
そんな自称引きこもりの妹の家に入り、ナゲルは階段を上っていく。基本的には一つの部屋が彼女にとってメインの活動場であり、そこから出ることは殆ど無い。いや、あっても本当にひっそりとな為、ナゲルでも気づけない。
単純な身体能力で言えば神薙家一ひ弱と本人も認めるほどなのだが、日常の所作に関して言えば妙に気配を断つのが上手い妹なのである。
そんな妹の過ごす部屋の前にナゲルは立つ。そして、ふぅ、と息を一つ吐き出した。実は妹に関して言えば少々苦手な面もある兄なのである。
理由としてはやはり殆ど顔を合わせないことが大きいか。基本部屋から出ない妹である。その為一年の内でもナゲルは数度姿を確認出来ればいい方なのである。
流石自称引きこもりと言うべきか。正しこれはあくまで自称だ。なぜなら神薙家において義務を全て放棄するような引きこもりなど許されるはずもない。
故にミルとて、小中高は全てひっそりと首席で卒業しているし、名のしれた大学もしっかりと出ている。そして大学を卒業と同時に起業し、自らの情報処理能力を活かし、部屋にいながら、つまり引きこもりながらでも年に数千億を稼ぎ出すまでに会社を成長させた。
なので自立さえしていれば(勿論悪行などでなければだが)文句を言わないのが神薙家のルールでもあるので、現状殆ど部屋に引きこもっていようと文句を言うものはいない。
尤も彼女が引きこもって終始パソコンとにらめっこしてるからこそ、これだけの稼ぎが生み出せているとも言える。
何せこれだけの会社だ、当然抱えている社員も多い。ミルが立ち上げた会社で働く社員は全て神薙家の敷地とは別の場所にある自社ビルにて活動している。だが、社内のことに関して言えば、大学時代から付き合いがあり、今は副社長のポストに付いてもらっている自称美少女(♂)に任せっきりのようだが。
つまり――正直稼ぎに関して言えばナゲルより遥かに多いミルなのである。唯一の欠点といえばそんな暮らしを続けているせいか浮いた話が全くないことか。
これは父であるクズシも気にしているところである。ナゲルの妹は兄の四つしたで現在二八歳。父がそろそろ嫁ぎ先の一つも、と考えてもおかしくない年齢だ。
そんなミルの部屋のドアを――ナゲルはようやくノックする。
「……ミル、いるか?」
「――いる」
「…………」
以上である。このままでは会話が成立しない。
「いや! いるなら顔ぐらいみせてもいいだろ!」
「……なんで?」
その対応に頭を抱えるナゲルである。とはいえ、実はこんな妹でも一発で外に出すことが出来るキーワードがあるのだが――まあそれは今回はいいか、とナゲルは話を続ける。
「じゃあ顔見せなくていいけど、一つ調べてほしいことがあるんだ」
「……依頼ならこれに書いて」
壁に備え付けられた郵便受けみたいな細長い穴から紙が一枚飛び出してきた。
ナゲルがそれを受け取り確認すると、依頼書という表題。欄の下側には社名とミルの代表員がしっかり捺印されている。
「はあ、こういうところはしっかりしてるんだな……」
ぼやくように言いながら、ナゲルはさらさらと依頼書に内容を記入し、受け口に戻した。
「これでいいだろ」
「……要確認――」
それから数秒後。
「……ブラックチーター?」
「ああ、なんか最近島にも姿を見せ始めた連中でな。本州では結構やんちゃなことをしているグループみたいなんだ」
「……じゃあこれ」
壁にあいた口から再び紙が出てきた。なんだこれ? と呟きながら出てきた用紙を確認する。
「は? 見積書? おい! 金取るのかよ!」
「……当たり前。これはビジネス、家族だからとか甘い」
くっ、と呻きつつ、見積もりの内容を確認する。
「は、はぁ!? 一〇〇万ってなんじゃこりゃ!」
「……急ぎの案件ならそれぐらい当然」
「いやいやいくらなんでもこれは高すぎだろ!」
「……これぐらい私の会社への依頼者なら納得して払う」
一体どんな相手と取引しているのか? と眉を顰めるナゲルである。しかし情報を売れば金になるは地球でも例え異世界であっても常識。
「どっちにしろこんな大金、俺個人の財布からは出せねぇよ。こんな金額支払ったら静にドヤされる!」
ちなみに静とはナゲルの妻の名前である。数多くの門下生に教える立場であるナゲルといえど、奥さんには頭が上がらないのだ。
そもそも神薙家では女性の方が立場が強いことが多い。ナゲルの父であるクズシも妻には頭が上がらない。
それに祖父のナガレとて、既に他界してしまったが生前の祖母には頭が上がらなかった。笑えるぐらいに常識の外にいるナガレですらそうなのだ。
「判ったよ。別に急ぎじゃなくてもいいから、時間のある時に調べておいてくれ」
結局ナゲルは妹に強くも出れず妥協した。だが、返ってきた答えは――
「……それだと着手は二五年後、いいのか?」
「なげーよ! なんだよ二五年後って! そんなに待てるか!」
当然である。二五年も待たされると彼の息子のタオスも軽く成人を超えている。流石にそんなに気は長くないだろう。
「……仕方ない、一週間以内の着手でいいならこれでいい」
改めて提出された見積書に目を通すナゲルであるが。
「一〇万円かよ――」
「……それで駄目ならおとなしく待つ」
ちなみに二五年待つなら三万円でいいらしい。それを聞いて眉に深い皺を刻み悩むナゲルであるが。
「……ぶ、分割でもいいか?」
◇◆◇
「ほう、本当に一人でノコノコやってくるとは女のくせにいい度胸だな」
「私の友達を人質に取っておいて何言ってるのよ」
ガランとした建物の中で、件のブラックチーターを名乗る集団と対峙するメクル。
どうやらここは今は使われていない空き倉庫なようで、その為、他に誰かがやってくることも殆どないらしい。
「おう――判った。がはっ、どうやら警察に駆け込んだりもしてないようだな」
恐らくこの中でリーダーを張ってるであろう男がトランシーバー片手に醜悪な笑みを浮かべる。Tシャツにジーパンといった出で立ちで、筋骨隆々の体躯にドレッドヘアー、角ばった巨大な顔と浅黒い肌が特徴の厳つい男である。
そんなリーダー格の男の話しぶりを聞くに、どうやらメクルの動向を見張り続けていた連中が外にいるようで、トランシーバーで連絡を取り合いメクル以外に誰か来ているかどうか確認していたようだ。
「あんたらみたいな屑を相手するのに、わざわざ警察に頼ったりしないわよ」
「ふん、威勢だけはいいな。だが、てめぇの立場ってのをわきまえろよ。おい」
ドレッドヘアーの男が目配せすると、ふたりのやはりヒャッハーな面構えをした男が制服姿の少女を連れて前に出てきた。
「う、うぅ、ごめんなさいメクルちゃん」
「助けてもらったばかりなのに、うぅ、私のスマホまで取られちゃって……」
そう、ふたりはまさにメクルが一度助けた友達ふたりであり、本日二度目のピンチなのである。
「つまり私の携帯番号は、奪ったスマホから手に入れたのね」
「そういうことよ。くくっ、てめぇには仲間が世話になったみたいだからな。おかげで警察に連れてかれちまったからな! この落とし前はきっちり付けてもらうぜ!」
「落とし前? はい? あんた馬鹿? 悪いことしたらお巡りさんに捕まるなんて小学生でも判る常識よ。そんなんだからブラックチーターなんてアホな名前の組織名乗って浮かれるアホの子に育つのよ。本当親の顔が見てみたいわね」
メクルの怒涛の口撃に、リーダー格の男の額に青筋が浮かび上がり、ピクピクと血管が波打った。
「てめぇは本当に自分の立場が判ってないようだな。お前の行動次第じゃ、お友達にちょっとばかり痛い目をみてもらうことになるんだぜ?」
へへへっ、と下卑た笑みを浮かべ、少女たちの喉元にナイフを突きつける男ども。
その姿に、ため息を吐きつづ、
「それで、私にどうしろっていうのよ?」
と問いかける。
「へっ、やっと立場が理解できたようだな。だったらとりあえず、てめぇはその場で全裸になれ」
「そ、そんな……」
「酷いよそんなのぉ」
「うるせぇ! お前らも後でかわいがってやるから黙ってろ!」
涙目で訴える友達ふたりを恫喝する悪漢達。そしてリーダー格の男はメクルを舐めるように見定めながら、彼女が服を脱ぐのを待った。
「おい! どうした! 早く脱げよ!」
「はい? え? 何で?」
「は? 何言ってんだてめぇは! 脱がなきゃ友達がどうなるか――」
「冗談じゃないわよ。言っておくけど私の身体はあんたらみたいなゲテモノ連中に見せるためにはないのよ。愛しの叔父様以外に、見せる気も指一本触れさせるつもりもないわ!」
腕を組み、堂々と言い放つその姿に、ぐぎぎ、とリーダー格の男が歯ぎしりした。
「もういい! てめぇら、その女達を脱がして立場ってのを判らせてやれ!」
「へへっ、待ってました!」
「あんな、乳なしよりこっちのほうがやりたかったからな俺は!」
「きゃ、い、いや!」
「や、やめてよぉ!」
男たちの手が人質の少女たちの服に、胸元へと伸びていく。だが――
「だから、誰が無乳女よ!」
「ゲブぉ!」
「汚い手で私の友達にさわんな!」
「ギャフン!」
『メクルちゃん!』
は? と怪訝な顔で何故か視界から消えたメクルに唖然となるドレッドヘアー。
そして、目で追えないほどの速度であっというまに男たちの懐に潜り込んでいたメクルは、ナイフを持った男の一人を大外刈で地面に叩きつけ(当然刈られた足は骨折)、もうひとりは払腰で背中の骨を痛めつけ意識を刈り取った。
その後は声を揃えて声を上げた友達ふたりを脇に抱え跳躍。
比較的安全な場所に着地し、隠れてて、とふたりに身を隠すよう促した。
外には仲間がいる可能性が高いため、倉庫内で隠れてもらったほうがいいと判断したのだろう。
そしてふたりが端っこの目立たない位置へ移動したのを認め、再びメクルが連中の正面に移動する。
僅かな時間で人質を奪い返され、更に仲間ふたりがやられたことに唖然となるリーダー格の男とその手下たち。
「さて、これでもう私を脅す手段はなくなったわね」
そして連中を睨めつけながら堂々とメクルが言い放つ。冷静になってみやると、ブラックチーターはリーダー格の男を含めて二〇人近くこの場にいるわけだが、メクルには全く畏怖する様子がない。
むしろこれだけのことをやってのけたメクルを目の当たりにし、腰が引けている男たちもいるほどだ。
「くそが! 調子に乗りやがって! こっちはこれだけの人数がいるんだ。てめぇ一人をどうにかするぐらい楽勝なんだよ」
「そう? だったら試してみる?」
余裕綽々といった様相のメクルに、リーダー格の男の頬に汗が伝った。
どうやら馬鹿なように思えるが、それでもメクルの実力を多少は感じ取っているらしい。
「……なるほどな。どうやら自信に繋がる実力はあるようだ。だがな、俺達がただ人数だけ揃えてお前を待っていたと思ったなら大間違いだぞ? ワゴン車を投げ飛ばしたと聞いた時は何かの冗談かと思ったが、あながち嘘でもなさそうだしな」
「ふ~ん、そこまで判ってて私に喧嘩うるなんていい度胸してるわね。友達まで二度も怖い目に合わせて、言っておくけどこれで私、結構怒ってるんだからね」
「可愛い顔して勇ましいことだ。だがな、お前が馬鹿にしたブラックチーター、この名称の意味をお前は判っているのか?」
「知らないわよそんなの。判りたくもない」
問いかけてくる男の言葉をあっさりと跳ね除けるメクルである。彼女にとってそんな名前の意味などどうでもいいことなのだろう。
「そうか、そこまで興味があるなら教えてやる」
「いや、だから興味ないんだってば」
だが、リーダー格の男はメクルの話を聞いていないようで勝手に説明してくる。
「俺達にはな、それぞれ強力なチート能力があるのさ! さぁ見せてやる! 俺達のチート! プリントウェポンをな!」
は? と不機嫌そうに眉を顰めるメクルだが、ブラックチーターの連中はお構いなしにガチャガチャと事前に用意してあったと思われるそれを回し始めた。
「……何それ?」
「カハッ、知りたいか? 知りたいだろうな! これはな文字通りプリントして作られた銃火器よ!」
そう、リーダー格の男が言うように、それは一見すると玩具のような武器の数々であった。見た目にはまるでプラスチック製のモデル銃のような代物。
だが種類は豊富であり、それぞれの手にはアサルトライフルタイプやサブマシンガンタイプ、リボルバータイプに、ライフル、グレネードランチャー、更にリーダー格の男に関して言えば四連装のロケットランチャータイプのプリントウェポンだ。
「……そんな玩具で何するつもりよ?」
「がはは! 馬鹿が! チートだといってるだろう? この武器は全て立体的なプリンターのアレでアレして作られてるんだよ! だからこれらは本物と殆ど性能は変わらねぇ!」
どうやら男にも技術的なことはよくわからないようだ。ただ自信満々なところを見ると実際にそれは本物と相違ない性能を誇っているのだろう。
「さあ! どうする? 俺達はやると決めたら容赦しねぇ! だが俺達の奴隷になると誓うなら、命だけは勘弁しておいてやるよ」
「ば~か。さっきから言ってるでしょ? そんな玩具振りかざされても何も怖くないって」
「……そうか、だったら死ね! オープンファイヤーーーー!」
リーダー格の男が声を上げたその瞬間、ブラックチーターの男たちがメクルに向けて一斉に射撃。離れた位置から様子を窺っていた友達ふたりから悲鳴が上がり、銃弾の雨に榴弾やロケットが飛び交い、派手な爆発が辺りを支配し粉塵が巻い、灰色の煙が視界を遮る。
「よ~し、ストップ! ストップだ!」
そして――ある程度射撃を続けた後、リーダー格の男が手を上げて、攻撃を中断させた。
「ふふっ、やったか」
「これだけ撃ちまくればいきてるわけがありませんよ」
「ちょっと勿体無いけどな。肉片すら残ってるか怪しいしよ」
「まあその分はあのお友達にたっぷりと――」
「やったかは、フラグだっつぅううぅうの!」
しかし煙の中から小さな影が飛び出し、そしてリーダー格の男の脇を通り過ぎながらロケットランチャーを破壊し、更に後ろに控えていた手下達全員を、瞬きしてる間に全員投げ飛ばした。
ついでにプリントウェポンとやらも全て粉々に粉砕する。
「な!? な、なななななななっ、なっぁあああぁあ!」
「うっさいわね。喋るならちゃんと喋りなさいよ」
メクルを振り返り、言葉にならない何かを発し付ける男へ、メクルが言い放つ。
すると男は喉を鳴らし、改めてメクルに向けて声を発した。
「な、なんなんだてめぇは! なんで生きてんだ! あれだけの銃弾もロケットだってぶちかましたんだぞ! 普通は死ぬ! 死ぬだろ! それが常識だろ! なのになんで、なんでてめぇは生きてんだよ! 俺達の、俺達のチートを喰らって! どうして!」
「うっさいわねこのバカ! だから前も言ったでしょ。チートなめんな! あんなのがチートだなんて鼻で笑っちゃうわよ。全くこんな玩具で私をどうにか出来ると思われたなんて、私もなめられたものね。あ~! でも腹立つわね! 髪が乱れちゃったじゃない! 埃酷いし」
ショートカットの髪を指先で弄くりつつ、そんな文句を言う。どうやらメクルにとって、彼らの攻撃は髪がちょっと乱れて汚れる程度のことであったようだ。
「くっ、こ、この、このリアルチート女がぁあああぁああぁ!」
すると、今度は隠し持っていたであろうバタフライナイフを取り出し、ドレッドヘアーがメクルに向けて飛びかかってくる。
だが、ロケットランチャーすら物ともしなかったメクルに、そんなナイフごときでどうにかできるわけもなく、あっさりと腕を取られ一本背負いで見事地面に叩きつけられた。
「あ、が、ち、畜生……」
「うん、意識はあるわね」
だがしかし、今回ばかりはそれで終わらせるわけにもいかない。
なのでメクルは男の意識が残っていることを確認するとそのまま腕の関節を決め始める。
「い、いでええぇえええぇえ! いでぇええよぉぉおおぉおお! 折れる! 折れるゥゥう!」
「そうね、このままじゃ折れるわね。それが嫌なら、そのブラックチーターとかいう頭のおかしな連中がどれぐらい島に来てるのかいいなさい!」
「あ、ぐ、ち、畜生、そんなこと、口が裂けてもいえるか……」
「あっそ、じゃあとりあえず一本ね」
ゴキンッ! と鈍い音がし、男の右腕が先ず折れた。しかも嫌な形で。
「ぎゃあああぁあああ! この女、マジで、マジで折りやがったぁああぁあ! ひぃいいぃいい!」
「はいはい、次は左腕いくわよ」
「ひっ! やめ、やめて、お願いですもうやめて下さい! 知らないんです! 俺何も知らないんですぅぅうぅうう!」
「は? 何いってんの? ここまでやっておいて何も知らないわけ無いでしょ?」
「ほ、本当なんですぅうぅうう! 俺達組織じゃ下っ端の下っ端でぇえええぇ! 最低限の情報しか知られてませんし連絡だって向こうから来るだけで、本当に何も、ぎゃあああぁあああぁあ!」
メクルは左腕も折った。
「次は足ね」
「ひっ、ごめんなさい! 許して! もう、悪いことしませんから! 許して、嫌だぁ、いてぇよぉ、死んじまうよぉ――」
「この程度じゃ死なないわよ。実際生きてるんだし。それより両足も折られたくないならさっさと本当のこと」
「本当なんですよーー! 嘘言ってない! 俺、嘘言わない! 本当に何も、何も知らないんだーーーー! 殺されるーーーー! 誰かーーーー!」
さっきまで本気でメクルを殺そうとしていた男の言葉とは思えないが、様子を見る限りどうやら本当に何も知らないようだ。
「……仕方ないわね。ねぇねぇ、ふたりはどう? まだ納得出来ないなら両足も折ってあげるけど?」
「え? あ、いや、流石にそこまでは……」
「そ、そうだね。結局メクルちゃんのおかげで私達怪我もないし」
「そっか、じゃあ――」
メクルが喉に腕を回し、リーダー格の男を絞め落とした。ぐぇ、と声を上げて気絶した男を汚物でも見るような目で見下ろした後、外にいた残りの連中もあっさりとメクルが片付け警察を呼ぶ三人であったのだが――
「――はい、申し訳ありません。はい、下の連中が勝手に動いたみたいで何人か捕まってしまいました……」
黒塗りの車に乗った女が、電話で何者かと話をしていた。その内容を聞くに、どうやらメクルに全滅させられたブラックチーターの連中について話しているようであり――
「はい、そうですね。確かにこの島は一筋縄ではいかないかもしれません。一度撤退して体制を整えたほうが――はい、判っております。あの連中が捕まったところで何の影響もありませんよ。ですから今後もよろしくお願いします――明智総監」
さて、果たしてあの彼と関係あるのか!




