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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第三章 ナガレ冒険者としての活躍編
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第二十一話 昇格試験

「私はそこまで大した事はしておりませんよ」


 ナガレは、一応はギルド長の前ということもあって遠慮がちに答えた。


「またまたご謙遜を。第一大した事ない人なら、登録と同時にグレイトゴブリンの討伐部位を持ち込んだり、ベアグリーを仕留めてきたりなど出来ませんよ。ましてやあなたのレベルは0、とても面白い逸材です」


 どうやら、ギルド長の主な興味はナガレの方に向いているようだ。


「なるほど、つまりはこんかい呼ばれたのはその件でという事でしょうか?」


 ナガレが問い返すと、

「勿論それも関係はしてますが、今回は特にギルド長としてお礼を伝えておきたいと思いましてね」

と、にこにこと笑みを湛えながら返答してくる。


「ギ、ギルド長自らお礼だなんてなんか恐れ多いわね」


「いえいえ、そんな大したことはないのですよ。私など大陸中に多々あるギルドの一ギルド長に過ぎませんからね」

 

 ちなみにギルド長というのは、各地に存在する冒険者ギルドの長という意味であり、当然その数は冒険者ギルドの数だけ存在する。 

 そしてそれとは別に、各国の冒険者ギルドと長を纏め上げる存在として、ギルドマスターというものも存在し、大抵は王都などといったその国の中心となる場所に居を置く場合が殆どである。


「さて、ナガレ、ピーチ、この度は問題のある冒険者に制裁を加えて頂き誠にありがとうございます。勿論グレイトゴブリンの件も領主に代わって一緒にお礼を申し上げますよ」


 そういって頭を下げるギルド長。

 当然だがギルド長自ら冒険者に頭を下げる事など、そう滅多にあるものではない。


「いえいえ、どちらも振りかかる火の粉を払った結果ですから」


 ナガレの言葉にギルド長は頭を上げ、ふっ、と薄い笑みをこぼす。


「中々あれだけの事をしておいて、それだけで済ます人もいないですけどね。いや、やはり貴方の器は相当に大きそうだ」


「そんな事はありませんよ。私など凡庸な新人冒険者に過ぎませんから」


「ははっ、やはり貴方は面白い人だ。あぁそうだ、ゴッフォ一味を倒して頂いた分の報奨金はしっかりお支払い致しますので、後で受付にてお受取りください。それと耳の件はしっかり活用させて頂きますよ。取り敢えずは耳など一対となるもの関しては左を指定し、不可能なようなら魔核を提示して貰う形を取ります。勿論これは私の独断で、正式にギルド全体に採用されるにはギルドマスターの判断を仰ぐ必要があると思いますけどね」


「そうですか、そうであれば進言した甲斐があります」


 ナガレが笑顔を見せると、ギルド長も、ふふっ、と発し。


「これからも期待してますよ。さて、ここから本題なのですが……」


 ギルド長の言葉に、本題? と疑問げにピーチがその言葉を繰り返した。


「はい。実は今回の功績を踏まえ私の方で精査いたしましたが、流石にこれだけの実力を持つ方がDランクのままというわけにもいきません。かといって、Cランクですらきっと持て余すでしょう。なので丁度ふたりはパーティーを組まれたという事ですし、ナガレ君は少々異例ではありますが、ふたりにはBランクへの昇級試験を受けてもらおう思いまして」

 

 え!? とピーチが驚きの声を上げた。 

 そしてそのあとぶつぶつと、

「私が、B、私が……あは、あはは」

と一人呟いている。


 そしてピーチに関しては既にC1級にランク付けされていたので、実は不思議ではない(それでも本来はもう少し依頼をこなしてからが普通だが)が、ナガレに関してはDランクからいきなりのBランク宣言である。

 確かにこんな事はそう滅多にあるものではないだろう。


「ところでふたりとも、ギルドの昇級試験がどんなものかはご存じですか?」


「え~と、確かB級から行われる試験で、ギルドの定めた相手と戦って判断を仰ぐとか……」


「そして基本的には、昇格先のランク内で、特級を与えられた冒険者が試験官となるわけですよね」


「!?――」

「え? 特級?」


「……驚きましたね。特級制度は秘匿事項で通常は知り得る筈もないのですがどこでそれを?」


 ギルド長の目つきが若干鋭くなる。入口の前で聞いていたマリーンも驚きの表情だ。

 ピーチに関しては特級制度事態知らなかったようである。


「直接聞いたわけではありませんが、ある場所で知り合った方が、B級にしてはかなりの実力を秘めていたようなので、そういう制度もあるかと思いまして。特級は、2級1級と上がっていくなら次は特級かなと予想してみたに過ぎませんが」


 ちなみに特級冒険者はB級からS級それぞれに存在する。ナガレが言ったように、昇級試験の試験官としての役目は勿論、特級にだけ与えられる特別な依頼というのも存在するのだ。

 

「……なるほど、嘘を付いているようにも思えませんね。いやしかし、その洞察力は舌を巻く思いですよ、ですが――」


「判ってますよ、他言無用ですよね?」


 ナガレがそう言うと、ギルド長が口角を緩めた。


「いや、貴方と話せて本当に良かった。では昇級試験は受けられるということで宜しいですかな?」


「はい、ピーチも受けますよね?」

「勿論よ!」


 ふたりの返事に満足気にギルド長が頷き。


「ではマリーン、ふたりを地下の試験場に案内して上げてください」


「承知致しました」


 恭しくマリーンが頭を下げ、そして三人はギルド長の部屋を辞去する。


(それにしてもあのナガレという男――あそこまで私の心をワクワクさせた方は久し振りですね。面白くなりそうです)


 ナガレがいなくなった後、部屋で一人ほくそ笑むギルド長であった――






◇◆◇


「ここが試験場よ」


 マリーンに案内されギルドの地下へと向かったふたり。

 ピーチはこの場所に来るのは初めてなのか、お~、と驚き、期待に満ちた目でその場所を眺めている。


 試験場は円形の空間となっており、どうやらこの場所で試験官と戦い、その腕が昇格に足るものかを判断してもらうようだ。


「よ~く来たわねひよっこ達。今日はあ・た・し、がじっくり腕をみきわめてあげるわよ、て、あら?」


 そして、その試験場に立つ屈強な男が、ナガレの姿を見て驚いたように目を丸めた。


「やはり貴方だったのですね。B級の特級冒険者と言うのは」


 ナガレが若干呆けている彼に声を掛けると、マリーンが驚いたようにナガレを見やり。


「ナガレ、ゲイの事を知っているの?」

「えぇ、冒険者の憩い亭で偶然出会い、少し話をしたことがあるのですよ」


 ナガレの返答にマリーンは目をパチクリさせた後、ゲイに声を掛けた。


「貴方、まだあの宿を利用してたの? もう普通に、ヘタしたら王都に屋敷が建つぐらい稼いでるじゃない」


 腕を組み呆れたようなマリーンの言葉。

 すると、あら、とゲイが冷静さを取り戻し声を発し。


「あそこの宿は料理が美味しいし冒険者の為によく考えられてるのよん。だから今でもよく利用してるわん」


 そう言って腰をくねらせた。


「てか、あの人黒いわね。やけにマッチョだし」

「えぇ、黒いですね。マッチョですし」


 ナガレとピーチはその姿をみやりながら、同じような感想を述べる。


「それにしても驚いたわ~噂のレベル0冒険者がよもや貴方だったなんてねぇん。でも、なんとなく理解できたわ。だってあの時の貴方、一見する分には(・・・・・・・)凄く弱そうだったもの」


 何故か筋肉を誇示するポージングを次々と決めながら、ゲイがそんな事を言う。

 この口ぶりから、実はナガレがかなりの実力を秘めていた事は見抜いていた様子だ。

 その辺は、流石B級とはいえ特級冒険者といったところだろう。


 ちなみに浴槽で出会った時、彼のタグにB1級の刻印がされていたが、これは特級が基本的に秘匿されているからである。

 そして特級とはいえ、彼も普段はB1級のパーティーとして他のメンバーと活動している形だ。


「でも、私は試験とはいえ、早速貴方と戦う機会を与えられて嬉しいですけどね」

「あら偶然、それはあたしもよん」


 ふたりともにこにことした表情で話しつつも、その気は互いの中心で激しくぶつかり合っている。


「と、とにかく試験を始めるわね。試験の内容は――」


「試験官と戦い実力を示せ、ですよね?」


「え、えぇそうよ」


 マリーンの話を聴き終え、ナガレはすっといつもの歩法で試験場に移動し、ゲイと対峙した。


「へぇ~貴方かわった歩き方するわね。本当すごくゆったりしてるように見えるのに」


「貴方もそれに気がつけるのは流石ですよ」


 そのやり取りの後、暫しの沈黙。

 そして、ハッとなった表情でマリーンが口を開いた。


「も、もうふたりとも勝手に話を進めて! いいわもう! 試験開始よ!」


 その合図を皮切りにゲイがナガレへと一瞬にして接近した――

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