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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第五章 ナガレとサトル編

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第一八八話 ジュエルドラゴンとの約束

 程なくして談笑も終わりを告げ、そしてジュエルドラゴンは片翼を、じゃあな、とでも語ってるがごとく振り上げ、そしてバッサバッサと荘厳な両翼を羽ばたかせながらどこぞへと去っていった。


 ナガレはナガレで右手を振りながらドラゴンを見送り、完全に見えなくなったところで空中を蹴り、ぽか~んとした表情で見上げていた一同の下へ着地する。


「とりあえず話はつきました」

「おつかれ様ナガレ! でも本当凄いわね! ドラゴンと会話しちゃうなんて!」

「物分りの良いドラゴンで良かったですよ」

「うぉおおおぉお! 先生! 俺はやっぱ先生についてきて良かったです! こんな光景中々みれませんよ! で、ですが、俺はてっきり先生はあっさりあのドラゴンを倒してしまうかと思いました」

「確かにおいらもまさか会話で決着つけるとは思わなったよ~」


 ピーチはにこにことした笑顔でナガレを出迎え、フレムはナガレの行為にやたら興奮した様子である。ただ、ジュエルドラゴンと戦いを演じなかったのはカイルも含めて意外と思ったようだ。


「あのジュエルドラゴンはこの件に関しては寧ろ被害者ですからね。それに元々ジュエルドラゴンはこの街が出来る以前からこの地で暮らしていた竜です。あのドラゴンは主食が宝石である為、この地で大量に宝石が眠っていることを知り、ここを縄張りにしていたのですよ」

「それもあのドラゴンとの会話で判りましたの?」

「はい。話をする限り嘘を言っているようにも思えませんし、そもそも竜が人間相手に嘘をつく理由もありませんからね。ただ、ジュエルドラゴンは基本寝ている事のほうが多く、栄養を、つまり宝石を食べて過ごす期間は非常に短いです。一度眠りにつくと一五〇年は起きませんしね」

「た、確かに宝石竜(ジュエルドラゴン)様が現れたのはかなり昔とあったにゃ!」

「マリアお母様から聞いた時も、伝説のドラゴンと言っていたなの!」

 

 ペルシアとキューティーが思い出したように口にする。確かに一五〇年周期で姿を見せるドラゴンであれば伝説と思われていたも仕方ないことだろう。


「そうですね。あのドラゴンの話だと寝て起きた時には既に街が出来ていたそうです。それで一度文句を言いに赴いたことがあるようですが、その時にも多少は竜の言語を理解できる人間がいて、目覚めた時に必要な宝石を差し出してもらうという形で話は落ち着いたそうですよ」


 ナガレが聞いた限りではこの話のあと二度と少し眠ったとの事だったので、三〇〇年以上は前の話のようだ。ちなみにその時の人物でもナガレ程流暢に話せたわけではないので、さしものジュエルドラゴンもその知識と能力に(ついでにいうならジュエルブレスを防いだこともであろうが)驚きを示していたが。


「三〇〇年以上って随分と前ね。それ結構激しい戦があった時代も含んでるじゃない」

「ですがお嬢様、恐らくジュエルドラゴンからすれば三〇〇年など一瞬の瞬きの出来事でしかないことでしょう」

「確かに竜種は長寿の上、更に一度眠れば一五〇年は目覚めないとなればそうでしょうね」


 セワスールとナリヤが言うように、人間と竜では流れる時の感覚は天と地ほどに差がある事だろう。


「ですが、ジュエルドラゴンに宝石を差し出すという条件で納得して頂いたのは幸いでしたわね。レベル450のドラゴンの怒りを買っては間違いなくこの街は地図上に存在しなかったですわ」

「そうですね。ジュエルドラゴンも食料となる宝石が確保できればそれで本来満足ですので。ただ、今回に関してはかなりお怒りの様子でしたが」

「それはやっぱりマサルのせいで?」

「はい、何せ本来ならばまだ目覚める時ではなかったわけですからね。にも関わらず無理やりマサルの手で起こされ、その上あのような事に付き合わされたわけですから」

「た、確かにね~竜が人間相手に強制的に負けたことにされちゃったんだから」

「そう考えると確かにあの竜は被害者ですね……」

「まったく、本当にろくな事しないなあの野郎は」

「まぁ確かにあんな茶番に付き合って怒ってたのは判る気がするけど、でもそれだけ怒っていたのにどうしてあんなにあっさり引き返したの?」


 ルルーシが眉を寄せながら問う。確かにいくらナガレが竜の言語を理解したとはいえ、一度憤慨したドラゴンの怒りがそう簡単に収まるとも考えにくいのだろう。


「そんなの決まってるわよ! ナガレとの会話が楽しかったから納得してくれたに決まってるわ!」

「いえ、確かに私のドラゴンジョークを楽しんでは頂けたようですが」

「な、ナガレっちそんなジョークも言えるんだね~」

「当然だろカイル。先生ともなればドラゴンの一匹や二匹笑わせて納得させるぐらいわけないに決まってる! ね、先生!」

「いえ、確かに笑ってはくれましたがそれだけで済むほど簡単ではありません。なので一つ約束をさせて頂きました」

「約束? それって?」


 ルルーシがナガレに尋ねる。仲良くしている孤児院のある街だけに、今後の運命を左右しかねないこの話は当然気になるのであろう。


「はい、それは再度ジュエルドラゴンが眠るために必要な食料、つまり宝石の献呈ですね」

「うむ、なるほど、確かに途中とはいえ目覚めたのであれば約束に則り竜が宝石を求めるのは当然ですな」

「でも、一体あのジュエルドラゴンはどれ程の量を求めてますの?」

「そうですね、五〇トンぐらいあれば足りると思います」

「そう五〇ト、五、五〇トン~~~~~~!」


 ルルーシがお嬢様らしからぬ素っ頓狂な叫び声を上げる。


「五、五〇トンでありますか。それはまた途方もない量ですな」

「確かに簡単な話ではありませんね」

「当然ですわ! そんな五〇トンの宝石だなんて、いくらなんでも無茶苦茶ですわよ!」

「え? でもそれが昔からの約束なんでしょ?」

「そうだぜ、実際これまでも宝石は納めていたんだろ?」

「た、確かにそうかもしれないけど、でもいくら竜からしてみれば一瞬といっても、人の間では領主は変わってるしね……今の領主であるオパール卿がそのことを知っているかどうか……」


 ルルーシが不安そうに呟いた。確かに約束したとはいえかなりの年月は経っている。約束後からも二度は竜に宝石を献呈したようだが、マサルの手によって目覚めさせられたとはいえその時からもまたかなりの期間が過ぎている。

 果たしてその約束がしっかりと現存しているのかといったところだが――


「いえ、確かにそれだけの長い月日が経てば色々変化もあるでしょうが、何せ人間にとっての畏怖の対象ともなっている竜との約束です。例え主が変わったとしてもその約束はしっかり記録として残っている事でしょう」


 ナガレがそこまで述べると、あ!? と、何かを思い出したようにキューティーが叫んだ。


「そうなの! 竜の祭典! 宝石竜様を崇める為のお祭りが年に一度開かれているなの!」

「にゃ、確かお祭りでは宝石を扱ってる商人達が採れた分から少しずつ宝石竜様に奉納していたはずにゃ!」

「あ、なるほど、つまり毎年そうやって」

「竜に捧げるための宝石を蓄えていたというわけですね」


 どうやら今の領主の耳にもしっかり約束の件は伝わっていたようであり、それであればきっと問題がないことだろう――

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