第一三話 お風呂で一緒
本日4度めの更新です。
皆様の応援のおかげで日間4位になりました!
感謝感激です!というわけでサービスのお風呂タイムに……
「とりあえずナガレには報酬を分けないとね……」
宿はピーチが普段利用しているところにしようという話で落ち着いた。
値段が手頃で夕食も付く、そして宿泊客専用の浴場も用意されているからお得らしい。
その道すがら、ピーチが上目で言って来たのだが。
「そうですね、きっちり半分で分けるとしましょうか」
ナガレがそう告げると、え? いいの? とピーチが目をパチクリさせた。
ゴブリンもグレイトゴブリンもその殆どを倒したのはナガレだ、正直全ての報酬を受け取ってもいいぐらいではあるが、色々と案内してもらった恩もある。
それにピーチの話では、宿で一泊するのに必要な料金は三〇〇ジェリー、それを基準に物価を考えるなら一二万ジェリーもあれば取り敢えずは十分である。
「それじゃあ一二万ジェリーって、そういえばナガレお金をしまっておけるもの持ってる?」
「いえ、そういえばありませんね。良かったら入れ物が手に入るまで預かって頂いてもらっても宜しいですか?」
「え? あ、そうね。仕方ないわね。じゃあ私がしっかり管理しておいてあげる! 入れ物は、そうね、これだけあれば私の持ってるような魔法の袋やもっと容量の大きい魔法のバッグも買えるかもだし、今日はもう間に合わないけど、良かったら明日お店案内してあげる」
機嫌よくそんな提案をしてくるピーチに、素直にナガレは感謝し後日の案内をお願いした。
「うん? なんだいピーチ、今日は彼氏と一緒とはやるねぇ」
「ち、違うわよママ! そんなんじゃないってば!」
ピーチの薦めてきた宿は冒険者ギルドから程近いところに建っていた。
他と同じ石造りな箱型の建物で三階建て、一階には受付と食堂、宿泊客用の浴場があり、宿泊部屋は二階と三階にあるらしい。
受付をしているのは三〇代そこそこといった感じの女性で、格闘家のような逞しい肉体を誇り、どことなく大らかな雰囲気を感じさせる女性だった。
炎のように赤い髪は上部で団子状に纏めており、身長は男性並に高い。ナガレも若干見上げる形で彼女を見ることになる。
「それじゃあ部屋はダブルかい?」
「だから違うってば! なんでそうなるのよ!」
「私は別にそれでも構いませんよ」
「えぇええぇええぇええぇえぇ!?」
ぎょっとした表情で振り返り顔を真赤にさせるピーチ。
ちょっとした冗談のつもりだったのだがナガレもここまで驚くとは思わず、頬を掻く。
「いや、冗談です冗談」
「な、何よ! 驚かさないでよ全く!」
そういいつつシングルで二人分の料金をピーチが払う。
「嫌だ、ピーチが支払うってもしかしてこの人ヒモ?」
とんだ勘違いだが、ピーチが即座に否定し。
「だからそう言うんじゃなくて、彼お金を入れておけるものを持ってないから私が預かってるの」
「へぇ何か変わってるわね。格好も随分と変わってるけど」
「私の生まれた街ではこれが正装なもので」
微笑を浮かべつつそう告げる。実際には彼の流派では正装という意味だが。
「ふ~ん、それにしても貴方、若いのにかたっ苦しい喋り方するのね。もしかしてどっかの貴族の出とか?」
ナガレの雰囲気から宿主はそう思ったのかもしれないが、あながち間違ってもいない。
前の世界では国から感謝状を受けるほどの存在であり、彼が住んでいた屋敷は世界遺産にも登録されていた。
「いえ、そんないいものではありませんよ」
しかしナガレはそんな様子をおくびにも出さず、ただの一般人である事をアピールした。
「ふ~ん、まぁいいわ。宿泊者に冒険者の多いこの宿では詮索はタブーだからね」
そういって豪快に笑ってみせる。正に肝っ玉母ちゃんといった様相である。
「じゃあこれが二人の鍵ね。部屋は二階を使っておくれ。お風呂は夜の11時までは入れるけど食堂は夜の8時までだよ。鍵についてる番号札を見せればサービスの食事が出るからね」
説明を受けナガレは首肯、そしてピーチと一緒に二階の部屋に向かった。
部屋はシングルということでそこまで広くはなかったが、ベッドも用意され、洗面所もしっかり設置されている。
レバーの上げ下げで開閉出来る仕組みであり、水は街の周りの堀から引っ張ってきてるようだ。
寝るためのベッドは少し硬いが寝るには十分、壁に設置されたランタンは魔道具の一種らしく火を使わなくても明かりは灯るようだ。
壁には時計も掛けられているし異世界だからと不便に感じることは特にない。
「ナガレ~お風呂いく?」
部屋の概要を大体掴んだところで、ピーチがお風呂に誘いに来た。
勿論一緒にと言っても浴場は男女別々である。
「そうですね、ご一緒しますよ」
「ご、ご一緒って! べ、別々なんだからね!」
はぁ、となんとなく返事するナガレ。そんな事当然のように判っているが、ピーチの顔は紅い。
「の、覗いたりしたら承知しないんだからね!」
「しませんよ。安心して下さい」
男女別れた扉の前でそんな事を言われたが、ナガレにそんな気はないので、さくっと返答し、男性用のお風呂場に足を踏み入れる。
脱衣所と浴場は分かれているが、敷居があるわけではない。
浴槽は一つで、洗い場は別に用意されていた。固形の石鹸はないが、瓶詰めされた液体は汚れを落とす成分を宿す植物の葉から採取されたものが利用されていて、それを使用する。
身体を洗うのはこれも植物のヘチマのような果実を利用したものだ。
色は緑がつよいが柔らかく、身体を洗うために用意された液がよく馴染む。
それを利用し身体を洗い、頭も洗ったあと浴槽に浸かる。
「あなた、良い身体してるわねぇ。可愛らしい顔してるのに」
ナガレが入ると他に湯浴みしてる客が一人いた。
その客が妙に熱を持った視線でナガレをまじまじと見つめてくる。
異世界にも色々な性癖を持った人がいるのだな、と思いつつ、ありがとうございます、と会釈した。
その後は妙に話しかけてきて、ナガレはなんとなく相槌を打ちながら話を聞く。
どうやら彼も冒険者らしい。そう言われてみると中々逞しい体つきをしている。
同時に妙に肌もテカテカしていて黒い。
彼の話ではピーチの言うようにこの宿は値段的にも初心者にも優しく、冒険者に人気、というより宿泊客の八割以上は冒険者なようだ。
ナガレにも同業者かを訊いてきたので、今日登録したてのルーキーであることを伝えた。
首にしてるタグを見せ合う。ナガレは当然Dランクだが、熱い視線を送ってくる彼はBランクの1級であった。
名前はゲイというらしい。
「Dランクなら最初はあまりいい仕事はないわね~でもどこかのパーティーに入って手助けしてもらっても成果にはなるわよ~、良かったらあたしのパーティーに入る? 色々手ほどきしてあげるわよ~、貴方可愛らしいし」
「折角のお誘いですが、既に助けてくれている方がいるので、申し訳ありませんが」
ナガレは邪険にはせず、丁重に断りを入れた。
勿論仲間とはピーチの事である。
まだ正式にパーティーを組んだわけでもないが、なんとなく彼女とは暫く行動をともにすることをナガレは察していた。
「そう、残念ね。でも困ったことがあったらいってねん。私のパーティー【聖なる男姫】は結構この街では有名な方だから」
そう言って中々厳ついウィンクを決めてきた。
その後、良かったら背中も前も洗うわよん、なんて言われたりもしたが、丁重に回避し、ナガレは彼に別れを告げ先に風呂を出た。
ゲイは見た目通り戦士系の冒険者なようで、腕っ節は中々強そうである。
ナガレ的には彼には別な意味で惹かれるものがあったので、機会があればその戦いぶりを見てみたいとも思ったほどであった――
というわけで大サービス!オネェ系ムキムキ冒険者とナガレのお風呂シーンでした!
……あぁ!ブクマ外さないで!(汗)




