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レベル0で最強の合気道家、いざ、異世界へ参る!  作者: 空地 大乃
第二章 ナガレ冒険者になる編

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第一〇話 予想通り

「はい、じゃあこれが魔草採取分の報酬五〇〇ジェリーとマジックポーション受け取りようの引き換え板ね」

 

 マリーンが報酬分の貨幣と一緒に薄い長方形の板を差し出した。

 この依頼は、報酬とは別にマジックポーションが貰えてお得とピーチが言っていたが、どうやら自らこの板を持って受け取りに行く形式のようだ。

 報酬にはこのように、金銭だけではなく別の何かが付加されたり代用されたりする場合もあるらしい。


「それとナガレ君、忘れてたけどタグは無くさないように気をつけてね。なくすと再発行に五〇〇〇ジェリー掛かるからね」


「判りました、気をつけますね。それと私の事もナガレと呼んでくれて構いませんよ」


「え? そ、そう。じゃあナガレ気をつけてね」


 何故か照れくさそうにナガレの名を呼ぶマリーンである。


「貴方って結構油断ならないわね……」


 ピーチの半眼の訴えに疑問顔のナガレ。壱を知り満を知るナガレではあるが、実は女性の気持ちに関しては存外鈍感なところもあるのであった。


「ところでナガレ、今日は早速依頼は請ける?」


「う~んそうですね、ピーチはどうされますか?」


「私はこの報酬のポーションを受け取りに行くわ。依頼は今から請けても中途半端だし、今日はもうやめておくわよ」


「……そうですか。では私も今日はピーチに付き合いますね。ですので本格的な活動は明日からに致します」


 ナガレがそう告げると、判ったわ、とマリーンが返し。


「ナガレには期待してるから、これからの活動頑張ってね」


 にっこりと微笑んで言葉を紡ぐ。

 そしてナガレとピーチは辞去し一旦ギルドをあとにするのだった――






◇◆◇


 ゴッフォ一行、それにナガレとピーチが出て行ったあとも冒険者達の話題は彼らのことで持ちきりだった。

 ギルドには冒険者同士が作戦を話しあったり、仲間を集める為の寄り合い所のような役目も担っているため、何組かの円卓と椅子が設置されている。

 だが今はその席も件の事からか、彼らの雑談の場にすっかり変わってしまっていた。


「でもマリーン、本当にあのナガレとか言う新人がグレイトゴブリンを倒すなんて出来るだろうか。第一レベル0だろ?」


 これはギルド内に残っている冒険者たちも不思議に思っていることだ。

 中には、やはり新人とピーチのコンビが嘘を言っていて、ゴッフォの方が正しいのではないか? と囁く声も聞こえてくる程である。


「……逆よ」


 しかしマリーンは、受付の彼のいうことを否定する一言を発した。


「でもレベル0ですよ?」


「だからよ。正直これがレベル一〇〇とか二〇〇なら納得はしたけど私はここまで驚いてないわ。禁忌扱いだとはいえ、異世界からの召喚者がやってくる例が全く無いわけでもないし、レベルが高いだけなら五桁のレベル持ちが現れた場合だってあるという話だしね。でも――」


 そこまで言ってマリーンは受付の彼をみやり。


「貴方これまでにレベル0が出たなんて話聞いたことある?」


 その問いに、そういえば、と彼は首を傾げた。


「あるわけないわよね。私だってないし、ちょっと記録を見てみたけどレベル0は流石に例がないわ。これって逆に凄いことよ……レベル0という数字だけで馬鹿にしてる人が多いけど、もしかしたら……」


 顎を押さえ考えこむマリーン。

 そんな彼女を見ながら、なら、と受付の彼が発し。


「あのナガレという新人ももしかして召喚者なのかな?」


 怪訝そうに尋ねる。だがマリーンは首を左右に振った。


「ピーチの話だと彼はそれを否定したらしいわ。勿論嘘を言っている可能性だってないわけじゃないけど、なんか彼はあまり嘘とかつかないタイプに思えるのよね……」


 そんな事を呟きつつ、再びマリーンはギルド内を見回すと更に、それにしても、と続け。


「ゴッフォが出たのとほぼ同時に出て行った冒険者達……なんか妙に気になるのよね――」

 

 心配そうにそんなことを口にするのだった……






◇◆◇


「ピーチ、気をつけて下さい」


 彼女の後に付き従い、マジックポーションが手に入るという薬師のいる店に向かうナガレ。

 するとその途中、不穏な影に気がついたナガレが警告するように彼女に告げる。


「え? 何が?」


 しかしピーチは、身に迫った危険に気がついていないようで呑気に言葉を返してくる。


「……さっきからつけられてます」


 ナガレが囁くように告げると、どうやらやっとその事に気がついたようだ。

 今向かっている薬師の店は、大きな通りからは外れた道沿いにあり、路地というほど狭くはないが、それでもメインの馬車通りに比べると細く、人通りもまばらだ。

 ギルドを出てからナガレは誰かの存在に気がついていたが、この道に来てからは更にその数が増えている。


「ちょ! 大変じゃない!」


 ピーチがきょろきょろと辺りを窺いながら言った。

 だがこの行動は良くない。おかげでこちらが警戒心を抱いたことが相手にバレてしまった。


 そして、そのピーチの所為を見ていた連中が、今度は隠れるのをやめてふたりの下へずんずんと近づいていく。


「ヤバイ! えいっ! だったらナガレ! こっち!」

「いや、ちょっと待――」


 しかしナガレの言葉を聞くことなく、ピーチは脇の路地に飛び込み、早く! とナガレを呼びつけ先に進んでしまう。


 ナガレは溜め息を吐きながらも、仕方がないですね、とピーチの後を追った。





「よぉおふたりさん。お揃いで」


 路地にピーチが入り、暫く前方に突き進んでいくと、十字路になっている場所の横からゴッフォがニョキッと現れ、他の仲間と共に前方を塞いでしまった。

 

 あ!? とそれに気が付き声を上げるピーチ。


「ナガレ! 戻るわよ!」

「いや、もう無理ですね」


 ナガレが言うとピーチが目を丸くさせた。だが、彼の後ろから迫る集団を見てその意味を理解したらしく顔色が変わる。


 後ろからは六人の屈強な男が迫っていた。

 そして前方には、例のゴッフォ達三人とその仲間なのか別の三人、合計十二人が前後からふたりの退路を断った。


 勿論これが偶然なわけもなく、後ろの六人もゴッフォの仲間なのであろう。

 そしてよく見ると、誰もが冒険者ギルドでみた連中である。


「上手いこと誘い込まれてしまったようですね」

 

 ナガレの発言に、うぅ、と悔しそうにピーチが肩を落とす。


「それで? こんなところで私たちに何か御用ですか?」


「ケッ、とぼけやがってよ。んなもん聞くまでもねぇだろうが。テメェらにしっかり落とし前をつけてもらおうと思ってな」


 ナガレは念のため、彼らに質問をぶつけてみたが、帰ってきた言葉はその見た目にあった予想通りの回答であった。


「な、何言ってるのよ! 落とし前とか意味わからない!」


 思わずピーチが叫び上げる。

 大きな声を出して周囲に気がついて欲しいという思いもあったのかもしれないが、残念ながら反応は薄い。中には様子に気がついている人もいるかもしれないが、誰も余計なトラブルに巻き込まれたくないのだろう。


「ふん、テメェらの胸に聞いて見るんだな。お前らが余計な事をいったせいで、俺達の稼ぎが減るかも知れねぇんだからよ!」


 吠えるゴッフォ。そしてよりいっそう表情を険しくさせ、不可解といった感情を滲ませるピーチ。


「つまり、彼らはさっきのギルドの定めた条件の穴を利用して、報酬の二重取りを繰り返してきたという事でしょう」

 

 え? と驚きに目を見開くピーチ。そしてゴッフォを睨めつけ抗議の声を上げる。


「ちょっと! そんなのあんたらが悪いんでしょ! 自分たちでズルしてて何馬鹿な事いってんのよ!」


「うるせぇ! 何がズルだ! 倒した魔物の両耳つかって二度報告しちゃいけないなんてそんなルール書いてあんのかよ!」


「え? あ、いやそれは……」


 強気な態度にピーチは首を捻り唸りだす。


「……確かに書いてはいなかったようですね。だからこそ、今回の報酬は倒してもいない貴方達にも一緒に支払われたのでしょう」


 ナガレがピーチに代わって声を上げると、ふん! とゴッフォが鼻を鳴らし。


「テメェも何を偉そうに。大体レベル0がグレイトゴブリンを倒せるわけねぇだろうが、ゴブリンだって無理に決まってる」

「どうせこいつも、誰かの倒した死骸を見つけてちゃっかり部位と魔核を奪った口ですよ」


 ゴッフォの発言に仲間の一人が補足した。

 勿論そんなことはないのだが、レベル0であるという事実でナガレは弱いに決まってると完全に思い込んでるようである。


「私達がそんな卑怯な真似するわけないでしょう! あんたらと一緒にしないでよ!」


「ちっ、チビのくせに生意気な女だぜ。てめぇだってC2級程度でしかないのによ」


 何よ何よ! と腕を振り回すピーチ。その姿は怒っているにも関わらずどこか愛らしい。


「それで、何故私達をこんな目に? 今回の件はギルドにも不備があったようですし、別に貴方がたを非難する気はありませんよ」


「あん? てめぇは馬鹿か? 落とし前だっていってんだろ?」

「てか、こいつ完全にビビってますぜ」


 ゴッフォに向かって仲間の一人が嘲るように言った。


「あぁなるほどな。まぁ確かに、これだけの人数がいればビビるのも当然か。だが安心しろよ、お前らが言うことを聞くなら手荒な真似はしねぇよ」


「言うこと?」


 ピーチが怪訝そうに眉を顰めながら問い返す。


「あぁそうだ、先ずは慰謝料だな。テメェらのせいで、俺達の今後の稼ぎが減る事になるかもしれねぇんだ。折角上手いこと俺らで回して一体の魔物で二度美味しかったってのに、お前が余計な事を言ったせいでその旨味が減ったんだからな」


「……中々滅茶苦茶な理屈ですね」


「ふん! それはこっちのセリフだ! ここにいる全員がテメェのせいで迷惑被ってんだからな! 慰謝料は一人一〇〇万ジェリーで俺だけは五〇〇万ジェリー、合計一五〇〇万ジェリーだ!」


「それだと合計は一六〇〇万ジェリーですね」


「え?」


 ゴッフォが指を使って考え始める。見た目通りオツムは弱いようだ。


「ちょっとナガレ、何冷静に間違い指摘してるのよ。増えてるし!」


「あぁすみません、つい」


 後頭部を擦りながら謝るナガレ。緊張感はあまり感じられない。


「え~い! とにかくそれだけの慰謝料を払いやがれ! それとな、ピーチ! テメェは今日から俺達の奴隷だ!」


「は? はぁ!?」


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