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Chapter 1:Dead or Alive :Sect.陽本紗来.2-3 決裂寸前、というかむしろ決裂。

その日の放課後。


茉那がコンピュータ室でミーティングをする、っていうから、行ってみると。

月崎君と茉那がいた。


「あれ? 月崎君?」


一瞬どうして月崎君が、と思ったけど、よく考えたらあたりまえだった。だってたぶん、月崎君が茉那を誘ったんだろうし。


「ええと、どうして浩司が居るか、っていうと」


茉那が説明をし始めたので、私は「あ、うん。わかってる」と言った。

「あの衣装は月崎君のお姉さんのもので、動画を撮ったのが月崎君なんでしょ?」

「どーしてわかるの!?」


茉那は目を丸くした。


茉那って、表情がくるくる変わってかわいいな。

私は、ちょっとそういうの苦手だから羨ましい。


「浩司、あんた話した?」

「い、いや。俺、陽本さんと話したのも久しぶりだし」

私は「だって」と口を挟んだ。

「こないだ茉那がいったでしょ? 『月崎愛里紗』は月崎君のお姉さんだって。そこから、何となくね」

「そうだっけ?」

「ほら、学校の帰りに」

「あっ、そうだった!」

「オイ、茉那。それはあんま人に言うなって言ってあっただろ!」

「いいじゃん、紗来なんだし。それにもし前に言ってなくても、どうせ今話したんだから、ちょっと早まっただけでしょ」

「そういう問題じゃないだろー!」

「まーまー。結果オーライってことで。あ、紗来もこのことあんまし話さないでね」

「お前がゆーな!」


私は軽く笑って、うなずく。


まあ、もともとそんな気はなかったけどね。

あんまし人に話しちゃいけない話だな、と思ったし。


あ、それはそうと。


「私、気になることがあるんだけど、聞いていい?」

「ナニナニ?」

「あの『月崎愛里紗』のロイドルって、どうやって合成したの?」

「ああ。

 あれは、りさ姉ちゃんが持ってたパソコンに入ってたソフトでやったんだ」

「へぇー。すごいね」

「今度、実物見せるよ」


ソフト。そういうのがあるんだ。ふーん。


「それでさ、茉那。陽本さん連れてきて、どうするん?」

「え? どうするって? 踊るんだよ?」

「わかっとるわ!

 だから、動画をどうやって人気動画にするんだ、ってことだよ」

「あ、その件なんだけど。

 紗来の加入条件が動画をアップしない、ってことなんで、よろしく」

「はぁ?」


あ、なんか波乱の予感。

茉那、月崎君に言ってなかったんだ……。


「ええと、要するに。

 紗来は動画をアップするのが怖いって言ってる。

 あたしは衣装着て、りさ姉みたいになれたらそれでいい。

 なら、アップしなくていいじゃない? ってことなんだけど。ダメ?」

「いや、ダメって言うか。なら、動画撮る意味なくね?」

「んなことないよ。だって、りさ姉のロイドルは一緒に踊るでしょ? あたしはそれで十分かなって」

「でも、動画の視聴数を上げることの解決策として陽本さん連れてきたのに、アップしなけりゃ意味ないじゃん」

「あたし、レベルの高い動画を撮りたいと思うけど、視聴数はどうでもいいかな、って。だっていいもの作れたら、人は見たいと思うでしょ?」

「そりゃ、そうだけど。でも評価はつかないぜ」

「どうせアップすればつくんだし。関係ないんじゃない?」

「ホントにつくのと、多分つくだろう、ってのは全然違うことじゃないか」


私、わかったかも。

茉那は自分がいい、と思うものを作れればいいんだ。

なーるほど。私はそのために呼ばれた、ってことなのか。

じゃあ、がんばらなくちゃ。


でも、議論はこのままだと平行線ね。

っていうか、エスカレートしてない?


「あたしはどうしても紗来がいた方がいいと思ってるの!

 動画をアップすることなんてどうでもいいよ!」

「どうでもよかねえよ! せっかく作ったもの、誰にも見てもらえないんじゃ作る意味ねーじゃん!」

「だから、あたしたちがいいってことを知ってたらそれでいいじゃん!

 なんでそれでダメなの!?」

「自己満足で終わりたくないっていってんだよ、俺は!」


もう怒鳴りあいになってる。ちょ、ちょっと止めなきゃダメかな。


「あ、あの、喧嘩はやめよ?」

「ごめん、紗来。ここは引けない」

「呼んどいて悪いんだけど、陽本さん。ちょっと黙ってて欲しい」


あちゃあ。二人とも意地になってる。

それにこれって、私が原因……だよね。


ど、どうしよう。


「どーしてもあんたがアップしなきゃやらない、っていうなら、あたし抜ける! 紗来と二人でやるからいいもん!」

「勝手にしろよ! その代わり衣装は貸さないからな!」

「いいもん! つき姉に言ったら貸してくれるし!」

「ぜってー貸さねえ! りさ姉に言ってでも貸さねえぞ!」


二人はお互い、そっぽを向いてしまった。

うーん。二人とも完全に血が上ってるかも……。


私が抜ければ、茉那の気持ちは解決しないし、私が残れば、月崎君のやりたいことが解決しないし。


どっちも成り立たせるアイデアなんて、あるのかな……。

(続く)

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