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doze-mew.  作者: ゆる
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Japanese pampas grass

  獣医科へ連れて行かれた仔猫が元気になって退院し、一時預けられていたある家が里親に決まったと聞いたのは、ぼうぼうと生えてきた芒の穂がふわふわしてきたのに気付いた頃だった。 


「そりゃあもうやんちゃらしいよ。部屋の中で飼うみたいで、障子破ったり、壁やら柱やら掻いたり。」


「外に居る動物なのに、中で飼うの?でも、そんなにいたづらするんだったら、やっぱり犬の方がいいよ。」‥

 


 仔猫の里親になった人は日本画を描いていて、仔猫のぶち模様を気に入り暫く預かっていたが、もらい主は最後まで現れず、既にそこに飼われて居た画家宅の先住猫とのけんかもないようで、画家の意思もあり、そのまま飼われる事に決まったそうだった。 


「絵、描くのかね。」

「描いたのがいつか個展にでも展示されるんじゃない?」


そんな会話のされる中、"猫を飼う人がいるんだ"という未知なる発見?は、"猫って飼えるんだね"と、猫に対する価値観を大きく変える事になると感じた。 



     ――――――――



『猫 、飼いたかった?』


 こう母に聞かれた時、わたしは公会堂下のあの猫を飼いたいと思っていたが、それは言葉にはしなかった。


 最近まで主流だったブラウン管テレビでは、横へ逸れていくこと無くこちらに向かって来るらしい、台風21号の接近をひたすら告げている。 


  高く売れるので有名だからか、この時ある一つの品種の米が特に多く作付けされ、それはもはや全国区のようであった。


 この品種の弱い点としては、強い風を真に受けて茎が曲がったり折れたりして倒れやすかった所だと思う。


 稲穂がたわわに実り、さらさら揺れる黄金色の景色も素晴らしいが、山間の田んぼに台風など吹き荒れた時の稲の畳っぷりもまた壮観であった。


 生産農家は、水を吸った稲の(もみ)が新たに苗として発芽するのを恐れて、稲穂の引き上げに躍起になり、それでもお米の出来が良ければ、精米の後、それは高いランクでちゃんと売れていく。 

 


     ―――――――――



 近年お米の生産に際して、カメムシ等害虫の被害がふえてきたという。


 それまでに散布してきた虫除けの薬に、虫が耐性をつけてきたことが原因のひとつにもなっている。  


「今年の冬はすごく寒いらしいよ。台風もまだ来るし、虫は段々増えるし‥。」 


 稲刈り当事者の方たちにとっては、ため息ものの収穫状況にならないことを願うばかりであろう。



 モロヘイヤを栽培・収穫してシーズンの終わった畑で、その竹枠に使った内の一本が残されて、雪虫の舞いだした水気の少ない空に割れた先を突き出したままになっている。


 それをなんとなしに眺めるわたしの個人的な近況等をここで垂れてみるにしても特筆すべき事はなく、学校でも無難に過ごしている。


 勿論、部活は帰宅部である。


 別に友達と仲が悪い訳ではないし、登校が億劫な訳でもない。


 帰宅部にするほど他に何か目標なり、すべき事を他に見出だせられていたのならば良かったが、特にそうでもない。



     ―――――――――



 ‥‥‥‥。 



 暇に畑を眺める。


 そうすると、ほら。 


 あの猫はお出ましになるのである。



 初めてこの真白猫を見たのは丁度一年前であった。


 これまでに、同じシュチュエーションで庭で遭遇すること数回。


 春先辺りまでは、道一本挟んででしかじっと座っている事はなかったが、距離は段々近くなって、今日はもう数メートル程のコンクリートの上に座っている。


 さっき無意味に摘んできた、綿の開ききった芒の穂をわたしが手に持っているからか。


 猫が猫じゃらしを好きならば、芒の穂にも同じ反応をするだろうか。


 今日は出された宿題が多いから、さっさと立ち上がって家に入れば良いのに、猫の多少細長い瞳が気になって動くことができない。


 よく見たら瞳の光彩の色が左右で多少違う‥、様に最初は思って見ていた。


 しかし、そうじゃない。


 異様に左目が赤いのは、光彩のせいではなく出血をおこしているからだという事に、わたしがここでやっと気づいたのだった。 


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