第五十四話 祝?一年!!!
今日で丁度この作品も一年を迎えます。
当初の予定ではサクっと作ってサクっと終わる予定だったのですが気付けばもう一年です。
早いですねぇ。
あの頃から少しは成長してるといいんですけど(笑)
花蓮達は今車の中にあるトランプなどで、優雅なひと時を過ごしていた。
しかし、俺は助手席だったので一人寂しく延々と続く同じ山の風景を眺めている。
何故助手席から皆とまざらないのかというと、混ぜれないからだ。
このリムジン前の席と後ろの席が黒いガラスで塞がれており、なんでも防音らしい。
それもこれも!俺を無理やり助手席に座らせた斉藤のせいだ!
俺はキッ!と斉藤を睨む。
その俺の表情に気付いてないのか、それともただ単に無視しているのか。
どちらにせよ斉藤の表情は前を向いたままピクリとも動かなかった。腹立つ!
すると、顔の方向を前に向けたままの斉藤の口が開いた。
「あの後な、お前の事を少し調べたんだ」
そのマジ口調に、俺は少し体を強張らせた。
どうしたギャグ要員。キャラがブレてるぞ。
そして、きっとあの後とは斉藤と俺が始めて会ったときの事だろう。
しかし
「人のプライバシーを侵害するのはちょっと頂けないと思うんだが」
俺は少し語尾強めでこれを発言した。
当然だ、お前の事を調べたと言われて「やった~!」と喜ぶ奴はいない。
いや、場合によってはあるか?Mとか。
「ああ、すまない。だが」
「だが?」
なんだ、何があるってんだ。
「分からなかった」
「わからない?」
どういう事だ?分からないって?てか何が?
「お前の孤児院に入る前の過去がないんだ」
「過去が、ない?」
「そうだ、一切の過去がない」
「………………」
それはおかしい。
俺も親の顔を知らないし、死んでいるが。
それでも何かしら情報が見つかる筈だ。
「つってもどうせ斉藤が独自に調べたんだろ?」
「ん、まあな」
「なら、調べ方が悪かったんじゃないのか?」
斉藤は少し何か考えたような顔をすると、その顔が次の瞬間には笑顔に変わり
「そうかも、な。うん。そうだ、確かに!」
「なんだよ、びっくりさせるなよ~。思わずマジシリアス雰囲気だしちゃたじゃんか。今から海行くってのに嫌だぞ、そんなの!」
「確かにそうだ、すまんな。さっき言った事は忘れてくれ」
ったく、ビックリさせやがって結局は斉藤の調べ不足って事じゃねえか。俺の事調べればもっと情報が出てくる筈なのになぁ!たく!
てか人のこと勝手に調べるなや!
俺と斉藤は笑い合い、そこからは普通にこれから行く海の話などで暇を潰した。
~三十分後~
「海です」
「いや、そりゃ見れば分かる」
海に着いた、正確には駐車場、なんか奥には一軒家も建ってる。
それを俺がリポーター風に言ってみると、その腰を折る乙女。
いいじゃん!海なんだからはしゃいでも!
ひと夏のサマーバケイションしても!!
いや!意味は知らんけど!
「ってかここの海、なんか人、いなくね?」
ざっと海岸の周りを見渡してみたが、なんか海の家みたいなのはあるんだが、それを動かす従業員、というか人そのものの影が見当たらない。
まっさらだ。
「当然だ」
すると後ろから斉藤が姿勢よく歩いてきた。
当然とは一体なんだ。
これの何が当然なんだ?
すると俺の反応を見て、何かを悟ったように
「ここは、松上家のプライベートビーチだ」
と、答えた。
プライベートビーチ。
その言葉の意味。
まあ、とりあえずセレブな人間が持っているということだけは知っている。
それ以外は詳しく知らない。
「プライベートビーチか、そりゃすごいな」
「ふふん、恐れ入ったか!これが松上家の力だ!」
「お前が威張ってどうするよ」
お前は松上家の執事みたいなもんだろうが。
しっかし、プライベートビーチとはいえ、都会からちょっと離れた所にこんなキレイな海があったのは驚きだな。
俺達の目の前にある海は、水がとても澄んでいて、太陽から降り注ぐ光が海に反射してキラキラとその存在感を主張してくる。
これほどキレイな海なら、入る事すら躊躇してしまいそうだ。
もう芸術の域に達している。
「へ~~これがプライベートビーチなんだ!」
「すごいな、こんな綺麗な海を初めて見た」
「わーい!この海、私達の貸切だぁ!」
「す、すごい、です。さすが、です」
女子達のほうは各々(おのおの)思った事を口に出している。
まあ、確かに、都会からちょっと離れたところにこんなキレイな海があるなんて驚きだ。
しかもそれが松上家のプライベートビーチだという所も。
「喜んで頂いて幸いです」
すると俺達の反応に撫はうれしそうに「ふふふ」と微笑んだ。
「さて、ではそろそろ別れて着替えるとしましょうか」
「ええ、じゃあ女性陣は私に着いてきてもらって宜しいですか?」
「お前はこっちだ徹」
そして撫達は車のほうへ、俺は砂浜のほうへと連れて行かれた。
するとそこには更衣室みたいなものが置いてあった、ていうか更衣室だ。
中に入ってみると意外と広い。
少なくとも百人程度なら入りそうだ。
「別にこんなに広くなくともいい気がするんだが」
俺は思った事を素直に口に出した。
するとそれに反応した斉藤が
「ここは松上家のプライベートビーチだが、使うのは基本的に使用人だからな」
「松上家の偉い奴らは使わないのか?」
「ああ、使わないな。松上家は外の世界を俗世と考えている。だから滅多に外に出る事はない」
「撫はよく外に出てるよな」
「撫魅様は別だ。それに今は、撫魅様が松上家現当主だからな」
「あ?何?撫って今当主なの!?」
「何だ、知らなかったのか。三年前に撫魅様が松上家の当主になることが決まったんだ」
そうなのか。
俺が気付かないうちにそこまで成長していたんだな。
撫がねぇ、実感わかねえな。
「あれ?じゃあ前当主はどうしたんだよ。引退したのか?」
「いや、あの方達…………いや、あいつらは」
その時の斉藤の顔は、自分の親を殺されたような顔になっていた。
何だ?
まあ、前当主の事をあいつら呼ばわりするんだから相当の事があったんだろう。
「どうした?大丈夫か?」
「あ、ああ、すまない。いや、まあ、色々あったんだよ」
「そうか」
「聞かないのか?」
「言いたくないんだろ?無理に聞きたいとも思わないしな」
「ありがとう」
「いえいえ。それはそうと!女性陣の水着はどんな感じかなぁ!」
俺は空気を変えようと明るい話題に切り替えてみた。
今から楽しもうって時に変な空気になるのは嫌だからな!
しかし
「お嬢様の水着を厭らしい目で見たら、潰すからな」
何を!?どこを!?
そんなやり取りをしながら、俺たちは水着に着替えた。
まあ、男の水着を詳しく説明してもつまらないので割愛で。
俺たちは更衣室から金色のようにキラキラ光る砂浜の上に移動し始めた。
更衣室から外に出ると、その移動に伴い自身の肌に、太陽から素晴らしくありがたくないギフトが送られる。
「あっつい!!!」
「うん、丁度いい具合だな」
俺は目の上に手で影を作り出すが、斉藤は手を大きく手を広げて、そのダメージを体一帯に受けている。
何だお前は。
海に入りたいが、レディファーストを重んじる俺としては出来ない事だ。
なので
「斉藤!」
「ん?なんだ?」
「あの海の家にピーチパラソルとかって置いてあるか?」
俺は目の前にある海の家を指でさして、斉藤にその答えを促す。
斉藤は俺の視線を目で追い、そして海の家から俺へと視線を戻すと
「ああ、あるぞ。今日の為に一式揃えておいた」
「じゃあ、それ借りるぞ!」
俺は海の家に走り一式を掴んでドンドン砂浜に人数分たてていった。
~数分後~
「ゼェ!ゼェ!ゼェ!」
「ごくろう」
「お前も手伝えや!使用人!」
俺はこの砂浜の上で涙に似た汗を垂れ流していた。
息を吸い込むたびに暑い、サウナにも似た熱気が口の中に侵入してくる。
本当に、今にも死ねそうだ。
「まあまあ、とりあえずこれ飲んで落ち着け」
「ん、ああ、貰う」
俺は斉藤から差し出された水を一気に喉の奥に流し込む。
丁度よく冷やされていて、喉をとても清い川が流れている、そんな気分になった。
「プハッ!生き返った~~~!」
と、そんな生命のありがたみに浸っていると
「わ~~い」
砂浜の向こうから大きく元気な声が響いてきた。
何かピョンピョンと跳ねながらこちらへと向かってきている。
そちらの方向に視線を向けると、女性陣が着替えを終えて、歩いてきた。
まだ、遠い筈なのに輝いて見える!!!
そして彼女たちは俺の前にまで歩いてきた。
そして由里ちゃんが自分の水着を見せびらかすように上目遣いで
「どう!徹おにいちゃん!!!可愛い?」
「あ、うん。可愛いよ!」
由里ちゃんの水着はスクール水着にヒラヒラのスカートをつけたような奴だ。
よく海で小さい子がきる、スタンダードの奴だ。
そして水着の腰付近には年相応の可愛い模様が入った浮輪がある。
ちなみに水着はピンク。
「「「ロリコン」」」
「ロリコン!?」
褒めただけなのに!?
俺にそんな性癖はないぞ!
「徹様徹様!私はどうですか!?」
その横で俺の腕を掴んで体を揺らしてくる撫を見た。
しかしその時、俺は目を疑った。
撫の水着は、紫色のこれは、なんというか、その
「どうですか!?」
「いや、その、なんていうか、すごいな」
「そうですか!!!」
その俺の言葉を褒め言葉と受け取ったらしい撫は、嬉しそうに頬を染める。
いや、だってなんかV字がたの水着だし、感想があるとしたら、ダイナマイトボディのお姉さん方が着そうな水着だねとしかいえないし、まあぶっちゃけ興奮しますよ?興奮しますけど、何ていうんでしょう?私にはまだレベルが高すぎるかな?と。
そしてそんな俺に対し凄いガンを飛ばしてくる斉藤。
いや、これはどう考えても俺は悪くないと思うんだが。
「うふふ、よかったです徹様に褒められて」
撫、胸のあたりにあるマシュマロを、俺の肩に押し付けないでくれ。
斉藤がどこから取り出したか分からないナイフを、クルクルまわしているんだ。
そしてその横で自分の胸を見つめながら、ドロドロっとした一般ピーポーにも見えるほどの殺気を醸し出している約二名に殺さちゃうから。
しかし俺はそんな二人にも立ち向かう。
「いや~~花蓮と乙女の水着もすっごく似合ってるなぁ!!!幼馴染として兄としてとても嬉しく思う!」
その俺の逃げとも取れる発言に二人は
「は、はん!そんな事言ったって誤魔化されないんだからな!////」
「そ、そうよ!どうせ口からでまかせに決まってる!////」
「そんな事ない!二人の赤と黄色を強調した、オーソドックスな水着は、俺の心を盛り上げますよ!」
これは本音だ。
花蓮と乙女の水着姿は所謂オーソドックスタイプ。
撫のようにこれといった特徴があるわけではない。
しかし!だからこそ!いつも性格に難ある二人のギャップが大きく目立つ。
ここで重要なのは、二人が水着を着ているという事実なのだ!
ぶっちゃけ、昔から二人の水着姿をよく見ているが、今年は中々にグッド!!!
なんかどんどんあの変態に近づいていってる気が、いや、気のせいだ!
「ふ~ん、そうか。盛り上げるか////」
「ま、まあ、嫌な感じではないわね////」
二人は着ている水着を隠すようにモジモジし始めた。
その仕草が、俺の中のギャップの鐘をガンガン鳴らす。
俺はそんな自分にいたたまれなくなった。
「ん?あれ?」
そういえば、まだ一人見てないな?
乙女の後ろにもいないし。
「なあ、乙女」
「ん?」
「お前、静寝ちゃんはどうした?」
「ああ、もうすぐ来ると思うけど?」
「そっか」
と、内心静寝ちゃんの水着姿に期待と楽しみを隠していると
「お、お待たせ、しました」
そこに求め人の声が!
俺が声のした方向に首を勢いよくグルンと回すと、そこには!
「や、やっぱり、恥ずかしくて、す、すいません」
胸の辺りに魚が吊り上げられている模様があるTシャツを着た静寝ちゃんが現れた。
うん、まあ、恥ずかしいならしょうがないよね。
俺は先ほど内心期待し、今程内心がっかりしている。
そこで、静寝ちゃんに対して女性陣のフォローが入る。
「しょうがないよ、一緒に海に来てくれただけで相当頑張ったと思うし」
「それでしたら、後ほど美味しい飲み物をお持ちいたします」
「無理しないでね?静寝お姉ちゃん」
「まあ、確かにここには女性となったら見境なしに襲う淫獣がいるからな」
「おいこら、花蓮」
そんなに兄を変態にして楽しいか。
さっきその淫獣に褒められて恥ずかしがってたくせに。
「まあ、じゃあそろそろ海に入るとしますか」
「準備運動は忘れずにね」
そして俺たちは海に入る前の通過儀式、準備運動を終わらせ海に飛び込んだ。
準備運動にはシャツに着替えてる静寝ちゃんも参加した。
やっぱり真面目なんだなぁ。
「ひやっほ~~~う」
ザッパ~ン!!!
準備運動を終わらせた俺達は、海の中に飛び込むように水しぶきを上げた。
海の中は太陽に照らされたおかげか程よく暖かい、ぬるいと冷たいの間くらいかな?
ちなみに静寝ちゃんはパラソルの方に、そしてその相手として斉藤を、さっき撫が言った美味しい飲み物を運んでいる。
静寝ちゃんは泳げないのかな?
「っぷは!あ~~気持ちいい」
と、そんな事を考えていると、水面から乙女が顔を覗かせた。
その髪は水に濡れ、水の反射で髪の毛がキラキラと光っている。
「なによ徹、人の髪をそんなジロジロと見て?」
「いや、なんていうか綺麗だなって」
「は!?////」
「あ!いや、その、何ていうかスマン」
乙女は俺のその言葉から逃げるように海の中に逃げた。
「ブクブクブク/////」
あ、むこうに逃げるように行っちゃった。
俺、もしかして失礼な事言っちゃったかなぁ?
「このスケベ兄貴」
「ぬわっ!」
俺の背後からいきなり声がしたことにびっくりし、軽い水しぶきを上げながら後ろを振り返った。
そこには案の定、水から顔を出す花蓮がいた。
まあ、ここで兄貴って言い方するのこいつだけだしな。
「誰がスケベだ!誰が!」
「私には?」
「あ?」
「私には何かないのか?」
…………………?
あ!もしかして、こいつも何かしら男という立場の俺に何か褒めてほしいのかな?
まあ、そうだよな。
褒められるのはやっぱり嬉しいもんな。
じゃあ…………コホン!
「お兄ちゃんはお前の体の成長を嬉しく思うぞ?」
俺は花蓮の肩を掴みながらニコっと笑った。
花蓮は一度思いっきり赤面し、そして
「沈め//////」
といい、満面スマイルが花蓮のパンチにより、グシャグシャになった。
「だ、大丈夫ですか徹様!?」
「大丈夫?徹お兄ちゃんっ」
鼻から血を流し、海にユラユラと漂う俺を心配してくれる声が二つ。
撫と由里ちゃんだ。
「二人、とも」
「ああ、どうすれば。徹様が今にも遺言を残しそうな顔です」
「遺言?とにかく大丈夫?徹お兄ちゃん?」
ああ、今、二人の姿がマーメイドに見えるよ。
「俺は、今日、海にこれて、よかった。最後に、いいもん見せてもら、た、ぜ」
ガクッ
「あ、花蓮様と乙女様の水着が海に攫われた!!!」
「何だとッッッ!!!」
「嘘だ」
俺は顔を上げると横から嘘だ、の声が聞こえた。
そちらのほうに顔を向けると斉藤が水にプカプカ浮いていた。
なんだ~嘘か。ならよかった。よくないけど。
「何で、お前がいるんだよ」
「いや、静寝様が「斉藤さんも私に構わず海で遊んできてください」と、言われてな。いや~~こんな使用人にすらも気を使ってくださる。いいお方だ」
「俺だったらずーーっとこき使うけどな」
「お前なんかに誰が従うか」
と、二人で毒を吐きあってると
「徹お兄ちゃん?大丈夫なの?」
「あ、うん。大丈夫だよ」
「そっか~~でもね」
と、そこで斉藤が何かに気付いたようにハッと。
「撫美お姉ちゃんは大丈夫じゃなさそうだよ?」
「え?」
俺がゆっくり撫の方に顔を向けると確かに目が、死んでた。
「徹様?」
「あ、はい」
「とりあえず、陸にあがりましょうか?」
「あ、いえ、ここでもいいんじゃ?」
「……………あがりましょうか」
あれ?疑問系じゃなくなったような。
とりあえず俺は
「はい」
とだけ答えた。
すると横でそれをみていた斉藤が
「ふはは!精々しっかり怒られてフザけた事を反省するんだな!!!」
この野郎!!!
元はといえばお前のせいなのに!!!
「斉藤、あなたもです」
「……………はい」
撫はきっと万物を久しく裁くんだ。
素晴らしい。
そして俺たちは撫の拷問を受ける事になる。
まあ、こうなりますよね。
海、まだ続きます。
そしてオチもそろそろまとまってきたので、そろそろ終りを見据えて少しずつ片鱗を覗かせていきたいと思ってます!




