第四十六話 別の意味で頑張ってみた!
死んだらどうなるんでしょうか?
そんな事を考えることが多々あります。
きっとそれは死んでみた人しか分からないんでしょう。
でも、死んだら誰にも伝えられないのも事実。
これぞ究極の好奇心なんでしょうねぇ。
人類とは、その弱者ゆえ知恵で生き残ってきた。
武器を使い、獲物を取り、その肉を喰らい生きてきた。
つまり人間はどんなに頑張っても、生身でライオンやゴリラ、熊などに敵わないという事だ。
その筈なのに…………
「徹様、一体これはどういう事でしょうか?(にっごり)」
「徹、とりあえず何回死んでみる?(ボキボキ)」
何故この人達は、その常識を覆すと思わされる程の殺気を醸し出しているんでしょうか?
撫に至っては目が死んでるし。
俺は今テントの中で絶賛正座中だ。
ジャージの下から露出している足、地面の小石がめり込んで痛い。
しかし、俺はまるで蛇に睨まれたカエル並みに動けないでいた、まるで地面が俺のことを逃がさないように掴んでいるみたいだ。
いや、そんな事よりアナコンダに睨まれたカエルかもしれないな。
「いや、だからね?あれは」
「はい?(にっごり)」
「何よ(ボキボキ)」
どうしよう、どんな未来を想像してもbadな展開しか思いつかない。
しかし、何でこんな濃厚な殺気を出すほど二人は怒っているのだろう。
そこが分からない限りこの恐怖に突破口はない。
しかし、そんな「何に怒っているかわからない」などと口にした日には、俺の命の灯火は半分に削られるだろう。
なので、口が滑っても絶対にそんな事は言わない。
今重要なのは、自然に二人から怒っている理由を聞き出す事。
夏なのに、俺の背中には一滴の緊張が流れる。
「本当にすいませんでした」
出来るだけ声音を落とし、本当に反省している風を装った。
その声音に二人は少し落ち着いたのか、とりあえず撫はその黒い笑みを、乙女は、その今にも出発進行しそうだった拳をおろした。
「で、なんであんな事言ったのよ」
「そうです!教えてください!!」
あんな事?
もしかして鮫皮先生の事だろうか。
俺はそれとなく探りをいれてみる事にした。
「鮫皮先生のあれは違うんだよ」
「何が違うってのよ!」
「どんな事情があるんですか?」
どうやら俺の予想は当たっていたようだ。
ではどうすればいいか?
簡単だ、正直な真実を語ればいい。
「いやだから、あれは借り物競争の白い紙に書いてあったことを叫んだだけなんだって。借り物競争の白い紙を調べれば、中にそう書いてある紙があると思うぞ」
そこからの撫の行動は物理的に早かった。
ヒュン、と風が鳴いたかと思うと、撫が体育祭本部へと走っていった音だった。
速いなぁ。
そして撫が戻ってきた、俺は安心して結末を待ったが、そこで聞かされたのは予想外の答えだった。
「そんな紙は存在しませんでした」
「えっ?」
「ほほ~う、ではこの場を逃れるために私達に嘘をついた、と」
「いや、そんな事はない!俺はちゃんと見たし、それのせいであんな恥ずかしい目にあったんだ!!!」
でなきゃあんな事するか!
「でも、そんな紙は結局存在しなかったんだから」
「では、徹様?覚悟はよろしいですか?」
なんの覚悟でしょう?
夏のジメジメとした暑さがテント内の俺に攻撃してくる。
しかしそんな攻撃も今の状態に比べたら蚊に刺された程度の苦しみだ。
しかし、こんなことあるだろうか、少しくらい信じてくれてもよろしいのでは?
でもまあ、確かにあんな紙を空羅会長がずっと保存しているわけないもんな。
空羅会長はここまで予想済みだったのだろうか?
本当に嫌な人だぁ。
二人は腕をスッと胸の位置まであげた。
その行動がこれから起きることを予兆しているかのようだ。
そして覚悟を決め、目をすっと瞑った所に、
「あれ、徹そんな所に正座して何やってんだ?」
「あ?」
その声は俺が渾身の蹴りを決めた張本人、啓介だった。
俺はたった今、窮地に立たされている身だが、そこに首を手で覆っている啓介を見て、ほんとこいつとんでもない回復力だなと場違いにも感心してしまった。
そしてそれを俺は無意識にも声に出していたらしい。
「おいおい、そんな褒めるなって、俺も別に不死身ってわけじゃないぞ?人間なんだから!」
少なくともお前は人間の回復力は超越しているがな。
人間なにか一つくらいは取り柄を持っているもんだな。
そう痛感させられた。
「それで?結局なんで徹は地面に正座してんだ?乙女ちゃんも撫魅ちゃんも二人して徹に詰め寄って。はっ!まさか徹お前!この二人とそんないけないプレイをしていたのか!?そんな体育祭中に、そんな羨まけしからん事をしていたのか!!ずるいぞ、俺も混ぜろ!!!」
「俺を置いて勝手に結論づけるな!」
こいつの脳はどうして、こう変な方向にしか向かわないんだ?
この雰囲気で色々察せよ。
「じゃあ、一体どういう事だよ?」
「実はな…………」
俺は啓介に事の内容を話した。
鮫皮先生に大声で告白まがいなことをした事、それによって乙女と撫に説教、というか尋問を受けていること、そしてそれは言わされた事だということ、さらにはその証拠の白い紙がないということ。
包み隠さず全て話した。
俺はこいつに何か言って何かが変わるとは期待しなかったが、この真実を少しでも多くの人に聞いてほしかったのかもしれない。
俺の心も弱くなったものだ。
「なるほど。つまりは」
「うんうん」
「お前は殺されるべき人間だと言うことだな?」
「うん?」
いやいや、話聞いてた?
俺今言ったじゃん、懇切丁寧に事の内容を包み隠さず話したじゃん。
なのに何故お前の口からそんな事を言われなくちゃならん。
「いやいや、おかしいよね。今、全て真実をお前に話したよね?」
「うん」
「じゃあさ、親友としてなにか弁護するとか選択肢にないの?」
幾ら期待してないとはいえ、もう少し何か違うアクションはあるだろ?
弁護しなくてもいいけど、追い討ちはおかしくね?
「だって徹さ、鮫皮先生に告白まがいの事言ったんだろ?」
「まあ、言ったっていうか、言わされたっていうか」
「じゃあ死刑だよ」
「だから何故!?」
おかしいおかしい!
確かに俺もおかしいとは思ったよ!?
でもさ、しょうがないじゃん不可抗力じゃん!?
「鮫皮先生は既に、学校教師美人ランク上位にくい込む程の人、これに告白するということは、我ら美少女委員会を敵に回すという事!」
お前そんなアホな事やってたのか。
「フン、乙女ちゃんと撫ちゃんが手を下すまでもない!!我ら美少女委員会が貴様を罰してくれる!!!まあ白い紙はぶっちゃけこれの事だと思うが、そんな事実より今は貴様が鮫皮先生に告白したことが問題だ!」
「おいこらちょっと待て」
今小さい声で聞き捨てならん言葉を聞いたぞ、てめえ。
しかも啓介の手に、さっまでき借り物競争で俺が持ってた白い紙を、何故か啓介が握ってる。
「啓介、その白い紙ちょっとこっちよこせ」
「むっ、だ、駄目だ!これは、その、とても大事な俺の宝物だから?」
何故疑問系、いや、いい、分かりきった事を聞いてもしょうがない。
それにこういう時は
「実力行使だ」
俺はついさっきまで正座していた地面から、足をオサラバし啓介の頭をわし掴んだ。
突然の事で乙女も撫も意味が分からなかったのか、硬直したままこちらを見ている。
好都合だ。
俺はわし掴んだ啓介の頭を俺の顔の数センチにまで近づけた。
啓介は、さっきまで威勢は何処へやら、今は必死に俺の顔から逃げようと目線を俺とは真逆の方向へ向けている。
「ま~ず、これを何処で手に入れた?」
「お、落ちてました」
「何処に?」
「その、ここへ戻ってくる途中地面に白い紙が落ちていて、なんか告白とか書いてあったので拾いました」
「フム、で?」
「ここに戻ってくると徹が正座していたので何かあったのかな?と思い聞いた次第です」
「じゃあ、話の途中でこの白い紙が俺の事だって気づいた筈だよね?」
俺は啓介の目線の先にさっきの白い紙をだした
「はい!」
「何故、言わなかった?」
「言おうと思いましたが、まあ徹だからいっか、と」
「そっかそっか」
すると啓介は何処かの物売りみたいに手をこすり合わせて、
「へへっ、旦那、許してもらえませんかねぇ?」
俺は元から決めていた言葉を啓介に聞かせた
「死ね★」
ゴキャン!
バタッ
「ふ~~!と言うことでお二人さん、これがその証拠の紙です」
俺は二人の目の前に白い紙を見せ付けるように差し出した。
それをみた乙女と撫は、乙女は咳払いを一つしてバツが悪そうに明後日の方向を向く、乙女は本当に申し訳なさそうに俯く。
そして何故か、乙女の後ろにいる静寝ちゃんが軽く泣きそうになっている。
「うん、そのなんていうか、ごめんね?」
「申し訳ありません徹様、私は徹様を疑ってしまいました。恥ずべき事です!」
「……………くすん」
俺は別に彼女たちを苛めたいわけではないので、早々に許すことにした。
俺は場の雰囲気を軽くするため軽く笑いながら
「いいっていいって、まあ誤解が解けたのなら別にいいよ」
その言葉で少し罪悪感から救われたのか軽く彼女達も微笑み返してきた。
まあ、これも元を辿れば啓介のお陰になるのだろうか?
まあ、一応感謝しておこう。
首が前後ろ反転しているが、まあ気にしなくても大丈夫か。
「徹?今の話は本当か?」
ん?徹?俺の事をそう呼ぶ声が後ろから聞こえてきた。
俺の目の前には乙女と撫、そして首が前後ろ反転している啓介がいる。
一応俺の事を徹と呼ぶ人間はここに揃っている。
撫は徹様だがそこは気にしない。
静寝ちゃんも…………あれ?静寝ちゃんって俺の事を呼んだことあったっけ?そういえばないような?あれ、ショック!
大穴で両親という線があるが、まあ、ないだろう。
とりあえず見えぬ俺の事を徹と呼んだ人物を確認することにした、まあ声で大体わかるのだが。
「いきなりどうしたんですか?鮫皮先生」
やはりそこにいたのは鮫皮先生だった。
しかし鮫皮先生が俺の事を徹と呼ぶ理由が分からない。
さっきまで鈴木だったのに。
「いや、今の借り物競争の話は本当なのかと…………」
何故そんな事…………あ、そっか、事の真相を確かめたいわけね!
「ああ、本当です。まったく空羅会長にはホント困りますよね!」
おれは、あはは~と暢気に言って見せた。
まあ、俺の中ではもう結論に達したので笑いながら言える。
「そうか、そうだよな。すまない、変なことを聞いたな」
「いえいえ!」
そう言うと鮫皮先生はスタスタと何処かへ向かった。
その背中は、何故か哀愁漂う背中だった。
その姿はまるで仕事に疲れたOLだ。
結局なんで徹って呼ばれたのか分からずじまいだな。
そんな事を考えながら振り返ると、
「「………………………」」
乙女と撫が何故か最初の状態にリセットされていた。
いや、むしろ最初の頃より酷いんじゃないかな?
何故なら、さっきより明白に黒いオーラが見えるから。
「「どういうことか聞かせてもらうわよ(いただきます)」」
何を?
そして、これ以上勘弁してもらえませんか?
第二ラウンド開始で~す。
しかしこのラウンドでノックアウトされるだろうな、と感じた。
あ、物理的にね。
出来るだけ比喩を意識してみましたが駄目ですね。
無理、とはいいませんが、完璧にはほど遠い。
あと、ちょっと文化祭編長くありません?
まあ投稿している本人がそれをいうのはどうかと思うんですけどね(笑)




