第四十五話 我、借り物の神なり!あ、ちょっとトイレ貸してもらっていいですか?
そろそろ春も終盤ですね。
夏がじわじわと近づく今日この頃、
ところで皆さん、夏と言えば何でしょう?
海?スイカ?祭り?カキ氷?
いいえ違います。
ブンブンうるさい蝿共death
「そ~れではぁ!周りの生徒の見本となる第一レースの諸君!!きりきり周りの生徒の目に、己をみせつけてやれぇぇぇぇぇい!!!」
轟先輩の放送はまだ二種目めだというのに、体育祭大詰め並みの声量で頑張っている。
軽くライオンの咆哮を超えている。
本当にあの人、この体育祭終わるまでに生きてられるんだろうか?
そんなことを考えさせられるくらいに、轟先輩は凄かった。
まあ、だからこそあの異端と呼ばれている生徒会でやっていけるのだろう。
空羅会長と関わってから俺も生徒会について調べたのだ。
調べた結果・とにかく生徒会には近づくな。
俺の中でこの教訓が生まれた。
まあ、いづれ話すことがあると思う。
ピーーン!
あれ?今なんかフラグが立った気がする。
気のせいか?
「しかーーーし、この種目をきちんと理解していない、観客の皆様方の為に!ここで我らが放送委員の、マァースコットガァーゥル撫魅ちゃんが、この種目の説明をいたしまぁーーす!この種目を既に知っている生徒もこの撫魅ちゃんの声によいしれるがいい!!!!」
「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」
会場は既に暑さで灼熱地獄となっているのに、一部(てか男子大半)が熱狂的に盛り上がったため、更なる熱気とそれに比例する地獄がそこにはあった。
何にも知らない人が見たら間違いなく警察に電話し、その電話を受けた警察は彼らを暴徒として鎮圧するだろう。
てか…………してほしい。
そしてその熱気の張本人となる撫も、さすがにその熱気に押され、種目の説明を上手く出来ないでいた。
「えっ、あ、えっと」
それを見かねた俺が全員武力で黙らせようかと考えたとき
「静まれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!!」
「「「「「「シーーーーーーーーン」」」」」」
俺より先に武力ではなくたった一つの声で黙らせた奴がいた。
その声に、熱気を放出していた奴らも、何とか説明しようとしていた撫も、武力で黙らせようとしていた俺も、時間が止まったように固まった。
何故奴がそこにいるのか分からなかったが、とりあえずそいつはその男達の前に立ちはだかってた。
それは歌舞伎の型をしている啓介だった。
「静まれ静まれ静まらんかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
いやもう静まってるから。
ていうか、よくこの短時間で蘇生できたな。
軽く三日は意識が戻らない程度には痛めつけたと思ったんだが。
あと乙女に打楽器にされてたし。
そして一番疑問なのは何故あいつが前にいるということだ。
まあ、結果静まったんだからいいんだが。
「お前らは一つ大事なことを忘れている」
マイクを握り締めながら啓介はブルブル震える。
「お前らが騒いだことで、今この撫魅ちゃんは迷惑している!それがどれ程の万死に値するか分かっているのか!!!それが分からんような奴らが騒ぐ権利などあるわけがないであろう!!!!!」
「啓介……………」
口調がなんかめちゃくちゃだぞ。
あと、わかってたとしても騒いじゃいけないと思うが。
それでも今俺は、こいつもここまで撫魅の事を思って行動してくれたことにグッときてしまった。啓介だけど。
認めよう、俺はこいつのこの行いに感動した。啓介だけど。
そして俺は、一種の宣教師を見ているような気分になった。啓介で更に宣教師なんか俺信じてなんかいないけど。
「何より、何より!!!」
スゥーーっと啓介が大きく息を吸い込むと、
「お前らの雑音が邪魔で、撫魅ちゃんの声がよく聞こえねーーんだよボケカス共がぁ!!!!(怒)」
「「「「「「……………………」」」」」」
よーし、借り物競争の前に、一丁でかいゴミを掃除するといたしましょうかぁ!!!
俺はクラウチングスタートの格好で啓介に向かって構えた。
「撫魅ちゃんの声が美しいのは分かる!しかしそれをおまえらが邪魔してしまったら本末転倒だろうがぁ!」
「……………よーい」
でおしりをあげて
「いいかお前ら?これは全ての存在が愛でるべきものなのだ。騒ぎこの声に燃えるのも良いだろう、しかし!!!」
「スタート!」
で俺は地面を蹴った。
目的地は啓介、一撃で決める。
「静かに耳をかたむけ、そして終わった直後に感情を爆発させる。これこそが一番の方法なんだ、アホ共ぉ!!!!!」
「「「「「「イエス・サーーーー!!!!」」」」」
そして俺は跳躍し啓介に向かって足を向ける。
「一番のアホはお前だああああああああああああああ!!!!!!!!」
その跳躍から繰り出されたキックは啓介の頭をクリーンヒットした。
そして啓介の頭からは、グシャッという決して頭から鳴ってはいけない音がした。
「それじゃあ啓介君を保健室に連れて行きます」
「宜しく」
保険委員の男子生徒に啓介を預け、意識不明となった啓介は、ダランと腕を重力になされるがままになった状態で保健室へと連れて行かれた。
そして運ばれた事を確認した轟先輩は
「それじゃあ、気を取り直して!!!撫魅ちゃんに説明していただこう!」
その言葉を聞いた、さっきまで騒いでいた男子生徒達は皆、目を瞑り安らかな顔をしていた。
きっと、啓介の静かに聴くという言葉の通りにやっているんだろう。
あいつの何がこいつらをここまでさせるんだ、理解できん。
するとさっきまでの撫が偽者かと思える位に堂々と説明し始めた。
「この借り物競争では、スタートから百メートル地点に白い紙が裏側にしておいてあります。そしてその白い紙にかいてあるものを借り、二百メートル先のゴールへたどり着いた者が勝者となります。その白い紙に人の指定があった場合、必ず手を繋いでゴールしなければいけません。尚、ゴールした地点で審判が白い紙を確認し条件に見合ったものだと判断すればゴール、逆に見合わなかった場合は…………あれ、書いてありません」
「えーっと、そこについては私が!」
ここで登場、空羅会長。
嫌な予感がビンビンします!
「見合わなかった場合その人は失格!!!さらにその人に対しての罰を、追って生徒会が知らせます!!!人によって罰の内容は違うので。ま、心してかかるように。この借り物競争ただ一位を目指すだけじゃあ勝てないよ?」
「だ、そうです。皆さん頑張ってください」
そして静かに聞き入ってた男達は話が終わり十秒沈黙し十一秒目に
「「「「「「よっしゃあああああああああああああ!!!!!」」」」」」
感情を爆発させた。
大気は震え、温度は一気に十度あがった。
さっきまでの勢いとは別物の、いや更に上を行く盛り上がりになった。
その勢いはまるで地鳴りだ。
俺はその勢いに若干引きながらも、この種目で勝つことに集中した。
「そーーれではぁ、改めまして、第一レース諸君。頑張っていって頂戴!!!」
その声に反応するように第一走者が皆トラックの上に並ぶ。
その表情はさっきまでラリっていた人達とは思えない。
トラックの横でスターターの人が腕を上げる
「よーい」
で皆走る構えをとる。
ドン!!!
その音と共に地面を蹴り、走り始める。
最初の百メートルはほとんど差は出なかった。
そして今、生徒達が横テーブルに置いてある白い紙を取る。
そして
「「「「「どさっ!」」」」」
……………膝から崩れ落ちる。
「なんでっ!?」
俺はつい思ったことをそのまま口にだしてしまった。
さっきまでいい顔してたじゃん!
青春漫画とかにでてきそうなかおしてたじゃん!!
何でいきなり百何歳の老人の顔に変わるの!!!
そんな俺の疑問に答えるように空羅会長はマイクを取った。
「え~ちなみに、その白い紙に書かれている事。全て私の手書きだからねっ!」
なんてこったい。
会長自らが動いたのか、ならこの現状にも納得だ。
しかし、そんな倒れた五人の生徒の中、二人の男子生徒がグググと、まるで錘でも背負ってるかのように体を持ち上げた。
足元はおぼつかずヨタヨタとノロイ動きだが、たしかにその二人は前に進んでいる。
そして
「「私と、共に、一緒に、行ってくれません、か?」」
二人とも違う人間の前で片膝を着く、しかし。
「あらあらまあまあ、こんなばだじにお誘いが来るなんてねぇ。フガフガ」
「うれじいば~!ばたじがこのびどにえらばべだのね~~!」
歯が既に無くなっている老婆と、この世の全ての憎悪を顔面に宿しているようなブサイク女子だった。
そしてその二人の手をとった男子、話だけきくとブサイクな子の方が有利に見えるだろう。
しかしこれはどっちもどっちな戦いである。
何故なら、老婆の方は勿論。
ブサイクの方明らかに体重が百キロは超えているのである。
「なんだこの地獄絵図は」
男性のほうは、全ての罪を償いに行く罪人の如く足取りで。
女性のほうは、この日が最高の一日になると希望を振りまきながら歩いている。
「………………天国と地獄」
誰かがそんな事を言った。
誰だか分からないが、とても的を得ていると思う。
当然どちらが天国でどちらが地獄かは言うまでもない。
そんなことを考えているうちに老婆とその男子生徒がゴールした。
ゴールに立っている審判に、死にそうな顔で白い紙を渡す。
その紙をみた審判は、手で本部に向かって手で丸を作った。
「おーーーっとぉ!!ここで週君がゴォォォォォォルゥゥゥ。険しい山を越えその頂へと手を届かせたぁぁぁ!そしておおーーーっとぉ!?鉄君もここでゴールだぁ!!!私はゴールまで頑張った子の二人を讃えたいと思います!」
そこで、勝った二人に、周りは惜しみない拍手と声援を送った。
そこに敵も味方もなく、ただただ二人を賞賛する声が飛んだ。
かくいう俺も賞賛の声をかけた。
そんなこんなで何人もの犠牲者を出しながら、ついに俺の番へと順番が回ってきた。
俺はこの種目で倒れていった猛者達を何度も見てきた。
だからこそ分かる。
これは、本気で取り組まないと殺られる!
「そっれでは!もう終盤まであと少し!皆さんラストまで気を抜かず張り切って行っきましょおおおおおおおお!!!」
「スゥ~~~~、ハァ~~~~」
俺はトラックの上に立ち息を大きく吸い込み、吐き出す。
よし、これで集中力は完璧だ。
あとはどんなお題がきても動じない心!
「よーい」
俺は走る直前のポーズを決め足に力を入れる。
ドン!!!
この音と共に俺は白い紙へと一直線に走り出す。
聞こえるのは風邪の音と味方からの応援。
集中力がよかったのか、俺は白い紙の所へ一番にたどり着く事が出来た。
しかしここからが問題。
どれを選んでもきっと嫌な事だと思う。
ならば!
「一番真ん中だぁ!」
迷ったときは真ん中。
特に決まってはいないがそうしようと思ったので格好よく言ってみました。
それに合わせて轟先輩が実況する。
「おお~~っと!一番に白い紙を取ったのは、鮫皮先生のクラスの徹君だぁ!これは撫魅ちゃんも嬉しいんじゃないかな!?どうでしょうか!?」
「徹様~~!頑張ってください!撫はここで応援してますよ~!」
「「「「「ッチ!」」」」」
ああ、結局応援放送はされるのね(涙)
これはあとで覚悟しないとなっと。
そして真ん中の白い紙を裏返すと…………………
・鮫皮先生に愛ある告白!セリフは「マイ・スウィート・ハニー僕と禁断の愛をしてみないかい?さあこっちにおいでよ!」とその場で叫ぶ。それ以外は条件に満たさない事とする。
あれ?
もしかして俺、とんでもねえJOKER引いたんじゃね?
俺はバッと空羅会長の方を見る、
「会長」
「俺」
あんのクソ会長おおおおおおおおおおお。
何がしたいんだ一体!!!
ていうかこんな事いったら絶対に色んな意味で死ぬ!
いや、いっそ殺せ!!
いっそ俺を殺してくれええええええええええええええええ!!!
「あれあれ~徹君。一歩も動きません、これは一体どういう事でしょうか?やはり彼も他の生徒と同じように、崩れ落ちてしまうんでしょうか!?」
「徹様………………………」
くっそもう他の生徒も追いついてきてる。
迷ってる時間はねえ。
あの場で勝つと言った以上勝たなければ!
鈴木徹、恥を捨てろ!羞恥を捨てろ!考えを捨てろ!
ただ書かれたことを言えばいいんだ!!!
「スゥ~~~~」
南無参!!!
「鮫皮先生ーーーーー」
ガタッガタガタ
鮫皮先生は自分の名前が俺に呼ばれるとは思っていなかったらしく、パイプ椅子から慌しくずり落ちていた。
それに合わせるように周りの生徒達も俺を見ている。
そして肝心の鮫皮先生は、俺のほうを見ると一体なんなんだ!?とでも言いたげな目をしていた。
そして俺は白い紙に書かれてあったセリフを忠実に再現した。
「マイ・スウィート・ハニー僕と禁断の愛をしてみないかい?さあ、こっちにおいでよ!」
ちなみに、この時俺は全てを振り切り、全力で白馬の王子様とかがやってそうなスマイルでこれを言った。
「あ、あは、いや、その、そういうのは、やっぱり、お互いをよく知らないといけないわけで、じゃなくて、鈴木、いい、いきなり何を言い出すんだお前は!?」
俺だって、俺だってこんな事したくないやい!
でも、でもこれしか勝てないんだもん、しょうがないじゃん!!!
とりあえず鮫皮先生はこっちに来てくれた。
それでも一応こっち側に来てくれるところはやはり教師というか何と言うか。
そして鮫皮先生はトラックを横切り、俺の目の前まで来た。
その顔は珍しく見る真っ赤な顔だ。
「ななな、なんて事を言うんだお前は!教師を、というか私をからかうのも程々にしろ!」
俺はこれをおふざけで言っていると思われたことに少しだけムッとした。
これは俺が全身全霊をかけた勝負事だ。
だから、からかいだと思われることは心外ですよ!
「いいえ、先生。俺は真剣です。俺は真面目に頑張って言ったんですよ!!!(白い紙の条件を)」
「そ、そこまで頑張ったのか!?(私への告白を!?)」
「ええ、もう身が擦り切れる想いでしたが、何とか言えました(白い紙の条件を)」
「そ、それは、なんというか、ありがとう?(そこまでこんな私の事を)」
「いいえ勝利の為ですから!(俺達のクラスの!)」
「そ、そうか、そうだな!(人生の勝ち組という事か!)」
※放送席では
※空羅会長目線
空羅会長は徹が真ん中の白い紙を取るのを、罠にかかる獲物をみるような目で見つめていた。
「プッククククク!」
いきなり笑い出す空羅会長を不思議そうな目でみる撫
「空羅会長?」
「いやいや、ごめんごめん。何でもないよ?」
「なんでもない人は突然笑ったりしません。何を隠しているんですか?」
空羅会長は、先ほどよりニヤケ顔を濃くして徹の方へ向いた。
そして徹の方へ向いたまま、彼女は撫に話した。
「いや、彼はつくづく人の心を楽しませてくれるな、ってね」
その答えに撫は勘違いをしたらしく、笑顔で
「はい、徹様といると、いつも胸がポカポカしてとても温かいんです。こんな気持ち、他の人ではありえません。だからこそ、私は……………」
そういったっきり撫は何も言わずただじっと徹の事を見つめていた。
「……………」
これから起こる事を予想している空羅会長は少しだけ撫に対し罪悪感を感じていた。
少なくとも、これからおきる事で撫はいい思いはしないだろう。
まあ、それを言ったら徹もそうなのだが、彼は別物だ。
「マイ・スウィート・ハニー!」
トール君があの紙の条件を行使した!!
正直この勝負降りるかとも考えたが杞憂だったみたい。
私はチラッと撫ちゃんの方をみた。
「…………………………………」
一言でいえば、放心状態。
今、肩に触ればそのまま倒れてしまうんじゃないかな?
そんな考えがよぎり押してみたい衝動にかられたがそこまで鬼じゃない。
ってか、元々鬼じゃないしねぇ。
そこから後の会話は聞こえないが、様子からして何か誤解を生んでる事は間違いなさそうだ。
そしてそのまま二人はゴール。
いやーーー、想像以上の人材だねぇ、彼は!
と、その時。
私は生きてきた中で何本かの指に入る殺気を感じた。
バッ!
私はその場から離れた、しかし見た所以上はな、くはないか。
明らかに撫魅ちゃんの背中から黒いものが出てる。
撫魅ちゃんは背中を向けたまま私に話しかけてきた。
「空羅会長?」
「な、なにかな?」
流石のこれには私も動揺する。
私だってか弱き女なのだ、まあ、思ってもいないが。
「私、ちょっと用事が出来たのでここを離れてもよろしいですか?」
「え、あ、え~と、うん、ま、程ほどにね?」
「……………………」
そのまま撫は幽鬼のようにどこかへ向かった。
まあ、大体分かるけど。
御免ね徹君、楽しい筈の体育祭を地獄に変えちゃって。
空羅会長は、始めて、徹に悪いことをしたと思った。
何かもう最後のほう何書いてんのか分からなくなりました。
頭がぼうっとします。
もう早く終わらせることしか頭になかったです。
文字数減らしたらいいんじゃね?みたいな?
でもでも、折角書くなら妥協したくないし!!!




