第四十三話 「悔しかったらやってみろぉ!」「じゃあいいや」「えっ?」
寒いですねぇ~。
あ~寒い。
こんな寒い日は温かい飲み物でも飲んで温まりたい。
クリスマスイブにコーヒー飲みながら一人小説を書いていた私。
「ぐうらがいぢょ~~~~」
ここは人目がつかない体育倉庫の裏側。
熱気を上げている体育祭を横眼に、ここはなぜか不思議と落ち着いた雰囲気を醸し出し、暑い夏もここでは涼しく感じる。
しかしそんな素晴らしい所で、俺は恨めしい目で空羅会長を見つめていた。
「ハッハッハ!そんな眼を向けないで、怖い怖い」
「怖い怖いじゃないですよ!そんな事微塵も思ってない癖に!」
俺はもう軽く半泣き状態で空羅会長にくってかかった。
「いいじゃないか、実際怖い目をしていたぞ?一般の人が見たら怖がりそうな目だった。ま、私はそんな事ないけどねぇ」
すると空羅会長はまたハッハッハと笑いだした。
くそう、この人に何言ってもするりとかわされる気がする!
「そんな事じゃなかった!あれは一体どういう事ですか!?」
「あれって?」
「あれですよ!俺が優勝賞品って奴!!!」
「あ~~、あれね?う~~ん。いや、盛り上がるかなって?」
「そんなあやふやな疑問で、勝手に俺を優勝賞品にしないで下さいよ!」
すると空羅会長はニンマリと嫌らしい笑みを浮かべながら俺の肩をポンポンと叩き
「だが、結果大いに盛り上がっているでしょ?」
「皆が盛り上がるとその先にいる俺が大いに盛り下がるんですよ!!!」
だって見てよ!皆俺の事を穴が空きそうなほどガン見してくるんだよ。
俺嫌だよ!こんな状態で競技になんか参加したら本当に色々な過労で倒れちゃう。
「こら!きみ自身の我儘で周りの人達を巻き込むなんて駄目だぞ!」
てめぇがそれを言うんじゃねえ!!!!
「空羅会長の我儘で今大変お困りになっている人物が目の前にいるのですが」
「なにかな?最近難聴でね、君の声だけ時々聞こえないんだよ」
「ひでぇ!!!」
俺はもうこの人に何を言っても無駄だと分かった。
そしてこういう人だという再確認もした。
「まあいいじゃないか。君の高校生活、これだけでかなりの華がついたじゃないか?」
「ポジティブですね」
「私の座右の銘だからね」
「そうですか」とは言わなかった。
俺が思うこの人の座右の銘は「楽しければそれでいいじゃん!」だからだ。
決して間違ってはいない。
すると空羅会長は何かに気付いたように
「トールちゃん!早く戻らないと競技始まっちゃうよ?」
「おっと、そんあ時間ですか、戻らないと」
ん?なにか誤魔化されたような気がするが、気のせいか?
俺はそんな極楽浄土の体育倉庫から出て、再び熱気が支配する夏の炎天下の下へと体を差し出した。
熱っちい。
俺は日なたに出た事による太陽の眩しさに顔をしかめ、それから発射される眩しさを手で隠すようにした。
あと、なんでも目は真っ先に日焼けするらしい。
気をつけなければ。
「パンッ食い競争に出る選手は入場口の方へお集まりください」
と、そこで撫の声がグラウンドに響きパン食い競争に出る選手達が入場口へとゾロゾロ集まっていく。
「そうか、一つ目の競技ってパン食い競争だっけ」
俺は眩しい日光に対し免疫がついてきたので、光から目を守る行為をやめ自分のテントへと戻る為に足を動かした。
足を動かしながら真ん中のグラウンドを見ていると丁度委員会の人達が高く上げた棒にパンをつけている所だった。
「あ?」
しかし委員会の人達が離れ、その棒にぶら下がっていたのは…………
「パンツ!?」
俺は我が目を疑った。
もしかして自分は夏の暑さに目がおかしくなったんじゃないかと。
しかし幾ら目を擦っても俺の眼はパン、ではなくパンツだ。
もしかしてこれは俺の妄想なのでは?とも思ったがそれはないので、っていうかあったらやばいと思うので違うという結論に達した。
そして大抵こういうおかしい事に対して元凶になっている……………
「会長!!!空羅会長はどこだぁぁぁぁ!!!!!」
そう叫びながら俺は委員会本部の方へ全速力で走っていった。
ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ。
俺は今実行委員会本部と書かれたテントの中で息を整えている。
そしてそんな息を整えている俺の前には元凶であろう空羅会長。
ついさっきのあの目にした事について
「成程、だからそんなに息が切れてる訳だね」
「当たり前でしょう!!!何考えてんですか!?」
パン食い競争じゃなくてパンツ食い競争じゃねえか。
おかしいよ、会議で聞いてる分ではきちんとパンの話になってたのに!
「何考えてるって、ちゃんと皆に配ったパンフレットに書いてあるでしょ?」
「パンフレットに?」
また紙か!ちゃんと見てなかったけど、まさかここにパンツ食い競争だとでも書いてあるのか!?
俺は急いでポケットからパンフレットを抜き取り一つ目の競技を確認した!
「パンッ食い競争、分かるかぁ!!!」
俺は土の地面におもいっきり強くパンフレットを叩きつけた。
当たり前だ、こんなひっかけにも近いもの分かるか!
誰がこのパンフレット見て食うのをパンツだと思うかよ。
「書いてあったでしょ?」
「これは引っかけでしょう!?」
「引っかけでも何でも書いてあるものは書いてある」
くっ!間違っているのは空羅会長なのに何故だ、この敗北感。
「会長、早く中止に!」
「なんで?いいじゃん楽しそうだし」
「そう言う事じゃねえんだよ!こんなのに騙された生徒達は」
俺はバッとパン、いやパンッ食い競争に出る為に並んでいた選手達の方を見た。
「パンツぅ!パンツぅ!パンツぅ!パンツぅ!」
そこには何か残念な掛け声で盛り上がっている残念な人達で溢れかえっていた。
空羅会長はそんな俺を見て肩をポンっと叩きながら
「生徒達………………は?」
俺はゆっくりと目を覆いながら
クッ!
「なんでも…………ないです………」
「そうか!」
空羅会長、いい笑顔を持ってますね。
そんな笑顔に見送られながら、俺は肩を落として元のテントに戻る事にする。
「どうした鈴木?」
そしてそのテントにいた鮫皮先生。
落ち込んだ俺を見て気になったのか、少し不安そうな顔をしながら聞いてきた。
こんな顔をする鮫皮先生レアだな。
「まあ、分かります?」
「ああ、まあ多分あれだろ?」
「ええ、何故ああなったんですか?」
俺は素直に思った事を口にした。
だっておかしいもん。
すると鮫皮先生は幾らかバツが悪そうに
「いや、それがな。最初は確かに食べられる食材のパンだったのだが、なんでも実行委員、しかも最高権利生徒会の場でパンをパンツにする事にしたらしい。不思議な話だろ?」
不思議で終わらねえよ。
もうミステリーの域になっちまってるよ。
今更だけどこの学校本当に日本にあるのか?
あまりにも逸脱した日常を送っているような気がしてならないんだが。
ま、気にしたら負けかな?
だってここの学校の長からして、まず普通じゃないもんな。
俺は若干乾いたものを瞳に映し、笑顔の顔をそのままくっつけ虚空を見つめた。
「鈴木、鈴木!私が悪かった!だからそんな虚ろな目で笑うのはやめてくれ。なんか分からんが心が痛くなる!」
鮫皮先生は、椅子から勢いよく立ち上がり。
危ない、今少々トリップしていた。
これが夏の恐ろしさか。
「あ、もう大丈夫です」
「ったく心配させるな!……………あっ」
そこでやっと気付いたのか、俺の顔前にある鮫皮先生の顔はどんどん顔が赤くなっていった。
そしてゆっくりと俺から顔を離すと、ポスンという音と共に席に座った。
鮫皮先生暑かったのかな?
俺も気をつけなきゃ。
そんな事をしていると既に選手達の準備は出来ていた。
「では第一レース、スタートです」
始まる、でもこのレース一体どこに向かうんだろう。
俺は若干引きながらも、このレースの結末を見守る事にする。
「よーい」
この声でこの第一レースの選手達は、自らの体を構える。
そして次の発砲音へと耳を澄ませ、まだかまだかと集中している。
ここまではかっこいいんだけどなぁ。
「バンッ!」
この音と同時に選手は皆一斉に走り出す。
何に向かって?
パンツに向かって…………………。
するとここで撫の放送
「皆さん頑張って下さい。あ!あとそのパンツは一つ着用済みが混じっているので」
おっ!凄い、今までビリだった男子生徒が一番に名乗り出たぞ。
なんかパンツに対してここまで本気出せる彼らは、ある意味勇者だな。
俺は馬鹿馬鹿しいとは思いながらも、ちょっとだけ彼らを尊敬した。
すると今度は放送部で学園内の有名人毎日放送してる轟先輩の声が、この摩訶不思議の競技の最中に轟く。
「おおーっと!ここで最初ビリだった中山君が一位に乗り出しパンツに辿り着いたぁ!棒からぶら下がるパンツを一つ一つ匂いで確認していくぅ!おっ一つ彼のお眼鏡にかなうものがあったようだぁぁぁ!!!それめがけてジャンプぅ!そして一発キャァァァァァァァァァッチィィィィ!!!」
あの人はいつもこんな感じだ。
そう言えばあの人も生徒会のメンバーだっけ?
轟先輩も空羅会長に毒されてああなったのかな………………。
「そしてそのまま中山君は堂々の一位ィ!それに続いて後の生徒達もゴールしていきます。そして着用済みのパンツを取ったのは一位の中山君でーーーす。どうですか撫さん?」
「いやぁ、パンツ一つの力ってすごいですね。ちょっと引きましたけど」
いや、それが普通だって。
周りの生徒がおかしいだけだもん。
その後もレースは続いた。
中にはビリだけども着用済みのパンツを手に入れ喜ぶ者。
一位になったのに着用済みを手に入れられなく悔しがる者。
様々なんだ。
たしかに咥えるのはパンツなのだが、お互いを牽制しあい、汗を流しながらそれを取る為に必死に走る、素晴らしい光景だった。
しかし、中盤あたりから俺は涙をこらえる事が出来なくなっていた。
何故か?
知ってしまったからだ。
今の光景が地獄に見える真実を。
~数分前~
「鮫皮先生、ちょっとトイレ行ってきます」
すると鮫皮先生はこちらを見て
「ああ、分かった。行って来い」
と。
トイレは本部の先を行った所の陰に隠れてる場所にあるのだが…………
本部の横を通ると空羅会長の声が聞こえた。
別にそんなに急ぎでもなかったので俺は空羅会長の声に耳を傾ける事にした。
「いやーー本当に助かりましたよ。ありがとうございます」
「いえいえ、気にしないで下さい。あんなものでよければ幾らでぇもぉ」
空羅会長と話しているのは学校内で男子からブラックリストに登録されている男教師だ。
まず、何故この教師がブラックリストに登録されているか、それは。
「うふふ、パンツめがけて本気で走る男子。この暑さの中滴り落ちる汗。ふふ、うふふ。食べ応えあぁりぃそぉうぅ」
………………これだ。
つまりこの教師は男色なのだ、しかもオカマ。
この教師には何人もの男子生徒が犠牲になった。
それにより男子の間では「この教師と二人きりになったら危険」ランキングで堂々の一位を勝ち取った。
俺はそんな人と空羅会長が何を話しているのか尚更興味がわいた。
トイレに行くのも忘れ、俺は二人から見えない位置に陣取り耳をすませた。
「でも本当によかったのぉ?なんなら全部でもよかったのよぉ?」
「いやあ、これは一つという所に意味があるんですよ!その一つを見極めあなたのパンツを男子が求める。どうです?」
「いいいいいわぁぁぁぁ!これ程にそそる光景はないわよ。でも、一体何を考えているのかしらぁ?あなたがそんな私だけが得する事をする人物には見えないわよぉ?」
俺は二人が一体なんの話をしているのか分からなかったが、とりあえずもうちょっと耳を澄ます事にした。
ん?あれ?ちょっと待て、今空羅会長なんて言った?あなたのパンツ?…………………まさか!!!!!
「別にいいじゃないですか。これもまた一つの余興ですよ」
「まぁ、いいけどねぇ。私はこんな素晴らしい景色が見られるんだからぁ。男子生徒が私のパンツを求めて走り汗を流し取った者は口に咥え喜ぶ!最高ねぇぇぇ!!!快感だわぁ!」
ぎゃあああああああああああああああああああああ!!!!!
いやあああああああああああああああああああああ!!!!!
ほぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!
俺はその場でガクガクと、痙攣に似たなにかに見舞われた。
もうこれは悪寒とかいうそういうレベルをはるかに超越した何かだ。
そして俺は、落ち着いてその場を後にした。
そして絶対にこれは口外しないと心に誓った。
そうしてテントに戻ってきた俺。
そこで俺の顔を見てビックリする鮫皮先生。
「ど、どうした鈴木?なんでトイレ行って戻ってきて涙流してるんだ!?」
「鮫皮先生。俺、あいつらが不憫でなりません」
「どうした!?一体何があった?何を見た!?」
「俺、俺。クッ!」
俺はただただ口を強く噛み、この現実に向き合い我慢する。
「な、何があったかは分からないが。まあ、強く気持ちを持て」
そういった鮫皮先生は素晴らしい笑顔で肩に手をポンっとのせる。
きっとこの学校でも最もいい先生は、きっとあなただよ鮫皮先生!!!
俺は今日、鮫皮先生のありがたみを改めて感じた。
今回轟先輩ってのが出てきましたが。
ま、気にしないで下さい。
なとなくです、多分ヒロインにはいれません。
そして一体空羅会長の考えている事とは一体!!!
なんなんでしょうね?(作者も知りません)




