第四十二話 ドーン!ドーン!・・・・・・・開・・・幕(グッタリ)
最近寒くなってきましたね。
服を着こんでも寒い時があります。
しかも家ではそんなにストーブも出してないし。
凍えちゃう、凍えちゃうよ。
手がかじかんで上手くキーボードが叩けな~い。
俺は鉢巻を巻いた状態で、理事室にいた。
鉢巻の色は、まるで底が見えない様な深淵の黒。
俺の前にはちょこっと威厳ある椅子に座り、大勢の人達が移動しているグラウンドを見つめ、その場を見ているのだけれどそれ自体を見ているように見えない葵理事長。
その部屋はいつもと同じ配置に人形、同じ人物、なのに雰囲気だけはいつもと違った。
「とっ君」
「はい」
「この戦い、絶対に勝ちなさい」
「無論です」
「この勝負、あなたが負けたらこの学校はお終いよ」
「……………」
「箕尋ちゃん」
「ちゃんづけするな」
「あなたも黒組の担任として責任を持ちなさい」
「あいよ、任せな」
そして葵理事長は椅子から立ち上がると、一人理事室から抜け出した。
「「……………」」
そして理事室から出ていった事を確認した俺と鮫皮先生は
「「ハァ~~~」」
重いため息を吐いた。
そしてため息を吐いた俺と鮫皮先生は顔を上げ、眼が合い少し苦笑し合った。
「あれって毎年恒例なんですか?」
「まあ、付き合わせて悪かったな。しかしやらないと葵理事長、不貞腐れるんだよ」
「いいですよ、ちょっとだけ楽しかったですから」
俺はアハハと鮫皮先生に対して笑った。
「そう言ってもらえると、助かる」
それに対して鮫皮先生は苦笑で返してきた。
「じゃあ、行くか。もうそろそろ開会式が始まる時間だ」
「うす」
俺と鮫皮先生は校内を抜け黒組のテントに戻った。
そこには今まさに並ぼうとしていた黒組がいた。
「あ、徹!遅ぇよ!何してたんだよ。来ないと思ってビックリしたんだからな!!!」
俺は啓介に対し、手刀を作り腰を曲げた。
「すまんすまん!ちょっと委員会の方でな?」
「そうなのか?まあ、それなら仕方ないか」
ちなみに、いつものメンバーには、派遣部に入り今委員会の手伝いをしている事は伝え済みだ。
と言っても、派遣部の本当の存在理由は教えてないが。
「徹、やっと来たんだ」
そこに乙女さん登場
「ああ、やっと委員会の仕事が終わったから」
俺は頭をかきながら言った。
勿論嘘だけど。
「そっ、まあ何でもいいけど今日は勝つ!!!」
「勿論!」
「私も、出来るだけ、頑張ります」
「頑張って!静寝ちゃん」
「なんだ、女子って体育祭ってブルマじゃないのか」
「お前は馬鹿か」
三者三様の反応を見せた俺は、とにかく列に並ぶ事にした。
ちなみに撫は放送委員に抜擢されたらしい、なんでも空羅会長曰く
「その透き通る様な声で放送したら体育祭の男子勢は皆撫魅ちゃんにメロメロだよ?」
と言ったらしい。
しかし、当然撫がそんな事で空羅会長の申し出を受け入れる筈もなく。
だが、空羅会長は魔術師だ。
そこは空羅会長の言魂で
「ピィーーーーーーーーーーーーーー」
「やります!やらせて下さいお願いします!!!!!」
と、なったらしい。
本当になんて言ったんだろう。
「皆さま、選手の入場です」
「あ、撫の声だ」
その声と同時に、吹奏楽部の音楽が鳴り、最前列が足を高く上げて行進し始める。
そして俺も、前にいる人物について行き、練習通りに整列をした。
そしてその場で足踏みしていると他の色の組も全員整列し終えた。
「では、最初に選手宣誓」
そう言われ前に出る男子と女子。
この二人前に会議の時にアンパンとメロンパンで討論していた二人だ。
二人同時に手を斜め45°を意識し宣誓。
「選手宣誓!」
「僕達~」
「私達は~」
「正々堂々、相手の事を」
「メッタメタにする事を」
「「誓います」」
誓いますとの声と同時に周りの生徒達
「「「「「「「うぉーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」」」」」」
この騒ぎよう。
そして選手宣誓をした二人は自分の色の組へと戻っていった。
周りの生徒達はまだ騒いでいる。
「静かにして下さい」
「「「「「……………」」」」」
シーン。
周りの生徒達は、さっきまで腕や体を思いっきり使ってブンブンフリ回してたのに、ピタッと気をつけの状態に気付けばなっていた。
まるで今の騒ぎようが嘘かの様に静まり返る。
今なら木の軋むちょっとした音でも聞こえそうだ。
「次は来賓の方々からの祝辞です。後藤さん、お願いします」
その人、髪がフサフサなのだがちょっと違和感がする髪型だ。
まあ、深くはツッコまないが。
でも、今あれがおきたらこの人大変だなぁ。
そんな事を考えていた時、一瞬の大きな風。
まさか、天に俺の考えてる事が受理されてしまったのか!?
そして俺が考えていたその先
「スポン」
その音と同時に、来賓の方々の頭からふわりと一つの飛んでいく物。
そして、露わになる一つのキラリン☆レボリューション。
まあ、普通に言います。
風が出て頭に乗っていたカツラが飛んで行きました。
「え~本日はお日柄もよく」
なんと!!!気付いていらっしゃらない!?
このカツラさん(今命名)気付いていらっしゃいませんよ!?
来賓の方達は凄く気まずい顔をしていらっしゃる。
しかし周りの生徒達は今にも笑いだしそうなのを我慢しておられる。
「今日は皆さんの本気の戦いを期待しています」
しかも真顔で真面目な事を言ってる分、笑いがより増幅しちゃうんだよ。
周りの生徒はまだ頑張っている。
俺もちょっと、やばいかも知れん。
「では皆さん、頑張って下さい」
そう言い、カツラさんは一礼した。
やめて!こっちに頭頂部を見せつけないで!!!
しかし、周りの生徒はまだ頑張っている。
しかし、ここである事件が起きる。
「はい」
この声は空羅会長だ。
俺はとてつもなく嫌な予感がした。
俺は自然に顔が強張るのが分かった。
「後藤さん、ありがとうございます。しかし戻るさいには、その地面に落ちたカツラを取ってから戻って下さいね?」
その言葉を聞いた瞬間、カツラさん(あくまでこれ)は眼をこれでもかというほど見開いた。
そして多分だが、頭の上にあるカツラの有無を探る為頭の上を触る。
当然さっき風に飛ばされたのがカツラなので、頭の上にあるはずがないわけで、それでもってそれに気付いた当人は恥ずかしい訳で。
カツラさんは急いでカツラを取り自分の席へとそそくさと戻っていく。
その様子が駄目だったらしく周りの生徒大爆笑。
なんていうか、もう可哀想になってきた。
「では、次の来賓の……………………」
こうして最初のアクシデントの余韻を残しながら開会式は順調に進んでいった。
しかし最後に
「では最後に会長による意気込みです」
「やっと終わる」
会長の話の前が、この炎天下の中での長い校長の話だったので、俺の精神はもうクタクタだった。
周りの人間も全員猫背状態だ。
しかし、カンカンカンという音と共に空羅会長が階段を上がるとさっきまで腰がグニャァっと曲がっていた生徒達がピンっと背筋を伸ばした。
なんだ?何が君達をそうまでさせる?
「本日は戦だ!他の組を蹴落とし、自らが頂点へと君臨する為の戦だ!私はこの体育祭を今まで例をみないほどの素晴らしいものにしたいと思っている。否!する!!!この体育祭を素晴らしいものにする。しかしそれをするのは私一人ではない。君達、一人ひとりだ。ぜひとも素晴らしい一日にする為皆の力を貸してほしい!!!!!」
その言葉と同時に空羅会長は腕を大きく真上につきだした。
俺には、それが革命を起こす前の統率者に見える。
そしてそれと同時に、その熱にやられる生徒達が
「「「「「やっはぁーーーーーーーーーーー!!!」」」」」
俺はこの体育祭が無事に終わる事をなにより心配した。
俺は勝つ事より、あの人の事を抑える事を優先すべきだと感じた。
「ここで皆にお知らせしておく事がある!!!今回の体育祭、実は優勝した組には一つのプレゼントがある!」
そして今更だけど、この人生徒の前では威厳があるんだよな。
いつも俺とか撫を前にすると「そうなのかな~?」とか言ってふざけるし。
でも、そこら辺は流石会長と言えるのかな?
「そのプレゼントとは!この学校の一年生、鈴木 徹君だぁーーー!!!」
「はい?」
あれ、う~ん?俺の耳がおかしくなったのかな?
やだなぁ、もう、自意識過剰なんだから俺ってば。
だけどなんでだろ?周りの生徒達が俺の事を見てくるんだよなぁ。
俺の耳がおかしかったんなら、周りの生徒は別に俺を見る必要はないよね?
「さあ、鈴木 徹を賭けて皆で戦え!」
うん、今気付いた。
この人は…………………本物の大馬鹿者だ!!!
空羅会長の眼は俺を捉えている、しかし明らかにその目は笑っている。
空羅会長は何を考えてんだ。
ていうかそんな賞品、まず誰も欲しがらないだろ。
そこでまるで俺の考えを読んだかのように
「ちなみに、彼を賞品の一部に入れる事にする。他の競技にもきちんと賞品を入れるから頑張ってくれたまえ」
「じゃっ」と手を手刀にして台から降りようとし……………たが戻り
「ちなみに、賞品の彼に何かを拒む権利はないから」
そう言い残すと「じゃっ」と今度こそ台を降りた。
それと同時に俺自身にも死神が舞い降りてきたようだ。
あの人年上だけど、
「あんの野郎、やりやがったな」
俺は誰にも聞こえない声でボソッと呟いた。
「それでは選手退場です。拍手でお送り下さい」
そしてまた吹奏楽部の音楽がなり生徒達は一部困惑、一部ニヤニヤ、大半殺気で幕を下ろした。
これ、もう既に手遅れじゃね?
俺は、暗雲立ち込める体育祭に対し、早速帰りたくなってきた。
今回は体育祭開会式という事で、これからやっと体育祭が始まります。
まあ、できるだけ早く体育祭を終わらせてストックしている話を進めたいと思います。
まあ、まだまだ続くけどね(笑)




