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精霊王転変  作者: 笹野
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第六章 アルシュ王国1

ソフィアはバスコーとハリーに、自分の生まれ故郷であるアルシュ王国につれて行ってくれるように懇願した。

アルシュ王に会うために。


*****


渓谷を1日かけて下り続けると細い山道に出た。

そこからは電動自動車に乗り込み、ハリーの別荘で準備を整えソフィアとナーノも身支度を整えると一路アルシュ王国へ4人は向かった。


キリークとアルシュの王室がつながった事により高速道路が建設され、7年前からその国境の警備は人から自動登録機になっていた。

ゲート内を通ると車体番号と運転手の映像が公安国境局に自動登録される仕組みである。

高速道路は一本のみ。

キリークの首都ルーパスからアルシュの首都メイシャルンまで続いている。

高速の途中にある休憩所にはみやげ店はもちろん、アルシュ国内の観光案内や注意事項、換金所まで設けられている。

換金もバッテリーの充電もここで全て用意する事が出来た。


パシャッ

後部座席にはソフィア王妃とナーノが寄り添いながら眠っている。

ハリーはその微笑ましいながめを写真に収めた。

こうして見ると2人は確かに血が繋がっているのが判る。

とはいえどう見ても姉弟にしか見えないんだが・・・母息子?

「あと1時間でメイシャルンの出口に着くと思う。」

「アルシュに来る予定は無かったからなぁ。バスコー、アルシュに来たことあるかい?」

「ないね。」

「そっけないな。」

「俺、運転中だから話しかけないで。」

「何を今更。じゃじゃじゃ俺歌でも歌おうかな。」

「やめろ。2人が起きる。」

ハリーは後ろの座席を覗き込み・・・そのまま10分は固まったままだった。

「・・・・・・・・・美人だなぁソフィア様。ああ信じられないよ~俺、ソフィア様の御手を取って道を歩いて来たんだぜ?なんだか俺の手がグレードアップした気がする!」

「というか、ソフィア様の御手が穢れたんじゃねーの?」

「テメー・・・このやろ!」

「いででっっっやめろよ!あぶないだろ!!」



高速を降りて街中をしばらく走るとやがて石垣が見えてきた。

石垣の向こうは貴族階級者の住居である。

それは高さにして2mほどしかなく、大人ならば簡単に乗り越えられそうである。

だが、誰もそんな冒険はしない。

石垣の向こうは、実は4mの空堀があり軽々に石垣を越えるとまっさかさまに6mも落ちる仕掛けになっている。

首も折らずに生きているとして(重傷含む)、留置所に連れて行かれた者は10日間の拘留と相場が決まっているがこれがなかなか過酷。

腕白盛りの少年がいたずらに石垣を越え留置所から戻って来た時には声を失っていたという話もあるぐらいだ。



ところどころに巨大岩をそのまま持ってきたようなごつく大きな通行所があり警備兵が常駐しているのが見て取れた。ここで通行証を持った者だけがこの先に入れるようになっている。


物騒な石垣の近くから一本離れた道をゆるゆる走る電動自動車。

「ここから10分ほど西に行った所に私の侍女だった者がおります。そちらへとお願いしますわ。」

「案内してもらえますか?」

「もちろんです。」

ソフィアが座りなおして後部座席から身をのりだす。

「車を出してください。この道をまっすぐ行って・・・あの赤い看板を出している店を左に」

後ろから白く細い腕が伸びて声と同時に道を指し示す。


運転しない助手席のハリーはそのたおやかな手の指先をじーーーっと見つめている。

女性らしい小さな手は白く透き通っている。

その指先は健康的なピンクに染まり、その爪は綺麗に切りそろえられて絹で磨いたかのように輝いている。

時折、指示とともに右へ左にゆれる手首の動作は滑らかかつ優雅。

ああ、山道でこの手に触れたのか。

じーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・・・

ん?

車がいつの間にか止まっていた。

いつの間にやら到着したらしい。

そして・・・バスコーがハリーの顔を睨んでいた。

『こいつ助手席で何考えてんだ!』


空は夕暮れ。

街はたそがれの茜に染まり、道行く人の影に藍が深まっていった。


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