番外 第16章-精霊王解放後 5
文章堅いし、流血シーンや残酷表現満載。
第22章の会話
「この肉体から解放されるべく考えうる事をやってみたが、結局無駄に終わった・・・」という話です。
「いやだぁぁ・・・あああああああああ!!」
ビオルブはコザ・ガーランの前に立ち、話をしながらその絶叫を聞いた。
エル解放と共に全世界的に怨嗟と後悔となぐさめの声が沸きあがり、人の守護天使であるビオルブはその中にあってまだ輝くような意思の持ち主を助けていた。
そして今、霊山ガワナウから子供の断末魔が・・・!
精霊王エルの呪われし鎖、キリークの王子アルフィード。
いや、断末魔ではない。
彼の人は溶岩に落ちても尚、生きている・・・
余りに救いようがない状態にビオルブは思わず天を仰ぐ。
そんな様子をコザ・ガーランはただ眺めていたが
「また救いに行くつもりか?」と、咎める口調で訊いてきた。
「ええ・・・アルフィードは死にません。きっとあのような事ではダメなんだと思います。」
「おまえが、肉体を滅する事をエル様に提言しただろうに。」
「ですが、あれでは肉体は滅びないでしょう。どうすれば滅する事が出来るのか・・・判りません。」
「あの身体は本当に人なのか?」
その率直な質問にビオルブは苦笑いしてしまった。
「ああ、いや、失礼しました。しかし、あれが人の範疇で無いならばわたくしもこれほど思い悩まないのですが。」
「何が他と違うのだ。」
「代を遡って行きますと途中で2億年前の古代都市に行きつきます。想像するしかありませんが、あの地は生物工学で自滅した経緯がありますのでそちらで人工的な操作を受けていたのかもしれません。」
「あれか・・・何故生き残らせた・・・」コザ・ガーランは汚いものを見る目でビオルブを睨む。
「全て殲滅させたと思いましたが、どうやら人にあらざる形で生き残ったようです。」
「人にあらざる形?」
「精子、もしくは卵子でしょう。」
「ッ!・・・・・・おまえのところの人間はどうしてそのような変な事を何度も何度も思いつくのだ!」
コザ・ガーランの怒りにビオルブもまた苦い顔をして人の負の探究心を呪った。
「ナーノの事ですね。別に2億年前の技術が残っていた訳ではないのですが、再び同じような生命操作に着手してしまいまして・・・エル様解放の為にお役に立ったのがせめてもの救いです。」
*****
ソフィアがユリカゴの中に入りその子共々、もはや地上に降りることかなわぬと結論が出た時、ヴァレリオ王には極秘で、あるプロジェクトが再開していた。
それはヴァレリオが25歳になった頃、あまりの淡白さに子孫の断絶を危惧した長老達が人工授精、またはクローンによる子孫創造を模索した小さなプロジェクトだった。
ソフィアの死後それが再び本格始動、いっさい女性を寄せ付けぬヴァレリオをだまし討ちしてその“源”を盗み厳重保管するもそれは数奇な運命をたどり、精霊王の加護を受けしソフィアが選んだ女性の中に収まる事となった。
そして・・・彼女はノサッポという寒村で子供を一人産み落とし命尽きる。
自然界では生まれぬ子。
倫理をねじまげ生まれた命。
だがその子はナーノと名付けられて成長し、ついにはエルが囚われていた聖源室までたどり着いた。
狂気と希望と思惑と愛情が好機を得てこそ成された結果だ。
全ては奇跡だった。
*****
「何にせよ今後を考え全システムを破壊しました。もちろん情報も全てこの世から無くしました。」
「関わった人間は全て殺しているんだろうな。」
「はい。」
コザ・ガーランは少しだけ安堵の様子を浮かべたが、それでも嘆かずにはいられなかった。
「もう二度と命を自分の都合の良い様に変えてしまおうなどと思わないようにしてくれ・・・」
「申し訳ありませんコザ・ガーラン様。より良い環境を欲する性です。全ての生命体が夢見た能力です。」
「っぅ・・・・・・!」
「この話はまた後程。これからエル様を火口より救出してまいります。」
「アルフィードを、だろう。まあいい。行きなさい。」
ビオルブはコザ・ガーランに一礼すると小型飛行船を取り出し颯爽と乗り込んだ。