第三十三章
エル解脱。
地下の球体の内と外のせめぎ合いは、外の精霊達が潮が引くかのごとく消えた事で均衡が崩れた。
その瞬間、内に潜んだ者達は歓喜の声をもって飛び出し、アルフィードを捉えエルを束縛したその肉体を引き裂き焼きつくし粉々に砕いた。
球体が割れてなお自分達を抑えたエルの力の復活に、異端なる精霊達は自らの平静なる場所への約束を確信した。
果たして精霊王は解脱と共にその場に立った。
全精霊を結集させ、地上に拡散していた異端なる者達の残滓を召集する。
そのエネルギーの集中に宮殿は跡形も無く飛び散り黒煙が天に舞い上がった。
上昇する黒煙の先に立ち精霊王は中天に上った。
全ては精霊王の元にひれ伏しその裁断を待つ。
そして。
エルは天を差し空を制した。
どこまでも澄んだ青い空に快哉の音が響き渡る。
雲ひとつ無い青一色に白がぽつり。
それがやがて大きくなり、黒い点と見えた一瞬後には巨大な岩の塊が目の前に迫った。
宮殿があった場所―――かつて人が集いエルから搾取した巨大なエネルギーで脅威の繁栄を謳歌したキリークの首都ルーパスは隕石の落下により跡形も無く吹き飛んだ。
隕石が落下する直前に地の精霊は大地を割り隕石はその力の全てを地下奥深くへと注ぎ突き進んだ。
その後に続くのは異端の精霊達。地中へ穿たれた穴の尚奥へとそれぞれが入り込みマグマへと圧を加えた。
そこには狂乱はなく粛々と確実にかつ迅速にすべてが反応し連鎖した。
エルは砕けた空を触り均しながら一帯の空気を薄めると、地の底の灼熱の中心を打ち上げた。
この世に寄る辺の無い精霊達、異端にして異常な力、不覚にも人に囚われし我罪の末に生まれし我子達よ!天母の膝元、根源なる宇宙にて生きよ!
すでに熱く滾った地の奥から空に向かってマグマが吹きだし、それは大気を突き抜け宇宙の向こうを目指した。
こうして異端の精霊達は自分の居る場所をみつけていった。
地上に穿たれた隕石跡は中央に火山を持ち、それは125年間静まることは無かった。