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精霊王転変  作者: 笹野
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第十七章 再びシャール渓谷

え~・・・

エネルギー問題をいろいろ聞かされて嫌になってる人は後半からスルーしたほうが良いかと思います。

後書きにこの章のあらすじを書いておきます。


※一八章は普通にファンタジーします!




「バスコー!めしだぞーーーー!」

「やっとか・・・腹がねじ切れそうだ。どれ。」

「・・・どう?」

「どうって?うまいよ」

じーーーーーぃーー  ふむ?

「・・・・・・・・・・・・そうか。良かった。」

「あ、もしや、テメー!俺を毒見に使ったな!?」

「考えすぎだよ。バスコー。」

「いや、おまえはそーゆー奴だ!」

「人聞きの悪い」

川原で名もない雑草といやに色が鮮やかな虫の煮込みを食べる男2人。


ここはシャール渓谷。

かつて滔々と流れていた清流は今は枯れ果てて、雨が降った時のみかつての名残を見せる。

「コザガラいると思うか?」

「いる」

「根拠は?」

「山の精霊はそこから離れない」

「ではちょっと質問変えようか。コザガラは生きていると思うか?」

「・・・生きるの定義は?」

「うっ・・・意思がある、かな?」

「死んでるかもなぁ…そうなると精霊の死の定義は意思がなくなる?」

「いや、死んでいるとしたら、草も木もないだろう。と、すると。

生きるの定義は・・・生きているものがいるという事かな・・・」

「バスコー。お前何言ってるんだか。」


そのまま川沿いに中流まで歩き、やがて陽が落ちた。

川原の石は土に半分埋もれ凹凸が激しい場所ばかり。

巨大でなめらかな岩の上にテントを張った2人は仰向けになって空を見上げた。

彼らは相変わらずコザガラ探求の旅をしていたのだ。


「ナーノは精霊王だったのかな?いや、ちょっと違うか。宰相ぐらい?」

「どっちにしろ精霊とは違うだろ。もしそうならエネルギー源として狙われるはずだ」

「それは論理のすり替え。狙われるのとナーノが精霊だというはイコールじゃないし」

「いや、案外そういう事で闇組織にでもさらわれたのかもしれない。」

「そうなると・・・探し出せないな。」


ナーノはノサッポに一度戻ったものの1年も経たずに村を出たという。

バスコーは川原から拾った小石を目の前で透かすように見つめてため息をついた。

「この小さな石の精霊に行方を訊いても駄目かな」

「相手が強い精霊じゃ、市井のちっちゃい精霊なんて知らないんじゃないの?というか、そもそも人間の俺たちと会話できないんじゃねぇの?」

「コザガラだったら知っているだろうに・・・」


その夜、2人は夢を見た。

2人が眠る巨石が川原から離れ宙を飛ぶ夢を。

上から夜の地上を見るとあちこちに小さな光が見えた。

騒乱の炎ではない。それはささやかな暮らしの明かり。

それはかつての夜を欺く狂乱のネオンと光の渦を知る者としては余りにもささやかなものだった。が、今はそれが地上にあると知り心の底からうれしさがこみ上げ、2人の頬に涙が流れ落ちた。


朝、目が覚めても2人は無言のままテントをかたづけ予定の山道を登っていった。

小一時間も歩いただろうか、ハリーがぽつりとつぶやいた。

「バスコー・・・夢見た?」

「ああ」

「俺達、希望持っていいんだろうか」

「ああ」

「そっか」

ただそれだけの会話だった。


3時間後

もっと登ろうと予定していた山道は深い笹薮の中に埋もれていた。

もはや誰も手入れしない山道。

誰も登らない霊山。


精霊王エルの解放と共に地上を蹂躙した天災のあまりの激しさに、人は自然をむやみに恐れるようになった。自然を愛でる事すら自分の原罪とばかりに、山奥や秘境はもちろん近くにある森林にさえ踏み入る事をやめた。

その為の道を、今後登るであろう人の為に維持してあげようという気力はもはや無くなってしまったのだ。


そればかりではない。

自然を生活に取り入れ自然と共に生きる事すら後々報復を受けるのではないかと・・・そう。



精霊王エルを一つの所に閉じ込めその力をエネルギーにしたキリークの傲慢。



その轍を自分が踏むのではないかと恐れ、巨大エネルギー創出への探求をやめた。

たとえそれが出来てもやらないでいこうという風潮が蔓延したのだ。

全世界的なその流れに工業は軒並みその技術を錆付かせた。

ささやかな電力事業が雨後の筍のように地にあふれ、それを使用できる者と出来ない者の差が現れた。

特に顕著に差が出たのは情報端末で、一部の特権階級だけが使えるようになり真の情報はベールの奥に隠された。

出処のあやふやなニュースを街角のテレビが騒ぎ立てればそれを検証できない市民は言われるままに右に左に踊った。

それをまたニュースが取り上げ虚実に事実がコーティングされていった。






あらすじ:

久々にコザガラ探しでシャール渓谷まできたバスコーとハリー。

そこで巨大岩の上にテントを張り一泊することにした。

その夜、荒廃したと思われた地上にささやかな暮らしが始まりつつある夢を2人同時に見た。

次の日コザガラがいる霊山に登ろうとしたが結局かなわず旅は終わった。




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