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精霊王転変  作者: 笹野
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第十五章 謁見の間2

一応おことわりしておきますが、非常に生臭い話になってます。

バリスは反射的に服に仕込んでいた武器を取り、襲い掛かる近衛兵に備えた。

想定内の展開。

だが。

「!!」

爆風と轟音がバリスの鼻先をかすめていった。


今しも襲いかかろうとしていた近衛兵が一瞬のうちに天井まで巻き上げられ空中でその四肢を引きちぎられていく。

壁際から5人に向かい剣を振り上げた姿勢のまま近衛兵達は次々と空中に舞い、悲鳴を上げる間もなく部屋中に散っていった。

謁見の間はたちまち疾風による粉砕場と化し金属が舞い上がりこすれあい拉げる耳障りな高音と肉が引き裂かれる粘液の音がこだまし、天井から近衛兵の洗練された軍服とローブの切れ端が舞い落ちた。

後ろの壁から始まり両脇の近衛兵を撒き散らした嵐はたちまち王へと辿り着き、凍りついたように立っている王のローブがふわりと浮いた。

と、突然ソフィアが王のもとへと走り腕をひろげ、その首に抱きついた。

ソフィアが王に何かをつぶやいたその瞬間、王の首から下が捻じ切れ弾け部屋中に四散した。


『血狂風・・・』

バリスの脳裏に一つの言葉が浮かんで消えた。


*****


王死す。

謁見の間、無残に砕けた玉座の上に王の首がぽつんと乗っている。

その周りには無数の引き裂かれた肉片がまるで赤い花のように床に散っている。

多分、いや間違いなくその誰もが自分が死んだ事さえ気が付いていないだろう。

全ては一瞬にして起こり一瞬にして終わったのだから。


*****


5人はソフィアとナーノを先頭に塔への廊下へと向かった。

途中で警護しているはずの衛兵もやはり、拉げ潰されて見る影も無い。

塔への廊下の突き当たりにあるエレベーター前の守護天使はまるでソフィア達を待っているかのようにドアを開けたまま佇んでいた。

ゆっくりと昇っていくエレベーターの窓から眼下を望めば首都ルーパスの景色は、10年前と変わらず平和な活気に満ちていた。



エネルギー源隔離施設”ユリカゴ”

廊下をぐるりと周ると、鋼鉄の扉が立ちはだかった。

だが、その扉にはほんのわずかな隙間がある。

バリスがナイフを差し込みゆっくりとスライドさせる。

と、内部には黒い作業服姿の男達が、白衣を着て椅子に座っている研究員の後ろに立ち、鋼鉄の扉から入ってくる5人を凝視していた。


やがて作業服の一人が進み出て5人に向かい無言で敬礼を送った。

5人の中からバリスが進み出てやはり無言で返礼する。

残った4人はその様子を呆然と見ているだけ。

バリスは振り返りやはり無表情のままソフィアに向かって優雅なお辞儀をした。


「ソフィア様。キリーク王国制圧及びユリカゴ奪取は最小限の被害のうちに終わりました。(ひとえ)に貴方の功績でございます。」

「・・・」

「ソフィア様にはもはや精霊王に直接交渉していただく必要もなく、このまま地上にお帰り頂き今後のアルシュ王国発展の様子を楽しんでいただきたいと思います。」


ソフィアはその言葉を無言で聞いていたが、傍らのナーノの手を取ると躊躇無く部屋の奥の螺旋階段:聖源室へと向かった。

バリスはすれ違うソフィアの右腕を掴み引き止める。

「どちらに行かれる!出口はあちらです。」

ソフィアは軽く首を横に振りバリスに微笑んだ。

「いけません。」

「?」

「お放しなさい。」

「出口までエスコート致します。」

バリスはなかば強引にソフィアの肩に手をかけ反対方向を向かせると腰に手を回した。


「!」

ピリッと静電気のようなものが2人の間に走りバリスは反射的に手を引いた。

その隙にソフィアはナーノをつれて聖源室へと駆けてゆく。

途中にいた作業服の男達が手を出してはビクッと引っ込めているのはやはり同じように電気に触れたような痛みを感じたからだろう。

「殺せ!」

バリスの怒号と共に近くに居た男がナイフを手にソフィアに襲い掛かった。

ナイフがソフィアのうなじを突きその刃先は確実に脳を貫いた。

手ごたえに笑みを浮かべてその刃を引き抜く男。

ソフィアはそれに引きずられるように後ずさった。

「母さん!?」

ナーノの声が広いフロアに響きわたった。と、同時に何かが光った

ソフィアの傷から光が噴き出しナイフを握った男は一瞬のうちに炭と化した。

「!」

バリスもそれに巻き込まれるところだったが一瞬ゆかを蹴って身を庇う。


「・・・行きましょう。ナーノ。」

ナーノはちょうどソフィアの前で庇われるように抱かれていたため後ろがどうなったかなど知る由もない。

が、繋いでいる手から力が消えていくのを感じ、母を引き上げるように螺旋階段を上がっていく。

「くそっ!」

バリスは傍らに立つ男から剣を奪うとソフィアの後を追った。


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