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チョコはお互いに渡すもの!?

作者: 黒野 衣梨

チョコ、バレンタイン、生チョコ、初恋、幼なじみ。と、不器用な女の子。



今回はそんなお話。



楽しんで読んでいただけると嬉しいです。

「みぃちゃーん!」

遠くから私を呼ぶ妙に間延びした声が聞こえてきた。

私は声を聞いて座ってたベンチから腰を上げて周りを見るけど、声の主はなかなかやってこない。

しばらくそのまま立って待ってると、ぽてっぽてっと走って来る可愛い足音が近づいてきた。

「はぁ、はぁ。ゴメンね、遅れて。」

彼、雪人は小さな口から白い息をもふもふと吐いて喋ってる。

「全然へーきだよ?」

私も彼ほど多くは無いけど白い息を吐いて答える。

今は、2月。冬まっ盛りで寒いったらありゃしない。

雪人も私もコートにマフラーっていう完璧に防寒してここにきてる。

「はいっ みぃちゃん!」

雪人は持っていた小さな紙袋を持った小さな手を笑顔で私に向けて差し出した。

今日は14日。

そう、バレンタインなんだ。

普通は女の子が男の子にチョコを渡すはずの日。外国では違うって聞いたことあるけどね。

一応言っておくけど、もちろん雪人は男の子。みぃちゃんと呼ばれた私、美加は女の子。

「ありがとー。」

雪人が差し出してきた紙袋を受け取った。

中身は言わなくても分かる。チョコレートだ。

ずっと前から、私達のバレンタインはこうだった。

雪人がチョコを作って持ってくる。私が受けとって食べて、ホワイトデーにお返しする。

男女がそのまま逆転した感じ。

雪人の方が、お菓子作りとかそういう女々しいことが私よりずっと得意だった。

「うん!やっぱり雪人のお菓子は世界で1番美味しい。」

紙袋からチョコを取り出して食べた私は言う。

「ホワイトデーは絶対にお返しだかんね!」

私の反応を見てちょと照れたように笑った雪人。少し偉そうに言ってる。

「分かってるよー。」

このやりとりも毎年恒例。




「はぁ…」

私はベンチに座って手に白い息を吹きかけながら、ボーっと昔のことを思い出していた。

あの時とは違って、今は制服の上からコートを着用してる。

もう私も中学生になった。

幼稚園の時からずっと一緒に居る雪人と、今年もここで待ち合わせしてる。

今日は2月14日。

やっぱり毎年とてつもなく寒い。

雪人は私の初恋の人。

雪人にとっての私も同じだと思う。なんたって幼稚園から好き同士なんだから。

今までずっと雪人にチョコを作ってもらってた。けど、今年は違う。

私は傍らに置いてある小さな紙袋に目をやった。

何回も練習したんだもん。美味しくないわけがない。

不安が押し寄せて来そうになったから急いで意識を切り替える。

雪人が約束の時間に遅れてくるのも毎年恒例になった。

「はー…。」

白い息を吐いて雪人を待つ。

「みぃー!」

遠くから私を呼ぶ声が聞こえてきた。

昔と呼び方が少し変わったのは成長した証かな。

雪人自体の根本的な性格は変わった気はしないけど。

それは小さな紙袋をこれでもかってくらいブンブン振って走ってくる姿を見れば一目瞭然。

あんなに上下に振ってるのに中身がこぼれないのが不思議なくらい。

「はぁ、はぁ。」

私の近くに来た雪人はもふもふと白い息を吐いてる。

「はいっ」

落ちついたら、満面の笑みでこちらへ持っていた紙袋をこちらへ差し出した。

私は昔よりずっと大きくなった手からしっかり受け取る。

「ありがと。…あのね」

私はベンチに置いてある紙袋をチラリと見てから言った。

「ん?どうしたの?」

雪人は私の視線には気付かず、小さく首をかしげてる。

私は紙袋をパッと取って雪人の目の前に差し出した。

「こ、これっ」

緊張して少しどもってしまった。

「ん、ん?ありがと。あけていいのかな?」

「…どうぞ。」

優しく受け取られた紙袋はそっと開かれて中身が取り出される。

中身を見た雪人は嬉しそうに笑って私の隣に腰掛けた。

「いただきます。」

私が作ったのは簡単な生チョコ。

初心者でも安心して作れて、失敗する確率がほとんどないと言われる生チョコを作った。

…3回くらい失敗したけど。

それくらい私は不器用なのだ。

だから、毎年雪人にチョコを作ってもらってた。

でも。

今年は私もチョコを作ってみたんだ。

少しくらい女の子っぽいことしてもいいでしょ。

「ん…。」

パクッと一口サイズに切られた生チョコを口に入れる雪人。

少しもぐもぐした後、パァッと顔が輝いた。

「…おいしい。おいしいよ!みぃ!」

目をキラキラさせてどんどんチョコを頬張ってる。

「よかった。」

ホッとした私も雪人が持ってきてくれた紙袋の中身を見る。

ふむ…。

今年はチョコレートブラウニーか。

やっぱ雪人は凄い。

キレイなラッピングを解いて私も頬張る。

「おいしい。やっぱり雪人のチョコが世界一。」

これも毎年恒例の決まり文句。

「違うよ!」

珍しく雪人が反論してきた。

あれ?去年までこんなことは無かったのに。

「みぃのチョコが世界一だよ!」

まだチョコをもぐもぐしながら喋ってる。

私は自然と笑顔がこぼれてくるのを止められなかった。

見ると雪人もニコニコ笑ってる。

私達は声をそろえて言った。

「ホワイトデーは絶対お返しだからね!」

読んでいただきありがとうございました



今回はいつもよりさらに短かった気がしますがw


バレンタイン、友チョコたくさん貰いました←


太りますよね…あれw



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― 新着の感想 ―
[一言] うぐっ・・・こういう「いつまでも仲良しで、なおかつ恋愛に発展する幼なじみ」って、憧れちゃいますなぁ(羨) ふむ、「チョコレートを大量にもらった影響で太る」とな? なに、対策は簡単。 一つ!…
[良い点] 良いですねぇ...ホント、文全体から優しさが 溢れ出てくる様な感じ... 遠い昔の自分の青春時代を想い出す。 [気になる点] ないですよ...今回も。 [一言] これ、意外に若い人より、…
2011/04/14 22:23 退会済み
管理
[一言] 私も不器用なんで、みぃちゃんのドキドキ感がよくわかります。ちなみに私の場合は、『今度から手作り止めてくれ』でした…(-.-#)上手くいかないもんです(^_^;)
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