↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【受賞・書籍化】処刑された聖女ですが、皇女に転生してお兄様たちに溺愛されています  作者: 朝森さな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/46

第1話 断罪

ご覧いただきありがとうございます!


こちらはweb版です。

書籍版は新エピソードも追加し、もっと洗練された内容となっておりますので、ぜひよろしくお願いいたします!

「──ジュリエット! この偽聖女め!」


 偽聖女となじられて、ジュリエットの紫の瞳に困惑の色が浮かんだ。


「捕らえろ! 大逆を謀(はか)った弑逆《しいぎゃく》者だ!」


「え……?」


 罵倒の言葉が投げつけられるのと同時に、武装した兵士たちが一斉にジュリエットを取り囲んだ。


 疲労困憊していたジュリエットは軽々と神殿の床に引き倒される。


「──っ!」


 白い手袋をはめた男の手がジュリエットの頭をつかんで石畳にひざまずかせた。


 長い髪を乱暴に引っ張られて、ジュリエットは声にならない悲鳴をあげる。


「おまえの企みはすべて露見している! もう言い逃れはできないぞ!」


 憎々しげにジュリエットを睨みつける男の名はナタン・ド・ランスフォール。このコライユ王国唯一の王子であり、王太子でもある。


「ナタン殿下!? これはどういうことですか!?」

 

「黙れ! 身分卑しい者が軽々しく私の名を呼ぶな!」


 ナタンは冷ややかな目でジュリエットを見下ろした。


「ジュリエット! おまえは聖女でありながら魔道に堕ちた! 許されざる大罪人だ!」


 身に覚えのない罪を突き付けられて、ジュリエットは絶句した。


「そんな……いったい何を言って……?」


 手荒に縛りあげられて法衣がはだけ、ジュリエットの肩にある痣《あざ》があらわになった。


 まるで薔薇の花弁のような形をした赤い痣はただの痣ではない。聖女と認められる条件の一つである「聖痕(せいこん)」と呼ばれるしるしである。ジュリエットには生まれた時から肩にこの聖痕があった。


「ふん、白々しい! そんな痣などしょせん偶然か、巧妙に施した偽物なのだろうが!」


 ナタンはせせら笑った。


「おかしいとは思っていたのだ。卑しい孤児であったおまえなどこの国の聖女の座にふさわしくないからな! それなのに身の程も弁《わきま》えず、次期国王であるこの私を誑《たぶら》かそうとするなどまったく図々しい!」


(わ、私がナタン殿下を誑かそうと? ありえないわ!)


 ジュリエットは反論しようとしたが、声が出なかった。鋭い痛みに頭を締めつけられたのだ。


(……うっ……痛い……!)


 この頭痛には理由があった。聖女だけが持つ特別な治癒の力を極限まで使い切ってしまったのだ。


 聖女には人々の傷や病を治す特殊な能力があるが、治療行為には反動が伴う。


 治癒する怪我が重傷なほど、病人の容態が重篤なほど、より大きな癒しの力が必要になり、その反動は術者に──つまり聖女本人に返ってくるのだ。


 昨日ジュリエットは王家に請われて、自身の持てる治癒の力を最大限に開放した。


 その結果、翌日になってもまだ回復しきらないほどのめまいや頭痛、疲労感に悩まされて、ろくに動くこともままならずにいた。


 そんな不調の中を踏み込んできたのが、この王太子ナタンと兵士たちだったのだ。


(ナタン殿下は私が大逆を謀(はか)ったと、聖女でありながら魔道に堕ちたと言ったわ。いったい何のこと……?)


 ジュリエットが困惑していると、ナタンは憎悪のこもった口調で唾棄(だき)するように言った。


「母上を……この国の王妃を殺害するとは、神をも恐れぬ大罪! ジュリエット、おまえはもはや聖女などではない! 悪辣なる魔女だ!」


(王妃様を殺害!?)


 ジュリエットは目を見開いた。


(王妃様が? 本当に王妃様が亡くなられたの!?)


 驚愕するのも無理はない。ジュリエットが昨日、治癒の力をすべて注いだ相手はその王妃だからだ。


 王妃ディアーヌは近ごろ原因不明の体調不良に悩まされていた。王宮には高名な医師が幾人も仕えているが、誰も王妃を治せなかったばかりか、病名さえ判然としなかったらしい。


 そこで王太子ナタンはジュリエットを呼びつけ、母上を治療しろと頭ごなしに命じた。


 人にものを頼むならもう少し言い方というものがあるのではないのかとは思ったけれど、指摘してもナタンは逆上するだけだ。ジュリエットは黙って従い、臥せる王妃の枕元にひざまずいた。


 ジュリエットが与えられる限りの祈りをすべて捧げた時。青白かった王妃の顔には紅の色がさし、枯れたように色あせていた皮膚にはみずみずしい脈動が戻っていた。


 昨日の王妃は明らかに回復の兆しが見えていた。


 それなのに、たった一日で急変して亡くなるなど考えられない。


「そんなはずがありません! 私は確かに王妃様を治──」


「この悪女が! おまえが注いだのは治癒の力ではなく、人を殺す魔女の力だったのだな!」


 弾劾するナタンの顔は、完全にジュリエットが王妃を殺したのだと信じきっている。


 ナタンは腰に佩(は)いていた剣を振りかざし、尊大に命じた。


「魔女を連行しろ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。