『めでたしめでたし』では終わらない
「はぁ〜、今日も疲れた……」
依頼を終えた俺はいつもの酒場で1人晩酌を楽しんでいた。
冒険者として活動を始めて1年、最初は慣れないことに戸惑いもあったが今ではすっかり慣れた。
元々は宮廷騎士団に所属していて腕を買われ魔王を倒す為の勇者パーティーのメンバーに選ばれた。
魔王を倒す事が出来れば英雄扱いされ将来の出世も約束されていた。
最初の頃はそんな夢を見ていた。
しかし、現実的に貧乏貴族の次男坊である俺が役職なんて出来るか、と言われれば無理な話で。
特に宮廷騎士団は貴族の令息が多く家柄が大きな影響を与える。
貧乏貴族出身の俺が部隊長とか団長になったら針の筵だ。
(まぁ、追放された身だから貴族社会にも帰れないし……、結局は今が一番落ち着くんだよな)
そんな事を考えながら酒を飲んでいた。
「ちょっとよろしいですか?」
「は?」
いきなり隣に座り話しかけてきた男を見た。
(冒険者では無いし雰囲気的に国の役人みたいだな)
「怪しい者ではありません、私は王命を受けて勇者パーティーの素性調査をしている者です」
素性調査、という事は俺の事も知っているのか。
「1年前に勇者パーティーを追放された元宮廷騎士のグレムさんで間違いありませんね?」
「……あぁ、そうだ」
「出来ればで良いんですが勇者パーティーを追放された理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
「その前に質問して良いか? ……魔王は倒されたのか?」
「はい、つい最近ですが魔王は倒されまして現在勇者パーティーは王都へ帰還中です」
そうか……、あいつらやったのか。
「俺が勇者パーティーを追放された理由、だったな。 一言で言えば『ついていけなくなったから』だ」
「ついていけなくなった、と言いますと?」
「最初の頃は仲間意識はあった、だが旅を続けていくにつれて悪い方向に変わっていったんだ」
「悪い方向に、ですか?」
「訪れる街で歓迎され接待を受けていった結果、勇者は『自分が特別な存在』である、と勘違いし始めて傲慢になっていたんだ。俺以外の仲間も勇者をチヤホヤするから余計拍車がかかった」
勇者は元々は俺と同じ貧乏貴族の出だ、たまたま神託により勇者に選ばれた。
確かに勇者は選ばれた存在だ、魔王を倒す力を持っている。
でも、それはたまたま選ばれただけで勇者の実力とか性格とかで選ばれたわけではない。
ぶっちゃけ剣の腕だったら俺の方が強い。
「俺は度々注意をしていた。『お前が勇者なだけでお前自身には何の力は無いからな』、『勇者は貴族でもなんでも無い、貴族では俺達は下の方なんだからそこを弁えないといけない』とか口煩く言っていたんだ。 それが気に食わなかったらしい」
「なるほど、それで追放された訳ですね」
男は俺の話を聞きながらメモを取っていた。
「まぁ魔王を倒したならあいつらの出世は間違いないだろうから俺が間違っていた、という事になるだろうな」
俺は苦笑いしながら言った。
「いえ、そんな事はありません。グレムさんは真っ当な事を言っている」
男はそう断言してくれた。
「実は各所から宮廷宛に苦情が殺到していて国王様も何かしらの処分を検討しているのです」
はぁ? あいつら俺を追放した後、色々やらかしているのか?
「特に国に大きな影響を与えている有力な公爵家はかなり怒っているのです、どうやらご令嬢に手を出された挙句ひどい振られた方をしたそうで……」
俺は呆れて何も言えなかった。
「今回のグレムさんの意見は参考になると思います、貴重な話をありがとうございました」
そう言って男は席を立ち店を出て行った。
それから数日後、俺宛に匿名で金貨の入った袋が送られてきた。
そこには手紙が入っていて勇者パーティーの末路が書かれていた。
王都直前のとある貴族の屋敷に招かれご馳走を食べ酒を飲み貴族が用意した別宅で泊まった。
その日の夜にその別宅が放火され勇者パーティー全員は焼け死んだ。
魔王軍の残党がやったんじゃないか、と言う噂もあるが、その貴族は公爵家と繋がりがあるそうだ。
まぁ公には発表されていないので勇者パーティーは名誉の殉死、という事になるだろう。
「……そして世界は平和になった、めでたしめでたし、か」
魔王が死んでも勇者が死んでも世界は続く。
世の中、おとぎ話みたいに上手くはいかないもんだな、と思う。




