魚屋讃歌、という名のダイマ
関ヶ原の戦いで土佐一国を与えられた山内一豊は領民に鰹の刺身を食べることを禁じた。
理由は腹を壊すから。
一豊はもともとは尾張の出なので、土佐の食文化に理解がない。
かといって、逆らうのはやばい。
この殿様は着任して早々、自分に反抗的な地元の侍七十三人を、相撲大会やるから来いよ、と呼び寄せ、皆殺しにした前科がある。
結局、領民が考えたのは鰹の表面をあぶって、焼いた鰹に見せかけることだった。
これが鰹のたたきの由来(所説あり)だという。
しかしだ、なぜ、表面を焼いた鰹が『たたき』なのだろう。
たたき、というのは鯵のたたきで分かるように刺身よりも小さく刻んだもののことだ。
他の魚で焼いたものをたたきと呼ぶケースはない。
しかも、本当の意味での鰹のたたきは存在する。
それが塩辛だ。
つまり、鰹の内臓を細かくたたいて、塩辛にする。
これがあまりにもうまくて、お酒に合いすぎるので、気づいたら、酒が盗まれたみたいにきれいさっぱりなくなっている。
という由来から鰹の塩辛は酒盗と呼ばれるようになった。
そう名づけたのは第十二代土佐藩主山内豊資で、初代は刺身を禁じたが、十二代も下れば、すっかり舌が土佐の舌になったわけだ。
ごはんのお供は当たり前。個人的なおすすめはキャベツのペペロンチーノで、和風アンチョビとして少しだけ入れれば、がっつり存在感。かんずりという食品会社では唐辛子で味をつけたものを売っていて、濃い味つけによく合うらしい。
酒盗はアマゾンでも買えるけど、近所にマグロの仕入れがうまい魚屋があって、そこでも手に入る。
これを読んだら、グーグルマップを引っ張り出して、近所に魚屋がないか調べよう。
いい魚屋があるだけで、食生活がずっと華やかになるから。




