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魔王の奇妙な封印  作者: 兎文人


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1/1

一緒に生きよう

ぐうあぁぁぁぁぁぁぁ!!!


復活した魔王は、勇者一行によって再び打ち倒された。


魔王は玉座の前で膝をつき、黒い血を吐きながら息をしている。

勇者は剣を振り上げた。


その時だった。


「待て」


魔法使いが言った。


勇者の手が止まる。


「殺してはダメだ」


「なぜだ?」


魔法使いは少し考えるようにしてから言った。


「疑問がある。これは冒険を始める前からずっと考えていたことだ」


皆、顔を見合わせた。


魔法使いは静かに続けた。


「なぜ魔王は封印されたのか。

 なぜ過去、魔王を倒した勇者ハロルドは魔王を殺さなかったのか?」


勇者が眉をひそめる。


「さぁ?」


魔法使いは言った。


「私はこう考える。魔王を殺してはいけない理由があったのではないか?

私はこうも考える。もし魔王を殺せば、王国の脅威がなくなるのではないか?

そしてこうも考える。魔王の脅威がなくなった次の脅威は?」


魔法使いは続ける。



「私たちだ」


さらに静かになる。


瀕死の魔王は、その様子を見て――

かすかに、笑った。


昔から変わらない。死んだ勇者だけが、いい勇者だ。


勇者が口を開いた。


「……封印しよう」


戦士が怒る。


「こいつのせいで何人死んだと思ってる!」


「わかってる」


勇者は短く答えた。


僧侶が言う。


「復讐からは何も生まれません」


魔法使いも頷く。


戦士がぼそりと言った。


「いっそ国王を倒すか?」


勇者は首を振った。


「俺は平和な世界を夢見て戦ってきた。

 これから新しい戦争を始めたくない」


少しの沈黙。


「家族や友人と戦うことになるかもしれない」


勇者は剣を下ろした。


「それはできない」


全員が頷いた。


瀕死の魔王は思った。


また封印か。まあいい。百年くらいすぐだ。

いつか誰かが解き放つだろう。

退屈だが、仕方ない。


勇者が言った。


「バラバラにしよう」



……え?



「バラバラにして個別に封印すれば復活しにくい気がする」


……気がするって?そんな曖昧な。



戦士が言う。


「死んだらどうする」


「それならそれでよし」


よくないだろ。



魔法使いが頷く。


「もし死んでも、“バラバラの体が集まれば復活する”とか言っておけばいい」


「それっぽいな」


「うむ」



うむじゃない。



話はまとまった。


勇者一行は魔王を解体し始めた。


「一人一個な」



解体されながら魔王は思った。



サイコ野郎ども。




腕。脚。胴体。頭。

それぞれ箱に入れられ、封印された。


「終わったな」


「長い旅だった」


「ああ、帰ろう」


「なあ、国王には“魔王封印守護官”みたいな役職を作らせないか?」


「不安定な生活はもういい。俺は地元で安定した暮らしがしたい」


「そうだな。王都から離れて暮らせば粛清もされまい」



ずいぶん生活感あるな。


魔王は死ぬことができないので、考えるのをやめた




勇者一行は魔王城を後にした。


王都に帰ると、王は彼らに

「魔王封印守護官」という役職を与えた。


勇者たちは王国の各地に散らばり、

それぞれ封印を守りながら静かに暮らした。


そして。


恐ろしく長い時間が過ぎた。


勇者の子孫たちは、


魔王のことを忘れた。


封印の意味を忘れた。


封印を守る仕事すら、忘れた。


やがて誰も知らなくなった。


箱の存在を。


封印の理由を。


守る必要を。


そしてその役職は廃止された。


理由は単純だった。予算削減であった。




ある日。


一人の漫画家が取材のため、古いダンジョンに足を踏み入れた。


先祖を調べると、自分が勇者の血筋だと知ったのだ。


古文書にはこう書かれていた。


「絶対に封印を解くな」


半信半疑で奥へ進む。


部屋の中央に箱があった。


蓋には文字。


「絶対に開けるな。世界が滅びる」


漫画家は箱を見つめた。


先祖の声が聞こえる気がした。


絶対に開けるな。


これは命令だ。


漫画家は小さく言った。


「だが断る」


と断言した。


そして、蓋を開けた。


箱の中には黒く乾いた魔王の頭が入っていた。


魔王はゆっくり目を開き、目からビームを放ち漫画家の肉体を乗っ取った。


魔王は哄笑した。


馴染む、馴染むぞ!勇者の子孫の身体は馴染む!


魔王は歓喜に浸りながら


「すごいネタだ……!

 すごい漫画が描けるぞ!」


ダンジョンに魔王の叫び声が響いた。


そして何事もなかったようにダンジョンを出ていった。


帰り道でふと思った。


――あれ?なんだか、少し変だな。


だがそんな違和感はどうでもよかった。


描きたい、今すぐ描きたい。


彼は仕事場へ戻り、ペンを取り、


原稿用紙の一行目にこう書いた。


「ぐうあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


魔王は復活したことに気がついたが、


世界征服ごときのために私が漫画を描いてると思うのか!



魔王はわかっていた。

この作品を描き上げても、次も読者に読んでもらえる保証はないことを。


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