裏エピローグ 野村雄視点
厳密に言えば、時間の流れが完全に違う異世界なので、同じ頃という訳では無いのだが。
同じ頃(?)に、野村雄は高木惣吉と、久々に久闊を叙して酒を酌み交わしながら、夕食を食べた後、現在の住処にしている老人ホームにまで帰るのには、遠くて遅くなっていたことから、食事をした場所の近くのホテルに一泊することになっていた。
そして、その翌朝に微妙に二日酔いが抜けない状態で、老人ホームに帰った後、今の妻のジャンヌと雄は会話を交わしていた。
「久々に旧友と会った為に、時間と酒を過ごしてしまった」
「酒が悪いとは言いませんが、酒を飲み過ぎて、体を壊さないで下さい」
「分かっている。共に長生きしよう」
「ええ」
雄とジャンヌは、酸いも甘いも嚙み分けた老夫婦の会話を交わした。
だが、その一方で、雄は高木惣吉との会話の中で話し合った、かつての自分の記憶の中での3つの分岐点について、改めて自分なりに冷静に考えざるを得なかった。
もし、自分が鈴では無かった、篠田りつと順調に結婚していたら、どうなっていただろうか。
そして、第一次世界大戦終結後に、自分がジャンヌと駆け落ちしていたら、どうなっていたか。
りつでは無かった鈴の話、更にジャンヌの話で、大よその類推は出来るが、その一方で二人は知っていた一方で、自分は知らずに踊らされていた、という事情がある。
更に、この今の世界では結果的に自分だけ知っている情報から動いたという事情が加わる。
お互いに完全に知らなければ、又は逆にお互いに完全に知っていたならば、違う選択肢というか、違う未来があったのではないだろうか。
そこまで突き詰めて考えていくと、本当に悩ましいことになるな。
そんなことを雄が考えていると、ジャンヌは干し柿を差し出してきた。
「千恵子が送って来た干し柿を食べて、二日酔いを治して下さい」
「そうだな」
ジャンヌの言葉に答えて、更に干し柿をかじりながら、雄は更に考えた。
この干し柿の柿は、味からして明らかに会津身不知だ。
恐らく千恵子ではなく、本当はりつが娘の千恵子の名を借りて送ってきたのだ。
今では余りにも遠く離れた故郷である会津だが、遠く離れているからか、尚更に恋しく想える。
色々と悪名が広まったこともあって、故郷を捨て去ったジャンヌには分かり難いだろうが。
自分には、どうにも故郷の会津が恋しく想えることがある。
そして、りつはその思いを促進するかのように、時折、娘の千恵子の名を借りて、会津の産物を送ってきて、来世では自分と共に暮らしたい、と暗に訴えて来る。
そうしたことをされると、自分の実父の介入でりつを捨て去ったことを悔やむ一方、今のジャンヌとの暮らしを愛おしく想える自分がいる。
間もなく、この異世界を自らの死という形で去ることになるのだろうが、自分は元の世界に還らざるを得ないのだろう。
死という形で還らないことがあるらしい、と彼女達から自分は聞いているが。
もし、自分が死んだら、彼女達の方からあの世まで全員が追い掛けてきそうだ。
其処まで考えると、自分は死んで逃げるという路は、最初の人生の失敗を繰り返すことでもあり、とても選べるモノではない。
そう考えていくと、自分は元の世界に還るしかないのだが。
本当にどうすべきなのだろうか。
共に暮らすとなると、食事を始めとする色々なことが相容れないと、すぐに破綻するだろう。
そういった辺りをすり合わせた上で、1人を選んで共に暮らすのが無難だろう。
とはいえ、それはそれで、他の3人から刺されそうな気がして、自分はならないが。
そんなことを考えつつ、雄は干し柿を食べ終わり、横になってまどろみつつ、考えた。
鈴かジャンヌか、どちらかを自分は選ぼう。
これで完結します。
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